読書感想文

最近読んで気に入った本を紹介します。
タイトルがなさけない・・・なにかいいタイトルないでしょうか(^^;)

本を読むのは通勤や移動中。
したがって、帰宅したころには細かい感想を忘れてることがしばしば。

てなわけで、ちょこちょこと地道に感想を書きます(^^;)
☆5つで満点。★はオマケです。

ちなみに、1999年 2000年 1月 2月 分です(クリックしてください)


2000年 3月

笹本祐一「ARIEL〔15〕」(朝日ソノラマ):文庫:☆☆★

 以前にここでも紹介した現代日本を舞台にしたスペオペ(?)の傑作。
 第15巻と、改めて考えるとけっこうな大長編になっている。
 最近の朝日ソノラマにありがちなゆったりとした文字組みと、内容のお気楽さが、冗長さをかけらも感じさせないが。
 あいかわらずディテールは妙にこっている。笹本節は健在だ。
 いつのまにか魅力的なキャラクターが増えてしまい、この一冊に登場しないキャラクターが多数いるのは残念だけど。もっと刊行ペースをあげて欲しい。
 ちなみに、あとがきによればARIELは全52話で終わっちゃうらしい。この巻は42と43話。なんてこった。(3/26記)



森博嗣「幻惑の死と使途」(講談社):新書:☆☆

 以前この著者の本を読んだ時、いまいちのめり込めなかった。
 論理を前面に出した文章世界に感情移入できなくて、登場人物がマネキンに見えたんだよね。
 とはいえ、掲示板で薦められたこともあり、もいちど手にとって見ました。
 で、今回は楽しめました。人物像が見えづらくて、感情移入しづらいのは今回もあったけれども。
 下にも書いたけども、僕はミステリが好きなわりに、トリックや謎解きよりも人間ドラマが好きなんだよね。だから、「who done it」の部分は退屈してしまう。
 だけどここで紹介したのは。最後のちょっとしたどんでん返しとラストシーンが気に入ったからです。(3/7記)

小野不由美「風の万里 黎明の空」(講談社):文庫:☆☆★

 十二国記シリーズ。以前もここで紹介してます。
 内容が異様に照れくさい。悩むのはけっこうだけども、この歳になって読むとこっぱずかしかった。まあ、僕の歳の男なんぞを読者層として、はなっから設定してないんだろうけどね。
 ストーリーは重厚で、3本のエピソードを進めていき、ラストシーンに向かって物語を収斂させていくのは見事なもの。
 前回も書いたけども、今回も短い!せめてこの3倍のボリュームで読みたいな。(3/4記)

篠田真由美「原罪の庭」(講談社):ノベルズ:☆☆

 「建築探偵桜井京介の事件簿」シリーズの第一部完。5作目かな。
 第一部完らしいが、僕はこのシリーズを読むのは初めて。だからいまいち登場人物の背景が見えなかったのが困り物。だけど、表紙にある「why done it」に惹かれた、という作者の言葉に載せられて読んでみた。
 島田荘司以来、新本格派が台頭して腐るほどミステリが本屋にあふれてるけども。「who done it」や「how done it」といったトリックより、人間心理の葛藤に興味がある僕にとって、たのしめるかとも思って。
 結果的に、なかなか面白い。☆3つつけなかったのは、「why done it」がテーマにもかかわらず、人物描写が共感できなかったから。
 上にも書いたとおり人物背景がよくわからず、えらくエキセントリックな性格に感じたのがひとつ。それと登場人物の精神年齢が共感できなかったのがひとつ。
 だけど、このトリック(とあえて言う)は感動的だ。あまり具体的に情景を想像しないほうがいいかもしれないけども。ラストシーンは、かえって要らないんじゃないかなあ。ハッピーエンドはふさわしくないような。(3/3記)

中村とうよう「雑音だらけのラヴソング」<70年代編/80年代前編>(ミュージック・マガジン社)ソフトカバー:☆★

 音楽雑誌「ミュージックマガジン」の創刊者の、音楽評論家の中村とうようが同誌に連載を続けているコラムがある。「とうようズ・トーク」と銘打ち、1970年から今まで30年続いている長期コラムだ。
 この本はそれぞれの時代を基点にし、その「とうようズ・トーク」をメインにさまざまな雑誌・新聞等に発表した文章から選択したコラム集。
 音楽とはつかず離れず、社会現象に真っ向から噛み付いた歯切れよい意見がいい。
 正直言って、この2冊は当時の出来事にピンときてないと面白くないかも。僕自身、70年代はガキだったからね(いや、80年代前半もガキだったけど(^^;)。いまいち話題に実感がないのが正直なところ。
 でも、それでもこの本は面白い。まっこうから正直に意見を言うこととはなにか、正論を吐くというのはどういうことか、読んでいて考えさせられる。
 著者の意見に、もちろんすべて同意は出来ない。違うんじゃないか?と思うことだってある。
 だけど、語り口調のすがすがしさに、読んでいて自然と背筋がピンとしてくる面白い本だ。(3/2記)

ベケット「ベケット戯曲全集1」(白水社):単行本:☆

 第三舞台の「朝日のような夕日をつれて」の下敷きが、このベケットによる「ゴドーを待ちながら」(初演:1953年)だ。25年位前の演劇界でおおはやりしたとかしないとか。 
 前から読んでみようと思っていたけども、タイミングが合わずについつい読みそびれていた。この戯曲集に収録されてるのを見て、やっとこさ手にとった。
 登場人物は5人、そのうち二人がメインで舞台に立ちつづけ、ひたすらゴドーを待ちつづける。ストーリーとしてはこれだけ。イヨネスコみたいに難解な不条理劇かと思っていたけども、予想に反し面白かった。(不条理劇ではあるものの)
 細かい台詞使いが第三舞台の「朝日〜」に引き継がれているのも、今回はじめて知った。おかげで「朝日〜」でのセリフの一貫性への理解が、ちょっとは深まった気がする。

 ちなみに、この本には「すべて倒れんとする者」ほか2作も収録。一通り目を通してみたけど、いまいちピンとこず。ま、そのうち再読する機会があるでしょう。(3/1記)

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