cotelのCD購入紀行

興味の赴くままCD買って聴く。日記めいた徒然の感想ページ。

*凡例  1・年間購入の通しNo : ミュージシャン : アルバムタイトル: 感想」の順。 
       2・盤の印象は☆5点満点。★はオマケ。ある程度聴くと盤のコメントと星を追記してます。


<過去の購入紀行> 
2016年 
2011〜2015年 2010〜2006年 2005〜2000年  


2022年7月

2022/7/21   

   11年ぶりの新譜。ようやく出た。
3・山下達郎:Softly:

2022年1月

2022/1/6  

   注文してたCDが到着。明田川荘之の新譜で、立教ジャズ系OB会の様子をCDに収めた。
2・明田川荘之:立教ジャズ研:

    同じくアケタズ・ディスクの新譜。高橋知己の70歳記念で6人のピアニストと共演した。
1・高橋知己:Seven:

2021年12月

2021/12/14  

   注文してたCDが到着。2021年盤は「おうちカラオケ」の収録あり。
2・山下達郎:Christmas Eve(single):

2021年8月

2021/8/11

 
   サイト限定注文による解散ツアーを収めた7枚組。
1・DCPRG:20 YEARS HOLY ALTER WAR - MIRROR BALLISM Tour Live:2020年8月

2020/8/4   注文したCDが到着。2021年盤は「おうちカラオケ」を収録したあり。

   96年発売、ムーンライダーズ20周年にあたるアルバム。
10・Moonriders:Bizarre Music For You:

   95年発売。セルフ・カバーのミニ・アルバム。
9・Moonriders:La Café de la Plage:

   03年のアニメ・サントラ。ライダーズとして一堂に参加のサントラは本盤だけらしい。
8・Moonriders:OST:東京ゴッドファーザーズ:

   92年発売、2ndソロ・アルバム。
7・白井良明:カオスでいこう!:

   サントラとして活動初期に手掛けた香港の作品。95年作
6・大友良英:OST:女人,四十。 - SUMMER SNOW:

2020年6月

2020/6/7   注文したCDが到着。

   海外進出三部作の最終盤で、91年発売の9thソロ。
5・坂本龍一:ハートビート:

   アニメのサントラ製作に先立ち、予告編的に製作した87年のミニ・アルバム。
4・坂本龍一:オネアミスの翼(イメージスケッチ):

 2020年5月

2020/5/12   ひさしぶりにCDを購入。

    ピアノ・カルテットでのバカラック曲集。陳腐な企画盤に見えるが、奏者がすごい。
   塩谷哲(p),今堀恒雄(g),水谷浩章(b),外山明(ds)。すなわちティポグラフィカ勢3人が参加した。発売は96年。
   つまりティポの解散前だ。企画盤とは言え、この顔ぶれに興味あり買ってみた。
3・今堀恒雄カルテット:Alfie Jazz Bacharach:

2020年3月

2020/3/4   ひさしぶりにCDを購入。

    細野晴臣がテイチクで短期間に活動したレーベルの4枚組編集盤。
2・V.A.:NON-STANDARD collection−ノンスタンダードの響き−:

2020年1月

2019/12/28   注文したCDが到着

   明田川荘之の新譜は、2010年1月18日にアケタの店でライブ音源。最新の様子ではないが、今年逝去した斎藤徹の追悼盤。
1・明田川荘之:世界の恵まれない子供達に:

2019年12月

2019/12/21   注文したCDが到着

   年末恒例のクリスマス・シングル。今回はカップリングを大幅に変えてきた。
山下達郎の新譜シングル。カップリングはライブ音源だ。
30・山下達郎:Recipe:

   年末恒例のクリスマス・シングル。今回はカップリングを大幅に変えてきた。
29・山下達郎:クリスマス・イブ-2019 version-:

2019/12/15   注文したCDが到着。

   アケタズ・ディスクの初期LP全部復刻の第二弾。大好きなピアニストで
   レーベル主催者、明田川荘之が参加した盤を全部買った。

   76年3月29日、アケタの店で収録したピアノ・トリオ音源。
   オリジナルとスタンダードを2曲づつ収録した。
28・明田川荘之トリオ:外はいい天気:

 
  梅津和時や原田依幸の渡米に伴い分裂した生向委。松風鉱一率いるカルテット編で
   76年6月5日に島根県益田市で行ったライブ盤。明田川も参加した。
27・生活向上委員会:ライヴ・イン・益田:

   78年3月と9月の、アケタの店でライブ音源をアルバムにした。双方ピアノ・トリオ。
26・つのだひろと体力バンド:サマー・サンバ:

   78年11月と、74年9月、11月のピアノ・トリオによるライブ音源。
   アケタの店開店が74年2月25日のため、同年9月は音盤化では最古の記録だそう。
25・明田川荘之:フライ・ミー・テュー・ザ・ムーン:

   82年のライブのうち、あちこち3日間の中からえりすぐられたピアノソロとトリオ。
24・明田川荘之 Trio & Solo:山崎ブルース:

   85年4月26日、府中分倍河原「バベル2nd」でのライブ。吉野弘志とのデュオで1stセットを
   全曲収録した。だがそのあと観客は全員帰ってしまい、2ndセットは中止だったそう。
23・明田川荘之:アット・ザ・バベル 2nd:

2019/12/8   注文のCDが到着。

   自主レーベルのみの流通とは知らなかった。スパンク・ハッピー第三期の1stアルバム。
22・FINAL SPANK HAPPY:mint exorcist:

2019年10月

2019/10/16  注文のCDが到着。

   プリンスと関連ミュージシャンがプロデュースした彼女の2ndで、90年に発表。
21・Elisa Fiorillo:I am:

   吉田達也がホッピー神山、ナスノミツルと組んだ即興バンドの3rd。06年に発表。
20・大文字:I'm Getting Sentimental Over You:

2019年9月

2019/9/1  注文したCDが到着。

   Studio Weeの新作は翠川敬基と早川岳晴のデュオ。チェロ(4弦)とベース(4弦)の
   交感って意味で、合計8本の足に例えてのタイトルか。
   本レーベル直販のオマケCD-Rは、翠川の曲"Tacovich"のライブ・テイク。
19・翠川敬基/早川岳晴:蛸のテレパシー(Octopus telepathy):

2019年8月

2019/8/25   いまさらながらサザンをあれこれ聴いてみたくなった。
 
   82年5枚目アルバム。サザンの場合は細かい説明いらんよね、たぶん。
18・サザンオールスターズ:NUDE MAN:
   
   92年の11枚目アルバム。
17・サザンオールスターズ:世に万葉の花が咲くなり:

   00年発売、45枚目シングル。
16・サザンオールスターズ:HOTEL PACIFIC:

   90年発売、10枚目扱いのアルバム。今はサザン名義と扱われてる。
15・OST:稲村ジェーン:

   02年発売、3枚目のアルバム。
14・桑田佳祐:ROCK AND ROLL HERO:

2019年7月

2019/7/28   注文してたCDが到着した。

   アケタズ・ディスクのLP時代作品が、ついに再発。明田川のリーダー作をまず買った。
   これは第一弾で75年録音。ピアノ・ソロとトリオ演奏を収めた。
13・明田川荘之:アケタズ・エロチカル・ピアノ・ソロ & グロテスク・ピアノ・トリオ:

   77年録音、ボーカル入りのセッションと、梅津和時の集団疎開と
   明田川の生活向上委員会から選抜メンバーによるセッションを収録した。
12・明田川荘之トリオ+梅津和時&中村マスコ:集団生活:

   79年に徳山でのソロ・ライブを収録した盤。
11・明田川荘之:アローン・イン・徳山:

   初山とのビブラフォン・ソロ。魔よけのようにアケタの店に飾られてる
   伝説の盤が、ついに再発された。85年の盤。
10・明田川荘之:野尻の黄昏:

2019/7/19  注文したCDが到着。

   LPとしては初の2枚組。ガイディッド・バイ・ヴォイシズが約1年ぶりに発表のアルバム。
9・Guided By Voices:Zeppelin Over China:

2019年5月

2019/5/2  注文したCDが到着。

   ジョン・ゾーンの疑似バンドの一つで、ギター二本のカルテットInsurrectionに
   よるアルバム。2018年中に2作目が登場した。
8・John Zorn:Salem 1692:

2019年4月

2019/4/5    注文したCDが到着。

   2016年のアルバムで、同年4月9日、10日に神奈川芸術劇場で吹きこんだ音源を
   地底レコードからリリース。内容はクラシックの楽曲を渋さ風にアレンジしたもの。
7・渋さ知らズ:渋樹 JUJU:

   Masada第二弾、Book of Angelsの第32作目にして最終アルバム。
   中堅の期待ギタリスト、メアリー・ハルヴォーソンのカルテット編成で吹きこんだ。
6・John Zorn-Mary Halvorson Quartet:Paimon: Book Of Angels Volume 32: ☆☆☆★
   マサダのコンセプトを逆手に取るような、2ギターの演奏は優美で繊細。
   メアリー流のけだるさとマサダの熱量が緩い温度域で釣り合った。
   とっつきはあっさり。聴き重ねるほどに、マサダのレパートリーを見事に操ってるとわかる。
   メロディをするりとフェイクさせ、崩し過ぎない。上手いバランスだ。

   是巨人+超即興。吉田達也を軸に二つのバンドが合体した2013年
   10月23日に、新宿ピットインで行われたライブをCD。2018に磨崖仏からのリリース。
5・NYUK:NYUK:☆☆☆★
   気心知れ手慣れてる、刺激的な即興が聴ける。
   調和と混沌、相反する要素をバランスよく互いがばらまき、
   期待通りの着地点が見えないが安定感抜群のインプロを並べた。

2019年3月

2019/3/3   注文したCDが到着。

   2年5ヶ月ぶりとは。久しぶりに岡村ちゃんのシングルが出た。
4・岡村靖幸:少年サタデー:

2019年2月

 2019/2/9   注文したCDが到着。
 
   吉田達也がエルドンのリシャール・ピナスと2014年に行った日本公演から
   選曲したライブ盤。磨崖仏から14年の発売で400枚限定。
3・Richard Pinhas/吉田達也:Live in Japan:

   芳垣安洋、大友良英、不破大輔と微妙に意外なメンバーによるユニットの1st。
   さらに数曲で山本精一がゲスト参加した。地底レコードより2017年の発売で
   音源は2016年に名古屋での録音。
2・Shoro Club:from 1959:

2019年1月

2019/1/13   注文したCDが到着。

   Triniteの第三章となるアルバム、2016年発。
1・Trinite:神々の骨:

2018年12月

2018/12/2   注文したCDが到着。

   ジョン・ゾーンがサックスと鍵盤を弾き、イクエ・モリ(electronics)とChes Smith(per)と
   共演との、新たな挑戦に試みたコンセプトの第一弾。発売は2018年。
34・John Zorn:In A Convex Mirror:☆☆☆
   サックスの吹きまくりは安定して楽しめる。しかし手慣れたテクニックの応酬より
   幻想的な鍵盤にサックスを乗せる、歪んだスムーズ・ジャズな(2)が一番面白かった。
   クレジット上はドラムと共演ながら、セッションではなく一つのサンプリング・トラック的に
   リズムを扱った。手業で流すことを良しとせず、さらに即興の可能性を
   ゾーンは模索してるっぽい。

2018年11月

2018/11/13   DABOのソロをまとめて入手。

   Def Jam時代の最後となった3rdアルバム、03年発売。
33・DABO:Diamond :

   Capitol移籍の初回アルバムで4thソロにあたる。05年発売。
32・DABO:The Force:

   現時点で最新ソロ・アルバムで2010年に発売した、実質的に6thリーダー作。
31・DABO:Hi-five:

2018/11/4   注文したCDが到着。

   スローダウンRebordsがずっと行っているメルツバウの初期音源シリーズの一環。
   2018年に発売された。83年にLotus Clubの変名で秋田昌美がカセットでZSFから
   発表した音源をCD再発した。
30・Merzbow:Lotus Club - Le sang et la rose:

   クラリネット奏者が94年に発表したクラシックの作品集。一曲で板橋文夫(p)が参加した。
29・村井祐児:クラリネッティッシモ II〜春の音:

2018年10月

2018/10/20   最近買ったCDをまとめて

   ジョン・ゾーンの疑似バンド系の一環かな。Masada 2 "Book of Angels"の
   第19弾"ABRAXAS"のメンバーが、ジョン・ゾーンの曲を演奏した2014年の盤。 
28・John Zorn:Psychomagia:☆☆☆
   箱庭の暗黒グルーヴとクリーンなトーンを平然と両立させた。
   ゾーンによる一連の疑似ユニットとして聴くなら、ダイナミックな鋭さは単純に
   心地よい。若干スリルに欠けるが乱暴さは皆無、重厚さすらも演出と分かる緻密な演奏を楽しもう。

   ニトロのBIGZAMが03年に発表した1stミニ・アルバム。
27・BIGZAM:No.1ドラフトPICK:

2018年9月

2018/9/8   CDを買ってきた。

   PIRを支えた作曲チーム、マクファデン&ホワイトヘッドの片割れが
   88年に発表したソロ・アルバム。
26・John Whitehead:I need money bad:

2018年8月

2018/8/16  注文のCDが到着。
 
   ジョン・ゾーンの疑似バンドGnostic Trioの一環として、オルガンなど3人を
   加えた編成による、2014年のアルバム。
25・John Zorn:Transmigration Of The Magus:☆☆☆☆
   ジョン・ゾーンのオカルト趣味を投影した佳作。アンサンブルのふくらみと多様性が心地よい。
   精妙に撚られたきめ細かい音の布が気持ちいい。詩的で優美ながら、躍動感も同居した。

2018年7月

2018/7/15   注文した新譜が到着。

   10ヵ月ぶり、アニメのタイアップで2曲の新曲いりシングルが出た。
24・山下達郎:ミライのテーマ / うたのきしゃ(single):☆☆☆☆
   80年代回帰かと思わせて、デジタル録音のにじみを追求した実験成果を
   見事にみせた盤。まだまだ達郎は枯れてない。くわしくはこちらに書いた。

2018年6月

2018/6/2   最近買ったCDをまとめて。

   太田惠資が2017年にHulu限定ドラマの音楽を担当、同年にサントラを配信限定で発表した。
23・太田惠資:OST"雨が降ると君は優しい":☆☆☆☆
   別テイクがずらり並ぶ構成だが、間口の広い入門編にもなりうる。
   即興を生かした自由度の高さで、一口に語れない太田の魅力を味わえた。

   ジョン・ゾーンの疑似バンド・コンセプト一環な2016年の盤。TZADIKの煽り文句は双方ともゾーンの
   疑似バンドである"Moonchild meets Nova Express!"。
22・John Zorn:The Painted bird:☆☆☆☆
   分かりやすく凄腕っぷりを見せつけた。のめり込むほど刺激的。
   ハード・ロックのタフさとしなやかなオルガンやビブラフォンの丁々発止な
   やりとりが隙無くつめこまれてる。実際はすべてゾーンの指揮で、インプロの弛緩が全くない。

2018年5月

2018/5/16   注文したCDが到着。

 最近メルツバウ関係をどんどん出してる日本のレーベル、スローダウンが企画の
 初期音源シリーズ、第一弾と第二弾を入手。第一期は全六弾の予定。

   第二弾。第一弾より一日前、1979年11月23日と極初期メルツバウのスタジオ録音。
21・Merzbow:23 November 1979 (B):☆☆☆
   抽象と具象のはざまを行き交う即興ノイズ。
   道筋が見えぬまま、音を出してあがいている生々しい様子を追体験できる。

   第一弾。1979年11月24日、スタジオでのセッション音源となる。
20・Merzbow:Hyper Music 1 Vol. 1:

2018年4月

2018/4/28   注文したCDがようやく到着。

   ガイデッド・バイ・ボイシズの新譜が出た。全曲、ロバート・ポラードの作曲。
19・Guided by Voices:Space Gun:

2018年3月

2018/3/17   注文してたCDが到着。

   John Medeski, Kenny Grohowski, Matt Hollenbergによるジョン・ゾーンの
   疑似バンド、Simulacrumの4thアルバム。2016年発売。
18・John Zorn:49 Acts Of Unspeakable Depravity In The Abominable Life And Times Of Gilles De Rais:☆☆☆
   精緻に組み上げたコンセプト・アルバム。Simulacrumの編成を使ってジル・ド・レの
   残虐さを描いた。スピーディさはしっかりあるが、ゾーンの色合いが強く出て
   疑似バンドっぽさは幾分か減じた。演奏はばっちり。スリリングかつ激しい場面展開がそこかしこにある。

   2017年発売、ジョン・ゾーンの現代音楽集。
17・John Zorn:There Is No More Firmament:☆☆☆
   近年の作品で流れを概観できる、厳かかつスピーディな現代音楽の小品集。
   メロディアスな楽曲も多く、勢い一発ではない。ファン向けだが、間口は意外に広い楽曲たちだ。

2018/3/3    最近買ったCDをまとめて。

   ジョン・ゾーンのパイプオルガン・ソロの第5弾、2017年発売。
16・John Zorn:The Hermetic Organ-Philharmonie De Paris:

   再活動後第三弾、2012年のダイナソーJr.
15・Dinosaur Jr.:I bet on sky:☆☆☆★
   鍵盤をあちこちに使い、ギターを重ねる。分厚い音使いが新たな挑戦で
   ダイナソーの気怠い音世界へ彩りを足した。2曲あるバーロウの明確な作品が
   いいかんじでアルバム世界観のペース・チェンジになっている。
   ダイナソー流であり、新境地であり、それでも個性はぶれない。不思議な多層構造を味わえる盤。

   94年にフランスのレーベルから発売。比較的初期に海外で出回った彼の作品らしい。
14・灰野敬二:A Challenge To Fate/運命への挑戦:☆☆☆☆
   一曲を短くして、様々なアプローチの音楽性を詰めた。基本的にライブ録音で
   オーバーダブなし。複数の音をディレイで重ねて単調さは皆無。

2018年2月

2018/2/24   最近買ったCDをまとめて。

   井上憲司(シタール)がリーダーで91年に発売した1st。太田惠資や吉見征樹が
   メンバーで、インド風味オリエンタルの香りな多国籍インストのバンド。
13・JAZICO:JAZICAL WORLD:

   日本のEarから02年に発売のコンピで、4人のセッションもあり。
   発売の背景を知らないのだが、どういう経緯だろう。
12・曽我部圭一、灰野敬二、ボンスター、友直:僕の手につかまって:

   05年発売、NY録音でオラシオらキューバあたりの南米ミュージシャンと共演盤。
11・坪口昌恭:VIGOROUS:☆☆☆★
   海外のミュージシャンとセッションしてみた、って安易な企画では全くない。
   クールな距離感にて他のメンバーと音楽で勝負し、なおかつ坪口の個性をきっちり流し込んだ。
   噛みしめる味わいは芳醇だ。

2018/2/17   注文のCDが到着

   2017年に日本のスローダウンから発売のアルバム。
10・Merzbow:Kaoscitron:

2018/2/16   注文したCDが到着。

   太田惠資のバンド、ヨルジュ・ヨルダシュの1stがロシアのレーベルからリリース。
   内容はピットインでのライブ音源。全編インプロでなく、太田のオリジナル曲も演奏してる。
9・Yolcu-Yoldas:Live:☆☆☆☆
   即興とおもてなし、双方の美学が結実した傑作。曲とインプロをバランスよく配置して、聴きどころだらけ。
   インプロビゼーションの素晴らしさと奥深さを堪能できる。
   即興的に作曲して瞬間的にアンサンブルを構築しつつ、馴れあわない。
   寄り添わずてんでに勝手にでも、もちろんない。全員がたっぷり音楽を溢れさせ、見事に溶け合った。

   shezooのバンド、トリニテの15年発表2nd。ミックスとマスタリングはメンバーの
   壷井彰久が担当した。他のメンバーは小森慶子と小林武文。
8・トリニテ:月の歴史 Moons:

   灰野敬二がドラびでお、ナスノミツルと結成のユニットが、10年に発表した
   デビュー・アルバム2枚のうちの片割れ。天知茂"昭和ブルース"(1973)をカバーしてる。
7・静寂:何があっても生き抜く覚悟の用意をしろ / You Should Prepare To Survive Through Even Anything Happens:☆☆☆★
   昭和歌謡で言うブルーズを灰野流に再解釈して、オリジナルな風景を作った。
   哀秘謡とは違うロック・バンドのスタイルにて絶叫タイプの歌を聴かせるコンセプトか。
   弾き語りのギターをバンドで補強とも思える。灰野の生きざまを見せつけた。

2018/2/10   注文したCDが到着。

   ロキシー・ミュージックの1stがレア・テイク満載のボックスで再発された。45周年盤。
6・Roxy Music:Roxy Music (45th Anniversary Edition):

2018/1/23   最近買ったCDをまとめて。

   17年発売。ジョン・ゾーンによるギターのみの現代音楽集。
5・John Zorn:Midsummer Moons:☆☆☆★
   硬質かつスマートな譜割を意識したギター・デュオ。清涼かつまろやかなムードは
   どこまでも精緻で美しい。何が起こるか不明なスリルよりも、隅々まで演出の美学を描いた。
   ゾーンのロマンティックなメロディがてんこ盛りな本盤は、とても間口が広い。いろんな人に聴いて欲しい音楽だ。 

   17年発売。ビブラフォンが入った室内音楽集、かな。
4・John Zorn:The Interpretation Of Dreams:☆☆☆
   涼やかで複雑だが、むやみに小難しくないのはメロディの力。
   近年のゾーンによる現代室内楽集。譜面のビブラフォンに即興のリズム隊な(1)と(3)で、
   弦楽五重奏の(2)を挟んだ。疾走しながらも完全な自由を与えず
   譜面やコンセプトで引き締める。ゾーンらしい理知的な楽曲群だ。

   短いスパンで発売された、ヴァン・モリソンの新作。
3・Van Morrison:Versatile:☆☆★
   ファン向けではあるけれど。寛ぎながら創作意欲は衰えてないヴァンが聴ける。
   ジャズを中心にコンボ・アレンジで歌った。サックスもけっこう吹いてる。
   独特の節回しをそのままに、気持ちよくスイングさせて歌うヴァンを楽しむアルバム。

2018/1/15   注文のCDが到着。

   Masada BookIIの第30弾で2017年発売。Garth Knox And The Saltarello Trioによる
   パーカッションとヴィオラ・ダ・ガンバ二挺、チェロの古楽で室内楽な編成。
2・John Zorn:Leonard: The Book of Angels Volume 30:☆☆☆★
   クラシカルな編成に打楽器の異物を足して、古めかしい異世界感を演出した。
   即興より譜面で細部まで追い込むアレンジっぽい。演奏の綻びでなく、
   整った構築美を楽しむ音楽が詰まった興味深い盤。

2018/1/13  ようやく到着した。

   5年ぶり。クレイマーの新作はビル・フリゼールをゲストに招いた、前作同様にユダヤ系作曲家による
    オールディーズのカバー集。とてもうれしい。今作もTZADIKから発売された。
1・Kramer:The Brill Building book two:☆☆☆☆
   クレイマーと60年代ポップス好きにこそ、もしくは「好き」にのみ楽しめる盤。しみじみと本盤は愛おしい。
   クレイマーが自分の音楽と、思春期に触れたであろうさまざまなポップスへの愛情が詰まっている。
   それでいて、どこかやっつけっぽい潔さも。この二面性がクレイマー及び、本盤の魅力だ。
   選曲はクレイマー流、フリゼールはどっぷり鳴ってるがお飾りっぽい。

2017年12月

2017/12/2   最近買ったCDをまとめて。

   ジョン・ゾーンの疑似バンドの一つSimulacrumによる第五弾、2017年発。
106・John Zorn:The Garden Of Earthly Delights:☆☆☆★
   緻密なメタル風味のジャズ・プログレ。即興を譜面風に扱う手法が研ぎ澄まされた。
   タイトルはヒエロニムス・ボスが1503年頃に描いた"快楽の園"から。
   短めの曲を並べて、多様な情報量を持つボスの絵を部分ごとに切り取り、緻密に構築で
   大きな一つの世界を描いたかのよう。
   アドリブの瞬発力も含めて、生き生きした緊張感を削がずに構築美が産まれた。

   2014年発売、これも疑似バンドのムーンチャイルド、第7弾にして最終作。
105・John Zorn:The Last Judgment:☆☆☆★
   SEやボーカルのダビングも投入して、疑似バンドのムーンチャイルドは
   バンド演奏のダイナミズムより、標題音楽の色合いが強まった。
   中世のおどろおどろしさを、見事に表現したジャズ・ロック風の室内楽。

   灰野敬二、ナスノミツル、一楽儀光のバンド、静寂が2015年に同時発売した
   2枚組2セットのうちのひとつ。2014年11月21日に秋葉原Club Goodmanでのライブ盤。
104・静寂:静寂の果てに:

   DABOがニトロをはじめとして、多彩なゲストを招いたコラボ盤、2007年発売。
103・DABO:DABO Presents B.M.W.-BABY MARIO WORLD-Vol.1:

   07年発売、ニトロの3rd。
102・The Nitro Microphone Underground:SPECIAL FORCE:

   09年発売、4thでニトロのラスト・アルバム。
101・The Nitro Microphone Underground:THE LABORATORY:

2017年11月

2017/11/8   最近買ったCD。

   ベックが"Morning Phase"(2014)年ぶりに発表の新譜。
100・BECK:Colors:☆☆☆★
   とことんポップに振り切ったベックのソング・ブック。あえてニューウェーブや
   90年代以降のポップスをオマージュで、逆説的に普遍性あるサウンドを作った。
   けれどもベックのフィルターは全開。きっちり自分の味わいを出してる。
   前衛をむやみに追わず、新たな挑戦よりも生きざまを素直に披露した。

   ジョン・ゾーン作曲によるジョイ・キャンベル(vc)をフィーチャーした現代室内楽集。
   TZADIKより2015年の発売。
99・John Zorn:Hen to Pan:☆☆☆
   ぱっと聴いたら混沌と超絶技巧の奔流に煽られる。しかし聴いてるうちに、
   緻密で緩急を意識した繊細な曲群と感じてきた。ドラム・セット入りの二曲が
   サンドイッチして激しい印象を残すが、本盤の本質は丁寧な現代音楽だ。
   小編成ゆえの細やかな作曲術がよくわかる。

2017年10月

2017/10/14  最近買ったCDをまとめて。

   ヴァン・モリソンの37枚目ソロとなる新譜が出た。"Keep Me Singing"(2016)以来と
   依然として安定かつ活発な活動を続けている。
98・Van Morrison:Roll With the Punch:☆☆☆★
    何と言うか、等身大。伸び伸びと好きなブルーズやR&Bをカントリー風味でカバーし、
   セルフ・カバーを含む自作曲を混ぜた。新曲は実質、3曲。
   肩ひじ張らない、ガツガツもしない。ビジネスを意識しながら楽隠居の寛いだ良いアルバムだ。

   85年のアルバム。このバンド名義で他に2作リリースがあるようだ。
   フレッド・フリスとのデュオで、当時のNYダウンタウン・シーンの面々が曲により
   ゲスト参加。すなわち、ジョン・ゾーン、クリスチャン・マークレー、など。
97・David Moss:Dense Band:☆★
   いかにも当時らしい、パンクでスカムな打楽器的で短い即興を収めた。
   モスらしいコミカルさが音像に余裕というか救いを与えてる。
   いまとなっては凄腕メンバーの若かりし勢いを味わう記録な盤の位置づけか。

   未聴のTZADIK盤をあれこれ。
   TZADIKでは馴染みのtp奏者。過去の映画や劇伴音楽を集めた。
96・Frank London:The Debt:☆☆☆
   93年〜95年の活動のまとめであり、提供作品の網羅や総括がコンセプトではない。
   曲調や編成は作品ごとにバラバラだが、怜悧なムードは共通してる。
   通して聴いて多様さは感じても散漫さは全くない。

   マーク・リボーのバンドが99年に発売の盤。
95・Marc Ribot/Shrek:Yo! I Killed Your God:☆★
   当時のNY風スカムなニューウェーブやパンクを経由した、奇妙なロック。
   確かなテクニックでひねくれたミニマル要素あるサウンドを提示した。

   現代音楽シリーズより。電子音楽と生楽器の作品らしい。02年発売。
94・Gordon Mumma:Live-Electronic Music:☆☆
   電子音楽の始祖の一人をベスト盤的にまとめた。淡々ながら冷淡でない隙間の多さが特徴か。
   かなりそっけないので、この手の音楽が好きでないと楽しめないかも。

   TZADIKで多数の盤に参加してるドラマーのリーダー作。03年の盤。
93・Ben Perowsky:Camp songs:☆☆★
   初のリーダー作。ユダヤ文化を踏まえた、タイトなリズムの安定感。
   アレンジのアプローチはTZADIKらしく驚きは少ないが疾走と制御がきれいに整ったコンボ・ジャズを楽しめる。

   ベテランなTp奏者に敬意を表してか、4枚組で過去音源をまとめた04年の盤。
92・Wadada Leo Smith:Kabell Years 1971-1979:☆☆☆★
   無伴奏ソロからコンボ編成まで。デビュー初期の変遷と、ぶれないコンセプトの
   双方が味わえる。多数の未発表曲も聴きごたえあり。ストイックなため聴く人を選ぶが
   とても貴重で興味深いボックスだ。

   フランスの電子音楽とパーカッションのデュオ。11年発売。
91・Mazal:Axerico en Selanik:☆★
   中世のユダヤ音楽を、テクノ風味に再現した独特なアプローチの盤。
   ユダヤ文化への蓄積や実感が無いため、上っ面で聴いてしまうが。本盤は決して
   流行狙いの薄っぺらい盤ではないと思う。音だけ聴くと、軽いビートと情感へ
   雪崩れすぎない女性ボーカルのバランスがいい塩梅でプロデュースされた。
   メロディの自己主張が強いためBGMには向かないが、異文化の味わいを一ひねりした
   アプローチで楽しめると思う。

   イクエ・モリとジーナ・パーキンスのデュオが、オーケストラ名義で
   7人編成のアンサンブルを披露した12年の盤。
90・Phantom Orchard Orchestra:Trouble In Paradise:☆☆☆★
   メンバーを拡大した3日間のライブから抜粋した盤。脈絡のない楽器編成で
   アンサンブルよりも個々人の存在や美意識を元にコミュニケーションの様子を
   残したドキュメンタリーのようだ。断片的だがかすかな調和を持った
   耽美的なサウンドが興味深い。

   ギター・トリオのジャズ。15年発売。
89・John Schott:Actual Trio:☆☆☆
   煮え切らなさ、が個性か。地元のベイエリアでベテラン二人をリズム隊に置いて
   ブルージーさを裏に持たせつつ、モゴモゴッと地を這うフレージングの、穏やかな
   エレキギターを弾く。地味だがじわじわ来る美味しさが滲むジャズだ。

   マサダBOOK IIの31弾で17年発売。ZION80やBanquet of the Spiritsによる
   BOOK IIにも参加したブライアン・マーセラがリーダーで、ピアノ・トリオ編成。
88・Brian Marsella:Buer:The Book Of Angels Volume 31: ☆☆☆
   全16曲、他の盤とカブりなし。ものによっては一分未満。あまり尺を取らず、サクサクと次々に曲をこなしている。
   端正だが強いタッチのしっかりしたジャズを繰り広げた。サイドメンはトレバー・ダンとケニー・ウールセン。
   演奏はやはり抜群にうまく、隙はどこにもない。

2017/10/1   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新作は、片面はCDでもう片面はレコードという変則パッケージ。
87・Merzbow:Hyakki Echo:

   ようやく手に入れた。清水一登、ナスノミツル、植村昌弘と凄腕ぞろいが2012年に結成、
   15年にリリースした1stアルバム。
86・Gilgongo:第一種:☆☆☆★14年4月11日のライブを丸ごと収録した。ライブゆえの少しヌケの悪いところあるが
   彼らならではの複雑なアンサンブルをまとめた。重たく超絶な演奏がさすが。

   "坂道のアポロン"でも名をあげた実質7thアルバム、かな。08年の発売。
   水谷浩章/外山 明が参加で興味をもって入手した。
85・松永貴志:地球は愛で浮かんでる:☆☆
   先入観もあるせいで、今一つのめり込めず。きれいな響きすぎて。
   二種類のリズム隊によるアルバムのメリハリは成立してると思う。

   藤原大輔や坪口昌恭が参加した、守家巧がリーダーのラテン・ファンクバンドによる
   1stアルバム。12年に活動を開始し、13年に本盤を発売。今は活動停止かな?
84・Rumba On The Corner:LIVE:
 
   吉田達也が率いる山本精一・勝井祐二・鬼怒無月・ナスノミツルとプログレ界の
   ドリーム・バンドが16年に発売した300枚限定のライブ盤。
83・The World Heritage:The Land Of Light:☆☆☆★
   ポリリズミックな疾走がとてもスリリング。安定した予定調和の即興だが
   たんなる手癖の応酬に終わらぬところがこのバンドの凄いところ。
   アドリブが次々繰り出され、それでいて破綻しない。

2017年9月

2017/9/23   最近買ったCDをまとめて。

   山下達郎の50枚目のシングル。珍しく自分がプロデュースしないアレンジ曲を
   数曲入れたEP形式だ。達郎としてのカップリングは最新ライブからの音源2曲とカラオケ。
82・山下達郎:Reborn:☆☆☆★
   タイトル曲は静かなバラード。ハーモニーの足し方、エンディングの泣きギター・ソロなど
   過去の達郎らしからぬアレンジ仕立てが興味深い。ゆったりした
   メロディは溜めて膨らます歌声にぴったりで、沁みる。たぶん聴くほどに味わい深くなる。

   水戸に2012年開店のスタジオ&ライブ・スペース、コルテスが藤井郷子の才能に惚れ
   自主レーベルを作った。これは第二弾。藤井と田村夏樹、井谷亨志に太田惠資による
   カルテット編成で、16年12月22日にコルテスで行われたライブを収録。
81・藤井郷子カルテット:Live at Jazz room Cortez☆☆☆★
   静かで豊かなインプロの長尺2曲。(1)は滑らかに、(2)はじっくりとソロが展開する。
   アンサンブル志向で決して我を張らない。だが個性はたっぷり。
   即興巧者ならではの充実した演奏がきれいに録音された。

   Bozoが05年にリリースした3年ぶりの2ndアルバム。EWEが15年に破産のため
   改めて入手しようとすると、けっこう手間取る。
80・Bozo:Duende:☆☆☆☆
   とろける自由なアンサンブルの妙味が堪能できるジャズ。
   津上はつわもの三人と見事に馴染んで、素晴らしくとろける繊細で
   つかみどころ無いグルーヴをたっぷり披露した。

2017年8月

2017/8/30   新譜が到着。

   今年2枚目のGbV新譜が発表された。
79・Guided By Voices:How Do You Spell Heaven:

2017/8/10   最近買ったCDをまとめて。

   アシッド・マザーズ・テンプルの派生ユニットで、ブラック・サバスをテーマに
   結成したユニットの2013年発表、1stアルバム。
78・Acid Mothers Temple And Space Paranoid:Black Magic Satori:☆☆☆
   ひときわ低く重たいハード・サイケロックを追求した。(3)はサバスのカバー。
   ロックの様式を逸脱しすぎず、ギター・ソロが吼えながらもインプロ一辺倒にはならない。
   まさにヘビメタでなく、ハード・ロックが好きな人のほうが楽しめそう。
   シンセの入るAMTサウンドながら、明確にアプローチを異ならせる、河端の才能が凄い。

   エルメート・パスコアールが80年に発表のアルバム。ソロやデュオ、カルテットなど
   さまざまな編成で録音した作品を集めた。
77・Hermeto Pascoal:Cerebro Magnetico:☆☆☆★
   乾いた抒情性とメカニカルな情感が飛び交う、ごたまぜのスッキリ見通せた奔流な盤。
   多重録音ならではの明確さと、奔放に音を遊ばせる自由度が混在した。
   難解では無いのに、聴くたびに新たな発見がある。

   NYで69年結成のボーカル・グループが5年ぶりに84年発表した6th。
76・Black Ivory:Then And Now:☆☆
   力任せな歌い方がいなたいディスコ・アルバム。この時代にしては古臭いアレンジだ。
   妙に時代を追わず、自分の美学を貫いたということか。

   16年に77歳で他界したラッパーの遺作、下品な歌詞が売りらしい。16年の発売。
75・Blowfly:77 Rusty Trombones:☆★
   ラッパーと言うより下品なオヤジのブルーズ芸人って感じ。70年代ソウルの替え歌を
   数曲織り込みながら、にこやかにエロ歌詞をがなり立てた。
   音楽云々よりパーティでの芸を楽しむものなんだろうな。

   マンハッタンズの73年と74年のアルバムをKentが2in1でリイシューした04年の盤。
74・The Manhattans:There's No Mean Without You / That's How Much I Love You:☆☆☆☆
   後年に比べたら若干は荒っぽくいなたい。しかし既に甘くスタイリッシュな香りがある。
   1st、2ndともいがいと捨て曲無し。じっくり楽しもう。

   ミシシッピ州出身、黒人シンガーが73年にリリースの2nd。
73・Mike James Kirkland:Doin' It Right:☆☆☆★
   埋もれた良い盤。いなたさ漂うメロウさがふくよかに広がった。ニュー・ソウル好きは聴いて損ない。

2017年7月

2017/7/2  注文してたCDが到着。

   メルツバウの新作はduenn、Nyantoraとの共演で、素材を各自がミックスしたアルバム。
72・MERZBOW/duenn/Nyantora:3RENSA:

   これも今年の発売。16年の5〜10月と比較的長期にわたる録音作品を収めた。
71・Merzbow:Aodron:☆☆☆
   重低音の圧迫は控えめで、ミニマル要素の強いアルバム。シンセと機械仕掛けの
   ハーシュが混在する。個々の分離がくっきりとデジタルに聴き分けられ
   爽快で痛快、意外と聴きやすいノイズだ。

   本来16年に出てもおかしくなかったが、発売は今年。限定200枚。
70・Merzbow:Gomata:☆☆☆★
    抹香臭くはない。ハーシュ・ノイズだ。しかし尖ったところはいくぶん控えめ。
   雄大な楽想の作品が4曲。刺激は多いが、メルツバウ流の瞑想サウンド、か。
   押しつけがましい暴力性や破壊衝動は皆無、慣れればゆったりと楽しめる。どんな音量でも。

   膨大なリリースを延々と続けるヘア・スタイリスティックスの自主製作177枚目。
   いったい一枚当たり、何枚製作だろう。作品はA4カラー印刷に包まれた白地のCD-R。
69・Hair Stylistics:Legend Style of Rock:☆☆☆
   たんたんとベースがサンプリングされ、ときおり電子音や昭和っぽいコラージュが
   まざる。ごくシンプルな構造が30分弱、中盤でいったんの変換を行うのみで
   ミニマルに繰り返された。なのにインダストリアルな重苦しさはなく、むしろ
   怠惰な寛ぎがふんわりと奏でられる。この独特な空気感がヘアスタっぽい。

2017年6月

2017/6/24   注文したCDが到着。

   ついに出た。パープル・レインのリマスター再発盤。生前のプリンスが立ち会ったらしい。
   当時のシングルや未発表曲も収録と何とも豪華な作品。当時のライブDVDつき。
   この調子で他のアルバムも再発プロジェクトが、プリンス主導で進んでたらなあ・・・。
68・Prince:Purple Rain(Ultimate Collector's Edition) :

   タワレコ独自規格で発表された廉価盤10枚組。メジャーからマイナーどころまで
   リヴァーサイド原盤のピアノ・ジャズに着目し、19枚のLPを10枚の収めた。
   最近、発売されたばかりのコンピ。ダブりが悩ましいが、本盤のみで手に入れられる
   レア盤もあるので、なんだかんだでこういう企画の続編が続いて欲しい。
67・V.A.:Sunday at the Riverside:

2017/6/11   新譜が到着した。Amazonでも、予約だと発売日に着ではないのだな。

   菊地成孔と大谷能生によるラップ・デュオが四年ぶりに2ndの新譜を出した。
   トラックは二人が数曲を作成。あとはペン大の卒業たちらしい。客演は
   彼らゆかりのOMSBや菊地凛子、ICIに加え漢 a.k.a. GAMIまで招いた。
66・Jazz Dommunisters:Cupid & Bataille, Dirty Microphone:☆☆☆☆
   日本語の持つ奇数拍子のうねりを、ラップから語りに軸足を置いてクールに決めた傑作。
   低い谷王のスマートさと、N/Kのちょっと甲高いスムーズさ。リズムとグルーヴを踏まえつつ
   語りの持つ淡々とした冷静さを見事に魅力へ仕立てた。

2017/6/7   最近買ったCDをまとめて。

   ロバート・ポラードの関連盤では100枚目の作品になるとか。
   GbVの新譜はアナログでは2枚組のボリューム、17年4月の作品。
65・Guided By Voices:August By Cake:

   元GbVのキーマン、トビン・スプラウトの7年ぶりなソロで17年1月の発表。
64・Tobin Sprout:The Universe And Me:

   ロバート・ポラードが参加ユニット、サーカス・デヴィルズの解散作品で17年2月のリリース。
63・Circus Devils:Laughs Last:☆☆☆★
   有終の美にふさわしい完成度なアルバム。ポップさを意識して、トバイアス兄弟とボブで
   丁寧に制作された。投げっぱなしメロディの奔放さをそのままに
   楽曲がそれぞれ、それなりにきちんと成立してる。38分17曲の詰め込んだボリュームで。

   エルドンのリシャール・ピナスが吉田達也やメルツバウと共演した
   15年のスタジオ作品で、16年にリリースされた。
62・Richard Pinhas/吉田達也/Merzbow:Process And Reality:☆☆
   電子音と吉田達也流の激しいドラムが交錯する面白さはある。しかしメルツバウ目当てだと
   なんとも凡庸で過激さの無いアルバムだ。ピナスの作品に素材でメルツバウや吉田が
   参加と取れば、そう悪くもないアヴァン・プログレな作品。

   ほぼ月刊リリース状態なジョン・ゾーンが16年8月に発表した
   室内楽作品を集めた盤。
61・John Zorn:Commedia Dell'arte:☆☆☆★
   まったくアレンジの違う5曲を集めて、組曲として16世紀イタリアの大衆演劇"コンメディア・デッラルテ"を模した。
   とっちらかりぶりとスピーディな跳躍の現代音楽ぶりを基調に
   スリリングなジャズ風味も混ぜてバラエティ豊かな世界を作った譜面の作品。

2017年5月

2017/5/21   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜は自らの未発表音源を秋田昌美がミックスしたCD。
60・Merzbow:eureka moment:☆☆☆★
   ダンス・ビートに寄ったシンプルな展開が新鮮で楽しい。ノイズが主軸ながら
   フロア対応を狙ったような明確なリズムとすっきりしたミックスで、ビックリする
   ポップなアルバムに仕上がった。新境地だ。

   ジョン・ゾーンが仕切った疑似バンドのひとつで、オルガン・トリオ。15年の発表。
59・John Zorn:Simulacrum:☆☆★
   メタル寄りのハードなプログレ風。重たいエレキギターのリフを飾りに
   オルガンが奔放にかける。ドラムもどちらかと言えばロック寄り。
   キメが多いサウンドは特にギターが、ジョン・ゾーンの指揮のくびきから逃れきれていない。

   80年代以降にプリンスのバンドでサックス奏者だったエリック・リーズの1stソロ。
   プリンスが製作に大きく関与した91年の盤。
58・Eric Leeds:Times Squared:☆☆★
   プリンスにしては駄作、かといってプリンスの色もあり。エリック・リーズが
   スムーズ・ジャズ風に解釈したため、今一つ煮え切らないところはある。
   だが(11)を筆頭にプリンスらしさもそこかしこ。諸手を上げないが、マッドハウスの
   鬼っ子としてなら、意外に楽しめる盤だ。

   林栄一の初リーダー作で90年にオーマガトキから発売された。
57・林栄一:Mazuru:☆☆☆★
   2ベース、2ドラムの変則アンサンブルを取りながら、編成の新規さに頼らない。
   トリオ、カルテット編成と数曲で違うスタイルも見せるが、あまりアレンジの妙味を前面に出さない。
   あまりサックスを軋ませず、滑らかに明るい色合いでアドリブを取った。
   キャリアを積んだ引き出しの多さと、スマートさを出すまっすぐな青白いサックスが味わえる。
   妙にリバーブの多い音像に時代を感じるが、サウンドは古びない。
   スピーディで鋭くも温かい林のサックスが堪能できる。若さならではの勢いもあり。
   オリジナル曲を並べ作曲家の主張も行う。若いが力任せに頼らぬとこが貫禄か。

   林栄一と冨田一夫のユニットによる2014年の1st。
56・キャトルバンド:猫のおしゃべり:☆☆★
   林はフリーキーさを抑え、ロマンティックなサックスを吹く。
   尖り具合は抑えめ、聴きやすいジャズに仕上がった。逆に林の楽曲が持つ
   メロウさをじっくり楽しめる盤ともいえる。

2017/5/2   最近買ったCDをまとめて。

   元メン・アット・ワークのコリン・ヘイによる新譜。
55・Colin Hay:Fierce Mercy:☆☆☆☆
   多様なアプローチと力のこもったミックスで、円熟の枯れ風味から一歩突き抜けた
   躍動感を感じる。自宅スタジオにナッシュヴィル風味を足して、カントリー・ロックを
   基調ながら、もっとポップで硬質な響きを聴かせる。まだヘイは現役感がある。そんなアルバム。

   ジャズのブレイクビーツで再構築の第二弾な新譜。
54・大谷能生:Jazz Alternative: ☆☆☆★
   密室的なDJブレイクビーツ。ビート性は希薄、ラップも一曲のみ。むしろ音楽を
   切り刻み混ぜることに軸足を置いた。スノビズムは無く、淡々と面白がってクールに
   トラックが作られた。無邪気さと大胆なアイディアのアプローチが楽しい。

   日本に三か月在住の中で作った03年のアルバム。日本盤は2曲ボートラ付き。
53・Momus:Oskar Tennis Champion:☆☆★
   デカダンまで行かぬ日本の裏さびれた情緒と、テクノ・ダブ的な電子音ノイズが重なり、なんとも雑駁な世界が描かれた。
   前半は明るく、中盤から次第に沈鬱なモーマスの世界が前に出てくる。

   公式100枚目にしてザッパ生前監修の最終作と言われるシンクラヴィア・アルバム。
   2015年にリリースされた。

52・Frank Zappa:Dance Me This:☆☆☆
   複雑なシンクラヴィア音楽ではある。けれど聴き手を意識して混沌だけに終わらない
   すっきりしたポップさがそこかしこに滲んだ。エレキギターやホーメイなど
   生楽器と足した要素もあり。要素、で終わってしまうのが残念だが。
   けれど鋭角に上下する音符や変拍子だけでなく、和音感までもザッパ流のシンクラヴィア・サウンドなため
   確かに難解ながら、素直に本盤は楽しめた。

2017年4月

2017/4/26   某ネット中古屋が閉店セールであれこれ購入。

   村上秀一と佐山雅弘のデュオになり、NY録音でアンソニ−・ジャクソンとウィル・リーが
   ベース、他にもゲストを迎えた新境地な01年の盤。
51・PONTA BOX:Nypd:☆★
   村田陽一を全面的にプロデュースに立て、ポンタは一歩引いた感あり。
   アドリブやテクニックのひけらかしよりも、プログレ的な構築美をアルバム全体でみせた。
   変拍子の複雑な楽曲がびしばしと決まる。

   ドイツのインスト・ユニット、クスコの4th,84年の盤。プログレやフュージョンでなく
   BGMやニューエイジ系に分類される、穏やかな音楽。
50・Cusco:惑星旅行(Planet Voyage):☆★
   スペイシーさと中南米へのエキゾティシズムが混在する世界観。シンセなA面と
   ギターが活躍するB面って構図か。グルーヴ感を敢えて抑え、拍頭をきれいに叩く
   まっすぐなメロディは気恥ずかしいほど真摯だ。クラブ対応のビート性や
   ヒーリング狙いの白玉応酬みたいに、市場狙いの要素はない。
   今となっては古臭くもあるけれど、インスト音楽として丁寧にアレンジされている。
   もうすこしビートがファンキーならばなあ。どうにも野暮ったい。

   イギリスのダブ・レゲエのバンドが00年に出したベスト盤。
49・UB40:The Very Best Of UB40: 1980 - 2000:

   17thアルバム、フィリップ・ベイリーが復帰の96年の盤。
48・Earth, Wind & Fire:Avatar:

   日本のユニットno.9が6thアルバムとして、09年に発売。
47・no. 9:http://9-9-9-9-9.com:☆☆★
   Webコンテンツと連動した企画の盤ながら、すでにサイトが死んでるため、片手落ちで楽しむ羽目になった。
   テクノから生音エレクトロニカまで楽曲ごとに幅広いアレンジを持ち、
   コンピのような多彩さを見せた。それでも強烈な自己主張がなく、するすると
   音楽は耳の中を滑っていく。これはこれで気持ちいのだが。

   下品な歌詞で一世を風靡した西海岸のラップ・グループ、6thな91年の盤。
46・The 2 Live Crew:Sports Weekend (As Nasty As They Wanna Be Part II):☆☆
   カラッと明るいリズム感のマイアミ・ラップ。歌詞がわからないと面白みは半減っぽい。
   ただし歌詞を読まずに聴いてるが、シンプルなトラック構成ながら豊富な
   スキットを入れて飽きない作りになっている。サービス精神を忘れぬ
   軽快なビートが続いて楽しい。スキットの多さがリズムの寸断に繋がり、逆にBGMに
   向かない場合もあるのだが。予想以上に面白かった。

   こちらは90年の5thアルバム。タイトル曲でボスの曲をサンプリングした。
45・The 2 Live Crew:Banned In The U.S.A.: The Luke LP:

   72年のアルバムで、ジミー・クリフなどが参加したサントラ。
44・OST:The Harder They Come:

   スティーヴ・ガッドら凄腕ミュージシャンのユニット、スタッフが80年のアルバム。
43・Stuff:Live In New York:

   イギリスの黒人歌手が93年発売の8thソロ。
42・Billy Ocean:Time To Move On:
   売れ線まっしぐら、レゲエ導入と多様なプロデューサーを立てて癖のない
   ダンスビートを強調した。今となっては硬いデジタル・ビートが古臭い。
   メロディは悪くないが、聴き流してしまう。(2)(8)が印象に残った。

   フィラデルフィアの超有名コーラス・グループによる14曲入りの廉価盤ベスト。
   ヒット曲を並べた日本盤だが、93年のドイツ編集が原盤らしい。
41・The Stylistics:Setting the scene:☆☆
   画竜点睛を欠くが、手っ取り早くヒット曲を楽しむには適切なベスト盤。
   "Betcha by Golly, Wow"の未収録が惜しい。
   時系列に拘らず、3レーベルにわたる初期〜中期の活動をシングル並べて
   概観できる、初心者向けの選曲なのに。

   超売れ線をとことん追求した大ヒット作、5曲のシングルが切られた86年の盤。
40・Genesis:Invisible Touch: ☆☆☆★
   ポップに魂を売り果たした盤と、ずいぶん聴き返さなかった。しかし20年ぶりに
   本盤を聴くと、確かにキャッチーなメロディに溢れた一方で、演奏やアレンジにもずいぶん
   こだわり倒した盤と印象が変わった。売れ線にガツガツせずプライド持って
   ジェネシスのサウンドを虚心に作り、それが優美に昇華された傑作。売れ線にも、マニアックにも聴ける。

   88年のアルバムで、本作の直後に"Covers"の製作に入る。LPでは二枚組の
   大ボリュームなアルバムな印象あり。CDでは1枚に収まるサイズ。
39・RCサクセション:Marvy:

   21世紀のサーフ・ミュージックに分類されるジャック・ジョンソンの2ndアルバム。
38・Jack Johnson:On and On:☆☆☆★
   穏やかでシンプルなコンボ編成の、寛いだロック。最小限のアレンジで寛いだ間のかっこよさを描いた。
   鼻歌みたいな歌声を筆頭に、覇気やギラギラした熱気はない。けれど手抜き感は皆無。
   溢れる才能を無邪気に切り取ったかのよう。特にアコースティックなアレンジに
   本盤の魅力があるけれど、レゲエ風味にカッチリとロックに決めた(2)も良い。

2017/4/23  最近買ったCDをまとめて。

   "猫の時節"(2011)から5年ぶり、2016年発売。山口コーイチが加わりカルテットになった。
37・川下直広カルテット:初戀:

   07年発売のシングルで、岡村靖幸が書き下ろしで2曲を提供した。
36・桜塚やっくん:あせるんだ女子は いつも 目立たない君を見てる:

   声明・グレゴリオ聖歌・雅楽・クラシックピアノと宗教横断で作られた音楽。
   前から探しており、ようやく入手できた。00年の発売。
35・橘雅友会/聖グレゴリオの家聖歌隊:命響:☆☆
   グレゴリオ聖歌と声明、読経を混ぜる大胆で奇妙な企画。ギャグやコンセプト先行でなく
   あくまでまじめに多様な文化を並列にした。グレゴリオ聖歌と読経が並列な
   DJミックスめいた場面が圧巻だ。特段の信仰を持たないからこそ、逆に本盤は
   異様な非日常性が興味深く聴けた。

   忌野清志郎、細野晴臣、坂本冬美で91年に唯一残したアルバム。
34・HIS:日本の人:☆☆☆★
   昭和臭漂う演奏とコブシの回しっぷりが特徴的なポップス。カバーがほとんどと
   思わせて、実質はほとんどが清志郎のオリジナル。細野は一歩引いて
   音作りに注力した。ギターやパーカッションを除いて、ほとんどが細野の
   多重録音。三味線まで弾く多彩さをみせた。異質な才人三人が集まったユニークな盤。

   NYダウンタウン・シーンのミュージシャンをバックに99年録音の作品。
   クレヅマー、アジア風味など梅津らしい文化混淆ぶりを発揮しつつ、ストレートなジャズを披露した。かなり梅津の着眼点は先駆だ。
   本盤参加のケニー・ウールセンがゾーンの盤に参加は"Filmworks VIII: 1997"(1998)あたり。
   ウールセンを起用しラウンジ系の音楽を大量に発表は相当に先。当時は"Taboo and Exile"(1999)の頃だ。
33・梅津和時:Pandora's Cocktail:☆☆☆★
   梅津のサックスの美しさと、リーダー・シップの鋭さをしみじみ感じるアルバム。
   各人に自由なスペースを与えつつも、きっちり楽曲は短く成立している。
   コンパクトで世界各地の文化を貪欲に吸収して、多国籍なグルーヴをコンパクトにまとめた。

2017年3月

2017/3/18  注文したCDが到着した。

   83年にカセットでリリースした音源。12年のリマスター版でロシアのレーベルから
   500枚限定で再発された。なぜか過去は五部作だったのが四部作へ構成変更あり。
32・Merzbow:Escape Mask:

2017/3/8   最近買ったCDをまとめて。

   Zeitkratzerは08年に"Electronics"の同名で3タイトル同時リリースした。
   そのうちの一枚で、共演が灰野敬二。05年独と06年オーストリアのライブ音源を収録。
31・Zeitkratzer+灰野敬二:Electronics:☆☆★
   灰野はゲストとして強烈な存在感を出し、ぐいぐいと音楽を引っ張った。
   前半2曲はハイトーンのボーカル、(3)がエレキギターで(4)がドラムと
   楽曲ごとに明確な立ち位置を定義して、ある意味わかりやすく灰野の音楽をZeitkratzerと混ぜている。
   アンサンブルとしてZeitkratzerはモヤっとした音像を作り、全員と相互混沌なバトルではない。
   ミックスがオーディエンス録音みたいなモッサリした響きで、個々の楽器がどうも聴き取りづらい。
   ライブを聴いてる臨場感はあるのだが。

   たまたま知って気になった。イタリアの歌手で5th,2016年のアルバム。
30・Giorgio Tuma:This Life Denied Me Your Love:

   TZADIKから初のソロで03年に発売。チャイナをゲストに招いて製作のスタジオ録音。
29・山本精一:Nu Frequency:☆☆☆★
   音が飽和せず寛いだ混沌で魅せる。凄い。各種楽器をダビングで即興を作り上げた。
   チャイナは数曲だけ、ほぼ山本の多重録音。無秩序で自由な世界が、
   破綻無く淡々と複数楽器で紡がれた。精神世界のスケッチみたいな奔放さと
   複数の楽器がぶつかった破綻をさせない構成力のバランスが驚異的だ。
   思い切りぶっ飛んだアルバムではあるが、聴きやすい。

   12年に発売した10thアルバム。
28・ROVO:PHASE:☆☆☆★
   バラエティに富み、かつライブのダイナミズムをがっつり封じ込めた。
   (4)や(5)ののどかな世界観が、ROVOの新機軸。寛ぎながらもミニマルに酩酊感を出す。

   菊地成孔がプロデュースした13年発売の1stアルバム。
27・けもの:LE KEMONO INTOXIQUE:☆☆☆
   静かなボーカル・アルバム。けれど引き算のアレンジが冴えており、聴くほどに味が深まる。
   エレピの華やかで浮遊する危うさが、本盤のムードを象徴化した。菊地のサックスもあちこちで聴ける。

   CD持ってたはずなのに、どっかいってしまった。86年発売、
   ストーンズの存続が一番危うかったともされる時期のアルバム。
26・The Rolling Stones:Dirty Work:

   こっちは聴きそびれてた。もう10年以上前か。05年発売のスタジオ盤。   
25・The Rolling Stones:A Bigger Bang:☆☆☆★
   "現役感"をくっきり出し、コンボ編成のロックにこだわった。メロウなメロディも
   ブルーズ感もあり、ミックとキースでパーソナルに作ってる。
   むやみな背伸びをせず、地味にもならない。いい感じのバランス感覚できっちりと
   仕上げる、二人の紆余曲折を超えた強固な信頼関係が伺える。
   音楽としても70年代ストーンズ・スタイルを下敷きに期待をそらさない。予想以上に良かった。

   プリンスがらみで入手。これは93年に出た2ndプレス版で、曲目が初版と異なる。
24・Jevetta Steele:Here It Is:☆☆
   やはりキラー・チューンは"Calling you"。プリンスがらみの曲はどちらも、えらくポップな作り。
   やはりプロデュースしたレヴィ・シーサーJr.のわかりやすさが前面に出たか。
   

   ペイズリー・パークから発売。ギターでプリンスが参加とのうわさもあるが、
   はっきりとは分からない。夭逝したため89年発売、唯一のアルバム。
23・Tony LeMans:Tony LeMans:☆☆★
   プロデュースしたスクリッティ・ポリッティのDavid Gamsonが、いかにもな
   デジタル・シンセの硬質さを多用したテクノなソウルに仕上げてる。
   多重ボーカルを使うセンスはプリンスっぽいが、やけに硬い歌声がいまいちつかみどころ無い
   つるっとした仕上がりに。うっすらと楽曲やコーラスのセンスにプリンスの色も感じるのだが。

2017年2月

2017/2/16   最近買ったCDをまとめて。

   菊地成孔が作曲を担当したガンダムのOSTをようやく入手した。2016年の発売。
22・OST:機動戦士ガンダム サンダーボルト:

   菊地雅章関連の盤を、何枚かまとめて入手した。
   菊地と富樫のデュオで、71年の録音。3曲でゲイリー・ピーコックがゲスト参加した。
21・菊地雅章 & 富樫雅彦:Poesy:☆☆☆★
   ピアノの抒情性と鋭いパーカッションが、バトルでなくメロディアスかつフリーに
   音楽を柔らかく丁寧に紡いだ。対話なんて安直な構造じゃない。もっと深い関係性だ。
   ベースが入ると邪魔になりそうだが、実に距離感を心得つつ深みをアンサンブルへ増す。
   このトリオ構造も良い。三人三様、むやみに頼らず甘えない、素晴らしい音楽だ。

   78年の盤でマイルス・バンドにいたアル・フォスターが、菊地や
   マイケル・ブレッカーなどをサイドメンに迎えた。プロデューサーがテオ・マセロ。
20・Al Foster:Mixed Roots:

   ゲイリー・ピーコックの1stリーダー作。菊地と村上寛によるピアノ・トリオ編成。
19・Gary Peacock:Eastward:☆☆☆★
   時代を考えると斬新なフリー・ジャズ。耽美なピアノをベースが奔放に遊ばせる。
   生真面目なドラムが拍を係留するが、ちょっとリズムの遊びで一気にサウンドは自由さを増す。
   敢えてスタンダードを廃したことで、透徹で伸びやかな即興のやり取りが明確になった。

   2ndソロ作で、菊地、富樫、村上寛がサイドメンを務めた。71年の発売で東京で録音。
18・Gary Peacock:Voices:☆☆☆★
   ぐっと美しい傑作。前作でのコンセプトが鋭利に絞られ、流麗で耽美なフリージャズが広がる。
   富樫の軽いビートと、重たい村上のリズムに挟まれて、鍵盤とベースが奔放に動いた。
   だが主役はあくまでベース。がっしり中央の芯材として陣取り、
   アンサンブルをがっちり支えてる。

   山下トリオを結成して25年に吹き込んだ、ニューヨーク・トリオでの94年アルバム。
17・山下洋輔:Ways Of Time:☆☆★
   往年のスリルやパンチ力を期待したら、当然ながら拍子抜け。そもそも過去の
   熱気を再現しようなどと、誰一人思っていない。若かりし破壊衝動を秘めた
   日本人のフリージャズのパワーを、円熟した山下自身とジャズをリアルに浴びてきた
   アメリカ人が、どう解釈するか。それが本盤の狙いだ。
   ソロ回しや長尺のインタープレイは無い。エッセンスのみ抽出して、短時間で細かい
   インタープレイがやり取りされる。ゲストのホーンふたりも、お仕事で無難に
   終わらせはしない。そつがない一方で、しっかり芯を込めている。
   山下トリオのブランドを期待するだけに、どうにも諸手を挙げて称賛しづらいが、
   これはこれで、山下の人生過程を興味深く聴ける一枚だと思う。
   でも、聴くなら本盤じゃなくて山下トリオのほうが迫力あるよ、と蛇足を言ってしまうのがつらいとこ。

2017/2/4  最近買ったCDをまとめて。

   GbVのロバート・ポラードが久しぶりにダグ・ギラードと組んだ
   新バンドの1stで2016年の発売。
16・ESP Ohio:Starting Point Of The Royal Cyclopean:☆☆☆★
   録音のメンバーが違うせいか、全曲ボブの作曲なのに少し洗練された気がする。
   突飛な跳躍は変わらないが、わずかにバンド・サウンド的に仕上がった。
   スピードを控えてメロディの甘さに軸足置いた、ザクザクと刻むミドル・テンポのロックが並ぶ。

   副題は"The 21st Century Hard-Y-Guide-Y Man"。
   08年にPSFから出たハーディ・ガーディのソロ。
15・灰野敬二:こいつから 失せたいための はかりごと:☆☆☆★
   聴き進めるうちに、凄さが分かる。ハーディ・ガーディから出せる音、へ徹底的にこだわった。
   既存概念も固定観念も吹き飛ばし、ドローン手法を軸に電気仕掛けとアコースティック、
   双方のアプローチで多彩な音域を出すさまに驚ける。
   確かに取っつきは悪い。ノイジーな軋みの持続でいきなり幕開けして、聴く人を猛烈に選ぶ。
   しかし耳を澄ませて、心を開いてハーディ・ガーディからどんな音を出すのか想像しながら
   聴くと、とても面白い。尽きぬアイディアと真摯さを、楽しめるはず。

   奇人モーマスがJoe Howeと組んだ08年のアルバム。
14・Momus:Joemus:☆☆★
   チープなエレクトリック・ポップ風味。爛れたモーマスの世界が漂い
   ひねったポップ志向が前面に出た。どこか賑やかなビート性がジョーの手柄か。とはいえジョーは添え物に留まる。

2017年1月

2017/1/28   最近買ったCDをまとめて。

   "Simulacrum"(2015)から始まった疑似バンドのオルガン・トリオによる3rd。これも15年中に発売された。
13・John Zorn:Inferno:☆☆★
   コンパクトでパンチの効いた、バラエティ豊かなプログレ寄りの熱いインスト・トリオ。
   力押し一辺倒でなく、長尺の(4)では緩急も聴かせた。とはいえ変拍子でびしばしと
   キメ倒すところが、このユニットの痛快な魅力だ。

   97年にJ-Factoryから同時4枚発売のひとつ。
12・灰野敬二:息をしているまま:☆☆☆★
   エレキギターの弾き語りで、オリジナル曲のアルバムに仕立てた。昔からの
   レパートリーをのびのびと、しかもコンパクトにまとめてる。轟音と静寂、
   メロディアスと棒、両極端の立ち位置が無造作に収められた。灰野の多様さと
   振り幅の広さをシンプルに味わえる。だからこそ聴きこんだ人、向けか。
   轟音ワイルドなパブリック・イメージに、繊細さも加えた味わいがある。

   96年発売、バール・フィリップスとの共演盤。
11・Barre Philips & 灰野敬二:Etchings in the Air:☆☆
   灰野は言葉でなく叫びをぶつけた。激しく高らかに、低く重たく。
   バール・フィリップスは奔放なベースで受け止め、釣られず独自の世界を紡ぐ。
   時に灰野に応えボーカルで応酬も。まじめなインプロが隙間多くアコースティックな
   展開で広がった。どこまでも真剣で、自由だ。

   モーマスの作品を何枚か入手。これは97年発売のロンドン録音。
10・Momus:Ping Pong:☆☆★
   猫なで声とチープなサウンドで投げっぱなしの内省的な退廃ポップスを次々に噴出させる
   モーマスの世界観が本盤あたりから変化した。デカダニズムは孤高に変わる。
   しかしまだ楽曲はきちんとアレンジされ、作品として仕上げる気概は残ってる。
   とりとめない世界だが、内省的な小宇宙はしっかり描いてる。

   デモや提供曲のセルフ・カバーなどの編集盤っぽいソロ。96年発売。
9・Momus:20 Vodka Jellies:☆☆★
   蔵出しレア曲集。デモやB面曲など、寄せ集めだが愛おしいポップス集。
   後年に比べればアレンジもよほど作りこまれてる。全体的に明るいムードが漂った。

   NY録音された00年のソロ。同年のNYで展示を元に作成された。
8・Momus:Folktronic:☆☆
   沈鬱なムードがアルバムを覆う。デジタル・シンセの薄く安っぽい響きを基調に
   たまにギターを混ぜた。トラッドやカントリーに目配りしつつ、音域をぐっと下げ
   淡々と歌うモーマスの即興的な曲が20曲詰まった。決して投げやりではないが、曲調は重い。

   共演名義で04年にベルリンで録音のアルバム。モーマスは歌に徹した。
7・Momus & Anne Laplantine:Summerisle:
   非常に聴く人を選ぶ。心構えと覚悟もいる。落ち込んでるときだと、この音楽の闇に
   呑み込まれるだろう。簡素で断片めいたローファイな電子音と、たまに響くアコギ。
   素朴なエレクトロニカなサウンドは、決して統一や気概は無くアイディア・スケッチ集のごとく響いた。
   淡々と音列が無秩序かつ退廃的に連なる。物語性をほぼ、放棄して。
   モーマスの堕落な美学を笑って楽しめ、テクノの危さを気軽に咀嚼できる
   気概と体力を踏まえて本盤を聴いたら、へんてこな世界観の夢幻を楽しめるはず。

   日本に居を移し大阪で録音した13年の盤。
6・Momus:Bambi:
 
   充電期間を経て89年にNYトリオ結成、初のアルバム。
5・山下洋輔:Crescendo: Live at Sweet Basil:☆☆☆★
   過去の山下ブランドを投げ捨て、より洗練した大人のフリージャズを見事に描いた。
   スタイルはそのままに、乱雑さや熱狂を洗練と円熟に仕立ててる。
   破壊から再構築へ。ジャズを咀嚼し、相対し、アメリカの伝統に向かい合って
   誠実に山下流のジャズを作り上げた一枚。ジャズ全体の先駆から、新たな山下ジャズへときれいに転換した一枚。

   元はスパイシー・デボラ名義からバンド名を変えた01年の1st。作曲はすべてshezooが務めた。
4・Quipu:Grace:☆☆☆★
   崩れ落ちそうな切ない危うさを、強固な音楽できれいに輝かせた。
   Triniteに続くshezooの美学が見事に炸裂した傑作。繊細でシンフォニックな風景を
   シンプルなアレンジで演出するさまが、ほんとうにすごい。

   Penn Jilletteとクレイマーのユニットによる4年ぶりの2ndで、98年にシミーから発売。
3・The Captain Howdy:Money Feeds My Music Machine:☆☆★
   出し殻っぽいが、やっつけのスカム風味は無く丁寧にアレンジされた クレイマー・サウンドが
   楽しめる。その一方で狙いや自己主張があいまいで、中途半端さも否めない。
   (11)のキュートなインスト、(6)のフォーク寄りの温かさなどが気に入った。

   細野晴臣が女性シンガーを招いたユニットで95年発売な、唯一のアルバム。
2・LOVE, PEACE & TRANCE:Love, Peace & Trance:☆☆☆★
   女性ボーカルとシャーマニックさが幻想性で魅せる傑作だ。華やかさと
   異世界感を丁寧に表現して、ビートもつける強度あるアンビエントを作った。
   隙が無く、心地よさが一杯の素敵な盤。

   91年に元ギャラクシー500のディーンが、Luna結成前に発売のソロ・シングル。
1・Dean Wareham:Anesthesia:

2016年12月

2016/12/31   年末最後の購入。

   300枚限定、ウクライナのレーベルから発売の新譜。
255・Merzbow:Hanakisasage:☆☆☆★
   広がりあるアンビエントな世界と、ミニマルなビートが支配するインダストリアルな空間。
   異なる二つの世界観を、メルツバウのドラマティックで濃密な音構造をそのままに描いた。
   ハーシュ・ノイズの多様性を見せつけた一枚。

   97年に伊で470枚限定のスプリット盤を、ボートラ付きのCDで300限定の再発。
254・Merzbow + Haters:Milanese Bestiality / Drunk On Decay:☆★
   ムーグを全面的に使い、わかりやすくチープな音像を作った。ドラムマシンも
   すごくシンプルに投入。かなり珍しいメルツバウのアプローチだ。
   Hatersはパワーノイズ。今一つ単調で盛り上がりに欠ける。ぼくの好みとは違うな。f

   16年9月29日に英マンチェスターでのコラボ・ライブ盤で500枚限定。
253・Merzbow + Balazs Pandi:Live At Fac251:☆☆
   演奏とは別次元で、今一つ物足りない。ミックスが平板で、音色の変化があまり目立たない。
   ライブ全編を封入したが、起伏無く進んだかのよう。さらにドラムもノイズに埋もれた。

   各100枚限定のヘア・スタイリスティクスによる自主製作CDの165作目で2016年12月発表。
252・Hair Stylistics:The Lost Hat:☆☆★
   リズム・ボックスのループが続く30分一本勝負。上物のシンセが脱力気味に
   蠢き、時たま複数の要素が加わる。音色を変えれば豪快なハーシュによるパワー・ノイズへ
   仕上がるのに、あくまでスカム感を崩さぬ頑固さがヘアスタの持ち味か。

   フォーシーズンズ結成以前のレア・シングル中心にまとめた4枚組廉価版。
   この手の企画を執拗にリリースする欧Real Goneより2013年のリイシュー。
251・The Four Seasons:Two Classic Albums Plus The Four Lovers And Rare Singles:☆☆☆★
   ごく初期の貴重音源がずらり並び、手っ取り早く安く聴ける便利な盤。
   いくら2ndだからってクリスマス・アルバムを入れるところが律儀だ。3rdの
   "Big Girls Don't Cry and Twelve Others" (1963)のほうがどんな季節でも聴ける普遍性あったろうに。
   解説もない。あまり気にせず音楽のみをシンプルに楽しみたい人向け。

2016/12/25  最近買ったCDをまとめて。

   プリンスがプロデュース曲を含む、朗読系な歌手の91年発売な1st。
251・Ingrid Chavez:May 19, 1992:
   プリンス印がうっすら感じられる曲と、全く感じられぬアンビエントが交錯した。
   あくまで朗読、ヒップホップ的なフロウは無い。鋭角な言葉のビート感と、
   打ち込みを基調のエレクトロ・ビートが漂う不思議な盤。
   プリンス要素を期待したらハズレだが、ファンクネスを抜いた異色さを楽しむにはいいかも。

   2013年に発売の9thアルバム。HAYAKAWA「山王」と、ボンフルの「ゲルコロイド」をカバーあり。
250・梅津和時KIKI BAND:Coyote:☆☆☆☆
   "ザッパナーレ出演記念"を惹句にして、ザッパを意識か変拍子の凝った楽曲が目立つ。
   早川と鬼怒のセルフ・カバー収録も意外で嬉しかった。数分単位の短めな曲を
   ならべて、アドリブよりもアンサンブルのタイトさを強調した。骨太ながら
   スマートな演奏が抜群。野太いベースと頼もしいドラムが、鋭くも滑らかなギターとサックスを
   がっちり支えて逞しいグルーヴを作った。

   2015年の発売、10thアルバム。今回は二人だけで作ってるようだ。
249・Damon & Naomi:Fortune:☆☆★
   自主映画のサントラで作られた。切ないムードはそのままに、インストも含め30分弱の
   ミニアルバム。穏やかな雰囲気が全編を覆う。滴るようなセンチメンタルさと
   うっすら煙るサイケが交錯した。強烈な寂しさを感じた。

2016/12/23   最近買ったCDをまとめて。

   今年2月に発売、プリンスの前座を11年に務めた女性三人組ソウル・グループの1st。
248・KING:We Are KING:☆☆☆☆
   丁寧で分厚いアレンジを、しとやかに繊細なファンクネスで表現した一枚。
   なるたけでかい音で聴いたほうが、本盤の魅力を実感できる。
   すごくよくできたエレクトリック・ソウルだ。

   1940年9月にサンフランシスコで行われたライブを収録の4枚組。当時のポピュラー音楽家が
   集結したらしい。97年にMusic & Artsからのリイシュー。
247・Various Artists:Carousel Of American Music:

   2015年発売の1st。菊地成孔の関連盤にICIで参加の市川愛がボーカル、
   サイドメンも同世代のミュージシャンが固めた。作詞作曲のほとんどは
   ドラムの桃井裕範が担当した。
246・ITELLU:planets:☆★
   耳触りの良いジャズ寄りのポップス。切ないメロディ・ラインと
   おっとりした洗練さが特徴で、アドリブはファンクすらも毒気を抜きフュージョン風味に
   仕立てた。アルバムの完成度を丁寧に狙う分、スリルは少なめ。

   アブドゥーラ・イブラヒムが76年にトリオ編成でEnjaで発売の盤。
245・Abdullah Ibrahim:The Children Of Africa:☆☆☆★
   リズム隊が無暗にアフリカ的な演奏へ進まぬため、冷静でバラエティ豊かな盤に仕上がった。
   ピアノだけでなく歌やサックスなど、イブラヒムはサービス精神を忘れない。
   混沌や勢いを廃し、整ったフリー寄りのアルバムへ破綻無くまとめてる。

   08年にドイツで録音したピアノ・ソロ。
244・Abdullah Ibrahim:Senzo:☆☆☆
   円熟した奔放なピアノ・ソロ。一時間足らずで22曲をぽろぽろと即興的に弾き継いだ。
   盛り上がりや技などを意識せず、ただ淡々とピアノが鳴る。キャリアを重ねた上での
   余裕と重みが滲む温かい演奏だ。最高のピアノ・ソロではないが、
   独特の味わいを持つ美しい世界を、無造作に提示した。こういうところも、才能だ。

   89年に録音したピアノ・ソロ。
243・菊地雅章:Attached:

   TZADIKの盤をあれこれ入手した。
   まずは作曲家シリーズ。これは02年に発表の室内楽。
242・Pierre-Yves Mace:Faux-jumeaux:

   前衛トランぺッターが99年発売の現代音楽集。
241・Wadada Leo Smith:Light Upon Light:☆★
   現代音楽に寄った即興要素入りの楽曲。室内楽が2曲とビオラのソロ、エレクトロニクスと
   トランペットのデュオと大まかに3種類の編成を入れた。コンセプトが主体、
   楽曲そのもので楽しませることを狙ってなさそうなため、編成違いで
   目先が変わる構成なのはありがたい。

   イクエ・モリが打楽器とドラムマシンを駆使した96年発売、TZADIでも初期の盤。
240・Ikue Mori:Garden:☆☆☆
   リズムにこだわった一枚。ドラムマシン、生のビートがそれぞれ配置されエフェクタ処理される。
   フロア対応ではないが、今の耳で聴くと強烈に刺激的なブレイクビーツだ。
   環境音楽的な寛ぎや無機質さも兼ね備え、うっすらとアジア的な香りもする。
   即興風の展開で抽象寄りな趣きだが、不思議と肉感的な味わいあり。

   06年発売。ジーナはハープ奏者だが、メインは弦楽四重奏の曲もあるようだ。
239・Zeena Parkins:Necklace:☆☆★
   実験性をそこかしこにちりばめ、弦楽四重奏をメインの楽曲を4曲収録した。
   確かな演奏と即興性をなるべく排した楽曲による、張りつめた緊張感が全編を覆う。
   崩れていく退廃性が整った美しさで描かれた。じわじわと良さが感じられる。

   和楽器やビオラ・ダ・ガンバを使った植物をテーマの現代音楽。97年の盤。
238・藤枝守:Patterns Of Plant:

   02年発売、室内楽集か。
237・Charles Wuorinen:Lepton:☆☆☆
   数値的な作曲を基調に、情緒をほんの少し残したシンプルなメロディの室内楽集。
   冒頭は電子音楽で、今聴くと古めかしい音色が妙にキュートだ。
   どの曲もとりとめない展開ながら、むやみな跳躍や緊張を強いる響きでないため、
   難解でなく、意外と楽しく聴ける。時代を経て前衛性が緩み、普遍性につながった。

   打楽器奏者のスージー・イバッラがTZADIKでの初リーダー作。室内楽集で、00年の盤。
236・Susie Ibarra:Flower After Flower:☆☆
   弦と管の変則コンボ編成と、各種楽器の独奏を交互に並べて組曲風にまとめた現代音楽風の一枚。
   即興要素も多分に漂わせ、ストイックな堅苦しさはない。むしろ聴きやすい。
   作り溜めず、一日でサクッとレコーディングの本盤は、若書きの独りよがりもなく、きれいな音楽に仕上がった。

   01年の盤で声を素材の電子音楽みたいなもの。
235・David Mahler:Hearing Voices:☆☆
   職業ごとに声を加工、がコンセプト。いわば音のタイポグラフィ。
   コラージュでなく子音をパーカッシブに切り刻むなどデジタル処理を
   猛烈に施した声加工はテクノみたいで面白い。ただ、現代音楽のまじめさが本盤を堅苦しくしてる。

   95年とTZADIK初期の音源。金管/打楽器/電子音を混ぜた、バリバリの現代音楽。
234・Chris Brown:Lava:☆☆★
   タイミングがキッチリ制御され<曲の進行につれ譜割がポリリズミックになる仕掛け。
   硬質で甘さの無い演奏だが、妙な礼儀正しいすっきりした空気で、かなり刺激的に聴けた。

   96年発売、声とテープのコラージュ音楽みたい。
233・Li Chin Sung:Past:☆☆
   香港のディクソン・ディーが、本名で発表した初期作品。92−95年と20代前半に発表のあてなく
   録りためた音源集だ。ミニマル寄りのハーシュ風エレクトリック・コラージュと
   今一つピントが合っていないノイズが雑多に詰め込まれた。
   コンセプトや個性を煮詰める前の、若かりし日々のアイディア・スケッチ集と聴くべきか。
   ジョン・ゾーンがこの時点で彼に目をつける、目利きぶりに唸る。

   ここからはラジカル・ユダヤ・シリーズ。99年の作でギター・ソロ。
232・Tim Sparks:Neshamah:☆☆★
   アコギで世界各国、過去のユダヤ音楽をアコギで弾ききろうってコンセプトだ。
   切なさと素朴な響きだが、確かなテクニックと丁寧なアレンジを施され、良質な
   ジャズ・ギターのアルバムに仕上がった。リズムや文化構造がさまざまのため
   統一性はない。だが切なさやブルーズ感に溺れず頼らず、きりっと瑞々しいギター演奏が
   本盤をアンビエントやニューエイジ的な安易さから抜け出している。
   ファンキーさは希薄だが、とても美しいアルバムだ。

   95年、ヴォイスのソロみたい。
231・Shelley Hirsch:O Little Town Of East New York:
   朗読や芝居仕立てのセリフを中心の盤。チープなテープ・コラージュ風のバックはあるが
   あくまで主役は英語の散文詩。したがって英語がわからないと楽しみづらい。
   ただし(14)のポップな曲はとてもよかった。オペラティックに歌うことも可能な
   ボーカル・テクニックはあり、ときどき挿入される歌ものは総じて
   妙な気取り具合が可愛らしくて悪くない。

   静かなピアノ・ソロ。03年の盤。
230・Borah Bergman:Meditation For Piano:☆☆
   断続的なフレーズで階段のように静けさを出す、ピアノ作品。
   ヒーリングより抽象的な心象風景を描いた。つかみどころ無く静かなフリージャズ。

   実質はSelfhaters名義の静かなインプロだが、世界はアンソニー印。98年の盤。
229・Anthony Coleman:The Abysmal Richness Of The Infinite Proximity Of The Same:☆★
   聴きやすくはない。だが垂れ流しの即興とは全く違う。内省的なサウンドだ。
   p,per,cello,sax,clの編成で、静かで緊迫感ある、ねっとり重たいが美しい世界が
   淡々と、しかし厳格かつ確実に描かれた。美しさは意識され続けてる。(9)は前衛的なピアノ・ソロ。

   00年発売、シロ・バチスタとグレッグ・コーエンを迎えたギター・トリオ。
228・Tim Sparks:Tanz:☆☆☆
   完全にトリオではない。アコギとトリオ編成の演奏を交互に並べ、芳醇なギターの味わいを
   多様に味わえる仕上がりとなった。演奏曲はやはりユダヤ伝統歌のカバー。だがアレンジは
   カントリー・タッチで、りりしくも素朴なムードが広がる。切なさよりもラウンジな風味の演奏だ。

   70年代から活躍のフリー・サックス奏者による独奏を収めた98年の盤。
227・Steve Lacy:Sands:☆☆★
   静かで穏やかだが、だらしなさのない凛々しいソプラノ・サックスが詰まった。
   このまじめさが70年代の厳しいフリー・ジャズを象徴してるように思えてならない。
   とはいえ緊張感は少なく、リラックスして聴ける。

   映画音楽シリーズで、03年の盤。編成はラウンジ音楽っぽい。
226・Doug Wieselman:Dimly Lit:☆☆
   96-02年にかけて作曲し、色々な映画音楽で提供した作品集。意外と寛いで聴ける一枚。
   ほんのり寂し気、しかし凛々しさや矜持を忘れない。そんな背中に一本筋が通った
   律義さと、うっすら滲む切なさが持ち味に聴こえる。

   クレヅマー・バンドによる01年の3rdアルバム。
225・Naftule's Dream:Job:
   ライブ録音でクレヅマーを下敷きにしつつ、オーソドックスな演奏から
   タイトなロック寄りまで曲によってバリエーションつけた。タイトなサウンドは心地よいが、
   逆にクレヅマーに詳しくない僕だと「こういうもんだ」と味わいなく無邪気に
   聴いてしまう。たぶんそれは、いかんよな。彼らの独自性がわかってない。

   サックス奏者がリーダーのトリオ編成なジャズで04年の発売。
   ゲストにビーフハートのバンドにいたゲイリー・ルーカス(g)が2曲で参加した。
224・Greg Wall:Later Prophets:☆☆★
   ベース・レス、key.dsと組んだサックス奏者のトリオ・ジャズ。
   エレピの優美な響きがサイケに鳴り、ドラムはタイトだが定型にとどまらない。
   浮遊感あるサイケな世界ながら、熱狂に燃えず冷静な知性を常に漂わすところが特徴だ。

   いまさら買うのが恥ずかしいアルバムだが手元に無かった。62年のアルバム。
   これは02年に再発の2枚組で、2枚目は別テイクを集めたインパルスからのリイシュー。
223・John Coltrane:Ballads:☆☆☆★
   敢えて荒々しい"Greeensleeves"と、試行錯誤の"It's easy to remember"の未発表テイクを
   ごっそり入れることで、本盤のイメージに新たな視点を加えた。
   単なるバラードの余技ではない。猛烈なソロと連結しつつ、ジャズのロマンティックな側面を
   模索するコルトレーンの影が浮かんだ。メンバー全員が器用に多面性をこなしてる。
   手癖で甘さに雪崩れず、引き絞りながらもふくよかな世界を描いた。

   88年に日本テレビの企画で収録した、NYのスイート・ベイジルでの88年ライブ音源。
   メッセンジャーズの過去の代表曲を演奏という意味で本タイトルらしい。
222・Art Blakey & The Jazz Messengers:Standards:
   手堅いがスリルの無い演奏。ハードバップのBGMにいいと思う。
   ブレイキーの晩年がいかに着実なアプローチだったかを確認で聴きたい。

   ここからはジャケ買いで内容はよくわからない。

   ジョージ・ラッセルと共演歴あり、なミュージシャンが01年に発売。
   ピアノ・ソロのフリージャズかな。本盤のVol.1もほぼ同時発売のようだ。
   音源は84年2月にNYでのライブ演奏とある。
221・Jack Reilly:Tzu-Jan-The Sound of the Tarot-Volume 2:☆★
   鋭角なフレーズでクラシカルに奏でられる即興集。タロット・カードを映し、
   そのイメージを膨らませる即興集という。指は丁寧に回り、勢い一発でなく丁寧に曲を紡ぐ。
   作曲集のような構築美を持ちながら、繰り返しや構成は無くインプロが展開した。
   耽美になりすぎないが、ファンキーさやグルーヴとは無縁の硬質な響きが本盤の特徴だ。
 
   ピアノ奏者のデビュー・アルバム。per奏者とデュオで、99年の発売。
220・Pittson, Jeff with Wally Schnalle:Go Where It's Dangerous:
   デュオのはずだがダビングを施し、普通の熱めなストレート・アヘッドに仕上げた。
   フュージョン風の爽やかさをにじませ、前衛要素は無い。小器用な感じが難点でもある。
   聴きやすいけどね。オリジナル中心でカバーは1曲のみ。あくまでも自分の音楽、を主張はした。

   04年発売の1stリーダー作。市野元彦(g)がサイドメンで参加あり。
219・田中充:ミツルジルシ:☆☆★
   2ギター編成、ピアノレスの変則コンボで伸び伸びとペットが鳴った。
   ギターがてんでに弾き合い細かなフレーズの網を作り、しっかりしたアンサンブルとなる。
   だが緊張やスリルと別のおっとりさで、ふっくらと爽やかにペットを吹いてる。

2016/12/20  最近買ったCDをまとめて。

   Sun Raの音源を使ったメルツバウ流の再解釈、な新譜。
218・Merzbow:Strange City:Sun Ra/Merzbow:☆☆★
   (1)はメルツバウ色が強く、サン・ラの素材へノイズをかぶせたかのよう。
   (2)での混沌としたテープ・コラージュ風のアプローチが、サン・ラの妖しさと
   メルツバウの激しい過激さをミックスしてるようで面白かった。
   CDとLPでは内容が全く違う。LPは(2)のバリエーションを3曲収録した。

   LA出身の新人黒人シンガーのデビュー作、2016年発売。
217・Gallant:Ology:☆☆★
   ファルセットを生かしたしなやかな歌声は好み。地声も使える幅広いレンジと
   作曲もこなして自分の世界を丁寧に演出できると期待する。
   少なくとも本盤は鍵盤を前面に出したオーバー・プロデュースで彼の魅力を
   過剰に塗りつぶしてしまった。もっと素朴な世界感で彼の音楽を聴いてみたい。

   フォーシーズンズに影響受けた、63-67年当時のB級バンドをまとめたコンピ。
   2015年に60年代の再発レーベル、豪Teensvilleからの発売。
216・V.A.:A sound for all (Four)Seasons:

   モーマスが作曲、プロデュースで全面協力した女性シンガーが、唯一残したアルバムで97年発売。
215・Laila France:Orgonon:☆★
   全体的にやっつけ感が漂う散漫なアルバムだが、モーマスのアレンジはまだ
   手が込んでいる時代でありチープさは薄い。むしろ切なく揺れるさまが魅力でもある。
   繊細で危ういモーマスの色が、ポップに仕上がったユニークな盤。

2016/12/7   最近買ったCDをまとめて。

   TZADIKのユダヤ人作曲家シリーズで04年に発売のコンピレーション。
   20世紀中盤に活躍したブラジルのショーロで
   バンドリン奏者ジャコー・ド・バンドリンの作品集。
214・Various Artists:Great Jewish Music: Jacob Do Bandolim:☆☆★
   地味だが着実な演奏で、軽みあるアンサンブルを収めた。切ないムードを滲ませつつ、
   ジャズ的なアプローチの楽曲が続く。エレキギターなどを使っても、あまり
   激しい逸脱は無く、大人しくオリジナル曲をラウンジ風に解釈してる。
 
   shezooのユニット、Quipuが04年に出したアルバム。
213・Quipu:両手いっぱいの風景:☆☆☆
   ロマンティックで緻密なサウンドは本盤で、よりジャズ寄りにシフトして深化した。
   逆に歌モノの制限でメロディが窮屈に鳴っている感あり。
   奔放な音楽世界が、歌と言う構造に縛られてしまう。多様な声域をもってしても。

   灰野敬二、ビル・ラズウェル、ラシッド・アリのトリオによる2枚組で、
   99年にTZADIKから発売の唯一なアルバム。
212・Purple Trap:Decided - Already The Motionless Heart Of Tranquility, Tangling The Prayer Called "i":☆☆☆
   灰野を前面に立て異物三人の化学反応が狙いのユニット、と思う。2枚組の
   ボリュームでたっぷり詰め込んだが、逆に「それ以上」の突き抜けが無く
   即興巧者三人のセッションに終わってしまった感あり。贅沢かもしれないが。
   のちに灰野が繰り広げるコラボ盤までの、斬新さはここから聴き取れない。
   どうもぼくは、ビル・ラズウェルの音楽がつじつま合わせの無難に聴こえて苦手だ。

   09年に発売された、07年の共演ライブ・アルバム。
211・Pansonic / 灰野敬二:Shall I Download A Blackhole And Offer It To You:☆☆☆★
   灰野はパン・ソニックの電子ノイズを生かしながらも、自らの個性を全く殺さない。
   しかもCD一枚分の、一時間でギターとシャウトに笛と持ち替えてバラエティさも見せた。
   パン・ソニックもむやみに我を通さず、空気を読みながらノイズを出す。
   重厚で沈鬱な空気ながら、激しく炸裂するダイナミズムも持ち込み、濃密で漆黒の世界を作り上げた。
   全員の即興巧者ぶりとサービス精神が、とてもいい感じで現れた抽象的な音楽だ。

   Air synthをテーマに05年発売のソロ・アルバム。
210・灰野敬二:宇宙に 絡みついてる 我が痛み:☆☆☆
   とびきり抽象的な電子音の蠢きが詰まった。とっつきづらさはひときわ。
   ノイズ寄りだが爽快感とは別ベクトル。もっとストイックに突き進む。
   電子音と徹底的に戯れる、10〜20分程度の4曲が収録された。
   肉感的な電気仕掛けって相矛盾する世界観が広がって興味深い。

   灰野、吉田達也、ナスノミツルのバンド、サンヘドリンが13年に出した3rdアルバム。
209・Sanhedrin:『好』の5W1H:☆☆☆★
   スタジオ録音ならではの分離良さが良い。力押し一辺倒でなく、(1)の長尺で
   シンセ風の音色で迫る新境地を見せた。(2)以降は緩急を効かせつつも
   鋭い疾走が炸裂する。録音とミックスは吉田達也。エッジの立った乾いた独自の音作りが冴えた。

   灰野率いる不失者がデュオ編成で、01年に発売したスタジオ録音盤。
208・不失者:Origin's Hesitation:☆☆☆★
   サウンドのムードは沈鬱だが、ドラムと声を操る灰野と、小沢のベースが生み出す幻想的な
   世界と、時間空間を捻じ曲げる空白と乱打を生かしたダイナミズム。さらに
   サンプリング・ループを生かした灰野の歌声と聴きどころは多数。

2016/12/5   注文したCDが届き始めた。

   ジョン・ゾーンとフレッド・フリスのデュオ、TZADIKより2010年の発売。
207・John Zorn/Fred Frith:Late Works:☆☆☆★
   即興巧者の名にふさわしい、アイディアと緩急が抜群な一枚。しかもスピード一辺倒でなく
   老練な余裕もそこかしこに漂わせる。フリスの自由さにゾーンがたっぷり応えて
   見事なインプロに仕上がった。

   英ピアニストのベレスフォードをジョン・ゾーンらがサポートした95年の盤。
206・Steve Beresford His Piano And Orchestra:Signals for Tea: ☆☆
   即興巧者たちがオリジナル曲で、大真面目に作った古き良きジャズ・ボーカルの盤。
   似非、もしくはゲテモノの怪盤と敢えて評価したい。たまにフリーキーなサックスなど、前衛要素を
   突っ込むのが奇妙な味になってる。ただ、ならば本物のジャズ・ボーカルを
   聴いたほうが味が濃くもあり。このギャグ・センスを楽しむ盤かなあ。

   菊地成孔プロデュース、ベースとボーカリストのデュオ、2013年のデビュー盤。
205・ものんくる:飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち:☆☆☆★
   散文的な歌詞の世界をスタイリッシュなジャズのアレンジでくるんだ。
   ナイーブなメロディは情緒に留まらず、しなやかな躍動感を作る。
   ふちがみとふなとを連想するが、もちろんものんくるは違う。ピアノ・トリオ編成を軸の
   コンボ編成を中心の伴奏は、単なる飾りではない。曲へ溶け込み、鮮やかに歌を飾った。

2016/12/4   最近買ったCD。たまには流行りものも聴いてみたい。

   今年4月、全米3位(1位、2位はプリンス追悼に関する旧譜で、実質1位とも)な
   カントリー系歌手スターギル・シンプソンの3rdアルバムでメジャーデビュー作。   
204・Sturgill Simpson:A Sailor's Guide to Earth:☆☆★
   老成してるなあ。生演奏のアンサンブルでブラスや弦もたっぷり。埃くさい
   スワンプ・ロックみたい。カントリーの保守性はそのままに、前のめりの力を込めた。
   声高にコンセプト主張しない大人しさもあるけれど、それも個性か。
   みっちり音を詰め込むアレンジで、今風の隙が無いサウンドになってる。

2016年11月

2016/11/18   最近買ったCDをまとめて。

   伊Rustbladeからのメルツバウ新譜。2枚組と3枚組の特装盤二種類あり、
   たまたま特装盤のほうを入手できた。布製袋入り。
203・Merzbow:Hatobana:☆☆☆☆
   コンセプト・アルバムではなく、5年間のメルツバウの変遷を俯瞰できるオムニバス盤の感あり。
   バラエティに富み、表現の多彩さや振れ幅を手軽に聴けるため、入門盤にも向いている。
   躍動感あるノイズが、さほど長い時間を取らず次々に登場した。

   もとは59年にシカゴ録音、黄金トリオ編成によるマラソン・セッションの一環で
   ソングブック集。本盤はリチャード・ロジャースの作品を集めた。
   これは2011年にSolarから再発盤で、ボートラ入れて25曲入り。
   バーニー・ケッセルとシグペンが入れ替わりロジャースの作品を収録した既発テイクなどをまとめた。
202・Oscar Peterson:Plays the Richard Rodgers Songbook ☆☆☆★
   おっとりしたメロディを上品に扱いつつ、スイングさせる小気味よさと単音/和音を使い分ける
   鮮やかなピアノに魅せられる。25曲詰め込まれると、かなりおなかいっぱいで個々の楽曲まで
   なかなか感想が行かない。でも垂れ流しセッションに陥らぬアイディアの豊富さはしびれた。
   実質はバーニー・ケッセルとのギター・トリオによる"Plays Richard Rodgers"(1954)も
   全曲収録、2on1に2曲のボートラ(既発曲)をまとめた盤と言える。

   同じ59年シカゴ・セッション。これもSolarの2011年再発盤で、23曲入り。
   バーニーやハーブ・エリスらと共演した過去音源をオマケ収録してる。
201・Oscar Peterson:Plays The Jimmy McHugh Songbook☆☆☆★
   コンパクトかつロマンティック。マラソン・セッションの録音なため、個々の出来不出来でなく
   全体像として聴きたい。とにかくこれだけ膨大な録音にも関わらず
   個々をきっちりアレンジして数分に収めた集中力が凄い。
   小粋な楽曲が詰まった。録音状態がいまいちで残念。
   ボートラも溌剌な時代でテクニカルかつスマートな演奏が楽しめる。
   ギターとのトリオ時代がいくぶんトリッキーさが強いかな。

2016年10月

2016/10/25   最近買ったCDをまとめて。

   モーマス30周年、約30枚に及ぶアルバムから編年体に並べた3枚組の編集盤が今年出た。
200・Momus:Pubic Intellectual: An Anthology 1986-2016:☆☆☆☆
   独特な浮遊しっぱなしの完結せぬ病んだ音楽世界を、ブレず愚直に続けたようすが
   クッキリ味わえる。改めてモーマスの天才性に唸った。転調しまくりで解決してなさ 
   そうな感じが不安定で心地よい。瞬間は爛れて美しく、流れはどうにも落ち着かない。
   チープなエレクトロのアレンジだが、ヘッドフォンで聴くと凝ってるのがわかる。
   膨大なモーマスのアルバムをほとんど聴けてないが、改めてあれこれ聴きたくなった。

   プリンスと同世代なミュージシャンの若かりし音源を集めた2013年の2枚組コンピ。
   ブックレットがやたら豪華なデザインだ。読み応えある解説が貴重な写真と載っている。
199・V.A.:Purple Snow: Forecasting The Minneapolis Sound:☆☆★
   ローカルB旧バンド集のコンピだが、一時代を切り取った編集盤として丁寧な仕事っぷりも含めて素晴らしい出来。
   プリンス以外にも才能あふれる若者がいて、生きのいいファンクを作ってたとわかる。
   過剰な期待はしないほうがいいけど、プリンス・ファンなら一度は聴くべき。

2016/10/22   最近買ったCDをまとめて。

   シンガポールのレーベルから発売な三人が曲を持ち寄ったCD。15年発売で200枚限定。
198・Merzbow/Raven/Dao De Noize:Animal Liberation:☆☆★
   三者三様のハーシュ・ノイズが楽しめる。骨太、繊細、そして峻烈。
   峻烈なメルツバウの多彩さが群を抜いている。次に空虚で繊細なDao De Noizeの三次元な寂しさに惹かれた。
   骨太なRavenのパワー・ノイズは若々しい剛腕の表れか。

   36作目のソロで新譜、オリジナル12曲にカバーが1曲とまだ枯れてないヴァンのアルバム。
197・Van Morrison:Keep Me Singing:☆☆☆★
   幻想的なストリングスが効果的に漂う。アメリカ音楽へ憧憬と自らのアイリッシュ・ルーツを
   見事にまとめた70年代初頭。そんなヴァン自身の音楽性を年輪重ねた今、再提示した盤。
   ジャズ、カントリー、ブルーズを自由に解釈する底力を現役感を残して表現した。

   ジョン・ゾーンの旧譜で未聴盤をまとめて入手した。
   まず、Masadaの第二部で、楽曲をさまざまな編成で演奏する"Book of Angels"から。
   2015年の2月リリースの第24弾、大編成のアコースティック・アンサンブルだ。
196・Klezmerson:Amon:Book of Angels, Vol. 24: ☆☆
   メキシコ音楽とクレヅマーを合体がコンセプト。ソロ回しよりアンサンブルの構築性を重視した。
   エレキギターが暴れる曲もあるが、基本はおっとりと緻密に整ったアコースティックな
   ビッグバンド。弦や管も足し分厚いサウンドを作った。なるたけ、でかい音で聴いたほうが迫力を楽しめる。

   2015年5月発売な第25弾は女性アカペラ・カルテット。2010年のVol.13"Mycale"に続き本シリーズへ登場した。
195・Mycale:Gomory: The Book of Angels Vol. 25:☆☆
   即興性無くすべてがコントロールされた荘厳な清涼さ。少しばかり堅苦しいが
   リズミックさがあり、ゾーンの作曲力を堪能できる。実験的なアプローチは無く聴きやすい。
   ただし整いすぎて寛ぎや遊びが無いため、BGMには向かないか。

   2016年2月に発売。ピアノ・トリオだがゾーン自身がリーダーシップとった。
194・John Zorn:Flaga:Book of Angels Vol. 27:☆☆☆★
   三者三様が自由に暴れ、なおかつ上品なフリージャズ寄りの演奏を炸裂させた。
   全員がリーダーのつもりでいるかのよう。MASADAの構築性高い演奏を下敷きに、
   奔流で澄んだサウンドを構築する。特にフリーなビートのドラムがノリを自由にした。
   ベースもグルーヴィだが暴れ倒し。ピアノは硬質でくっきりしたタッチの
   白っぽいがファンク色を匂わすラインを作った。これは気持ちいい。

   ゾーン主導の疑似バンドにパーカッション追加の5人組による、16年4月発表の第28弾。
193・Nova Express Quintet:Andras: The Book of Angels Vol. 28:☆☆★
   スリルは無く、むしろ予定調和。ゾーンの思う世界をタイトかつコンパクトに
   まとめた。とはいえ音使いはそこかしこに工夫あり。短い時間であっという間に
   独自の世界へ入り込むスピード感も素晴らしい。新鮮味はないが、味わいは奥がある。

   現時点で最新作の今年7月発売で、エレキ・ギターがフロントのインスト・トリオ。
192・AutorYno:Flauros : The Book Of Angels Volume 29:Masada Book 2:☆☆
   歪んだ音色のエレキギター・トリオで、派手に崩すかと思いきや。かっちり手堅く
   アンサンブルはまとめ、安定志向だ。サイケな残響や歪みで切なく空気を震わすとこが魅力か。

   15年1月発売、ゾーンが70年代後期から80年代初期に発表した、ゲーム・ピース集。
   後続が楽しみなのだが、今のところ本盤以降はリリースされてない。
191・Dither:John Zorn's Olympiad Vol. 1:☆☆
   本作は研究者というかマニア向け。ゾーンのゲーム音楽を文字情報の伝説から
   音楽で具現化して味わえるのはありがたい。即興としても、まったく無味乾燥ではない。
   しかし孤高な雰囲気から、周りに薦めるのは躊躇う。うーん、難しい立ち位置の盤だ。

   16年5月発表。ハープ、ギター、ヴィブラフォンのGnostic Trio編成な盤。
190・John Zorn:The Mockingbird: ☆☆☆★
   くっきりしたピッキングで紡ぐギターを軸に、流麗で芯の太く優美なメロディが詰まった。
   心なしか譜面要素が多く、アドリブを組み立てるきっかけではない。
   あくまでも楽曲が先、その自由な展開要素としてアドリブがあるかのよう。
   グノシック・トリオの6thに当たる本作だが、よりゾーンのコンセプトが強まったか。
   楽曲そのものは心地よく、丁寧に編まれたアンサンブルが楽しめる。

   13年7月。カルテット編成の4人組Nova Expressによる盤。
189・John Zorn:Dreamachines:☆☆★
   素早く小気味よい演奏が楽しめる。テンポ早く、しかし混沌に堕さない。
   ゾーンの指揮が映えた。ファイルカード的な危うさや前衛性は無く、ジャズ寄りの
   整然なアンサンブルだ。

   プリンスがプロデュースしたタイムの1stで81年のリリース。
188・The Time:The Time:☆☆☆★
   プリンスが全開でB級ファンクを演奏したと考えたら、悪くないアルバムだ。
   ただしA面1曲目が異様にやっつけ仕事っぽい。(4)をA面トップに持ってきて、
   編集で各曲を3分台に縮めてもう2曲足したら、抜群にかっこいいファンク・アルバムに
   なったと思う。だが大味さを本盤では選択した。勿体ない。
   耳を惹くアイディアはそこかしこに詰まってるのに。

   タイムのジャム&ルイスが高校生時代に結成してたバンドの音源を発掘した13年のコンピ。
187・Mind & Matter:1514 Oliver Avenue (Basement):☆☆☆
   稚拙だが美しい。整いっぷりに呆然とする。高校生でこんなにまとめられるのか。
   インディ・ソウルで様々な要素を混ぜ込んだ。むしろ頭でっかちなソウルかも。
   しかしぱっと聴いてて、何の違和感もなく綺麗に流れていく構成力は脅威だ。

   英Not Nowが11年復刻の盤で61年アトランティック原盤"Coltrane Jazz"と
   インパルス!移籍第一弾で61年Africa/Brassの 2 on 1。どういう脈絡だろう。
186・John Coltrane:Coltrane Jazz / Africa/Brass:☆☆★
   アトランティック時代の埋もれた盤と、インパルス!のデビュー盤というあまり必然性のないコンピ、
   なおかつ復刻のレア音源も収録無しのストレート・リイシュー。いまいちコンセプトがつかめない。
   ボートラ狙いなら、それぞれの盤を追ったほうがよさそう。
   両アルバムのサウンドは、求道路線を示しつつ、煮え切らないって感じか。

2016/10/9   最近買ったCDをまとめて。

   山下達郎の久しぶりなシングル。カップリングは昨年ライブのカバーを収録した。
185・山下達郎:Cheer up! the summer:☆☆☆★
   爽やかでシンプルな歌だが、凝ったメロディで簡単に口ずさめない。
   チープなリズム・ボックス音色でラテン・ビートを背後に置き、フロントは打ち込みながら
   弾ける80年代の達郎サウンドを作った。良いなあ。
   カップリングのカバーも、さすがの貫禄。ホーン隊はさすがにシンセだが、
   朗々たる歌声だがディナーショー風に甘く流れず、しっかりロックンロールな迫力を出す、
   達郎のこだわりが伝わる。慎重なビジネス形態をとる達郎だが、何とかタイミング
   作って"Joy 2"も実現してほしい。6枚組だっけ?

   架空の映画サントラとしてSteve Beresford、David Toop、John Zorn、Tonie Marshallと
   そうそうたるメンバーが86年に吹き込んだ盤。
184・Beresford,Toop,Zorn,Marshall:Deadly Weapons:☆☆
   コラージュっぽい仕上がり。セッションではなく楽曲を作り上げたかのよう。
   当時は斬新だったろうし、今聴いても楽しめはする。だがセッションを期待したら当て外れ。
   ゾーンは素材として演奏し、あまり目立たない。

2016年9月

2016/9/27   MP3で購入。

   極上のソフト・ロックな曲"One More Time"が最高なのだが、CDが廃盤でちいとも見つからない。
   もういいや、と配信で入手。シールズ&クロフツが78年発表の9thアルバム。
183・Seals and Crofts:Takin' It Easy:

2016/9/10  最近買ったCDをまとめて。

   1981年、河端が16歳の録音。当時はR.E.P. (Revolutionary Extrication Project)
   レーベルよりカセットで発表とあるが流通したのかな?
   07年に自己レーベルよりリイシューが本盤。クラフトワーク「アウトバーン」の
   オマージュで、シンセサイザー等による多重録音作品だそう。
182・河端一:Osaka Loop Line - Kawabata Makoto Early Works:☆☆
   アンビエントでサイケ・ドローンなミニマル作品。と横文字並べたらもっともらしいけれど。
   リズムボックスにノイズ・ループを乗せたものが延々と続く。河端の初期作品って
   物語性を付与しないと、ちょっと聞くのはつらい。しかし今に至る音楽性の
   萌芽や方向性が既に見られる意味で見ると、何とも興味深い。ブレないなあ。

   03年の米英ツアーの記念盤。そのツアー音源か、ツアーで売るための過去音源を
   編集盤か、よくわからない。全3曲でつるばみ(河端一+恵美伸子+東洋之) 、
   Pardons (東洋之+Cotton Casino)、河端一soloを収めた。
181・Acid Mothers Temple:Soul Collective Tour 2003:☆☆★
    3ユニットの音源が名刺代わりに収められた。三者三様の密やかで幻想的なサイケ絵巻。
   きれいな河端の世界、浮遊するPardons,轟音で炸裂のつるばみとメリハリついた。
   ぼくの好みだと、Pinkへ美しく溶けていく河端ソロが最高だ。

   灰野敬二、吉田達也、ナスノミツルによるトリオの3年ぶり2nd。
   07年の新大久保アースドムと池袋ロサでのライブ音源をアルバム化した。
   エンジニアが吉田、プロデュースはナスノとクレジットある。
   08年のツアー時のみに発売されたらしい。
180・Sanhedrin:さあ 真ん中だ どんな感じ:☆☆☆★
   ハイテンションで猛烈に変化し続ける三者三様の即興を、後ろにそらさずビタッと
   合わせる凄まじいテクニックを、いともたやすくやって見せる。予定調和でないのに
   イメージ通りの猛演だ。録音はけっこうラフだが、マスタリングで分離良く演出した。

2016/9/4   最近買ったCDをまとめて。

   まずはTZADIK盤を数枚。これはBen Goldberg率いるニュー・クレヅマー・トリオの
   91年デビュー盤。96年にTZADIKから再発された。
179・New Klezmer Trio:Masks And Faces:☆☆☆
   もどかしい新しさだ。MASADAのデビュー数年前に、クレヅマーを下敷きにフリーな
   ジャズを密やかかつ闇を持った強靭さを披露は、とんでもなく斬新だったと思う。
   だが僕はクレヅマーの知識が足りない。のちにゾーンの強力なミュージシャンとなる
   ケニー・ウールセンを擁した本バンドは、シンプルなトリオ編成で
   リズムを自由に展開させ、フリーだが整ったジャズをのびのびと作った。

   99年の発売。クレヅマー系で5人編成のバンド。本名義では本盤のみの発表か。
178・Ahva Raba:Kete Kuf:☆☆★
   バンドというよりユニット。演奏を主軸に、スキャットや歌ものなど多様な楽曲を収めた。
   オリジナルを中心に、欧州や東アジアの伝統曲を挟み、ときにユーモラスな
   声の技も仕込む。けれどもグダグダさは全くなく、生真面目な雰囲気が全編に漂った。
   隙は無いし演奏は上手い。クレヅマーの多彩さを教科書的に楽しむのに、いいかも。

   01年のTZADIK盤。デュオ名義でほぼ、Orenの多重録音。
177・Oren Bloedow & Jennifer Charles:La Mar Enfortuna:
   アラブ風味と欧州の香りを、アラブ伝統歌を中心に選曲した沈鬱なポップ集。
   色々とひねっており、知識がない僕は素直に楽しめず。そのうち、知識が増えたらもう一度聞いてみよう。

   ここからはあれこれと入手。
   まずはM,M&Rの96年発売、4thアルバム。
176・Medeski Martin & Wood:Shack-Man:☆☆☆
   ゲストを排し三人のみで、楽曲演奏をさまざまに実験したデビュー以来初めての盤。
   インプロやソロ回しの楽な道を選ばず、リズムやアレンジの実験を色々と行ってる。
   ぱっと聴きはとっつきにくい。統一したイメージやアプローチを排してるため。
   だがこれからさらに聴きこむことで、いろんなアイディアの多彩さを味わっていけそう。
   そんな、奥行きと深さを漂わせる盤だ。

   M-Base一派ってイメージあるが、92年のジャマイカ系イギリス人のジャズ。
175・Courtney Pine:To The Eyes Of Creation:
   アフリカ音楽を中心にレゲエやインド音楽まで目配りし、奇妙なリゾート・フュージョンを作った。
   隙は無い。のっぺりしたシンセを筆頭に飾り付けもばっちり、
   コートニーは様々な楽器を駆使しトータル・アルバムを作った。
   ジャズのダイナミズムは希薄だ。それよりポップ(いや、アシッド・ジャズか?)な
   方向性を睨んだ。売れ線を意識しつつ、音楽を丁寧に突き詰めた。
   それがゆえに、ぼくは息苦しい。もっと伸び伸びと彼の音楽を聴きたい。ここには支配と
   自己フィルターを通した解釈が強く存在し、異文化を鑑賞する余裕に欠ける。
   演奏は悪くないし、個々の音楽も高い質を狙ったとわかるのだが。

   戦前から活躍した女性ゴスペル・シンガー。これはP-Vineが93年に発売の2in1で、
   1st/2ndLP,"I believe I'll Run"(1973)."Going on with the spirit"(1975)を収録。
174・Willie Mae Ford Smith:Mother Smith:☆☆★
   クワイアな展開をコンボ編成で朗々と叩きつける。派手さは無い。しみじみと聴く盤か。
   低い声でぐいぐいと力強く喉が震え、ブルージーにうねる。
   ぼくはまだ、ゴスペルにピンと来てないんだなあと改めて思った。
   凄さは分かる。だが、胸に来ない。キリスト教徒じゃ無いせいか。

   ドラマティックスのメンバー、L.J. Reynoldsの99年の盤。7thソロかな。
173・L.J. Reynolds:Love Is About To Start:☆☆☆★
   簡素な鍵盤アレンジに最初はがっかりしたが、歌のうまさで聴かせる。
   曲も今一つ魅力に欠けるが、やはり歌で説得力を持たせる。
   最初はあまり印象に残らない。だが歌が気になり繰り返し聴くうちに
   じわじわと惹かれていく。プロダクションが地味で荒いが、歌が確かなら
   良い盤になるって見本みたいなもの。ソウルの鑑だ。シャウト中心だがしみじみと
   聴かせることもできる。さすがの歌声。

   69年録音で、ハンコックがジョー・ヘンダーソンら5管を率いた盤。
172・Herbie Hancock:Fat Albert Rotunda:
   野暮ったくも中途半端なソウル・ジャズ。大編成を操るわりに覇気がなく、
   たらたらと楽曲が過ぎてしまう。ワーナー移籍一曲目で売れ線狙いらしいが
   完全に番組人気頼りで刺激少ない盤に仕上げたか。
   ボリューム上げて聴くと、それなりにパンチ力はあるが凄みに欠ける。

   ヴァンガード・ジャズ・オーケストラでグラミーを取るピアニストのリーダー作で79年のデビュー盤。
   ジョンスコが2曲でゲスト、フュージョン的なジャズだ。
171・Jim McNeely:The Plot Thickens:☆☆★
   保守的なビッグバンドとは逆ベクトル、フュージョン寄りの滑らかで硬質、かつスピーディな
   時代を感じるジャズを披露した。味わいやタメとは無縁だが、テクニックに裏打ちされた
   流麗さをぱっと聴くにはいいかも。特にジョンスコ参加のセッションが、もろに
   フュージョン的な勢いを味わえる。評価しづらいが、するっと聴けた。

   90年代に活躍した3人組のラップ・ユニットが98年発売の5thアルバム。
170・A Tribe Called Quest:The Love Movement:

   女性ブルース歌手と白人カントリー男性のデュオ、らしい。07年の盤。
169・Dawn Tyler Watson & Paul Deslauriers:En Duo:☆☆★
   ほとんどがカバー曲、アコギ一本のカナダ人男女デュオ。簡素でブルーズを下敷きの
   カントリー風味なサウンドが詰まった。ギター一本の演奏だが曲ごとにアレンジやアプローチも変え
   飽きさせないアレンジ力が根底にある。特に多重ハーモニーを生かした
   ビートルズの(13)がソフト・ロックファンにも楽しめるはず。
   日本語の情報がさっぱり見つからないが、意外な掘り出し物。

   ジョージア州出身の女性黒人歌手による、05年の2nd。
168・Lizz Wright:Dreaming Wide Awake:
   ビルボードのコンテンポラリー・ジャズで1位獲得の盤らしいが、あまりピンとこない。
   しっとり歌うボーカルを聴くにはいいのかも。癖が無く淡々と歌われる
   楽曲群は、ひっかかりなく過ぎてしまった。ジャズ・ボーカルを色々聴きこんだら、
   違う評価になるかも。なおギターでビル・フリゼールの参加あり。

   09年に英Soundwayが、66-77年のキューバ系ファンクを集めたコンピ。
167・V.A.:Panama! 2 Latin Sounds, Cumbia, Tropical & Calypso Funk On the Isthmus 1967-77:☆☆★
   10年間はさすがに長い。統一性よりも多様な音楽性を味わうコンピか。
   ファンクといってもラテンを基調にレゲエが漂う。西洋音楽の影響を受けつつ、物まねでなく自分の
   リズム構造に引き込み再構成って印象だ。いわゆるファンク集を期待してはだめ。キューバのサルサが主体か。
   NYサルサの華やかさとも違う、独特の整ったグルーヴだ。
   時代ゆえの演奏の甘さやタルさはあるけれど、骨太でしぶといラテン・グルーヴが詰まった。
   このジャンルへ知識が皆無に近いため、もう少しきちんと聴かないと具体的にコメントできぬ。

2016年8月

2016/8/22  最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜は、灰野やパンディとの共演。昨年4月に吉祥寺GOKスタジオで録音された。
166・Merzbow / 灰野敬二 / Balazs Pandi:An Untroublesome Defencelessness:☆★
   大きく二種類の組曲形式で、全7曲入り。パンディのスタッフがミックスのためか、妙にのっぺりとした音像だ。
   灰野とメルツバウが異物もしくは賑やかし的に扱われ、今一つ色気のないドラムが
   無秩序に鳴る構造を取った。せっかくの貴重なKikuriとの共演、マジックを
   期待したが・・・すこし残念。もっと聴きこんだら、感想変わるかもしれないが音が妙に軽い。
 
   リシャール・ピナス2010年作の2枚目。数曲でメルツバウがゲスト参加した。
165・Richard Pinhas:Metal / Crystal:☆☆☆★
   じっくりとノイズを積み重ねる30分の大曲3連発を軸にしたアルバム。
   冷静で濃密なピナスの音像を楽しめる盤だ。ただ、メルツバウ視点では物足りない。
   あくまで主役はピナスで、どの音がメルツバウかわからないため。というのも
   Wolf Eyesも同じ盤に音を加えており、ノイズ=メルツバウと一直線に
   決めつけられないためだ。ピナスの作品として楽しんだほうがよさそう。

   ジョン・ゾーンがらみを何枚か。
   ビル・フリゼールたちによる疑似バンド、グノシック・トリオの第三作。2013年発表。
164・John Zorn:In Lambeth - Visions From the Walled Garden of William Blake:☆☆☆★
   トリオ編成ながらギターはループなのか複数音聴こえる。それがアンサンブルに
   幅を深みを出し、ひときわ心地よいサウンドを作り出した。ロマンティックさが美しい。
   イクエ・モリが参加した(7)もスペイシーさが拡大して良し。グノシック・トリオの
   世界観をぐっと広げた良作。即興部分も多そうだが譜面要素もかなりあり、実質はゾーンの手腕が目立つ。

   2015年に発表、マサダ2ndシーズンの26枚目は18人編成のビッグ・バンド。
163・John Zorn:Cerberus: The Book Of Angels Vol. 26:☆☆☆★
   抜群の演奏テクニックで、重厚でタイトなマサダを決めた。細かく子細なアレンジながら
   しっかりグルーヴしてる。アドリブ・ソロも多いがアンサンブルは緻密、
   なおかつ単なるバンドとソリストの構図でなく、もっと有機的に
   構築され、特定個人やソロでなくオケそのものを一丸となって目立たせた。
   隙が無い分、じっくり聴くほどに舌を巻く凄い演奏だ。

   同23枚目はキューバ系のアンサンブルで2014年のリリース。
162・Roberto Rodriguez:Aguares: The Book of Angels Volume 23:☆☆☆
   カウンター・メロディが飛び交うラテン構造を主軸に、アラブっぽいユニゾン風味も漂わす。
   ジャズ的なアドリブ回しが本線。さまざまな音楽ジャンルを多様に混ぜ合わせ、深みある
   強靭なグルーヴを聴かせる。演奏はタイトに決め、隙が無い。音楽ジャンルへの思い入れが
   あるほど、この盤は表情を変える。ぼくはラテンもアラブも詳しくないので、混淆した
   立ち位置のはっきりしない雑駁さが面白かった。

   同22枚目も14年の盤。11人編成のバンド、Zion80がMasadaの曲を料理した。
161・Zion80:Adramelech:The Book of Angels Volume 22:☆☆☆☆
   ロックなビッグバンドで、高度なアフロ・ファンクを奏でクレヅマー風味の楽曲を解釈する。
   幾層にも切り口を重ね、なおかつ爽快でパワフルな疾走感が抜群。
   ソロ以外はたぶん、ほぼすべてが譜面もの。マサダの自由奔放とは逆ベクトルな構築美だが、
   あまりの上手い演奏なため、新たな魅力として素直に聴けた。すごくかっこいい。

   疑似バンドの一つ、ムーンチャイルドの6枚目。2012年に発表された。
160・John Zorn:Templars: In Sacred Blood: ☆☆★
   オルガンが入り、プログレ色がグッと強まった一枚。テンプル騎士団をテーマに
   コンセプチュアルなアルバムで、パットンは歌詞も歌う。よってオカルティックな
   イメージが強まりすぎ、演奏よりコンセプトに耳が引っ張られてしまう。
   ルインズ的な急転するダイナミズムは本盤も健在なため、聴いててかっこいいが。

   7人編成アンサンブルで19世紀イギリスの詩人/画家ウィリアム・ブレイクに
   啓発のコンセプト・アルバムかな。2012年の作。
159・John Zorn:A Vision In Blakelight:☆☆☆★
   涼やかな風景とミックスを駆使した主役楽器の目まぐるしくも優美な入れ替えが
   この盤の魅力。整ったアンサンブルで、ハープとビブラフォン、ピアノが
   くるくると音像の主役を受け継いでいく。ラウンジ系からジャズまで
   幅広いアレンジが曲ごとに現れ、多彩さでのトータル・アルバムさを作った。

   無伴奏6声歌唱のジョン・ゾーンによる現代音楽。今年1月にリリースされた。
158・John Zorn:Madrigals:
   
   60年代イギリスから活動をしてるゾンビーズの近作を数枚。
   89年に"The Return Of The Zombies"で21年ぶり発表なアルバムにボートラつけ03年に再発盤、かな。
157・The Zombies:New World:☆☆
   パワー・ポップ路線が売れ線を狙うしたたかさで、単なる再結成じゃなく
   ビジネスも意識した活動と伺える。曲がりなりにもオリジナル・メンバーを集め、
   ゲスト参加ながらロッド・アージェントも参加させた、クリス・ホワイトの手腕も凄い。
   サウンドとしては甘さや大味だけど、これは本人たちの趣味かも。
   数曲では往年ゾンビーズの青白いセンチメンタリズムも漂った。
   もろ手を挙げて薦めにくいが、ゾンビーズのファンなら聴いて損は無いかも。

   上記作の後、ほぼコンスタントにゾンビーズはアルバムを発表してる。
   本作は2011年に発表のスタジオ盤。
156・The Zombies:Breathe Out, Breathe In:☆☆★
   懐メロに堕さず現役感を出したアルバム。洗練したバンド・アレンジと野暮ったいドラムの双方が
   ロッドの鍵盤とあいまって、少しばかり古めかしいパワー・ポップを作った。
   甘酸っぱい往年の印象はわずかに残してる。ヒット狙いかは別として、単なる手すさびでない
   新曲を投入してる。ぎゅっと詰まったハーモニーも良い。アージェントのセルフ・カバーも2曲あり。

   こちらは2015年、現時点の最新作かな。
155・The Zombies:Still Got That Hunger:☆☆☆★
   現役感たっぷり、なおかつベテランの凄みを見せつけた佳作。隙が無く
   聴き手の興味を後ろにそらさない。しかも若者にすり寄らず、等身大で着実なロックを作った。
   ここまで目配り効いた着実さを、新曲揃えて披露するセンスが良い。
   新しさは無いが、しぶとい魅力に引きつけられる。70歳超えて、この
   甘酸っぱさと瑞々しいバンド・サウンドを、大人の余裕で披露すとは。さすがだ。

   今年1月の発売。ソウル関係の盤で評判良いため、買ってみた。2ndらしい。
154・Anderson .Paak:Malibu:☆☆★
   雑多な要素を溶け込ませ、豪華なメンツを招いてプロデューサーも多数。
   自己承認欲求は透けるが、あまり音楽性の特徴がつかめていない。
   へにゃっと腰砕けなメロウさが通底し、リズムの着実さでクールな雰囲気を演出した。
   もっと聴きこんだら、絶賛されてる評価の理由が自分の腑に落ちると思う。
   上手いし柔軟と思うが、なんか頼りない。

   97年録音のリーダー作。サイドメンは今も交流ある水谷浩章(b)竹野昌邦(sax)ツノ犬(ds)
   といった凄腕面々が脇を固めた。
153・南博:Bird In Berlin:☆☆☆★
   鋭くも温かく、理知的だがロマンティックな相反する魅力をあっさり内包する南の
   サウンドは本盤でも聴ける。だが初期の盤ゆえか、音楽性はのちの盤に比べ
   多彩に聴こえた。方向性を絞り込まずあちこちへ食指を伸ばしてるかのよう。
   ツノ犬の奔放なドラムと、頼もしい水谷のベースを軸に隙の無いアンサンブルを楽しめた。

   スピリチュアル・ジャズを再解釈した2015年の3枚組。
152・Kamasi Washington:The Epic:

2016/8/15   最近買ったCDをまとめて。

   "Celestial inside"(2004)ぶり、2010年に発表の3rdは全曲が南博のオリジナル。
151・南博 Go There!:From Me To Me:☆☆☆
   しなやかなダンディズムが炸裂した。たっぷりとサックスが吹きまくり
   せわしなくドラムが煽る。ベースは逞しくグルーヴさせ、ピアノはクールに美しさを
   追求した。硬質で冴えたタッチのピアノを筆頭に、汚れない美学に満ちている。
   襟を正し、カッコいいことだけを演奏するジャズがここにある。

   09年発売。ティポのリズム隊+南博の強力カルテットが水谷浩章のバンドPHONOLITE ENSEMBLE
  (Miya(fl,a-fl), 小林豊美(fl), 松風鉱一(as,cl,b-cl), 松本治(tb), 平山織絵(cello))も合流した強力な盤。
150・津上健太:BOZO & phonolite ensemble:☆☆☆★
   カルテットでPhonolite入りテイクを挟み、大きなストーリー性ある世界を作った。
   自由なドラムと懐深く受け止めるベース、弾きすぎず空気を美しく彩るピアノ。
   凄腕のメンバーへ、しなやかにサックスを乗せる津上。
   さらに中盤でPhonoliteがふくよかな響きで飾った。明確に違う魅力をさまざま詰め、聴きごたえ満載だ。

2016/8/7  最近買ったCDをまとめて。

   ポーランドのクレヅマーバンドが、TZADIKから03年発売の3rd。
149・The Cracow Klezmer Band:Bereshit:☆☆☆★
   トータル・アルバムめいた構築美とドラマティックさを、タイトな演奏で披露する。
   隙の無くたおやかな世界が心地よい。ゲスト参加の女性ボーカルも、多重録音で幻想さを描いた。
   ジャズ的なアドリブや即興の瞬間よりむしろ、アルバム全体の流れに浸るほうが楽しめる。

   ブラスバンドと共演したアブドゥーラ・イブラヒムの09年の盤。
148・Abdullah Ibrahim:Bombella:
   強烈なイブラヒムの個性はすっかりスポイルされ、上品で大人なブラス・バンドに
   絡み取られた。上手い演奏だが、イブラヒムが素材の一つ程度にしかなってない。

   ロリンズが58年にコンテンポラリー・レーベルからスポット発売した。
147・Sonny Rollins:Sonny Rollins And The Contemporary Leaders:☆☆★
   スタンダードを並べ西海岸で寛いだアルバム。スリルや新機軸とは逆ベクトル、
   寛いだ穏やかで鷹揚なジャズを聴かせる。精神性や緊迫感を求めるなら向かないが、
   気楽にジャズを味わうにはちょうどいいかも。この翌年、ロリンズはまた隠遁に向かう。行き詰ったか。

   ロリンズの86年ライブを収録した87年の盤。
146・Sonny Rollins:G-Man:☆☆★
   あまり深く考えず、力任せに楽しく盛り上げたライブ盤。(1)こそフュージョン風だが
   (2)以降はラテン要素を前に出す。確かにロリンズが主役で目立つが
   サイドメンにもふんだんにソロのスペースを与えてる。ライブを録って出しの
   無造作さが前面に出るものの、当時の様子を伺うには良い。ロリンズも現役感あるし。

   米のtp奏者がピアノレスのトリオで発売した2015年の盤。数曲で3人のホーン奏者がゲストに加わる。
145・Kirk Knuffke:Arms & Hands:☆☆
   数分と短い演奏を15曲並べ、ゲストを曲によって招く。目先は変わるしフリーの
   アイディアもいろいろと匂わせた。だが圧倒的に食い足りない。妙に達観した
   聴きやすいフリージャズだし、展開の豊富さも感じられる。けれどカークの
   本領発揮まで至らない。集中してフリーに突っ込むパワーが無く上品にまとめてしまった。
   数曲聴いて、足を外に向けてしまうフリー。バーのBGMには良いだろう。

   オランダ人サックス奏者の大編成なジャズ。2015年の1stで、リーダーの彼女としては2作目になる。
144・Marike Van Dijk:The Stereography Project:☆☆★
   滑らかな耳障りだがラウンジ・ジャズに堕さない志の高さを感じる。
   弦と管でクラシカルな響きを持ちながら、ビッグバンド的な勢いは目指さず
   あくまでもしっとりした雰囲気。ソロの場面もあるけれど、アドリブよりむしろ
   オーケストレーションに興味ありそう。和音はときどき不思議に響いて鮮やかに音楽を立てた。

   ソウルに接近した女性オルガン奏者の69年のアルバム。
143・Shirley Scott & The Soul Saxes:Shirley Scott & The Soul Saxes:☆☆☆★
   当時のソウルを豪華スタジオ・ミュージシャンで安易にカバーした盤。
   演奏はかっこいいのが始末に負えない。過剰なアレンジでホーン隊が邪魔な気も。
   バトルと言うより、カラオケにオルガンをダビングめいた感じなアレンジな場面もあり。
   売らんかな、の安易な企画かもしれない。でも、演奏は悪くない。ああ、もどかしい。
   スタンリー・タレンタインと決別し、ヒット曲カバーのソウル・ジャズ路線にきっぱりと
   シャーリーが活動の軸足を移す、最初の盤。

   75年のアルバム・ジャケットだが内容は"Afro-Desia"(1975)と"Funk Reaction"(1977)からそれぞれ数曲抜き出し、
   1枚のCDにまとめた変則な編集盤。録音もオリジナルLPが発表年に
   行われた別のセッション。なぜこんな選曲か、謎だ。96年に発売の本盤と同名タイトルな再発盤を02年にリイシュー、の構図。
142・Lonnie Smith:Afro-Desia:☆☆
   ここに詳しいディスコグラフィーあるが、前者はジョージ・ベンソンやボブ・クランショーらと2管6人編成のコンボ。
   後者は当時のロック/フュージョン系のスタジオミュージシャンを集めたセッションらしい。
   前者は熱めのグルーヴ、後者は急にスマートな風景に変わる。
   あまりロニーの存在感が無く、アンサンブルの一員って大人しさがもどかしい。

2016年7月

2016/7/30   注文してたCDがようやく到着した。

   音盤で初共演、サーストン・ムーアとジョン・ゾーンのスタジオ録音によるインプロ、13年発売。
141・John Zorn And Thurston Moore:"@":☆☆★
   すべて即興。お互いの予定調和ながら、スリリングなのは確か。力任せの
   垂れ流しでなく、緩急を決めて単調にならぬようお互いに外しあってるのがわかる。
   予想通りの音像ではあるが、面白い。

   ジョン・ゾーンの疑似バンド、 Nova Expressの一環として発表された12年の盤。
140・John Zorn:The Concealed:☆☆☆☆
   作曲と即興を行き来する、ゾーン流疑似バンドの傑作アルバム。標題音楽を疑似バンドで
   演奏したと取るべきか。全員参加ではなく、弦とピアノを曲ごとに前に出し、組曲的に構築した。
   むしろサントラ風に聴くべきか。とにかく演奏はタイト。メロディは切なく、スリリング。
   演奏巧者による抜群のユダヤ・ジャズを、ゾーンの指揮でカッチリまとめた。

2016/7/28   最近買ったCDをまとめて。

   刺激的なジャズを作る5人編成の日本人バンドが、2月にリリースした2nd。
139・rabbitoo:the torch:

   ジョン・ゾーンの旧譜を数枚、入手。
   サントラ・シリーズの18弾、06年発表でバイオリン、アコーディオンなどの疑似バンド編成。
138・John Zorn:Filmworks XVIII - The Treatment:☆☆☆☆
   タンゴ要素をモーダルな解釈で、きっちりまとめた。隙の無い美しさと、自由なアドリブが
   共存する懐深さが素敵。どこまでが作曲だろう。ゾーン流の疑似バンド形式が
   見事にまとまり、ロマンティックさとスリルをカッチリしたアンサンブルで芳醇に仕上げた。

   最後のサントラとも噂される、第25弾。13年発表で、三人のピアノ・ソロを集めた。
   そのうち一人は、ジョン・ゾーン自身のピアノ・ソロ。
137・John Zorn:Filmworks XXV:City Of Slaughter/Schmatta/Beyond The Infinite:☆☆★
   ピアノ曲が続き一聴の印象はいつものゾーンだが、主となるOmri Morの鋭利なピアノが
   生み出す、緊張感と滑らかな旋律さばきはジワジワくる多彩さを秘めていた。
   ゾーン自身のピアノはさすがにリズムが危なっかしいとこもあるけれど、びっくりするほど達者だ。
   最後のロブ・バーガーによる演奏は、さすがの温かさ。ただ、すべてが譜面かもしれない。

   MASADAの2ndシーズン、Book of Angelsの第15弾で2010年の発売。
   Ben Goldberg(cl)がリーダーのカルテット編成だが、バンドと言うよりセッションか。
   サイドメンはゾーンの作品でおなじみのメンツだ。
136・John Zorn:Book Of Angels: Baal Vol. 15:☆☆
   クラリネットにピアノ・トリオな編成で、ゾーンの疑似バンドめいた馴染みの顔触れが
   揃い、セッションながらタイトに構築された演奏を楽しめる。クラ奏者の持ち味として
   疾走するテクニックと熱さがあるようで、安定しつつもスリリングな仕上がり。
   根本的な新味は無く、本シリーズ全体で見たときに埋もれがち。華が無い。演奏はいいのだが。

2016年6月

2016/6/18   最近買ったCDをまとめて。

   78年のパーラ。いささか全盛期を過ぎた頃かと、聴きそびれていた。
135・Parliament:Motor Booty Affair:☆☆★
   手慣れてあっさり、な印象。(4)のようにポップな曲もあるが
   すっかり自分らのサウンドを作り上げ、自家縮小生産な趣が全編を覆う。
   ジュニーら新世代への世代交代と、わさわさした猥雑さの整理もなされた。
   じっくり聴くと面白いが、どこかこじんまり。

   12年にポールがリリースした17枚目のソロ。いろんなバージョンがあるけれど
   2曲のボートラが入った16曲入りデラックス・バージョンを入手した。
134・Paul McCartney:Kisses On The Bottom:☆☆★
   声も出てない。スタンダード集とくつろいだ企画。もしやポールは本盤で引退を想定してたのでは。
   実際は"New"(2014)を発表、ロックのショービジネスから逃げられなかったが。
   ゲスト多数で話題性もたっぷり、オケも使うがコンボ編成でロックンロールの感覚も
   かろうじて残す。歳を重ね、ふっと寛いだアルバムを、作曲のプレッシャーから逃れ楽しく
   作りたかったのかも。ぼろぼろの歌声は危ういけれど、老人ポップスの一つの形ではある。

   08年にクリントンが多数のゲスト招いて、各種のソウルをカバーしたアルバム。
133・George Clinton Feat. Sly Stone, El DeBarge & P-Funk All-Stars:George Clinton and his Gangsters of Love:☆☆☆★
   P-Funkファン向け。ソウルのマニアならなおさら楽しめる。しかしゲストは豪華な
   たぶんお遊び的な寛ぎも内包した、ソウルのカバー集な企画盤。
   あちこちの場所で録音され、おそらく蔵出し音源集と思う。豪華なゲストを集め、
   アレンジも多彩。というか、とっ散らかってる。しかしクリントン色、P-Funkの香りはしっかり出た。
   聴きこむほどに、いろんなポイントが興味深く浮かび上がる。

   TZADIKより08年発表の3枚組。6人のノイジシャンが集まったラップトップ集か。
132・The Hub:Boundary Layer:☆☆☆★
   現代音楽のアプローチで生真面目にネットワークを介し、民主的に音楽アイディアを
   いかに盛り込めるか、を二〇年かけて実験してきた疑似グループの貴重で歴史的なコンピ。
   Disc 2には動画やテキスト・ファイルも封入し、多面的に本バンドを味わえる趣向を取った。
   音楽は抽象的で無機質ながら、奇妙なポップさを持つ。英文ライナーには
   興味深いアイディアの変遷が色々書かれてるが、ちょっと難しくて頭に入らない。
   あまり深く考えず、へんてこな電子音楽集としても楽しめる。ビート感は希薄なため
   ミニマル・テクノよりも環境音楽風に味わった。とにかく本盤は作曲者たちが
   音楽よりもコンセプトに注力してる節がある。好きに聴けるから、それはそれでいいんだが。
   
   メタル・パーカッションとギタリストの邂逅。TZADIKから08年発表。
131・Oren Ambarchi and Z'ev:Spirit Transform Me:☆☆★
   Z'evが主導権を持ち、金属質な打音の積み重なりにアンバーチがうっすらとノイズを足した。
   乱暴なノイズは皆無、じっくりと密やかかつ幻想的に響かせる残響をたっぷり味わえる。
   即興的な仕上がりだとしても、多くのトラックを丁寧にミックスした暗黒ドローンを堪能できる。

   ここから始まった。62年発売のデビュー作、もう54年も前になるのか…!?
130・Bob Dylan:Bob Dylan:☆☆★
   歌詞と当時の文化背景を踏まえず、音楽だけで聴いてしまった。滑らかで
   スピーディな歌いっぷりと、リズミカルなハーモニカとギターが本盤の味わい。
   意外とバラエティに富んでいる。さらに喉の潰し方も後年ほど派手でなく溌剌と
   してるのが特徴か。ディランのいきがりや、にじみ出るクールなかっこよさを感じられる一枚。

   81年作、キリスト教三部作の最後にあたる21thスタジオ作。
129・Bob Dylan:Shot of Love:☆☆★
   歌詞がわからぬまま聴いてるため、きちんと本盤を味わえてないと思う。
   溌剌な、ときおり荘厳なサザン・ロック。ブルージーさを前面に出し
   音楽よりも歌詞に軸足置いていそう。ただし粘っこいビートにオルガンがアクセントになった
   演奏は、それはそれで楽しい。あまり抹香臭くなく、シンプルに楽しむことも可能。

   88年、25thスタジオ作。83-87年の長きにわたる録音から寄せ集めた。
128・Bob Dylan:Down in the Groove:☆☆
   アイディアが玉成せず、試行錯誤で迷走してる。ゴスペルやブルーズのルーツと向かい合い、
   なおかつ80年代のリバーブ効かせたドラムとの融合を簡素なアレンジで図った。
   デモテープ集めいた趣きもある。10曲中カバーが6曲と、オリジナルできず苦しむ様子も伺えた。
   だがセッションを重ねたがゆえに、奇妙な五目味もみせた。

   06年の32thスタジオ作で30年ぶりにビルボード1位獲得の売れ行きだったそう。
127・Bob Dylan:Modern Times:☆☆☆★
   したたかで素直。カントリー・スタイルで当時のバンドをバックに伸び伸び提示した。
   アメリカ人のアイデンティティを無造作に表現し、過剰な装飾を取り払う。
   歌は溌剌として、演奏も締まってる。曲調は派手なキャッチーさは無いが、しみじみしぶとい。
   能天気な明るさも、むやみな諦念もない。どの辺が「モダン・タイムズ」だろう。
   古き良きサウンドを現代風に解釈したロックに聴こえる。等身大で、なおかつ巨大な
   ディランの自然体を無造作に魅せた一枚。これは、かっこいいわ。

2016/6/11  最近買ったCDをまとめて。

   14年ぶりの3rdと話題と大評価を得た、2015年発売の盤。
126・D'Angelo & The Vanguard:Black Messiah:☆☆☆☆★
   ドラッギーで危うい酩酊感漂う、情けない内省的なファンクネスを丁寧なスタジオ・ワークで
   構築した傑作。主旋律が読めない群唱をメインとした頼りなさは、
   ディアンジェロが完全にすべてをコントロールできておらず、内にこもる
   不安定さを強調した。だからこそ、本盤は美しく繊細だ。スタジオ作ならではの
   微妙で壊れそうな自意識は、ファルセットと声加工と多重ハーモニーで主旋律を見せない手法で
   逃げ道をたどる情けなさあり。本盤は、病んでいる。だが、独特の繊細さは
   プリンスの影響を強烈に感じさせながらも、独特な美しさを見せた。

   09年にノルウェーPica Diskからの10枚組に続き、本家アルケミーから12年に発売のボックス。
   アルケミーから発売な9枚のアルバムに加え、2枚のライブ音源CDと2枚のDVDを付けた、もう一つのボックス。
125・Incapacitants:アルケミー箱愚か:

   プリンスが曲提供をキーワードに未聴盤を入手。
   92年発売の1stで、ペイズリー・パークから発売。
124・Carmen Electra:Carmen Electra:☆☆
   アルバムとしては単調。プリンスの関与な視点でも、物足りない。シンプルなトラックを中心に
   ラップ調子の歌が乗るだけのため。だがおそらくプリンスがクレジット有無にかかわらず全面プロデュース。
   ヒップホップをカルメンって素材を元にいろいろ工夫してるって観点で聴くと
   色々と興味深い。トラックでのアレンジも様々なアプローチしてるし。

   92年の3rdで、オランダの女性グループ。プリンスが参加、が話題だ。
123・Lois Lane:Precious:☆☆
   プリンスの関与は単なる話題作りっぽい、あっさりしたもの。2曲はエグゼクティブ・プロデューサー、
   2曲は作曲に関与とそれなりにプリンス色は濃いのに。
   歌に癖が無くあまり魅力的に聴こえない。
   緩やかなソウル寄りのサウンドはBGMに良いのだが。

   91年の2nd。プリンスが4曲のみ関与した、アイドル・アルバム。
122・Martika:Martika's Kitchen:☆☆☆
   アイドル・アルバムながら最後まできっちり聴かせた。プリンスを見事に利用してる。
   冒頭で彼の曲を固めて最大限にプリンス色を作り上げ、次第に毒を抜いて
   ヘルシーなバラード路線へ。B面でもう一度波を作って、最後はきれいに締めた。
   名曲(3)をもゲットして、プリンスに取り込まれず素材として自らを輝かせた。そのセンスが凄い。
   楽曲もなんだかんだで、するっと聴かせる。意外に楽しめる盤。

2016/6/3  最近買ったCDをまとめて。

   78年のライブ・アルバム。ドナルド・バードとの2管編成で、ベースはボブ・クランショーでなく
   ジェローム・ハリスを起用した。
121・Sonny Rollins:Don't Stop The Carnival:☆☆
   何ともバランス悪いライブ盤だ。前半はロリンズが吹き倒し、オーソドックスから
   フュージョン風まで幅広い魅力を提示し、ロリンズ節のブランドを見せつけた。
   だが後半にバードが現れると彼を立てるあまり、ロリンズの影が薄くなる。
   アルバムとしてはロリンズ単独のほうが、メリハリつけて仕上がったのでは。
   バードとロリンズの饗宴の妙味っていうほど、二人の色合いが重なってない。

   56年の二種類セッションからアウトテイクを掘り出し、無理やり既発曲と合わせ
   61年にプレスティッジが絞り出した強引な編集盤。
120・Sonny Rollins:Sonny Boy:☆☆
   コンボ編成をシンプルに聴きたいなら、この盤は価値がある。演奏としては、
   妙に性急な吹きっぷりが荒々しく、危なっかしくはあるのだが。

   富樫雅彦、峰厚介、佐藤允彦、井野信義のフリーを得意とするミュージシャンらが
   ビバップへ真剣に向かい合ったバンドによる、91年の1stアルバム。
119・富樫雅彦 & J.J SPIRITS:PLAYS BE BOP VOL.1:☆☆☆☆
   超有名曲ばかりを真っ向から上品なジャズに料理した。ライナーを読み、初めて富樫の
   バスドラとハイハットが無いドラミングへの創意工夫と努力に気が付いた。
   音数を抜きすぎることなく、シンバルをすっと外してタム回しへ回る瞬発力が凄い。
   メンバーは安定した良演。逆に手数に雪崩れることなく、新鮮味を
   出すべく勢いとアドリブ回しに気を配ってる。

   1975年スイス・モントルージャズフェスでのカルテット編成のライブ盤。
118・渡辺貞夫:Swiss Air:☆☆☆★
   独特の野暮ったさとスピーディな応酬が、絶妙のバランスで成立した。
   アルバムを通して一つのストーリーができてる。がっつりハードバップな展開から
   リリカルに変化するところがクライマックスか。確かに最後の曲はあっさり
   フェイドアウトでもどかしい。全尺のテープ、残ってないのかな。
   フュージョンの聴きやすさより、がっつりジャズ寄り。

   75年、日本のEast Windレーベルから発表の1管ピアノトリオのカルテット。
117・Andrew Hill:Blue Black:☆☆★
   独特のひねった曲調が、不思議と寂しさを漂わせる。スイングするビートと、
   ちぐはぐな譜割の生み出すグルーヴが独特の味。パルスみたいなベースが芯かな。
   陰った和音感も奇妙な魅力を持つ。

   74年にSteepleChaseへ移籍したピアノ・トリオ盤。
116・Andrew Hill Trio:Invitation:☆☆☆★
   フリー要素をたっぷり入れたピアノ・ジャズ。暴れることや実験性の追求が目的でなく、
   スイング感やブルーズを回避の上で、どこまで盛り上がれるかを試してるかのよう。
   単なる伴奏でなく、存在感を示し続けるサイドメンをがっぷり迎え撃ち、さらに
   激しく美しくピアノを奏でるヒル。これは面白い盤だ。

   71年の作品でローランド・カークが様々な楽器を操る。バッキングはほぼドラムと
   パーカッションのみのシンプルな編成だ。
115・Rahsaan Roland Kirk:Natural Black Inventions: Root Strata:☆☆★
   ソロ演奏ゆえのストイックさが、妙にそっけない味わいを漂わせる。複数管吹きの
   分厚さを堪能するなら、むしろこの盤のほうがいいかもしれないが。
   抽象的で、フリー色が強く出た。カークならではのグルーヴィさを
   期待すると拍子抜けだが、これもカークの本質か。存分に好き放題やってる。
   リズム楽器やピアノも変にカークへ合わせず、オカズ風の立ち位置なのも
   カークの個性が強調されてよかった。

   名ギタリストがオルガンを加えた、5人編成の69年の盤。
114・Barney Kessel:Hair Is Beautiful:☆☆★
   どっちかと言えば怪盤。オルガンやギターの音色を筆頭に、のどかで鷹揚なサイケ風味が噴出した。
   コンセプト先行でケッセルはギターを弾いただけって感じもするけれど。
   抜群の演奏で、がちがちのアレンジながら滑らかなソロをとる。
   イギリス人演奏家に囲まれた本盤は、ずぶずぶのジャズではない。ジャズ・ロックなり
   サーフ・インストなり。ちょっと補助線引いた傍流の色合いが漂う。
   そのB級感をひっくるめて、レッキング・クルーの一員だったケッセルらしい演奏するさまを
   当時の風景を想像しながら、色々思い入れ込めて聴ける面白い一枚だ。

   96年に発売したDJ Katsuyaとのコラボな3曲入りミニ・アルバム。
113・DJ Hiro And 菊地雅章:Solaris:
   怪盤。菊地の真意はどこに。淡々と刻むシンセの鍵盤が菊地と思うが、アドリブを
   弾くでもなく、単なる素材になっている。時代的には早かった?いや、
   クラブの流行では特段先鋭でもあるまい。だが菊地がハウスへすり寄る必然もない。
   かっこいいハウスではある。だがそこに、菊地の顔は無い。ほんのひとフレーズ
   うねるシンセの音がある。菊地節、と言われれば確かに。しかし、なぜ?

   NYを拠点のギター・デュオ。09年に発売された。
112・Opsvik & Jennings:A Dream I Used to Remember:

2016年5月

2016/5/13   最近買ったCDをまとめて。

   再々結成の初回アルバム。とはいえすべてロバート・ポラードの多重録音な
   ソロ・プロジェクトとして製作された。実際はバンド組んでツアー出てるのだが。
111・Guided By Voices:Please Be Honest:☆☆☆★
   ソロと何が違う?聴いてるとメロディがいくぶん、こっちのほうがくっきりしてるような。
   (4)のように延々と演奏が続く場面など、遊び心もふんだんに投入した。
   ギター中心、ドラムは荒っぽいしバンド・サウンドには特にこだわってないみたい。
   けれど3リズムの曲ではしっかりグルーヴもあり。
   GbVってブランドを完全自己表現した、稀有な一枚になるだろう。

   85年に自宅録音を86年にカセットで発表の音源を、改めて秋田昌美がリマスターで今年に再発された。
110・Merzbow:Life Performance:☆☆★
   テープ・コラージュを基調だが細かいノイズが幾層にも重なり、奥行きある世界を作った。
   ミニマルに終わらず世界を揺らし続けるところがメルツバウらしい。
   ノイジーながら轟音の凄みより、細密かつ抽象的な世界観の提示を楽しみたい。
   カセットならではの詰まった音だが、細部の複雑さは十分味わえる。

   遺作となってしまった2015年のアルバム。配信専用リリースだったが、ようやくCD発表に。
109・Prince:HITnRUN Phase Two:☆☆☆☆★
   "Phase one"と対になる、生演奏と自分の多重録音を重視したアルバム。
   ほぼすべて過去数年にライブやシングルでのみ発表の曲で、まさに「まとめた」アルバム。
   おそらくこのあと、EDMに急接近の"Phase one"と合わせた次の地平をプリンスは構想してた。
   彼の死でそれを味わうことは叶わない。ああ、無念。
   地味なメロディ・ラインだが、アレンジは実に緻密。丁寧な作りが実感できる。

   ジョン・ゾーンとヤマタカ・アイが変名でTZADIKから発表した95年の盤。
108・Mystic Fugu Orchestra:Zohar:
   マニア向け。発掘SP盤を模したノイズが全編にかぶせられ、ユダヤの古代音楽に
   インスパイアされた単調な音が続く。シャレとして聴くべき盤。

   アイルランドの国民的歌手、クリスティー・ムーアが04年に出した6枚組の
   レア・トラック集。てっきりベスト盤かと思った。
   アルバムにブックレットは無く、ここからDLする仕掛け。
107・Christy Moore:The Box Set: 1964-2004:

2016/5/7   注文してたCDが到着。

   2015年にペイズリー・パーク録音でプリンスがプロデュース、各種演奏をした、ジュディス・ヒルの1st。
106 ・Judith Hill:Back in Time:☆☆☆★
   プリンスががっつりバックアップ、ぷろでゅーすというよりデュオ・アルバムっぽい
   関与度の高さだ。楽曲はすべてヒルの手で、オーソドックスな60年代ソウルを踏まえた
   メロディを唄う。だがプリンスが緻密にアレンジを施して独特なファンキーさを与えた。
   その魔法が本盤へ、隅々まで行きわたる良い仕上がり。逆に、ヒルの味が少しの隙と
   なり、不思議な中途半端さを味合わせるのが逆に面白い。

2016/5/4   最近買ったCDをまとめて。

   デュオ名義では初のアルバムで、TZADIK活動初期の95年に発売。
105・John Zorn-Yamataka Eye:Nani Nani:☆☆☆★
   スタジオ録音で二人の奔放なアイディアをまとめた。絶叫とフリーク・トーンのサックスは
   むしろほとんどない。ユーモラスなアイの声と、ギターやサンプラーまで駆使したゾーンの演奏と
   ドラムなどをダビングしたアイの、即興的なアイディア合戦が楽しめる。
   ポップではないしメロディも希薄だ。だがむやみな緊迫感が無いため、楽しく聴ける。

   76年発売、後期の作品。カートムからコティリオンに移籍し、そこで唯一のアルバムとなった。
   共同プロデューサーはデトロイトのソウル・バンドThe Politicians出身、McKinley Jackson。
   2013年のリマスターによる廉価盤で入手した。
104・The Impressions:It's About Time:☆☆☆★
   インプレッションズってブランドが邪魔をする。無心に聴いたら、洗練された
   フィリー・スタイルの好アルバムだ。演奏も楽曲も歌も力がこもってる。
   Mystro And Lyricが6曲を提供し、キャッチーな仕上がり。むやみにディスコに媚びないため
   今でも聴ける普遍的な魅力もあり。思ったより楽しめた。

   ミシシッピ出身のソウル歌手が73年発表の3rd。名盤と名高いらしい。
   2012年のリマスターによる廉価盤。
103・Margie Joseph:Margie Joseph:☆☆☆★
   タイトな演奏で滑らかな歌が詰まった。ともすればBGMに堕してしまう逆説的なアプローチだが、
   グルーヴィーな鍵盤やドラムが演奏を溌剌とさせ、彼女のちょっとざらついた歌声が
   単にきれいにまとめた、に留まらない引っ掛かりを作った。

   実はバンドは1stしか聴いたことない。今更ながら買ってみた。
   トッド・ラングレンがエンジニアを務めた70年の3rdアルバム。
   00年のリマスター盤で4曲のボートラ盤にて。
102・The Band:Stage Fright:

   邦題「南十字星」。6thアルバムで75年の発売。01年リマスター盤で2曲のボートラ付き。
101・The Band:Northern Lights - Southern Cross:

   RCのラスト・アルバム。3人編成になってしまいショックだった。90年の発売。
100・RCサクセション :Baby a Go Go:☆☆☆
   RCと思うから戸惑うのか。改めて聴くと、のちの清志郎ソロにつながるメロウで
   フォークさを前面に出した切ないアルバムだと思う。RCのブランドだと戸惑うのは同じだが。
   あまり一曲を長くせず、しみじみと歌い上げた。
   アコギのかき鳴らしが、全編を覆っていく。

   本名義では2nd、wikiの勘定だと11thソロ。98年に発売。
99・忌野清志郎 Little Screaming Revue:Rainbow Cafe:☆☆☆★
   自分のスタジオで伸び伸び作った一枚。どうにも小粒な印象が否めないが
   どの楽曲も瑞々しい魅力を持ってる。歪んだ音色でインディっぽいラフな
   ロック色を出したかったのかも。その割にアレンジは凝ってる。細かいダビングが多彩で、
   奥行きある音像を作った。決して勢い一発のアンサンブルではない。

2016年4月

2016/4/25  最近買ったCDをまとめて。

   アルバム2枚の同時再生を想定したコラボの新譜。日本盤はライブ録音がボートラだ。
98・Merzbow/Boris:現象‐Gensho:

   15年3月9日のライブを収録した新譜で、ピアノとドラム2台の変則トリオ。
97・明田川荘之・楠本卓司・本田珠也:アフリカン・ドリーム:☆☆☆☆
   ドラム2台にピアノと特異な編成へ気負わず、寛いだライブ。細かなリズムが降り注ぐ
   複雑で柔らかいビートが心地よい。いわゆるテンション上げた叩き合いの
   激しさでなく、穏やかに慰撫する優しさが溢れてる。ピアノのタッチも柔らかく、懐深い温かさ。

   元GbVの代表、ボブ・ポラードの22thソロが新譜で出た。
96・Robert Pollard:Of Course You Are:☆☆☆
   バンド形式でなく、リズムが加わったアレンジでもSSWっぽいアレンジに感じる。
   チェロをつかったり、サイケな空気を施したり、ギター・ロックに留まらない
   アレンジも、プロデューサー兼楽器演奏のニック・ミッチェルは採用した。
   ボブの節回しは相変わらず、ちょっと瑞々しい。あまり派手にアレンジで
   楽曲を盛り上げず、淡々としかしバラエティを少し意識してアルバムを作った。

   ジョン・ゾーンの旧譜をいくつか。まずこれは映画音楽の第23弾で08年の発売。
95・John Zorn:Film Works XXIII - El General:☆☆☆
   ラテン風味の端正でミニマルなフレーズを基本に、おもむろなアドリブが現れるアレンジを多用した。
   ピアノ、ギター、ビブラフォンとそれぞれがメロディを支えられる編成が音楽にふくらみを持たす。
   けれどもロブ・バーガーのセンチメンタルな響きが根底を担うかな。
   ゾーン流の疑似バンドによる、心地よいアンサンブルだ。

   ギター・トリオによる疑似バンドの作品で、2014年の発表。
94・John Zorn:Valentine's Day:☆☆☆★
   "Enigmata"(2011)の楽曲を、エレキギターとベース奏者をそのままにドラムを入れて
   より即興ハードコアっぽい肌触りで迫力増して決めた再演盤。
   冒頭の入りは全曲同じ。かなり譜面要素が強そうだ。
   セリー音楽をエレキギターの歪みで、奇妙な親和性を持たせたのが前作のコンセプト。
   ディストーションの凄みが、複雑さを混沌さに翻訳してる。本作はドラムが加わり
   よりインプロ好きには馴染む、とっ散らかった音像に仕上がった。

   Masadaから拡大発展したラウンジ・バンド、ドリーマーズがらみの作品。09年発表。
93・John Zorn:O'o:☆☆☆★
   相変わらずドリーマーズは聴きやすく、聴きこむほどに魅力を増す。
   野鳥の素描をたくさん載せたブックレット付。おなじみChippyのデザインが素敵だ。
   ラウンジ風味のサウンドは本盤もばっちりで、涼やかでテクニカルな演奏を
   たやすくきめる凄腕がそろった。ドリーマーズは盤ごとの音楽的な違いをよくわかっていないが、
   本盤ではいくぶんタイトさやポリリズムなどビート的な展開を強調してる気がする。

   ゾーンの70年代後半に作曲したギター作品、"The Book of Heads"を取り上げた15年の盤。DVDつきだ。
92・James Moore:James Moore Plays The Book of Heads:☆☆☆★
   DVDが主でCDはサントラ。図形楽譜を丁寧に演奏重ねてく、風景を収めた映画仕立てのDVDを
   見てこそ、本盤への親しみがわく。抽象的な音像をどう処理し、真摯に向かい合ったか。
   本DVDを見て、初めてこの楽曲の魅力を知った。即興音楽は現場、せめて映像あってこその見本だ。

   中村とうようがMCA音源をもとに編纂した97年のコンピ。二人の歌姫を取り上げた。
91・Rose Murphy/Cleo Brown:Two Happy Piano Girls:

2016/4/1   最近買ったCDをまとめて。

  まずはここ半年くらい、集中的に聴いてるTZADIK盤。2015年発売、イクエ・モリのソロ。
90・Ikue Mori:In Light of Shadows:☆☆☆★
   一見、無秩序な電子音集。だが侘び寂びに通じる余裕と緊迫を同居させる
   懐深い構造に、じわじわと惹かれていった。一つのテーマでなく、さまざまなアイディアや
   モチーフを集めた、まさにオムニバスみたいな作品。この当時のイクエ・モリの
   心象風景や興味の対象を作品と作りだめ、まとめたかのよう。

  ここ数ヶ月、集中的に聴いてるソニー・ロリンズの盤を何枚か。
  数度目の隠遁前、フレディ・ハバードを相棒の二管で、ピアノレス。
  コルトレーンのリズム隊、ジミー・ギャリソンとエルヴィン・ジョーンズを迎えた66年の盤。  
89・Sonny Rollins:East Broadway Run Down:☆☆☆★
   メンバーからの激しい斬り合いを期待すると拍子抜け。むしろロリンズはコルトレーン色を
   自分流に解釈狙ったと思える。特にB面はオーソドックスで、ほんのりラテン風味と
   まさにロリンズの好みを丁寧に披露した。フリーなバトルでなくリズム隊の幅広さと
   ぶれないロリンズの様子を、見事に封じ込めた一枚と思った。

   76年の盤でリー・リトナーやビリー・コブハムなどを招いたフュージョン寄りの盤。
88・Sonny Rollins:The Way I Feel:☆☆
   ロリンズのソロってより、ロリンズが全面参加したフュージョンってほうが素直に
   楽しめるかも。すご腕ミュージシャンを揃えたサウンドは、カラオケでロリンズが吹いてるかのよう。
   ラテン風味などロリンズの色も出てるし、ドラムをはじめとした名手を味わうのも良いが。

   近年のロリンズの新譜はずっと、過去のライブ音源をまとめたコンピ。
   本盤は14年発売の第三弾で、01年から12年までのライブから抜粋した。
87・Sonny Rollins:Road Shows, Vol. 3:☆☆☆
   現役感があり、楽しめた。ややこしいことを考えず、のびのびと吹きまくるロリンズがいっぱい。
   選曲や演奏を細かいこと調べ始めると興味深い。その感想は、こちらで。
   80歳でも枯れずにリーダーシップを明確にとる、ロリンズの意思の強さが凄い。

   このところ集中的に聴いてるカーティス・メイフィールドの未聴盤。
   78年のリリースで、ディスコ寄りのアルバムらしい。
86・Curtis Mayfield:Do It All Night:☆☆
   もろにディスコ調子な前半は、カーティス自身が豪華なトラックに埋もれて
   全く似合ってない。カラオケを聴いてるかのよう。やはりだめだなと思わせて、
   終盤三曲のカーティスがミックスした楽曲で盛り返す。やればできるじゃん、と。
   この三曲が本盤の普遍性。カーティス流のディスコを、見事に昇華してファンキーに提示した。
   アルバム一枚で二面性を見せる、何とも複雑なアルバム。終盤三曲でアルバム1枚仕上げて欲しかった。

   77年の発表で、ブラック・ムービーのサントラを担当した。
85・Curtis Mayfield:Short Eyes:☆☆★
   予想以上に楽しめた一枚。メッセージ性をなくし、気軽に初期カーティスの質感を
   バラエティ豊かな曲調で封じ込めた。歌ものがメインだし、寛いだニュー・ソウルとして心地よく聴ける。
   確かにちょっと、曲の詰めは甘いかな。メロディの力が弱い。

   11thソロで、79年に発売の本盤はNY,フィリー、シカゴの三ヵ所で録音した。
84・Curtis Mayfield:Heartbeat:☆★
   カーティスとしては、やはり弱い。NYやフィリーの力を借り、売れ線模索の試行錯誤だ。
   一方でキャッチーなメロディーがいくつか現れる派手さも。
   さらにシカゴ流にNYやフィリーを解釈したのがシカゴ録音では、とも思ってきた。
   カーティスのミュージシャンの矜持と、カートム経営の成立へなりふり構えぬ経営者の相克盤だ。

   14thと15thソロをカップリングした再発盤を入手。
83・Curtis Mayfield:Love Is The Place/Honesty:☆☆☆★
   あまり評価されない二作をまとめて聴ける、ちょうどいい盤。カーティスの偉大さを期待だと物足りぬだけで
   単にAORソウルとして聴いたら、双方とも悪くない盤だと、初めて知った。

"Love Is the Place" (1982) ☆☆☆★
   カーティスの作品と思わなければ、とてもよくできたAOR盤だ。シカゴからSSW風まで
   多彩なアレンジを爽やかに詰め込んだ。スタジオ・ミュージシャンによる練られた演奏も
   カーティスの歌声も、きれいにまとまってる。でも、カーティスらしくない。
   ほぼすべて彼のオリジナル曲なのに。BGMには最適なアルバムだ。

"Honesty" (1983) ☆☆☆★
   昔なじみを集めて、多分伸び伸びと作ったソウル。70年代回帰を
   シンセ取り入れたアレンジで再構築した。だが弦や管も投入、むやみに電化してない。
   時代と遊離は否めないが、悪くないアルバム。楽曲も楽しい。特に(2)が好き。
   とはいえ完全に自己の世界に潜らず、中途半端なところもあり。

   ちょっと今、気になったシカゴ・ソウルの歌手。英KENTが07年に発表の
   LP"Speak her name"に、未発表曲数曲を含むボートラ10曲を足した、丁寧なリイシュー。
82・Walter Jackson:Speak Her Name: The Okeh Recordings Volume 3:☆☆☆
   大人向けの落ち着いたポップスって志向のアルバムなため、熱気や鋭さは抑えられた。
   豪華なオーケストレーションに負けず、ハイトーンを伸びやかに披露する歌声が素敵だ。
   ポップス寄りとスタンダード側の間みたいな選曲。アレンジャーはセッションごとに
   異なりバラエティに富んでいる。この年になるとこういうソウルも素直に楽しめた。上手い歌だ。
   ボートラも聴きごたえあり。リイシューとしては非常に良質な仕事。さすがKENT。

2016年3月

2016/3/31   最近買ったCDをまとめて。

   02年発売、現代音楽シリーズ。弦楽3重奏にピアノ編成の室内楽か。
   ゲストでWadada Leo Smith(tp)のクレジットもあり。
81・Alvin Singleton:Somehow We Can:☆☆☆
   現代音楽の硬質なスリルは全編に漂うが、根本が温かいメロディとふくよかな和音感のため
   素直に聴けた。ロマン派に通じる荒々しい勢いと断片に留まるが旋律の操りも美しい。
   編成の違う4曲を収録したが、エレクトリック五弦ビオラの独奏曲、(3)が最も楽しめた。
   ワタダが参加のtpとpの(2)のデュオもインプロっぽくて悪くない。
   けれど、彼の手柄か作曲の手腕か分かんないのが、ちょっと惜しい。

   07年発売の現代音楽シリーズより。小編成のオーケストラかな。
80・Derek Keller:Impositions And Consequences:
   エレキギターが響く現代音楽は、ロックを中途半端に取り入れ、どっちつかず。
   アメリカ人風の合理主義が、むしろ安っぽく感じてしまう。ファイルカード的な
   断片を積み上げ、アジアの精神性を表層だけかっぱらい、その場限りでまとめたかのよう。
   どうも軽薄で、深みが無い。もっと聴きこめば印象変わるかも。

   インディ・ソウルを聴きたくなり、適当に買った。
   オハイオのゴスペル・カルテットで、04年の1st。
79・Half Mile Home:The Moviment:
   打ち込みのトラックに今一つ華の無いメロディが淡々と続く。声質の違うボーカリストの
   マイク・リレー的を聴くのが味か。聴きづらくはないが、印象に引っかからず、スルリ抜けてしまう。
   何か所かきれいなメロディがあるけれど、いいとこ探しするのもしんどい。
   終盤ではクワイア風のアレンジも登場し、今一つ散漫で冗長な仕上がりだ。

   オハイオのボーカル・トリオ。10年発売、5thかな。
78・Deep3:Blueprint 2 Love:☆★
   キャッチーなメロディをつぎはぎし、打ち込みビートでシンフォニックにアレンジ。
   オートチューン通したケロ声でベタッと潰れたマスタリングと、どれもが10年代風で
   昔ながらのソウルを求めたら拍子抜け。中途半端にメロディはきれいだが
   どうも安っぽくて楽しめず。

   ドノヴァン・ジャーメインが設立した90年代ダンスホール・レゲエのレーベル、
   ペントハウスの作品を35曲つなげたmixCD。発売年度が不明だが90年代初頭かな?
77・V.A.:Pentohouse Party Mix vol.1 :☆☆
   つなぎがきれいだし、同じBPMで軽快に延々と続くあたり気持ちいい。
   途中で飽きるのが難点。レゲエに詳しくないからな。大ヒットのキャッチーな(1)から
   すいすい流れる本盤は、BGMにぴったり。おおざっぱなところもあるが、
   根本的には滑らかで陽気な雰囲気が楽しい。

2016/3/19   最近買ったCDをまとめて。

   驚きの発掘音源。提供曲を自分で歌った、貴重なテイクがまとめられた。
   死後ゆえの発表は悲しいけれど、聴ける嬉しさも。うーん、悩ましい。
   2016年の3/21、ナイアガラ記念日に発売された。
76・大滝詠一:Debut Again:

   ひさしぶりの7thフル・アルバム。今年の1月、既発シングルを中心に発表。
   オリジナル・アルバムは"Me-imi"(2004)、12年ぶりか。
75・岡村靖幸:幸福:

   TZADIKをごそっと。まず総帥ジョン・ゾーンのオルガン独奏の第三弾、15年の発売。
74・John Zorn:The Hermetic Organ Vol. 3. Paulos Hall, Huddersfield:☆☆★
   暗黒パイプオルガン即興の第三弾は、冒頭から強烈な低音クラスターノイズが轟いた。
   高音倍音まで含め、単なる楽器に加えノイズマシンとして、ゾーンはパイプオルガンを
   操った。多少なりとも旋律感ある場面もあるが、根本はインプロで
   取り留めない。けれどパイプオルガンの発音機能を隅々まで使いこなす
   演奏力とアイディア、表現力の幅広さは素晴らしい。
   音楽としては少し取っつきづらいが、非常に有意義な作品だ。

   13年発売。ナチ占領下のイタリアがテーマらしい。大編成ジャズかな。
73・Barbez:Bella Ciao:
   ユダヤ古代礼拝音楽をベースにしたプログレ的なインスト。アドリブ要素は薄く
   構築された音楽だ。ユダヤ人の哀愁がテーマで、なかなか異文化に取っつきづらい。
   聴きづらくはないが、価値観とセンチメンタリズムに親しみ持てるかがカギ。

   14年発売、作曲家シリーズ。現代音楽の室内楽集のようだ。
72・Brentano Quartet & Sarah Rothenberg:Picker: Invisible Lilacs:

   99年発売。今年1月にTZADIK再発盤が出たが、これはオリジナル盤のほう。
   テナーサックス奏者のコンボ・ジャズか。
71・Glen Spearmann:Blues For Falasha:☆☆☆★
   前半のアフリカ的な雄大さと、後半のフリーなジャズの対比がドラマティックな組曲形式のアルバム。
   長尺セッションを物語的に仕立て、単調な力任せのインプロに陥らぬ聴きごたえを出した。
   前半と後半の落差は凄いが、通して聴くほうが本盤の味が良くわかる。

   14年の発売で、チェロ奏者で現代音楽作曲家による、弦楽四重奏盤。
70・Ha-Yang Kim:Threadsuns:☆☆☆
   エキゾティックな酩酊と、無機質なミニマルさ。そして通底する熱い旋律感。
   多彩な印象を持たせる、精妙な現代音楽の弦カルだ。あまり期待せずに聴き始めたが
   第一楽章の途中から、どんどん音楽に引きこまれた。雄大な世界と
   瞑想する強い意志の漂う世界観が美しい。

   13年に発表した、ギター独奏の盤。
69・Henry Kaiser:Requia And Other Improvisations For Guitar Solo:☆☆☆★
   曲ごとにギターを持ち替え、ダビングなしの複雑怪奇な音列を即興で作り上げた。
   むちゃくちゃなテクニックと豊富なアイディアにやられる傑作。
   抽象的な楽曲が多く、メロディよりむしろ爪弾きから拡大してく楽曲が多い。
   ミュージシャンへの思いを楽曲から空想するもよし、素直に音の揺れへ身を任すもよし。
   どちらにしても楽しめる。奥深い、シンプルな音楽が詰まった傑作。

   14年に発売した、現代音楽シリーズの弦楽曲。
68・Matthew Barnson:Sibyl Tones:☆☆☆★
   鋭利な雰囲気で神経質な畳みかけに満ちた、三曲の弦楽四重奏を収めた。
   風雅や寛ぎは無いが、緊迫した音列のすさまじさを味わうにはいいかも。
   特殊奏法もあるし旋律や和音感は希薄だが、不思議とロジカルな聴きやすさがある。

   トリオ編成でボブ・ディランのカバー集な、06年の盤。
67・Jamie Saft Trio:Trouble - The Jamie Saft Trio Plays Bob Dylan:☆☆☆★
   ディランの作品をマニアックな選曲で、原曲を大切にしつつ大胆にピアノ・トリオにて解釈した。
   奔放で確かなテクニックの演奏が、ブルージーなディランの要素をぐっと前に出す。
   ディランへの愛情と、激しく崩す無造作さが見事に合致した傑作。

   13年発表、ギター奏者がリーダーのトリオ編成。
66・Marco Cappelli Acoustic Trio:Le Stagioni Del Commissario Ricciardi:☆☆☆
   アコギ・トリオでギターが主役な立ち位置は明確。鋭くもたっぷり揺らすグルーヴに
   支えられ、抜群のテクニックで盛り上がるラウンジ系ジャズは、ゾーンの疑似バンドに似た
   スリルと心地よさを提供した。

   99年の盤で、cl/ss奏者のリーダー作。ゲストでマーク・リボーが参加。
65・Marty Ehrlich:Sojourn:☆☆☆★
   チェロとベース、ClかSSの素朴なアンサンブルで、様々な表情の切なさを表現した。
   ゲストなはずのギターもすっかりアンサンブルに溶け込んで、絶妙の気の合いっぷり。
   かなりの部分が即興と思うが、互いに呼吸を合わせ整った構築度を魅せる。
   美しく抒情性にしびれる。日本的な情感を連想する(3)が予想外で面白かった。

   フリー系ドラマーがTZADIKでの3作目、98年発表のドラム独奏な盤。
64・Milford Graves:Grand Unification:☆☆☆☆
   ドラムのみの純粋なリズムの奔流が味わえる、大傑作。夾雑物を排しアフリカの雄大さが
   ごく自然にグレイヴスの太鼓から現れる。連打は強打でなく、荒々しさより
   しなやかさを感じた。一応作曲作品らしいが、小賢しい知性はいらない。
   とにかくこのビートの温かいうねりに身を任せたい。

   97年発売で、二管編成のクレヅマー・ジャズ盤のようだ。
63・Naftule's Dream:Search For The Golden Dreydl:☆☆☆
   クレツマーを鋭くキメの多いプログレ的なジャズに仕立てた。抜群の演奏力の聴きやすさと
   チューバやトロンボーン、クラリネットの柔らかい響きに騙されるが、
   かなり複雑なことを平然とこなしている。ユダヤ人のアイデンティティと
   整ったアンサンブルのスリルを見事に融合させた爽快な盤。

   13年発表の現代音楽集で小編成オーケストラ作品かな。
62・Gloria Coates: At Midnight:☆☆☆★
   編成を変えた小品5曲を収録した、極上の室内楽集。メロディの起伏はむしろオーソドックス、
   倍音をがつんと強調したリバーブと幅広くも奥深い音色の連発に惹かれる。
   暗黒幻想な世界観は、たしかにゾーンが好きそうなオカルトに通底する神秘性あり。
   予想以上に楽しめる一枚だ。

   突き抜けたミュージシャンを紹介のシリーズ、Spectrumからの発表で14年に発売された。
   イクエ・モリとジーナ・パーキンスのバンドPhantom Orchardの拡大編成。
61・Phantom Orchard Ensemble:Through The Looking-Glass:☆☆☆★
   曲ごとにアプローチは変え、若干の密室的なアンサンブル志向で共通性を持たせた。
   滑らかで繊細で、不可思議で幻想的で浮遊する。つかみどころ無く、しかしまとわりついてくる。
   面白い音楽像がいっぱい詰まった楽しい盤。
   メロディとノイズが並列し、電子音と生楽器がごく自然に溶け合った。

   07年発売、TZADIKで馴染みのシロ・バチスタ(per)を招いたンビラ奏者の盤。
60・Richard Crandell:Spring Steel:☆☆★
   パーカッションはあくまでゲスト扱い。本命はンビラの独奏だ。硬質で
   アンビエントかつミニマルな響きはテクノのほうに親和性あり。
   夢見心地な機械仕掛けという、相反する要素をたやすく一枚に封じ込めた。

   95年に彼が唯一、TZADIKに残した作品集。
59・高橋悠治:Finger Light:☆☆★
   ぱっと聴きは日本情緒あふれる古典音楽。しかし高橋のWebにある譜面眺めながら
   聴くと、奏者にかなり自由度を与えた実験音楽集とわかる。
   日本人ゆえの親しみ持った音色が、いかに凛々しく操作されてるか。その味わいを
   楽しむほどに、多分この盤は魅力を増す。最終曲のピアノ独奏も、アイディアと奔放な即興力が興味深い。

   95年発表、初TZADIKリーダー作で、すべて巻上の声だけで作られた。
58・巻上公一:口の葉:☆☆★
   歌も歌詞も意味性も排し、口と息と唇と舌でいかに多彩な音を出せるか、を軽々と披露した。
   アイディアの多彩さと自由な発想にしびれる。音楽的にはビート性が希薄で、
   とことん抽象な世界を描いた。アルバム一枚を作り上げる集中力は凄いが、
   ストイックな巻上のボイス世界を受け入れる覚悟が、聴き手にも必要だ。決して、甘くはない。

   ライブ感想を日記で書き続けてる、ロリンズの旧作を色々と入手。
   復帰後にRCAビクター時代の2作目で、3曲がジム・ホールとのセッション。
57・Sonny Rollins:What's New:☆☆☆
   さまざまなラテン・ビートに近づいたジャズ。個々のセッションは力こもったアドリブ聴けるが、
   アルバム全体では何とも散漫なアイディア満載の出来。プロデューサーが仕事してない。
   ラテン・ジャズの実験をまとめたデモテープみたいな印象を受ける。

   91年に米Bluebirdで発売のコンピ。内容はドン・チェリーとの共演ライブ
   "Our Man In Jazz"(1962)に、同時期63年の編集盤"3 In Jazz"(1963)の曲をまとめた。
   後者もチェリーと共演で、ベースがヘンリー・グライムズの編成だ。
56・Sonny Rollins:On The Outside:☆☆
   ボートラ扱いな"3 in Jazz"は小気味よくまとまって、良いセッションだった。
   冗長なフリー寄りヴィレッジ・ゲイト音源も、"Our Man In Jazz"として抽出されると
   長尺フリーに挑戦が素直に聴こえる。LPの商品化な意識が滲むせいか。
   ロリンズのキャリアだといまいちだが、当時のチャレンジを伺うようすを楽しむ盤。

   64年の音源を集めたコンピ。"The Standard Sonny Rollins"(1964)収録の
   音源を軸に、当時の未発表音源をまとめ95年に米Bluebirdが発表した。
55・Sonny Rollins:Sonny Rollins & Co. 1964:☆☆
   マニア向け。64年のスタンダード録音を集めたが、既発3枚のLPから収録の一方で
   全貌を伺える編集になっていない。その割に、本盤収録は微妙に編集違いの音源もあるようだ。
   肝心のロリンズが危なっかしいサックスを吹いており、アドリブはまだしも
   音色の頼りなさがもどかしい。迷走を感じてしまう。

   66年発売、インパルスからの2作目。英の同名映画サントラの音楽監督を担当。
   オリバー・ネルソンにアレンジと指揮を任せ、10人編成コンボを披露した。
54・Sonny Rollins:Alfie:☆☆☆
   まずはオリバー・ネルソンの精妙なアレンジにしびれる。豪快なロリンズのサックスを
   整ったホーン隊のリフと、スパッと変わる場面展開で洗練されたジャズを作った。
   66年にしては古めかしい、昔ながらの穏やかなジャズ。ロリンズのサックスは
   時に猛烈に荒っぽいが、それも味とするべきか。
   サントラでなく、自作を大胆に解釈した映画に便乗作とも言える商売っ気なアルバム。

   72年にMilestone移籍の初作品。盟友ボブ・クランショー(b)を軸に曲ごとにメンバーを変えた。
53・Sonny Rollins:Sonny Rollins' Next Album: ☆☆☆★
   丁寧な演奏と五目味の多彩なアレンジで、時代に寄り添いつつロリンズの
   ブランド・イメージも崩さない。それでいてソプラノ・サックスの初披露など
   こだわりも見せる。新味よりも健在さと現役感を強調した。新味とは別次元で、
   ロリンズの幅広さと貪欲さを味わえる、聴きごたえある良いアルバムだ。

   85年の完全テナー・サックス独奏なライブ盤。
52・Sonny Rollins:The Solo Album:☆☆☆
   完全なテナーソロが、フリーとは違う次元で約一時間にわたって続く。
   ロリンズの練習風景を見てるようで、非常に興味深い。もちろん独りよがりでなく、
   パフォーマンスとして成立してる。自らを目立たせることに腐心したロリンズの
   大きな挑戦であり、到達点の一つ。色々と考えさせる演奏だ。

   00年に発表したスタジオ作。ボブ・クランショー(b)とステファン・スコット(p)に
   ドラムを曲ごとに二人起用。さらに2曲でtbを招いた。
51・Sonny Rollins:This Is What I Do:☆☆
   70歳のロリンズが気心知れたメンツを集め、のびのびと吹いたアルバム。
   新奇性は無いが、ロリンズ節を枯渇させず生き延びた、鷹揚な存在感で聴かせる。
   20代の若造じゃない、ロリンズだ。時代を潜り抜けた歴史あってこその、寛ぎ。

   98年発表で二種類の編成の演奏を収めたスタジオ作品。
50・Sonny Rollins:Global Warming:☆☆
   ロリンズにしては珍しくブルージーさを強調したアルバム。新奇性は無いが、
   のびのびと独特の奔放でメロディアスなソロは健在、円熟と貫禄を示した。
   バンドも着実にロリンズを支え、派手さは無いが心地よく聴けるアルバムに仕上がった。
   ベテランならでは、のアルバムだ。肩の力抜けてるが、おざなりじゃない所がさすが。

2016/3/12 久しぶりにレコ屋へ行ってきた。

   まず、ソニー・ロリンズを何枚か。
   これは62年7月27-30にドン・チェリーらとのセッションを収めた6枚組。
   当時"Our Man in Jazz"としLP1枚で3曲を発表。その完全版とし2015年にリイシューされた。
49・Sonny Rollins:Complete Live At The Village Gate 1962:☆☆☆★
   四日公演中二日目がベスト、かな。まとめて聴けるゆえの比較もできて面白かった。
   CD6枚のボリュームで4daysの様子を伺える、良復刻。けれど収録内容から見て、
   初日の別セットテイクや、3日目の3rdセット、4日目の1stや2ndセットの欠落音源っぽい
   存在などが、収録時間から伺える。この日の生々しい状況を記した記録はあるまい。
   長尺で奔放に吹くロリンズと、遠慮がちなチェリー。手数は多いがちぐはぐ気味のリズム隊と
   かなり試行錯誤さが伺えるライブだったと思う。だが手を抜いてはいない。

   65年のライブ音源をインパルス!が78年に発表した。ピアノがトミフラ、
   なぜかドラマーが二人クレジットある。
48・Sonny Rollins:There Will Never Be Another You:☆☆★
   線が細いけれど、ロリンズ節は聴ける。ラフな録音を気にせず、寛いだ当時の様子を
   味わうには貴重なライブ盤だ。好き放題吹いてるテナーと、着実に固める
   サイドメンらの対比が、むしろ息の合ったアンサンブルになってる。

   77年発売のリーダー作で鍵盤がジョージ・デューク、ドラムがトミー・ウィリアムズ。
47・Sonny Rollins:Easy Living:☆☆★
   構築されたバッキングに奔放なサックス。音色が上ずり気味とはいえ、ロリンズ節は聴ける。
   しかしフュージョンに媚びたアレンジが今となっては古めかしい。
   ワンホーンにこだわった独立独歩な過去のロリンズが嘘のように、鍵盤やエレキギターに
   たっぷりスペース与えたアレンジも、ちょっと納得いかない。
   良い演奏や味わい深いソロが聴けるのは名盤の必要条件だが、十分条件ではない。
   ロリンズが今一つ、ぶれているように聴こえてしまう盤。演奏は上手いけども。

   TZAIK盤。00年発売のカルテット編成でドラムがデジョネット。
46・Wadada Leo Smith:Golden Quartet:☆☆
   涼し気で雄大なフリージャズを、鋭くタイトに仕上げた。ディジョネットを筆頭に激しく
   バトルの場面もあるが、絡み一辺倒でない個々人の持ち味を生かした演奏。
   ましてレオ・スミスはむやみに釣られず、ゆるやかなフレーズを伸び伸び膨らませた。
   音だけだと中心がわかりづらく、集中力が必要。ライブで見たかった。呼吸が合えば
   こういう演奏は、すごく刺激的に聴けるはず。

   風巻隆とKalle Laarの双頭リーダー名義の90年発表。短い尺で全30曲、
   トム・コラ、E#、クリスチャン・マークレーなど豪華メンバーが参加した。
45・Takashi Kazamaki & Kalle Laar:Return To Street Level:☆☆★
   順列組み合わせで痙攣するように乾いた短い即興が、くるくる入れ替わるNYスタイルの即興。
   グルーヴでなく単発パルスを強引にまとめ上げてる感じ。一応、風巻はビート的な
   物は提示するが、テンポキープはさほど意識しておらず、ゲスト・ミュージシャンらも
   伸び伸びとノイジーなフレーズをばらまいてる。この手の音楽はライブのほうが面白いけれど
   技巧をひけらかさない即興のアイディア応酬なテクニック合戦は、やはり面白い。
   プロデューサーのE#が気持ちよさそうに暴れてる。

   ジャズ喫茶で当時大ヒットというピアノ・トリオ。73年のアルバムで
   これは90年のリイシュー。ボートラ4曲が収録された。
44・Duke Jordan:Flight To Denmark:☆☆★
   左手をベタッと押さえるピアノ。ベース・ラインともぶつからず、安定感を出している。
   シンバルも武骨なタッチで、素朴に叩く。この盤はベースの落ち着いたパルスと
   右手のピアノがリリカルなフレージングで、穏やかな雰囲気を演出した。
   決して指を小奇麗に回さず、ピアノはじっくりソロをとる。メロディが素敵だ。ほとんどが自作曲。
   でもスタンダードでのこじゃれた小粋さも良い。
   CDはボートラの別テイクが連続して並んでおり、興を削ぐ。曲順変更の設定して聴くことをお勧めしたい。
   個人的な好みだと、グルーヴにも行ききれず、欧州の硬質なノリとも違う。どっちつかずが物足りない。

   ベルリンとウィーン在住のギターとPCのデュオ。本盤が1stで00年発表。
43・Christof Kurzmann / Burkhard Stangl:Schnee:☆☆★
   静かでねちねちと音が沸くアンビエント・ドローン。アコギが主役でなく
   電子ノイズの色付けに使われている。けれどもときおり現れるメロディの断片が
   変化の少ないこの音楽へ、見事な彩りを付けた。さりげないギターの
   抽象的な爪弾きと、単調ながらたまに音が足されるノイズ。
   不思議な透明感と広がりある、心地よいノイズ作品だ。
   全4曲、アルバムとして単調にならぬよう、バリエーション持たせた構成もにくい。
   むしろ長尺ドローンが似合いそうなのに。あえてメリハリを付けた。わずかながら。

   08年NY録音のフリージャズで、サックス2管のカルテット。
42・Ken Filiano & Quantum Entanglements:Dreams From A Clown Car:☆☆
   ベースを軸に、淡々な音像のフリー・ジャズ。斬り合いよりメロウでおっとりした
   構築美をもつ。二管はテーマをきっちり吹き、譜面要素もあり。
   どこか抒情的なコントロールかつ端正で確かなテクニックのサウンドだ。
   一曲が8〜11分とそこそこ長めだが、あまりダラダラせず曲をまとめた。

   90年発売のコンピレーション。当時の尖鋭バンドが色々参加してる。
41・V.A.:Live At The Knitting Factory: Volume 4:☆☆☆
   26年たった今、本盤の顔触れや演奏は少々小粒ながら。確かな演奏技術と
   編成に工夫を加え、新たな音楽を産みだそうと試みる気概が詰まった。
   聴いて損のないアルバムな一方で、突出する一曲まで至らなかったのも確か。

   ブラジルの歌手パウリーニョ・モスカが、03年発売の7thソロかな。
40・Paulinho Moska:Tudo Novo De Novo:☆★
   アコースティックなアレンジ中心に、比較的素朴なムード。彼の盤を
   これしか知らず比較できないが、オーソドックスにとどまらぬ尖ったところも若干あり。
   けれど今一つのめりこめず。

2016/3/11   最近買ったCDをまとめて。

   TZADIKの旧譜を入手。
   15年発売。ブラジル音楽を軸のバンドによるゾーン作品集。
39・John Zorn:Forro Zinho: Forro In The Dark Plays Zorn:☆☆☆★
   ゾーンの過去曲をブラジル・ラウンジ風にまとめた一枚。ユダヤ色のアグレッシブさを
   抜いて軽やかに仕上げており、演奏の確かさも相まって心地よく聴ける。
   しかしアレンジや解釈の違いが面白いな。

   ゾーンの疑似バンドの一環で、ピアノ・トリオな編成だ。14年の盤。
38・John Zorn:In The Hall Of Mirrors:☆☆☆
   書き譜ピアノに即興ビートをぶつけた、超絶技巧的なピアノ・トリオ。
   ミニマルなロマンティシズムと、ジョン・ゾーンらしい激しい跳躍が交錯する。
   ひねりまくったコンセプトを、リズムやピアノの絡み度合いに着目し聴くのが楽しい。
   主導権はだれだろう。ピアノを軸にリズムも奔放にはじけた。

   02年の2ndリーダー作で、NYのミュージシャンを集め様々な要素を織り込んだらしい。
37・Jamie Saft:Breadcrumb Sins:☆★
   ほぼ自分の多重録音。密室的なつかみどころ無い、ビートの弱いラウンジ風のサウンドが続く。
   ボーカルを入れたり目先は変えようとしてるが、どうも自己へ埋没する色が強いため
   じっくり聴きこまないと、この音楽は魅力がつかめない。

   tp奏者が編成を変えつつ独自のユダヤ・ジャズを表現するディアスポラ・シリーズの
   一環で02年の発売。サム・リヴァースのサックス・トリオを共演に据えた。
   編成だけ見るとMasadaと一緒だな。
36・Steven Bernstein:Diaspora Blues:☆☆
   フリージャズ・トリオと絡み、むせび泣く切ないジャズを提示した。インプロに頼らず
   きっちりアレンジした楽曲の上で、演奏がフリーに突き進む。あまり爽快な
   サウンドではないが、凝ったアイディアと確かな演奏力は味わえる盤だ。

   07年発売、カナダ人作曲家の現代音楽な作品集。
35・M C Maguire:Meta-Conspiracy:
   全編に打ち込みシンセが鳴り響く、長尺2曲。(1)がピアノ、(2)がエレキギター。
   現代音楽作曲家でロックにも親しみを持つ、が売りのようだが。特に(2)は
   愛情無くハードロックをコラージュで玩び、今一つ親しみ持てない。
   むしろザッパ的抽象フレーズが飛ぶ(1)のほうが楽しめた。

   57年録音と引退寸前なロリンズ。カッチリしたブルーノート盤の合間に
   ソニー・クラークら凄腕混成カルテットと吹き込んだ盤。CDでボートラ1曲付き。
34・Sonny Rollins:The Sound Of Sonny:☆☆☆☆
   コンセプトは小粋、そして演奏は凝縮し隅々までアレンジを施した。
   長尺ソロ回しへ反発するように、ロリンズのサックスを明確にリーダーへ据え
   一曲数分で味わい深いテナーのアドリブをたっぷり聴ける爽快な盤。
   一曲では無伴奏ソロを入れ、挑戦も忘れない。今回初めて聴いたが、これは良いアルバムだ。

2016年2月

2016/2/20  最近買ったCDをまとめて。

   Deacon BlueのRicky Rossが、地元グラスゴーのカメラマン、Oscar Marzaroliの作品を
   保存するチャリティで温度を取ったアルバム。エディ・リーダーがソロ初録音で提供した作品は
   本作のみに収録となった。91年のアルバム。
33・V.A.:The Tree And The Bird And The Fish And The Bell:☆☆
   グラスゴーへの愛情も込めたチャリティ盤。既発曲かライブテイクでお茶を
   みな濁す中、言い出しっぺのディーコン・ブルー以外はエディ・リーダーのみが
   新曲提供の誠実さ。とはいえ初ソロ録音、今後の活動へ気合入れる彼女の事情もあるが。
  エディの曲はマニアなら聴き逃せない。ライブテイクっぽい華やかさが楽しい好演奏だ。
   アルバム全体は、妙に煙った諦念が漂う。薄曇りの暗い感じ。これがグラスゴーの色合いか。

   94年のリーダー作で、曲によって2ドラム2ギターの編成を投入した。
32・Marc Ribot:Shrek:☆☆
   編成はトリッキーだがアンサンブルのダイナミズムでなく、ミニマルな酩酊感を
   演出のため敢えてこの編成みたい。あまり彩りないメロディが硬質に続く。
   とっつき悪いが聴きやすくもない。不思議な音楽だ。

   06年のライブを各2枚組、2タイトルの大ボリュームでまとめたシリーズの
   第一弾。聴きそびれてた。07年の発売。もう本盤の音楽から10年たつのか。
31・大友良英 New Jazz Orchestra:LIVE Vol. 1 series circuit:☆☆☆☆
   ピットイン限定の弦との共演テイクを全収録の上で、各地での公演をまとめた。
   多彩な音楽性を貪欲に包み込む大友の凄さがにじみ出る傑作だ。
   ベルリンと東京公演を混ぜたD1-3は、ギターとシンセのダビングまであるのに
   どの辺がつなぎめでダビングか、いまいちわかっていない。
   とにかく単なる録って出しじゃなく、意図を込めたと思わせる。偶発的かもしれないところが
   大友の凄いところだが。"クライマーズ・ハイ"の音盤化も嬉しい。
   青白い切なくストイックな寂しさをまといつつ、強靭なリズム隊のグルーヴにやられる。

   強力バンド、Loserを解体しビクターへ移籍の93年、17thソロ。同バンドの吉田健プロデュースで
   泉谷のキャリアとしては、あまり語られないアルバム。聴きそびれてた。
30・泉谷しげる:WILD BLOOD:☆☆☆
   ポンタに吉田健とLoserのリズム隊が残ったにも関わらず、凝りすぎたアレンジが
   どうにもバランス悪いアルバムに仕上がった。フォーク寄りの楽曲が並ぶのも、バンド・アレンジに合わない。
   泉谷の芝居っ気が前面に出た盤。その一方で、ナイーブな名曲(3)のように
   独特な甘いハードボイルドも味わえる。楽曲によっては強力なドラムも味わえるアレンジが嬉しい。

   西海岸のビートメイカーとギタリストによる05年のエレクトロニカ系セッション。
29・Cosiner & Capital:Haunt:☆☆☆★
   ギター・リフをディレイ・ループで回して、ドラムとギターのデュオ、だろうか。
   ミニマルかつ電子制御な味わいの、心地よくトロピカルなエレクトロニカながら
   生演奏のくっきりしたダイナミズムも味わえる。いわばフュージョン寄りの
   エレクトロニカ。予想以上に楽しめた。やたら長尺にせず、全10曲と小刻みなとこも良い。
   途中でリズムがつんのめる、(4)の構成が面白かった。
   基本はうっとりと浸り、チル・アウトする音楽だ。ただし前半の心地よさから
   後半へ行くに従い、どんどん抽象性や調子っぱずれな不安定さを醸し出す。

   ブラジルのインディ・ラップ。97年発売で150万枚ものヒットを飛ばした。
28・Racionais MC's:Sobrevivendo No Inferno:☆☆☆
   ハシオナイス・エミシーズはアメリカのソウルやヒップホップをサンプリングしつつも、どこかヒリヒリする
   緊張感が漂う。チープな打ち込みを基にしたスカスカなトラックが特徴か。
   メンバーのKL Jayがプロデュースし、マイク・リレーをゆったりと行う。
   捨て鉢な空気と、ラテン系のさりげないパーカッション使いが独特な世界だ。
   じわじわと迫り、空気を締め付けていくムードがスリリング。
   長尺11分な(4)を筆頭にクールな雰囲気が、ミニマルに責めてくる。

2016/2/3  注文のCDが到着。

   元ギャラクシー500のユニット、11年発売の8thアルバム。
27・Damon & Naomi:False beats and true hearts:☆☆☆
   栗原ミチオが全面参加し、デーモン自信が録音した全9曲。サイケポップを
   変わらぬ雰囲気で充満させ披露しつつも、トランペットやサックスを曲によって
   さりげなく埋め込み、バラエティ豊かさも忘れない。
   変わらぬクオリティと依然としたアレンジながら、着実に円熟してる。
   最初は他の盤と違いが判らない。だが繰り返し聴いてるうちに、素朴でのびのびと曲を作ってゆき
   コンセプトを削ぎ落し、よりプライベートにまとめた作品集かな、と思い始めた。

   昨年末発売で、イタリアのレーベルから。M.B.の音源をメルツバウがダビングと編集した。
26・Merzbow & MB:Amalgamelody:☆☆☆★
   うっすらとメロディアスなドローンが延々と漂う。常に揺らぎや変化を持ちながら
   大胆には変わらない。轟音ノイズながら酩酊の漂いを常に感じさせる、
   ある意味静かな展開のノイズが詰まった。小さい音だと蠢きのかけらを伺わせ、
   ボリューム上げるとべったり埋め尽くすシンプルなノイズ。ただし、背後に聴こえる
   わずかな音色が奇妙な荘厳さとメロディアスさを持つ。

   TZADIKの旧譜で5枚組。アメリカの前衛クレズマージャズで96−01年に活動した。
25・Hasidic New Wave:Live And Rare Recordings:☆☆☆★
   "Live In Cracow"(1998)を未収録、代わりに1st収録前の編成ライブ音源など、
   マニアックな発掘ライブを収録した。盤ごとにじわじわと印象が変わるスタジオ作4枚を
   まとめて聴けるのが嬉しい。Masadaと異なる、余裕もって幅広い音楽性を狙う
   クレヅマー・ジャズに、へんてこフレーズのエレキギターが足され
   異様に個性的な音楽に仕上がった。聴き心地はわかりやすく、素直に耳へはいる。

   菊地成孔が推薦のソウルってのに興味持ち購入。原盤は13年で、14年にタワレコが
   ボートラ1曲追加で発売した。これは再CD化のボートラ無し。
24・Diggs Duke:Offering for Anxious:☆☆☆☆★
   凄い。リズムと和音解釈を固定観念に縛られず、DJ的にごちゃ混ぜにして
   ポリリズミックで不思議なコード進行に仕立てた。コツコツと一人で仕上げたサウンドながら
   さまざまな楽器を使いこなす、肉体性が伴い頭でっかちにならず、密室的な胡散臭さから軽々と逃れてる。
   一曲が短く、かなりあっさりとまとまっており、すぐにアルバムを聴き終わってしまう。
   プリンスみたいになるのかも。この盤自体は過去のオムニバスらしいが
   コンセプチュアルな大作を彼はどんなふうに作るんだろう。
   もっともっと聴きこんでみたい。アメリカのベッドルーム・ファンク。
   一小節を5拍子にってのは、(7)かな?

2016年1月

2016/1/16  久しぶりにレコ屋へ行ってきた。

   未聴だった。91年発売の同名盤をリミックスした96年の盤。
23・Merzbow:Rainbow Electronics 2:☆☆☆☆
   アナログ・ノイズの振り幅大きい勢いや凄みを、大胆なカットアップや
   ボリュームの変化を加えて刺激的な盤に仕上げた。長尺1曲じゃない分、
   オリジナル"Rainbow Electronics"より取っつきやすいかも。

   NYで69年結成のR&Bグループ。72年に発表の1stをコレクタブルズが盤起こし。
22・The Persuaders:Thin Line Between Love & Hate: Golden Classics:☆☆★
   この盤は2nd収録の2曲をボートラあり。ただでさえとっ散らかった演奏でごった煮感
   漂うのに、ボートラが輪をかけてアルバムのイメージを散漫とさせる。
   アップからスローまで幅広い路線狙いと、メロウなメロディ。パンチ力あるボーカルと
   いい感じなのに。演奏のしょぼさが何とも粗製乱造っぽさを漂わす。惜しい。

   アル・グリーンがゴスペル時代の、89年発表アルバム。
21・Al Green:I Get Joy:☆★
   冒頭2曲はまずまずだけど、そのあとは迷走へ。ゴスペルと世俗歌の流行を追い、
   なんとか売り上げ確保を図るごった煮アルバムに仕上がった。
   地声と宝刀ファルセットを使い分けるアルの歌は、まだ枯れていない。でも、ちょっと元気ないな。
   明るいジャケットと裏腹な、散漫で打ち込み中心の安っぽいゴスペルの、悩ましい一枚だ。

   12年ぶりの2ndソロで話題になった、90年のアルバム。
20・Bernie Worrell:Funk of Ages: ☆☆★
   豪華なゲストをズラリ並べたファンク。レゲエや南米音楽の要素もうっすら感じた。
   五目味で統一感は薄い。時代なのか硬い音使いでいまいち取っつき悪いが
   バラエティには富んでる。ボーカリストかインストか、どっちかへ極端に振れても良かった。

   80年に発表した、彼女らとし2枚目のクリスマス・アルバム。
19・Gladys Knight:That Special Time Of Year:☆★
   スタンダードのクリスマス・ソングをゴージャスなアレンジで歌ってるだけ、なため
   さほど面白みは無い。BGMにはいいと思うが。(3)のように歌のうまさを味わえる
   曲もあるけれど、するとアレンジが分厚すぎるんだよな。バランスが難しい。
   妙な遊び心の(5)にも困惑。家族で過ごすクリスマス、にふさわしい盤かもしれぬ。

   79年の盤でアシュフォード&シンプソンが作曲とプロデュース担当。
18・Diana Ross:The Boss:☆☆
   今聴くと、ディスコは古臭いしバラードは大仰なとこも。しかし(7)の
   しとやかなミドル・テンポは愛らしく響いた。思い入れないためサラッと聴き流したが、
   アシュフォード&シンプソンの生き生きしたメロディと、この時代ならではの
   ゴージャスな弦アレンジや生演奏ゆえのグルーヴは色あせない聴きものだ。

   ブーツィ・コリンズが別名義で03年に発表の盤。
17・Zillatron:Lord Of The Harvest:☆☆
   顔ぶれから言って、もっと躍動的なプレイヤー路線かと思った。クレジットの無い
   ドラムはだれだろう。打ち込みかな?なんとなくタルッと停滞したグルーヴへ
   とってつけたようなブーツィやバケットヘッドのフレーズがかぶる。鍵盤のバーニー・ウォレルもいまいち目立たない。
   どうもビル・ラズウェルのセンスは僕に合わないようだ。散漫というか、
   せっかくの演奏力を無駄に消費してる気分。変にまとまったファンク。ボリューム上げて、音圧を楽しむ盤か。

   ソロ名義、エレピを投入した70年の盤。
16・菊地雅章:Poo-Sun:☆☆☆☆★
   べらぼうな傑作。A面のモーダル、B面のコーダル。マイルスの影響をどっぷり受けながら
   貪欲に咀嚼しダブル・リズム編成で独自の音楽を作った。どの曲もアイディアに満ちて
   素晴らしく刺激的でかっこいい。今まで聴きそびれてたのが悔やまれる。
   ぐっと溜め気味のサイドメンのリズムを切り裂くように、菊地の鍵盤が駆けた。
   特に最終曲でのピアノ・ソロで、菊地の鋭いタイム感がよくわかる。

   弟の雅洋と2ピアノ、村上寛&岸田恵二の2ドラム編成で70年の録音。
15・菊地雅章:Re-confirmation:☆☆☆★
   2ドラム2鍵盤、フロントに伸び伸びとサックス一人。B面でいったん一息つくものの、
   根本に通底するのはモーダルに疾走するパワフルな一本調子ジャズ。
   ムードをあえて変えず楽曲を推し進めるベクトル感が本盤の魅力だ。
   ドラム二人はポリリズムでなく、リズム形をずらすことでリズムに複雑さを出した。
   そのアプローチは悪くないが、今の耳で聴くとバタついたリズム感に古めかしさを感じてしまう。
   けれどもアルバム全体から滲んでくる、野太いグルーヴ感は今でも強烈に斬新だ。

   TZADIKより06年発売。クレズマー系のクインテット・ジャズかな。
14・Alon & Talot Nechushtan:The Growl:☆☆★
   落ち着いた雰囲気のジャズだ。性急に駆けず、じっくりとアンサンブルを紡ぐ。
   オーソドックスだが類型的ではない。Masadaのスピード感を望むと拍子抜けだが、
   ときおり前衛風の音色を響かせつつも、着実にファンキーなクレヅマー色ジャズを構築した。
   演奏はばっちり上手い。安定したグルーヴと、華やかなソロを味わえる。

   05年発売、マサダ10周年を記念シリーズの第五弾でトリオ編成のロック。
   4曲のゲストでマーク・リボーが参加した。
13・John Zorn:Masada Rock 10th Anniversary Edition:☆☆☆
   ロックと銘打ちながら、特に8ビート強調ではない。むしろ8ビートがない。
   ギター・トリオ編成をロックと取ったか。その割にエレキギター吼える曲と同じくらい、
   アコースティックでしたたかなアラビック風味を聴かせる曲も。
   結局、スピーディでタイトな演奏をエレキギターも使用したってくらいがロックらしいか。
   マーク・リボーの2曲参加中、1曲はアコギ。緩急をいろいろと聴かせたアルバムだ。

   73年の黒人映画で音楽をJBが担当した。
12・James Brown:Slaughter's Big Rip-Off:☆☆
   やっつけ仕事な感じもあるが、ラテンや弦まで幅広いアレンジを強引に一枚にまとめた。
   既発曲の再演など、適当なとこはいかにもJB。だが聴き流すには惜しい一枚。
   (1)中盤での、ガラリ風景変わるテーマのアレンジに惹かれた。

   英ソウル・グループの90年発売な唯一の盤。当時、こんなグループいたんだ。
11・The Everyday People:You Wash...I'll Dry:☆☆
   あえて生演奏にこだわった英国ソウル。(1)の素直なアメリカン・スタイルや
   いっそ爽やかな西海岸を連想の(10)みたいに、本盤の主眼とは別次元の曲に
   惹かれてしまうけど。青白く硬質な英国ソウルを、良質に演奏してると思う。
   メロディが若干弱かったのが、ヒットしなかった要因か。

   NY拠点のゴスペル・クワイアで93年発売の4thアルバム。
10・Hezekiah Walker & The Love Fellowship Choir:Live In Toronto:☆★
   アルバムとして緩急やメリハリに欠ける、のぺっとしたミックス。荒天でコーラス隊は
   半分しか本ステージに上がってないらしい。けれども豪快で分厚いハーモニーはたっぷり味わえる。
   ハイトーンを振りかざす、男女数人のリード歌手の迫力もすごい。やはりミックスが難点か。

   カリフォルニアのソウル・グループが91年に唯一残したアルバム。
9・The Nation Funktasia:In Search Of The Last Trump Of Funk:☆☆★
   P-Funkスタイルを丁寧に取り上げたB級ファンク。あまり当時の流行を取り入れなかった分、
   逆に古びてない。失速P-Funkと思えば、そこそこ悪くない出来だ。
   1曲を除き、ファンキーを狙う。プリンスやJBの影響もそこかしこに。
   打ち込みビートが今一つ物足りないが、意外と楽しめた一枚。

   オーストリアのアシッド・ジャズらしい。94年のデビュー作。
8・Count Basic:Life Think It Over:
   ジャズを期待したら当てが外れる。あくまでもジャズ風味のクールで清涼なクラブ志向の音楽だ。
   熱狂は汗でなく整ったアンサンブルで表現された。メロディはキャッチーだし、
   生演奏ゆえのタイトな演奏は味わえる。根本的なグルーヴ感の希薄さを許せるかどうかで本盤の評価は変わる。
   歌ものとインストが半々くらい。ぼくは歌より演奏物のほうが素直に聴けた。

   8枚のLPをCD4枚へ収める、Real Goneの廉価盤シリーズ。収録LPは以下の通り。
   サイドメンな"Shades of Redd"を入れた一方で、コルトレーンと双頭リーダー作の
   "High Step"(1956)は未収録。これは75年リリースで版権生きてるのかな、まだ。
7・Paul Chambers:Eight Classic Albums:☆☆☆★
   そこそこな音質はさておいて、チェンバーズのソロをまとめて手軽に聴ける点は嬉しい。
   さらに"We Three"や"Shades of Redd"を足すことで、若干の幅も出た。野太くも着実な低音を繰り出す
   チェンバーズの魅力は、むしろリーダー作をまとめて聴いたほうがピンとくる。
   アルバムごとで編成を変えたスタイルをとっていたため。

"Chambers Music"(1956) ☆☆
   若者がとりあえず今の自分の精一杯を録音した、って感じのアルバム。コルトレーンとフィリーの
   当時のマイルス・バンドを前後に置き、ピアノはケニー・ドリューを起用して独自性は確保した。
   のぺっとしたコルトレーンを筆頭に、今一つ華がない。

"Whims Of Chambers"(1956) ☆☆☆☆
   がっつり凄腕を集めた2管ギター入り6人編成。ベースはアンサンブル志向で
   むやみにソロや前にではしない。そのため強固で隙の無い、極上ハードバップに仕上がってる。
   コルトレーンもむやみに吹き倒さず。むしろ地味な印象だが、味は濃い。

"Paul Chambers Quintet"(1957)☆☆☆★
   テーマでベースが目立つ勇ましさを軸に、2管体制で隙の無いハード・バップを楽しめる。
   フラナガンとジョーンズの軽快なリズムだからこそ、ベースの確かなグルーヴが強調された。
   ピアノ・トリオ編成でソロをベースが取り倒す(3)をアクセントに、アンサンブル強調の
   アレンジながら細かく聴いてるとベースが主役とそこかしこで実感する。

"Bass on top" (1957) ☆☆☆★
   冒頭からベースのアルコ・ソロを存分に。スタンダード曲をズラリ並べ、
   弓と指弾き、たっぷりのソロと絶妙にグルーヴなバッキングを弾き分けて、
   様々なアプローチで自分を目立たせた。ウッドベースを無理に弾かず、嫌味にならない
   22歳なポールの自意識がたっぷり聴けて楽しい。なお本盤にはなぜか"Chamber Mates"が未収録。

"Go"(1959) ☆☆☆☆
   生き生きと溌剌に弾む、ファンキーなジャズが楽しめる傑作。なぜかB面がライブ盤。
   マイルス・バンドの気心知れたメンツからコルトレーンとマイルス御大を抜き
   フレディ・ハバードを招いてのびのびセッションした。ややこしいコンセプト抜き、
   無用なハイテンポも無し。くつろぎつつアグレッシブな演奏が詰まった。

"Shades of Redd(With Freddie Redd Quartet)"(1959) ☆☆☆★
   どんなに素敵な演奏をしても、ポールはやはりサイドメン。主役はフレディ・レッドだ。
   さらに演奏よりも見事な作曲術に惹かれる。強烈に器楽的ながら、口ずさみたくなる
   親しみやすさを持つ。ずるずると引きずるサックスは今一つだが、音数少なめに
   ロマンティックなピアノを叩くムードは、素晴らしくダンディだ。

"We Three"(1958) ☆☆☆
   逆にこれはサイドマンに留まらぬ、同格のトリオ編成。盤としてはロイ・ヘインズ(ds)の
   リーダー作ながら、ドラム以上にビートの拍を明確にくっきりウッドベースが繰り出す。
   手数多めを狙いながらばらつくピアノと、くい打ちのようなドラムの間で
   ベースがグルーヴの芯を担った。全体の演奏はそれなりだが、ベースが凄い。

"1st Bassman"(1958)☆☆☆★
   ユゼフ・ラティーフ作品集のコンセプトで、三管の骨太なハードバップを次々きめた。
   だからこそLP最終曲の(5)にて静かなバラードの頼もしさも映える。
   変則的な和音感が並ぶ中で、チェンバーズは慌てずじっくりとランニングさせ存分にアンサンブルを
   グルーヴさせた。ラティーフ本人も、他の二人もフロントでのアドリブ回しは地味ながら光ってる。

   コネチカットのゴスペル歌手で08年発7thアルバム。
6・Kurt Carr & The Kurt Carr Singers:Just The Beginning:
  
   こちらは97年発売、4thアルバムになる。
5・Kurt Carr & The Kurt Carr Singers:No One Else:
   基本はクワイア編成のゴスペルだが、(8)みたいにファンクな展開も。
   根本でゴスペル特有の節回しが続き、信者でないためか飽きてしまう。
   入れ代わり立ち代わり、声量豊かなボーカリストが出てきて目先を変えてはいるのだが。
   ライブ音源にダビングを施したとあるが、コーラスを足したのかな。
   熱狂がひたすら続くステージだ。歓声がサンプリングみたいに浮かんでは消える。
   (13)のメロウさは良いが、ゴスペル風味は希薄だ。

   カリフォルニアの女性ソウル・グループの4thで84年作。
   一部の楽曲はルイス&ジャムのプロデューサー。売れ線ソウルって印象だ。当時は
   ジャケットは見たが聴いたことなかった。ヒット曲"I Miss You"を収録。
4・Klymaxx:Meeting In The Ladies Room:☆★
   プリンスの影響をどっぷり受けた、シンセ・ファンク。シンセドラムビシバシで
   最先端流行を追った前半は逆に思い切り古びてる。(2)のジャム&ルイス作も含めて。
   ヒットしたバラード(3)でいったんペースを変えて、後半は再びファンク大会。
   むしろ後半戦のやっつけな感じのほうが、今の耳で素直に聴ける。
   とはいえB級感は何とも拭えない・・・。
   (7)のスローもふわふわ動くコード進行が、心地よい滑らかさ。むしろこっちのりりしさが、僕は好み。

2016/1/10   注文したCDが到着。

   ジョン・ゾーンが指揮する疑似バンド、ドリーマーズの1stで08年発売。
3・John Zorn:The Dreamers:☆☆☆☆
   エレクトリック・マサダをさらに洗練させ、自由にアンサンブルを操る
   ゾーンの指揮/作曲力をアピールさせたバンド。かなりゾーンのキューがあるはずだが、
   聴いててさっぱりわからない。ほぼすべてが譜面かのよう。
   ラウンジ的な退廃さと、ロックやジャズのダイナミズムが混在し、無国籍でノンジャンルの
   極上なインストを楽しめる。ゾーン流の室内楽曲と、クラシックの
   文脈でとらえるべき盤と思う。

   これもゾーンがらみの疑似バンド。John Medeski/Kenny Wollesen/Trevor Dunn/Joey Baronの
   顔ぶれによる、通称"Nova Express Quartet"が2011年発表の2ndだ。
2・John Zorn:At the Gates of Paradise:☆☆☆☆
   優雅で繊細、構築されながらも自由。複雑な要素がラウンジ的な穏やかで
   心地よい風景へ見事に構築された。抜群の演奏技術と、気心知れたアンサンブル、
   そして緻密ながら即興要素を残したゾーンの指揮。実験性と聴きやすさが奇跡的に同居する演奏だ。

   14年発売"vagabond"からの同年発表なEP。併収録はスタンダードのカバー。
1・Eddi Reader:Back The Dogs:

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