LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/12/30   渋谷 ラ・ママ

出演:John Zorn`s COBRA〜巻上公一部隊〜

 (秋元カヲル:g、ウード他、太田恵資:vln、vo他、梅津和時:as,cl他、
  江崎将史:tp、佐藤正治:ds,per,vo、冷水ひとみ:p,per、JINMO:g、
  田中悠美子:義太夫,太棹三味線、津山篤:g,vo他、西田ひろみ:vln、
  松前公高:synth,サンプラー、水谷浩章:b、
  巻上公一:プロンプター)

 今年二回目のコブラは、2ヶ月ぶり。年末ギリギリに開催された。
 まぼろしの世界イベントと日程がダブり、多少そちらに客が流れたと思うが・・・ふたを開けたら立ち見もぎっしりな満員だった。
 もうちょい頻繁にコブラを開催してくれたら、客もバラけるだろに。

 せっかくだから前のほうでコブラを見たく、開場30分ほど前からラママの前に並ぶ。
 マフラー・手袋・帽子と完全装備で臨んだが、寒いこと寒いこと・・・往生した。

 開演はちょっと押し、19時15分ころから。
 今夜は録音してるのか、プロンプターの後ろにマイクが立つ。
 演奏前に巻上公一がするコブラの説明も、妙に丁寧だった。

 さて、ゲームの開始だ。
 とびきりなクオリティのコブラが、今夜は出現した。

 まずは津山篤が「ジョン・ゾーン・コブラ!」と高らかに宣言。
 カットアップが交錯するスリリングさと、大騒ぎの笑いが混在する即興の始まり。

 前半ではサインを、津山や水谷浩章が積極的に送っていた。
 梅津もちょこちょこ出してたな。 
 絶妙のタイミングで、テーマのカットアップが決まる。
 
 前半2ゲーム目では津山が、梅津和時の演奏を細切れにして全体に差し込む。
 ぬっと立ったまま、津山はクールにサインを送る。
 びしりと指差す姿が、えらそうで妙に面白い。

 太田恵資はバイオリンをほとんど引かず、メガホンを持ち出したりマイクに喋りかけたり。いきなり暴走してた。
 しゃべりが飛び交う即興をしてるとき、どさくさで「梅津さん、先日は欠席してすいません」と、こないだのライブ関連の詫びをいってたな。

 田中悠美子が中盤で、津山あたりから飛んだサインを見落とし、巻上に指示されて「え、あたし?」といきなりボケる。
 おもむろに手帳を取り出し、ニュースを朗読しはじめた。

 津山が面白がり、ゲリラになる。
 コブラのCDライナーノーツを取り出し、こちらも朗読。
 このヴォイス・セッションがテーマとなり、そのまま即興に挟み込まれた。

 いつのまにかバックにほのぼのした演奏がかぶる。
 津山が演奏にノリ、朗読がいつのまにかメロディ付きになった。
 その場できれいな演奏をつけ、歌いきった津山はさすが。

 ここへ割り込もうとした太田が、メガホンかついでゲリラ立候補。
 にやりと笑った巻上からいきなり斬首され、「なんだよ〜」とぼやく。

 津山の即興ラップは、緊張感あるフリーなテーマとカットアップ。
 巻上のサインが振り下ろされるたび、がらがら風景が変わった。
 
 別のテーマで、風景が変わる美味しい瞬間をかっさらったのが梅津。
 3ゲーム目だったか。
 全員の演奏で、退廃的なムードの音像がテーマで流れた。
 水谷、太田、西田ひろみの弦部隊が、弦を軋ませる。

 錆びて崩れ落ちそうな音像が提示されると、すかさず梅津がゲリラに立候補。
 アルトサックスをフリーに吹き鳴らす。
 映画の一場面みたいな、すごくかっこいい瞬間だった。さすがのセンスだ。
 ただ、あんまりこのパターンを繰り返したせいか。数度目にはゲリラになった瞬間、巻上に斬首されてたが・・・。

 前半で圧巻だったのは最終ゲーム。
 秋元カヲルがファンキーなリフをでかい音で弾くのがテーマ。 

 ここへ津山と太田がノリ、JBの「セックス・マシーン」を叫びはじめた。
 二人同時に歌わず、互いがゲリラとなって歌う。
 一度相手を斬首させ、マイクに叫ぶ。
 二人のサインがせわしなく飛び交った。 
 しまいには1拍ごとに相手を斬首する、むちゃくちゃ慌しいゲリラ合戦だ。

 盛り上がった太田はマイクスタンドを引っつかみ、絶叫する。
 スタンドをがんがん振り回し、しまいに前へ倒れかかった。
 横にいた水谷らの譜面台をぶちまける。
 そのままパンキッシュにおお暴れしたところで、さくっとエンディング。

 「ちょっと休憩します」すかさず宣言した巻上に「ぜひお願いします」と太田が応えてた。
 今しがたの大騒ぎはどこへやら。丁寧にみんなの譜面台を治してたっけ。
 
 前半ゲームは45分くらいか。20分ほどの休憩をはさみ、後半戦がすぐスタートした。
 カットインを多用するも、前半に比べちょっと地味目のコブラだったと思う。

 第二部は冒頭から腰砕け。
 いきなり秋元が、アコギでフォーク・ソングを歌いだす。
 とうとう「花はどこへ行ったの?」がテーマに。
 フリーな全体演奏の合間でムーディな「花は〜」を差し込む、ユニークな展開だった。
 
 今度は太田も悪乗りを控えめ。
 でも、どっかのゲームで太田はいきなり踊りだしてたな。
 そのとき流れていたテーマを気に入り、ゲリラとして楽器を置き、ひょこひょこ身体を揺らす。
 ステージ前に出てきて、妙なダンスをはじめた。
 踊りながら津山や梅津、江崎将史へも「真似しろ」とサインを送る。
 指示されたミュージシャンが踊り始めたとこで、照れくさいのか江崎が斬首。
 貴重な「梅津のダンス」を見損ねちゃった。ちぇ。

 ちなみにJINMO。彼の演奏を聴くのは初めてで、手製ギターの冴えを期待してた。
 とはいえ、コブラなのであまりフレーズぽい音は弾かずじまい。
 中盤でJINMOソロが登場。梅津や水谷のサインで、ぐいぐいボリュームを上げる。
 「音量増」のサインが飛ぶたび、丁寧にアンプや下のエフェクターを操作してボリュームを上げてたのが印象的だった。
 
 ただ、このソロでもJINMOはがむしゃらにかき鳴らすだけ。テクはよくわからずじまい。
 他にはネックを後ろから叩き、弦を共鳴させる奏法を多用したのが目に付いた。

 後半は4〜5ゲームやったろうか。
 あるゲームが終わった瞬間、いきなり巻上が終了を宣言。
 拍子抜けな気がしたけど、時間を見たら一時間弱たっていた。
 あんがい夢中になって聴いてたんだな。

 アンコールで1ゲームやって、今夜のコブラは完全に終わり。
 ミュージシャンらにルールがきっちり入ったせいで、活発で内容の濃いコブラだった。

 とはいえサインを出す人に偏りがあったのでは。
 かなりサインは頻繁に出たが、梅津・津山・水谷らの奮闘が目立った。
 (パフォーマンス的には太田のインパクトが圧倒的だが)
 残念ながらこの4人がサインを抑えたとたん音像が停滞し、即興が上滑りする気まずい瞬間もいくつかあった気がする。

 2002年は年に4回コブラを開催予定。
 さらに2003年はジョン・ゾーンを呼び、彼のゲームピース各種で遊ぶイベントも企画してるとか。
 来年以降もコブラはうねり続けるようだ。

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