LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/10/7 渋谷 LA-MAMA
出演:John Zorn`s Cobra 東京作戦〜Cotu Cotu部隊
(三木黄太:Cello、佐藤研二:Cello、坂本弘道:Cello、清水一登:cl,key、
原マスミ:vo,g、酒井泰三:g、Emi Eleonola:vo,acco、HONZI;vln、
CHACO:ds、関島岳郎:tuba,etc、翠川敬基:cello、四家卯大:cello、
巻上公一:プロンプター)
コブラとはジョン・ゾーン作の、ゲームの理論をもちいた即興である。
90年代はほぼ定期的に行われていたが、ここ数年でめっきり頻度が落ちている。
前回のコブラからかれこれ10ヶ月ぶり。21世紀初になる。
今夜はチェロ3人組グループのCotu Cotuを、部隊長として開催された。
コブラはひさびさだからメチャ混みを覚悟したけど、思ったほどじゃなかったなかった。
100人くらい入ったのかな。一通り店内は埋まったが、前回ほどスシ詰めでもない。
立ち見にこそなれ、ぼくも特等席(プロンプターの真後ろ)を確保できた。
メンバーはCotu Cotuの坂本弘道/佐藤研二/三木黄太のほかに、チェロが二人。さらにバイオリンが加わるストリングス中心なメンバーだった。
ベースを関島岳朗のチューバが代用したので、比較的ボトムが軽い音像だったと思う。
巻上公一が簡単にシステムを説明した後、演奏は19時10分くらいに始まった。
普段着メンバーの中で、黒のエナメル(っていうのかな?)を着こんだドラァグ・クイーン姿のEmi
Eleonolaが、異様に目立つ。
前半のセットは、1ゲームが長め。約40分ほどで、3ゲームしかやらなかった。
正直、盛り上がりに欠けていたと思う。コブラのシステムに戸惑ってたのかな。
ひととおりルールは入ってるようだが、即興がつながらない。
演奏者がサウンドの方向性を迷い、流れに任せているように聴こえた。
巻上のプロンプターは演者に主導権を任せがちだから、この手の展開はちと辛い。探りあいで前に進まなくなる。
1〜2回、巻上がジャンプしながらカードを振り下ろす。そんな速い展開があってもすぐに、静かな即興へ戻っていく。
その中で頑張っていたのがEmi。積極的にゲリラ(プロンプターの指示に寄らず、自由に演奏できる)になる。
シャウトで場を引き締めたり、関島岳郎らを引き連れドイツ風のメロディを歌いたり。ときには一言、ぼそりとつぶやく。いろんな技で盛り上げていた。
チェロやバイオリンだけの構成になったときは、とたんに音像が渋くなる。
坂本以外はエフェクターを通していない。
ただ、だれもがメロディはほとんど弾かず、弦をひっぱたいたり高音でかきむしったりのトリッキーな奏法が多かった。
清水一登はクラリネット中心の演奏。ピアノをほとんど弾かずじまい。
比較的あっさり終わった第一セットから、15分ほど休憩をはさむ。
この第二セットでがぜん盛り上がった。
演奏者全員の準備が終わっていないのに、すぐさまCHACOが嬉々としてサインを送る。
HONZIを引き連れ「チム・チム・チェリー」を弾き始めた。
このフレーズが第一サウンド・メモリーとなり、次々にサインが飛び交う。 カットアップを多用し、シャキシャキと即興が展開した。
関島岳郎はリコーダーに持ち替え「コンドルは飛んでいく」を吹く。
ぐしゃっとした即興の合間に、「チム・チム〜」や「コンドル〜」ののどかなメロディが流れるギャップが面白い。
今夜はゲリラの登場が多い。片っ端からゲリラに立候補して、ソロでなく演奏全体の指揮をする。むしろ、ソロをとるゲリラは斬首されがち。
巻上はしょっちゅう腕組みをして、笑いながら聴いていた。
ゲリラになる時、キュートだったのがHONZI。ヘアバンド(ゲリラの印)を巻かず、ベレー帽の上へちょこんと乗っけてた。
Emiは後半も大活躍だ。第一部ではだけた服をとっぱらい、第二部では黒のブラジャー姿で登場。
シャウトだけでなく日本語で一口ギャグも折りこむ。
ボーカル合戦の即興になったとき、翠川敬基がおもむろにチェロを起き、浪曲(?)をうなりだした。
すぐさまEmiがゲリラとして「・・・どうしたの?お父さん」と一言ぶちかまし、客席は大爆笑。
ちなみにこの翠川の歌はメモリーされて、何度かリピートされた。
サインが送られるたび、律儀にチェロを丁寧に横へ起き、立ち上がっては歌ってたっけ。
第二セット二ゲーム目では、観客の拍手がやまぬうちに原マスミが手を上げた。
ハーモニカホルダーにトウモロコシをはさみ、いきなり黙々と食べ始める。
マイクが音を拾わないから、ちとつらいパフォーマンスかな。
演奏者がそれぞれデュオになり、つぎつぎ即興フレーズを切り替えていったのはこのゲームだったろうか。
原マスミはゲリラでヘアバンドを目隠しにして、斬首のサインが見えず翠川につっこまれていた。
さて。
たぶんこの日の観客の多くが予想したパフォーマンス。
これは第二セットの最終ゲームで披露された。
第二セットはかなり刺激的で、ぼくもその技をすっかり忘れてたけど。
おもむろに坂本がゲリラになり、チェロをひっくり返した。
すかさず、近くにいたCHACOや関島らがさっと逃げる。
演奏者の注目する中、おもむろに取り出したグラインダーで、坂本がチェロの足からバチバチ火花を飛ばす。
もうひとつのグラインダー(?)で、ボディや弦をがらがら引っ掻き回す。
翠川が面白がり、他のチェリストに坂本の真似を指示。
てんでにチェロを持ち上げ、「ダロロロロ」って叫ぶさまは大笑いだった。
このセットのエンディングは、再び坂本のゲリラ宣言。
ところが後ろに飛ばしたヘアバンドが見つからず、うろたえる。
しかたなくタオルのほっかむりで代用するが、その隙にエンディングのサインが出て、フェイドアウトでゲームが終了してしまった。
そういえば、今夜はどのゲームもカットアウトで終わらない。
フェイドアウトやコーダで終わり、余韻を残していた。
これまではたいがい、巻上のジャンプとともに演奏が切断されて終わってたのにな。
最終ゲームが中途半端に終了したせいか、アンコールもあり。
こんどは坂本がプロンプターで、巻上は演奏者に回った。
いきなり巻上に指示が飛び、低く静かにうなり始める。
そのボイスをメモリーして展開。短めのゲームだったが、坂本はそれほど戸惑わないプロンプターぶりだった。
サインが混乱すると巻上が、すかさず正しいサインでサポートしてたのはさすが。
最後は坂本がカードを机に叩きつけて終了。発泡スチロール製のカードの破片が宙を舞った。
後半セットは約1時間。とにかく今夜はゲリラだらけ。なおかつしぐさ、演奏ともにドタバタが多く、客席から笑いが絶えないコブラだった。