LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
00/12/29 渋谷 LA-MAMA
出演:JOHN ZORN'S COBRA東京作戦2000
(有馬純寿kb、磯田収g、一噌幸弘:能管、イトケンds、植村昌弘ds、
江草啓太p、川口義之sax、菊地成孔sax、栗原正己recorder、
関島岳郎tuba、四家卯大cello、知久寿焼vo、原さとしbanjo、
八木美知依:箏、芳垣安洋ds、渡辺剛vln プロンプター:巻上公一)
コブラとは、1984年にジョン・ゾーンが発案した、ゲーム・システムをとりいれた即興演奏のルールを指す。
ミュージシャンはステージでぐるりと半円型に並び、中央に立つのは指揮者役のプロンプター。
そしてミュージシャンが繰り出すハンドサインを、プロンプターは19種類のカードで全員に示し、振り下ろすことで即興演奏がつぎつぎ変わっていく。
・・・と説明してみたけれど、けっこう難しいシステムです。
僕もルールは、さっぱり頭に入っていません(笑)
コブラを見るのは3度目。
コブラは今でもニューヨークのニッティング・ファクトリーで定期的に演奏されてるらしいが、東京ではヒカシューの巻上公一がプロンプター役で、けっこう定期的に93年から開催していた。
ところが、2000年はただの一度もコブラのゲームを開催されなかった。
まえに巻上氏のHPに書き込んで聞いたところによると、スタッフの事情が重なって、開催しそびれていたらしい。
てなわけで、今回のコブラは99/12以来のひさびさコブラ。
おまけに、メンバーもかなり豪華。
こんな事情が重なって、会場のラ・ママは超満員だった。
会場前には周辺にびっしり人が並び、中に入ったら身動きする余地もない。
100人も入れば満席のところに、200人くらいはいたんじゃなかろうか。
立ち見もずらっと並び、巻上公一のはからいでステージ前にまで座らせてくれた。一度場所を確保したら、もう移動することはかなわない。
僕が押えた位置は、最初はステージ中央にある柱の置く。
ラ・ママは柱が中央にどかんと立ってて、見づらくてしかたない。
なので巻上の誘導で、ステージ前に人が移動してる時に、ひょこひょこついていった。
すると結局ステージ右手の前という、かなりいいポジションを取ることが出来た。らっきぃ。
ステージは当然、全部見渡せる。
もっとも床にベタすわりだから、足がしびれて困ったけど(笑)
さて、そんなこんなで客入りにかなり時間を要したが、演奏は8時過ぎに始まった。
ずらずらとステージにミュージシャンが並ぶ。
巻上はテーブルの上にカードをずらっと並べ、ミュージシャンらを見回した。
「お〜、コブラのスタイルだ」と、嬉しくなってしまった。
まずは植村からハンドサインがでてスタート。今夜のゲームが始まった。
今回は、あまり刺激的なサウンドによる即興はなかった。
かなり和やかに演奏が進んでいく。
ダイナミックにどたんばたんと進む、緊張感のあるコブラも聴きたかったな。
今夜のゲームは、とにかくミュージシャンのサインが多い。
それも、テーマ提示のサインが多く、メモリーされたテーマをかたっぱしからリフレインさせる。
即興よりも曲作りに重点をおいていたみたい。
悲惨だったのが一噌幸弘。なんどもゲリラ(プロンプターのサインを無視して、好き勝手に演奏できる)に立候補していたが、そのたびに植村や巻上から斬首(ゲリラを辞めさせること)される。
ゲリラになるには、拳を突き上げるのがサインなのに、しまいには遠慮がちにヘアバンド(ゲリラの印)を持ち上げて、「だめ?」って首をかしげていたのが面白かった。
それぞれのゲームは比較的短め。一曲10分平均くらいじゃないかな。
何ゲーム目だか忘れたけど、三人ドラムでリズムをユニゾンさせるのをテーマの一つにさせ、カットアップで差し込みつつ、もう一つのテーマを演奏するゲームがなかなか面白かった。
そういえば、知久が27日の赤天で使った紙箱製の楽器(?)を持ち込んでた。
思う存分鳴らしたかったのか、ゲリラで演奏を始める。
またもやコードを鼻につっこんで、「みゅお〜ん」と始めたときには、ミュージシャンらも大爆笑。
ところが隣に立っていた菊地成孔や磯田が面白がって、テルミンに見立てたペットボトルに手を近づけたり、ツマミのペットボトルをいじり始めたから大変。
知久は律儀に全部音を出そうと「うい〜。ぎょお〜。ぶが〜」って騒いで頑張ったけど、やはりパニくって自ら斬首していた(笑)
そういう菊地も、サックスの二本吹きをする羽目に。
一噌と栗原正己がリコーダーで二本吹きする姿を真似ろ、とサインが出て、アルトとソプラノサックスを咥えようとするが、うまく行かない。
さっと川口義之が自分のソプラノサックスを渡したが、それでもうまく行かず、どたばたしてたっけ。
渡辺剛や四家卯大や江草啓太がクラシカルなフレーズを弾いてみたり。
原さとしがウエスタン風なテーマを提示して、一噌が真似てみたり。
かなりバラエティにとんだ、メロディアスなコブラだった。
それに、終止笑い声が漏れる、にこやかな雰囲気だったな。
アンコールでは巻上にもサインが出て、ヴォーカルで参加してたっけ。
全体的に音量は小さ目。どわっと盛り上がらない。
磯田や植村、菊地といったメンバーが引っ張ってサインを出すと、そうとうにぎやかになるだろうに。
音楽的には物足りなさが残るものの、終わってみたら正味は約2時間の演奏。
休憩をはさんだとはいえ、ボリュームたっぷりに楽しめた。
来年以降も、またやってほしいな。