LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/8/14 新宿 ピットイン
出演:ボンデージ・フルーツ
(鬼怒無月:G,syn、勝井祐二:e-Vln、大坪寛彦:B、
高良久美子:per、岡部洋一:ds)
ボンフルのライブはずいぶんひさしぶり。
前回のライブは2月。「まぼろしの世界」イベントで1時間弱やっただけ。
ワンマン・ライブとなると、去年末ぶりになってしまう。
そのせいか観客はぐっと多く、ピットインは満席。立ち見もずらりと出ていた。
事前予約してた人が大半で、熱心なファンが詰め掛けたみたい。
ぼくは運がいいことに、前から3列目を確保できた。
だけどステージが低いせいか、岡部や勝井の手さばきを見難かったのが残念。
今夜は、勝井はほとんど座ってプレイしてたし。
今回は鬼怒のHPで「新曲を3曲。さらに"frost
and fire"を演奏する」と事前告知あり。
ふたを開けてみると、その告知を真っ先に演奏してしまい。
あとはじっくりと「今」のボンフルを提示する形態だった。
最近のボンフルはとにかく新曲が多い。
しかも全員の演奏がタイトにまとまり、奔放に変化する。
一瞬たりとも聞き逃せない、刺激的な演奏ばかり。
5thアルバムのリリースが楽しみだ。
もっとも全てのライブを、何らかの形でリリースして欲しいくらい。
今のボンフルは毎回新曲が登場しては消え、どの曲も二度と同じアレンジで演奏されない。
ステージが、彼らの研究室になっているから。
<セットリスト>
1)ピストンNO.1(新曲)
2)プレジデント・オブ・レッド(新曲)
3)短くなるように(?)(新曲)
4)frost and fire
(休憩)
5)She Knows 〜〇A(丸エー)
6)ロコモーティブ(?)
7)SKIN
(アンコール)
8)Storm Bird Storm Dreamer
8時ちょい過ぎに、メンバーが淡々とステージに上る。
勝井は椅子に座り、小さな音でバイオリンを爪弾く。
ピックで静かにストローク。
そこへ鬼怒がそっとエレキギターを合わせる。
メンバーがつぎつぎを重ねていき、演奏が始まった。
第一部の前半3曲は全て新曲。
演奏も小さめな曲が多い。パワフルに突き進むのではなく、演奏全体の雰囲気を楽しませる曲が多かった。
1曲目はボンフルにしては妙なセンスのタイトル。
「とにかくNO1ってつけてみたくて。アルバムの時は変えます」(鬼怒:談)
次第にスピードが上がっていくが、全員がばらばらのリズムで演奏する。
ストロークを続ける勝井のバイオリンが基本ビートかな。
ポリリズミックに盛り上がる、面白い曲だった。20分くらい演奏してた。
続いての新曲は、鬼怒がアコギに持ち帰る。
いきなりブルーズっぽいフレーズを高速で弾き始めた。
こんどは鬼怒が、同じフレーズをひたすらリピートする。
演奏が盛り上がったところで、鬼怒の合図でブレイク。
高良のヴァイブソロが始まる。この緩急を効かせたアレンジがスリリングだった。
同じパターンはもう一度織り込まれた。
今度は大坪のソロ。アップライトのエレキベースをゆっくり弾く。
最近のボンフルは、こうしたブルーズっぽい要素を盛り込むのが好きみたいだ。
こんども20分くらい演奏してたかな。
3曲目。これはタイトルがよく聴き取れませんでした。
「イブタンギ(?)」という画家の絵にインスパイアされたタイトルだそう。
とっても幻想的な曲だった。
まずは勝井・高良・大坪の3人のみで演奏が始まった。
vlnは小さな音で同じ音をドローンのように引き続ける。
高良はヴァイブで、ひたすら同じフレーズをプレイ。
ゆっくりと、ゆっくりと・・・。
大坪はときおりメロディらしきものを弾くだけ。
3人で一つの世界を作り上げる。
うっそうと茂った森の中に、沼が一つ。あたりは一面の霧・・・。
そんな風景を思い浮かべながら、ぼくは聴いていた。
岡部が電子音をランダムに挿入し、音像にメリハリをつけていく。
エレキに持ち替えた鬼怒は、最初は身じろぎもせず音に聞き入っている。
5分くらい、そんな静かなサウンドが提示しつづけられたろうか。
ふっと目を開けた鬼怒が、高良のフレーズに合わせて、そっと弦をはじく。
高良の手元に視線を投げながら、断片的なフレーズをいくども重ねた。
最後まで、そんな感じで進んだと思う。
10分くらいで終わっちゃうのがもったいない。
「SKIN」を叙情的に、コンパクトにアレンジしたらこんな感じかな。
この曲はぜひ、次のアルバムに入れて欲しい。いい曲だ〜。
さて、ここまではぽんぽんステージが進行していく。
曲紹介をちょっとするだけで、鬼怒と勝井のほにゃららMCも控えめ。
4曲目の前で、やっと長めに喋った。やっぱり、このMCがなきゃ(笑)
先行発売で物販してた「peru-furu」のジャケに引っ掛けて、「京王線=スワンプ聖地」説について語っていた。
第一部最後は、3rdアルバム収録の「frost and
fire」。
ずいぶん珍しい選曲だ。過去の曲って、めったにやらないのに。
高良もドラムセットに座り、冒頭はパワフルにテーマを駆け抜ける。
イントロ部分は数年前の、ボンフルのイメージそのままな演奏だった。
リズム隊はそのままハイスピードでビートをキープ。
鬼怒と勝井のみ、テンポを下げてじっくり弾き始めた。
メロディをフェイクさせ、テーマを繰り返す。
大体、半分かそれ以下くらいのテンポ。
抑えたギターソロと高速リズムとの対比が面白かった。
さらに。ここからが鬼怒の独壇場。
いきなりギターを構えなおし、猛烈なギターソロをはじめる。
すさまじい早弾きで、指がネックの上を優雅に踊る。
きっちりピッキングして、むちゃむちゃ熱いギターソロだった。
第一部は1時間くらい演奏してたろうか。
第二部の皮切りは、鬼怒のドブロギターで始まる。
ボトルネックもはめ、ボンフル流スワンプ・ロックを披露した。
勝井はディレイで音を響かせながら曲を盛り上げる。
途中で登場するメロディが印象的だったな。
中間部ではノーリズムになり、鬼怒がシンセでスペイシーなソロを弾いた。
そしてエレキギターに持ち替え、クールにリズムを刻み始める。
聴いてる時はさっぱり気づかなかったけど。
「She Knows」(12/26ライブの新曲)と「〇A」をメドレー形式で演奏していたそう。
「She Knows」は前回の時、「レイドバックしてるな」とぼくは思ったらしい(細かくは覚えてない(笑))。
今回はぐっとシャープに聴けた。周辺が絞られてタイトになった感じ。
今夜の演奏のほうが、ずっと僕は好き。
「〇A」もシンプルに突っ走り、あっさり聴いてしまった。
「She Knows」とつながれて違和感がなかったもの。
前回のアレンジは、たぶん派手だったんだろう。前回はもっとエキサイトしながらぼくは聴いてた記憶がある。
後半では長めのMC付。
勝井が弦交換する間に、鬼怒がほんわりと喋っていた。
大阪でカルメン・マキのバックバンドとして行ったときのエピソードをひとくさり。
マキがMCで「XXXの曲は永遠です」と言ったとたん、観客からすかさず「フォーエバー!」と掛け声がかかり、ぶっ飛んだって話などをしていた。
翌日、鬼怒や勝井のBBSに「フォーエバー」とやたら書き込んであったのには笑った。
ちなみに後半2曲目は曲名紹介なし。
終演後に鬼怒の譜面台を覗いたら、「ロコモーティブ」と書いてありました。
もしかしたら、その場で変更されてたかもしれません。
この曲でも鬼怒はドブロを持ち、ファンキーに演奏する。
ルイジアナっぽい演奏だった。
微妙に泥臭いけど、なぜかずぶずぶのブラック・ミュージックにならない。
大坪のベースがクールなせいかなぁ。
「ボンフル流スワンプ」のイメージが常に残る、不思議な感触の曲だった。
もし「ロコモーティブ」なら、ぼくは聴くのが3度目。
なのにまったく聞き覚えなかった。前回はアヴァンギャルドっぽく演奏してたようだし。
さて、第二部ラストは恒例の「SKIN」。
40分に渡り、じっくり演奏してくれた。
今回の「skin」は前回よりさらにドラマティック。
ギターとバイオリンがユニゾンで、じっくり迫力あるメロディを奏でるのが素晴らしい。
大坪のベースは、いまいち響きが鈍くて残念。
2月に演奏した時同様にマレットを使うが、音の分離が悪くて迫力不足だった。
今度は勝井や大坪が大活躍。
勝井はなんと言っても、響き渡るバイオリンの音色が最高だ。
ほとんど弾かない鬼怒と対照的に、さまざまなフレーズを撒き散らしていた。
岡部はリズムパターンをキープしつつも、多彩なフィルをおりこむ。
引出しの多さと的確な手数が見事だった。
鬼怒はわずかに腰を曲げ、目を閉じて演奏に没頭する。
まったく弾かずに、ただ演奏を聴きつづけるシーンも多々あった。
終盤のアレンジは実にシンプル。
鬼怒が高良の演奏を中断させ、大坪と岡部のみに音を絞る。
いや、勝井が一つの音を弾き続けてたかな。
ベースの2音が単調に響き、重厚なイメージがあたりに広がる。
おもむろに鬼怒がギターに手を伸ばす。勝井と高良も演奏に加わった。
混沌と盛り上がり、さまざまな音が絡み合っていく。
だんだんボリュームが下がり、ステージに残るのは鬼怒の発振音みたいなノイズのみ。
鬼怒は目を閉じ、身じろぎもせず音を響かせる。
メンバー全員の視線が鬼怒に集中。
まだ鬼怒は動かない。
演奏が終わるまで、数分くらい。
たった一つの音だけ残り、ステージが緊張感につつまれていた。
このまま終わってもよかった。荘厳な雰囲気が心地よい。時間は22:45くらいかな。
拍手を送っていると再びメンバーが登場し、アンコールに応えてくれた。
4thアルバムに収録されている「Storm Bird Storm
Dreamer」。
12月ライブとは異なりアルバム収録と同じアレンジで、鬼怒はアコギのカッティングをはじめる。
さわやかに歯切れのいいリズムが滑り込むこの曲は、なんど聴いても気持ちいい。
勝井のバイオリンが冴え渡り、テーマにソロにと弾きまくった。
全て終わったのは11時くらい。
即興が絶妙のタイミングで挿入され、全体の構成も刺激的。大満足のライブだった。