LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

00/12/26   原宿 クロコダイル

出演:ボンデージ・フルーツ
   (鬼怒無月:g、勝井祐二:e-vln、大坪覚彦:b、高良久美子:per、岡部洋一:ds)

 とにかく寒い夜だった。ライブハウスが駅から遠く離れていて、たどり着くまでに身体が冷え切ってしまった。
 到着したのは19時すぎ頃かな。すでに開場されていてすんなり席についた。
 
 ハコは予想していたより広い。ネオンの場内照明がめだつ、きれいな店だった。トイレが安っぽいがなんともはや。
 とはいえトイレに行くのに、ステージ横を通っていくのが面白かった。

 ボンフルを見るのは数年ぶり。今回で3度目かな。
 かなり音楽スタイルを以前から変えていると聴いていたので、とても今日のライブは楽しみだった。今年の8月にやったライブは、仕事で行けなかったし。
 演奏が始まったのは20時くらい。
 無造作にメンバーがステージに上っていく。

 今回の鬼怒は、ギターに専念するみたい。
 以前シルエレで見たときのようなシンセはなく、エレキギターを何本か並べていた。
 高良はステージ前面にヴィヴラフォンを置き、横には金物をあれこれと並べている。

<セットリスト> 
 1.SHE KNOWS(新曲)
 2.○B(丸ビー)(新曲)
 3.TRAIN
 4.○A(丸エー)

(休憩)

 5.フォークソング(新曲)
 6.チタンフィールド
 7.ロコモーティブ
 8.SKIN

(アンコール)
 9.Storm bird Storm dreamer
10.セッション(+福岡ユタカ)

 想像以上にボンフルは、音が変わっていた。
 99年に4枚目のアルバムをリリースしてるけど、今回演奏された中で、CD化されているのは「Storm bird Storm dreamer」のみ。
 あとは全てそれ以降に作られた新曲ばかりだ。
 今回のライブでも、3曲が初演された。

 「SHE KNOWS」はいきなり新境地。
 鬼怒はドブロ・ギターを持ち、ボトルネックをつける。
 テンポはゆったりめで、カントリー風のフレーズを、断続的にギターとヴァイオリンが奏でる。
 これが気持ちいいんだ。ボンフルのイメージとはまったく逆。
 「レイドバックした曲もできるんだなあ」と思いつつ、つい夢心地になってしまった。
 この曲だけで、20分くらい演奏していたかな。

 「○B」はもろに仮題っぽい。丸の中にBの文字を入れ、「丸ビー」とつけただけ。
 曲調はアヴァンギャルドでセッション風の重たい曲。
 高良がヴィヴラフォンでかっこいいソロを決めていた。

 このあたりで、スモークがステージ横からさりげなく焚かれる。
 バリライト風にせわしなく動く、かなり凝ったライティングとあいまって、ステージの雰囲気が盛り上がっていく。
 もっとも曲間には、鬼怒と勝井の「脱力漫才MC」が始まって、聴いてるテンションはあがったり下がったりするけど(笑)

 「TRAIN」は最近のライブで、何回か演奏しているそうだ。
 こいつも即興風の雰囲気が漂う。たまにフレーズらしきものが出てくるくらい。
 勝井が譜面台に置いたサンプラーらしきものを操作して、電子音と組み合わせていた。

 「○A」が、唯一過去のボンフルを思わせる曲。
 高速リズムに乗って、勝井と鬼怒がリフをびしびし決める。
 始めて聴いたけど、ぜひ次のCDには入れて欲しいな。

 休憩をはさんだ第二部のしょっぱなは、またもや本邦初公開の新曲「フォークソング(仮題)」。
 これがまた新境地と言うかなんというか・・・。
 鬼怒はまたドブロ・ギターを持って、3フィンガーでほのぼのしたリズムを提示する。
 そこに勝井が生ヴァイオリンで、なんとものどかなメロディを奏でる。

 途中で勝井はエレクトリック・ヴァイオリンに持ち替えるものの、最後までのんびりと、フォーク風の演奏で終わるのにはびっくり。
 どっかで構成をがらりと変えて、変拍子で盛り上がるかと思ってた。

 ボンフルでやる必然性はどこだろう・・・混乱しながら聴いていた。
(ボンフルのレパートリーは、リーダーの鬼怒無月が全て作曲。
 だけど鬼怒は本バンド以外にも、多数のバンド名を使い分けて、さまざまな活動をしている。
 だからボンフルにこだわる必然性は、あんまりない。ボンフルが一番キーになる活動だろうけど。たぶん)

 続いて演奏した「チタンフィールド」。今回がステージでは二度目の演奏だそうな。
 これが本日の、一番聴き所だったと思う。
 まずはギターで鬼怒がフックを提示する。
 リズムは混沌として盛り上がりつつも、ぶっといノリが全体を支配していた。
 いつしかフレーズの提示は勝井のヴァイオリンに移り、時にメロディを崩しながら登りつめる。
 サビではリズムが変拍子になり、ユニゾンで叩きつけられる。
 テンション高く突っ走る、とびきりの演奏だった。

 エンディングの「SKIN」は、ここ数回のライブでトリに演奏しているとか。
 全体的に沈鬱な重たい演奏だった。
 メロディはそこかしこに覗くものの、基本は混沌とした雰囲気で、それぞれがてんでに演奏した音を混ぜる。
 けっこう長時間プレイしていたと思う。
 なんとも、後味の悪い終わり方だった(笑)

 こんな終わりかたじゃ物足りないので、拍手を送っていたところ、すぐさまステージにメンバーが戻ってきてくれた。
 鬼怒と勝井は咥えタバコで、演奏の準備をしている。
 そして演奏された「Storm bird Storm dreamer」。
 
 CDではアコギでかき鳴らす刻みを、鬼怒はエレキギターで演奏する。
 アンコールだと言うのに、いきなりトップスピード。
 顔をゆがめながら、はじけ飛びそうな勢いで弦をかき鳴らす。

 そのビートにリズムがのっかり、勝井がロマンティックにヴァイオリンでメロディをかき鳴らす。
 フレーズの切れ目でコードチェンジされるたびに、音の風景が表情をがらりと変える。
 雄大なスケールで空高く駆けるイメージが広がる、素晴らしい演奏だった。

 この時点ですでに10時半過ぎ。
 ところがボンフルはもう一曲演奏してくれた。
 観客としてみていた福岡ユタカをステージに呼び上げ、Cのキーでセッションを始める。
 福岡ユタカは黒づくめの格好で、軽くエコーをかけたマイクを持つ。
 ボンフルによるミドルテンポのビートに乗って、身体をくねらせながらヴォーカルで、即興のメロディを聴かせた。
 福岡が大陸的なフレーズを朗々と歌うさまは、なんとなく平沢進を思い出してしまった。

 全て演奏が終わったのは11時過ぎ。ボリュームたっぷりのライブだった。

 この文章を書いてるのはライブの数日後で、細かいところは記憶があいまいになっちゃってるけど。
 最初から最後までアイディア満載で、とてつもなく刺激的なライブだった。

 どうやらここ数回のライブは、つぎつぎ新曲が現れているようだ。
 今のライブ・ステージは、新曲をセッション的に演奏して、取捨選択する実験場になっていると見た。
 次回のボンフルのライブは2/2のまぼろしの世界フェス(吉祥寺STAR-PINS CAFEにて)になる。

 次も見逃せないなあ。・・・平日だけど、はたして行けるのやら。

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