LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/2/2  吉祥寺 Star-pins Cafe

まぼろしの世界Festival(2/2)

出演:ヤドランカ+Yen-Chang、Spank Happy
   鬼怒・勝井アンド・スーパーガールフレンド、Bondage Fruit


 「まぼろしの世界」主催のフェスティバル二日目にして、最終日。
 まさか二日とも行けるとは思わなかった・・・こんな日も、たまにあるのね。
 だけど職場からすっ飛んで行き、会場についたのは開演10分前。
 息を切らしながら、開演を待つ羽目になった。

ヤドランカ+Yen-Chang
 (ヤドランカ:vo,g,サズー、福岡ユタカ:vo、鬼怒無月:g)


 ヤドランカはバンド名だとばっかり思ってた。
 白人女性の個人名と知り、びっくり。北欧の方なのかな。
 開演時間はほぼ時間どおり。
 最初は僕が到着早々で心が落ちつかず、音楽に集中できなくて困った。

 二曲目くらいからかな。落ち着いて聴けたのは。
 リラックスした演奏に、やっと耳がついてきた。
 ヤドランカを中央にして、左右に福岡と鬼怒が位置するパターン。
 音楽的にも、二人で彼女を盛り立てているようだった。

 ヤドランカはアコギの弾き語りで歌い、二人が飾り立てるパターン。
 福岡は目を閉じて、心地よさそうに喉を遊ばせる。
 前回のボンフルへ飛び入りしたとき同様、大陸的なフレーズが多い。
 ときおり手元に置いたエフェクターで、声を加工して飛ばしていた。
 
 鬼怒はアコギとエレキを曲ごとに持ち替えつつ、堅実なプレイを聴かせる。
 あまり派手なワザは決めていなかった。
 最後の曲になってピックで弦を引っ掻き、スペイシーな音を出したくらいかな。

 三曲目は福岡ユタカの作曲した「ニュースステーション2000」。
 この曲のみ、高良久美子がパーカッションで参加する。
 テレビのテーマソングだけど、僕自身が見たことないから・・・どういう風に曲をフェイクさせていたのかはわからずじまい。無念。
 ラストはヤドランカがサズーをもつ。
 福岡とフレーズごとにメロディを歌い継ぐ、きれいな曲だった。

 曲によっては変拍子を折込む、一筋縄ではいかない音楽。
 このイベントでヤドランカみたいな、トラッドかケルト風の曲が聞けるとは。。予想外な嬉しさだ。

鬼怒・勝井アンド・スーパーガールフレンド
 (鬼怒無月;g、勝井祐二:e-vln、Phew:vo)


 鬼怒がそのままステージに残り、セットチェンジの間をとぼけたMCで間をつなぐ。
 物販が充実してたので、その説明が多かったかな。
 ああっというまにセットチェンジが完了。
 二番手で、スーパー・ガールフレンドを持ってくるんだ。

 このセットはカバーばかり。セットリストはこんな感じかな・・・。
 あいまいなところが多いのはご容赦ください。
1)花はどこへ行ったの?<PPM>
2)バイ・バイ・ブルーズ(?)<レス・ポール(?)>
3)サンシャイン・スーパーマン<ドノヴァン>
4)ジュリエット・(?)<シャンソンかな?詳細不明>
5)ラブ・ミー・テンダー<エルヴィス・プレスリー>

 黒尽くめの服を着たPHEWは、すっくと立ち上がりマイクに向かう。
 背筋をピンと伸ばし、どすの利いた低い声でメロディを置くように歌った。
 ほとんど喉を響かせない。
 そっけなく聞こえる部分もあるけど、かえってドライさが救いになっていた部分もある。
 「ラブ・ミー・テンダー」をウエットにやられても、辛いものがあるし。

 鬼怒がアコギでコードのバッキング。
 オブリはほぼ全て、勝井のエレ・バイオリンが奏でていた。
 (余談だけど、勝井のエレクトリック・バイオリンって五弦みたい。
  初めて気がついた・・・)
 
 ベストトラックは、4曲目。
 勝井のヴァイオリンが、華麗に舞い上がる。
 メロディがどんどん上昇するところが、痒いところに手がびしばし届きまくり。
 深みのある演奏が、すばらしかった。

 鬼怒と勝井の脱力MCも、もちろんあり。
 ただPHEWが会話に加わったせいか、あまり脱線もなくあっさり気味かな。
 20分くらいのステージ。
 なんとここまで、サウンドの基調がアコースティックだ。
 とても「まぼろしの世界」イベントとは思えない・・・。

Spank Happy
 (菊地成孔:vo、岩澤瞳:vo)

 彼らが今夜のステージで、一番の発見!
 コンセプトは「テクノなバックトラックを、カラオケで流しながら男女コンビで、ニューウエーブ風なメロディを歌う」かな。

 サックス奏者として名高い、菊地成孔の冗談バンドかと思いきや。
 オフィシャルHPによれば、数年前から活動してるようだ。
 岩澤はノースリーブの薄手なワンピースに、裸足。
 一方で菊地はコートにマフラー、手袋と完全防備体勢。
 ふたりともインフルエンザでぼろぼろな体調で、ステージに臨んでいるとか。

 バックトラックは、完全にカラオケ。PAのほうから流しているのかも。
 立ち位置の後ろへ置いた機材を、菊池がたまにいじっていたが、あまり音の変化を感じられなかった。

 どかすか刻むテクノ・ビートに乗って、二人はマイクの前にすらっと立つ。
 菊池が指で拍の頭を、岩澤に提示する。何度も何度も。
 演出かな、と思ってたけど。単に岩澤がステージになれていないせいか。
 なにせ、普段は事務をしている20歳の新人(?)らしいから。

 菊地の合図で二人はマイクを両手でそっと持ち、静かに「ハロー、ハロー、僕らは僕らは〜」と歌いだす。
 このメロディで、僕はいきなりスパンクの音にしびれた。

<セットリスト>
1)ワールド・ハロー・ソング
2)少女地獄
3)アンニュイ・エレクトリーク
4)ジャンニ・ベルサーチ暗殺
5)スパンク・ハッピーのテーマ

 ニューウエーブは普段、それほど積極的に聴いていない。
 だから余計新鮮に聴こえたのかもしれない。
 それでも、か細い声で平板なメロディを、淡々と叩き込むスパンクのスタンスは、めちゃくちゃいかしてる。
 高速ダンス・ビートが、かろやかにホールを満たした。

 メロディは起伏が少ないものの、とてもポップでキャッチー。
 売り方しだいで、ヒットチャートにあがってもおかしくない。
「カラオケで歌ったら楽しいだろうな〜」と、マヌケなことを考えつつ聴いていた。

 二曲目では客席で、ミラーボールが回る。
 確かに、座りながらどっしり聴く音楽じゃなさそうだ。
 めちゃくちゃ大音量で聴いたら、さらに魅力が増えるにちがいない。

 ビートはさらにくっきりしてきた。ずんずん低音が響く。
 菊池はリズムに乗り、けいれん気味に身体をスイングさせた。
 一方で岩澤は直立不動。二人の対比がおもしろい。
 唯一の不満は、ヴォーカルに力がないこと。
 インフルエンザでぼろぼろのせいかな。

 ステージはわずか30分。
 あっというまに終わってしまった。
 大風邪にもかかわらず、菊地のMCはすさまじく爆裂。
 脂汗を浮かべながら、早口でやけくそ気味にまくし立てる。
 密度が濃くて、引き込まれるMCだった。

 エンディングでは、語りの掛け合いでボンデージ・フルーツを紹介して、後方へ退場する。
 バックトラックはそのまま鳴りつづける。
 この、余韻を残した終わり方もいい。

 何の先入観もなかっただけに、ぐいぐいステージに魅入られた。
 体調不良でボロボロのステージ(4曲目では、二人して歌詞を忘れてハミングでごまかし、平謝りしていた)を差し引いても、楽しめた。
 
 スパンクのCDが出たら、すぐさま買いたい。
 次のライブは、渋谷で3/10とか。行こう・・・かな。

ボンデージ・フルーツ
 (鬼怒無月:g、勝井祐二:e-vln、高良久美子:per、岡部洋一:ds、大坪覚彦:b)

 昨年末ぶりになる、ボンフルのライブ。
 セットリストは下記のとおり。メドレー形式で演奏された。

<セットリスト>
1)ロコモーティブ 
2)スキン

 わずか二曲ながら、45分ほどのステージ。
 というか、「スキン」だけで30分以上の演奏だ。
 「スキン」のあとに、なにか演奏するのかと思いきや。
 そのまま終わってしまった(時間が押していたらしい)ので、拍子抜け。

 「ロコモーティブ」は、鬼怒のカッティングからスタート。
 ボトルネックも織り込み、ブルージーな趣を見せる。
 バンドメンバーが加わっての演奏も、全体的にアヴァンギャルド色が濃く聞こえた。
 妙にリズムがちぐはぐな感触。
 テーマのメロディも、感じ取りにくいアレンジだ。
 エンディングで鬼怒が、ちらりと弾いて見せたくらいかな。
 
 圧巻なのは「スキン」。
 前回クロコで聞いたときは、沈鬱な重苦しい曲、とマイナスイメージが強かった。
 ところが、今回はそれがドラマティックな重厚さに聴こえて、だいぶ評価が変化。

 ポイントは大坪のベースだ。
 マレットで弦を引っぱたき、二音で構成された重みのあるリフを執拗に繰り返す。
 胴無しのドラムによる低音が、ずしんと鳴る。
 そこに勝井と鬼怒がユニゾンで、テーマを果てしなく繰り返す。
 今夜聴いた「スキン」は、魅力を素直に感じられた。
 30分かけてじっくり演奏されても、退屈しない。

 エンディングは一度ブレイクし、照明が落ちる。
 ピンスポで大坪が、そっと浮かび上がった。
 そこでアルコによるベースをじっくり聴かせる、渋い終わり方。

 あまりにもあっけない幕切れで、後ろ髪を引かれる。
 だけど二日間を通して、充実したイベントだった。

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