LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/4/24  新宿 ピットイン

出演:イースタシア・オーケストラ
 バンマス:藤川義明(Sax)
 メンバー:梅津和時、片山広明、時岡秀雄、堀切信志(以上sax)
      吉田哲治、神村英男、小宮いちゆう(以上tp)
      佐藤春樹(tb)、翠川敬基(cello)、横山達治(per)
      早川岳晴(eb)、小山彰太(ds)

 
 ジャズ界のそうそうたるメンバーをそろえた、イースタシア・オーケストラの今年二回目になるライブ。
 今回はウイークデイのせいか、観客は50人程度と少なめ。
 そういや、今日は配られたチラシも妙に少なかったな。因果関係は・・・ないだろうけどさ。

 演奏が始まったのは8時くらいかな。
 おもむろにメンバーがステージに上がっていく。
 
 演奏前に藤川が、細かく曲構成の説明をメンバーに始めた。
 もはや恒例かも。これから始まる演奏への期待で、わくわくしてくる。

 毎度のように、ぶんぶん腕をふって藤川はリズムを取る。
 カウントともに演奏が始まった。

<セットリスト>
1・NANA'S DREAM
2・8degrees
3・KONA (*)
4・TATUZINHO

 (休憩)

5・Moonlight Mist
6・TANGO
7・FIO DENTAL
8・MACEIO BLUES

(*)藤川さんにご教示頂きました。ありがとうございます。

 「前回喋りすぎた」とかで、今回はほとんどMCなし。残念。
 曲目紹介もあまりせず、てきぱき手早く進行していた。 
 
 その代わり、音楽面では新機軸。
 前回前々回のライブとは、セットリストを変えてきた。
 入れ替わりに登場した3曲は、全て新曲という豪華版だ。

 一曲目から切れのいいメロディが嬉しい。
 ソロの合間には藤川がサインを巧みに送り、ホーン隊のバックリフでアドリブを盛り立てる。 
 この多重的な音作りこそ、イースタシアの魅力。

 藤川は素早くアルト・サックスを振り上げ、ホーン隊に鋭い合図を送る。
 振り下ろすサックスに合わせてリフがすぱっと決まっていた。

 今夜のライブは、積極的に藤川も演奏に参加。
 テーマやリフで、ほぼ全編に渡ってアルト・サックスを吹いていた。
 その勢いで、ソロもとって欲しかったなぁ。

 藤川のサックスはSALでのフリージャズしか聴いたことがない。
 ぜひこのビッグバンド・ジャズで、彼のソロを聴いてみたい。
 後半のセットで片山が藤川にそれっぽい合図を送っていたけど、成立せず。無念。

 「NANA'S DREAM」では、梅津のソロが印象に残った。
 身体を軽くひねりながら、勢いのあるフレーズのソロを取ってたっけ。
 ほんのりクレツマー風な音使いだったと思う。

 2曲目は新曲。甘い雰囲気の、ほっとするメロディだった。
 翠川が「新曲だから、ゆっくりやろうね〜」とおどける。
 そのわりに、演奏が盛り上がるにつれ、テンポはあがっていく。
 ソロをはさんで、どしどし新しいメロディが登場する曲。
 早川と横山で、かけ合いのソロを取ってたのは、この曲だっけかなぁ。

 パーカッション・ソロの時、横山は複数のボンゴを使い分け、高速リズムを叩き出す。
 そこへ梅津と藤川がマウスピースで絡む。
 マウスピースでカズー風にフレーズを吹いていた。

 3曲目も新曲で、佐藤春樹のペンによる。
 譜面には特に、タイトルを書いてないようだった。
 ちなみに今日は前のほうの席を確保。おかげで、譜面台に置いた藤川の譜面がちらりと覗けた。
 譜面にはタイトルがゴチック体で大きく書かれ、音符も律儀にくっきりと記してある。丁寧なつくりだった。

 この曲は、スピード感があるテーマがいい。
 ホーン隊がメロディを吹く合間に、チェロとトロンボーンが交互にメロディを挟み込む構成だった。
 トロンボーンが、実にいい音色で鳴ってたっけ。
 この曲に限らず、佐藤がソロを取るたびに、しみじみ太くて甘い音を楽しめた。

 イースタシアのソロ回しは長いほう。
 だけどバンマスの合図のもと、的確に周囲のメンバーがフレーズを差し込むから、飽きることがない。
 藤川のアレンジセンスはつくづくすごい。
 バックリフにあおられてか、ソロイストの演奏にさらに熱がこもっていくシーンも、何度となくあったんじゃないか。

 本日のボリュームは控えめ。
 陣取った位置のせいか、生音もちょこちょこ聴こえて嬉しかった。
 この日は片山が、実に楽しそうに演奏していた。
 ほかのメンバーがソロを取っている間も、にこにこしながらサックスをいじる。
 時にはひょろんとテナーを咥え、フレーズを挿入していた。
 
 早川の演奏も聴き逃せない。
 ホーン隊の音量にかき消されるシーンも多かったけれど、ひとときも立ち止まらずに指が奔放に踊り、刺激的なフレーズをつぎつぎ披露した。

 小山も着実にビートを刻む。
 ソロになったとたん、手数多くタムを叩きまくるドラミングがかっこいい。

 「TATUZINHO」で第一部は終了。ああっというまの一時間だった。

 しばしの休憩をはさみ、後半は新曲でスタート。
 演奏前には、またしても入念な曲構成の確認が入る。

 ちなみにこの曲では横山がソロを取る予定が、その場に変更になったらしい。
 休憩中に席を外したせいで、早川のソロにいきなり変更されたとか。
 なんかよく事情がわかんないけど・・・そんな自由度の高さがおもしろい(笑)

 「Moonlight Mist」は藤川の新曲。タイトルは種牡馬名から取ったそう。
 ベースによるリフがいかしてる。
 くきくきとクサビを打ち込んで入くような感じかな。

 この曲で早川が取ったソロは最高!
 足元のエフェクターをちょこちょこ踏み替えつつ、指は激しくネックを動き回る。
 すさまじいハイテンションでうねるベースを堪能できた。

 続けて、滑り込むように吉田のトランペットにソロは受け継がれる。
 そこへ梅津がリードを二本咥えにして指で弾き、ぺこんぺこんとパーカッシブな音でソロに絡んでいった。
 後半からいきなり、わくわくものの展開だった。

 つづく「TANGO」では、作曲者の翠川を大きくフィーチャー。
 深みのあるチェロが、ゆったりと広がる。
 梅津のクラリネットが、雰囲気をさらにリラックスさせた。
 さらに横山と3人で、静かなアンサンブルを聴かせる瞬間もあったっけ。

 「FIO DENTAL」は、ふわりと浮び上がるメロディが最高の一曲。
 歯切れのいい金管と、伸びやかなフレーズを鳴らすサックス隊を対比させるアレンジがいい。
 この曲のテーマは、とっても心が浮き立つ。大好きな曲だ。

 最後の曲は疾走するリズムが爽快な「MACEIO BLUES」。
 片山のヘビーなブロウが炸裂する。
 ぐいぐい演奏が盛り上がり、大団円を迎えた。

 アンコールもなく、あっさりとライブは終了でちょっと拍子抜け。
 コミカルなメロディが楽しい「PATE POTE」は、セットリストからはぶかれちゃった。あうう。

 次回ライブは8月を予定とのこと。
 メンバーのスケジュール調整は大変だろうが、これだけ素敵なライブはもっといっぱいやってほしいです。

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