LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/1/21  新宿 ピットイン

出演:イースタシア・オーケストラ
   バンマス:藤川義明(as,ss)
   メンバー:梅津和時、片山広明、時岡秀雄、堀切信志(以上sax)
        吉田哲治、神村英男、小宮いちゆう(以上tp)
        佐藤春樹(tb)、翠川敬基(cello)、横山達治(per)
        早川岳晴(eb)、小山彰太(ds)


 イースタシア・オーケストラのライブは、約2ヶ月ぶり。
 このオケは年4回しか、活動しない方針だとか。
 もっともこんなに豪華なメンバーだと、スケジュール調整すら一苦労だろうけど。

 今回はパーカッションを、横山達治が担当。前回の関根まりがエキストラだったんだろうか。
 演奏がスタートしたのは8時ちょいまえ。
 それまで楽屋近くでおしゃべりしていたメンバーが、おもむろにステージへ上がって始まった。

<セットリスト>
1.NANA'S DREAM
2.TATUZINHO
3.BOLD AND ABLE
4.FIO DENTAL

(休憩)

5.MACEIO BLUES
6.TANGO
7.DANCER'S IMAGE
8.PATE POTE

 11月のライブと、演奏曲目は全て同じ。曲順をいじったセットリストだった。
 ほかにもレパートリーはありそうだけど・・・もっといろんな曲を聴いてみたいな。
 そういえば藤川は、またもや演奏直前に譜面のアレンジを微妙に変化させて、メンバーに説明していた。
 直前まで曲を構築させる完璧主義な性格なのか、その場のインスピレーションを重視するのか・・・どっちだろう。

 今回のライブは、全般的にアップテンポでにぎやかな曲が多かった。
 しっとりしたのは「タンゴ」くらいかな。
 音量が控えめなPAだけに、個々の演奏がくっきり聞こえて嬉しい。

 前回も思ったけれど、やはり藤川のアレンジ・センスは抜群だ。
 イースタシアでは、各メンバーのソロを長めにとって、じっくりアドリブを聴かせる構成になっている。
 だから、ともすれば冗長になりがちなのに。
 ポイントでオケによるバックリフを見事にかみ合わせ、くっきり曲にメリハリをつけていた。

 さらに木管と金管を使い分けるアレンジで、メロディを対比させたりユニゾンさせたりという、編曲もいいなぁ。
「FIO DENTAL」を聴いているとき、しみじみアレンジがきれいだなって感じていた。
 
 曲のメロディは、優しいフレーズが多い。
 早いリズムでにぎやかに鳴らしながらも、緊張感は少ない。
 どこかほのぼのとした雰囲気が全体に漂っていた。

 そんなオケのイメージに、威勢よさを加えていたのが横山のパーカッション。
 コンガを前にずらっと並べ、高速リズムで演奏を煽り立てる。パワフルでかっこよかった。

 翠川の演奏も印象的だ。「NANA'S DREAM」では、アクセントっぽくノイジーなフレーズを重ねこみ、「TATUZINHO」や「TANGO」あたりでは無伴奏ソロをしっとりと聴かせる。
 クラシカルで叙情的なフレーズからハードなプレイまで、振り幅の広い演奏をしていたと思う。

 ただ正直なところ、今夜の演奏は全般的にソロの面で不完全燃焼。
 おおっとうなるソロが、僕としては少なかった。
 全体の演奏そのものはすばらしかったから、不満ってほどでもないけれど。
 
 そんな中で、とびきり印象深いソロをぶちかましてくれたのは、梅津だった。
 「PATE POTE」でソロを取ったときに、トランペットのミュートを手に持つ。
 まずはひとしきりカズー風に吹いたり、声での即興を繰り返していた。
 けっこうしんどいのか、ソロをとりながら藤川に「まだやるの?」って上目使いな視線を、ときおり投げていたのが面白かったなぁ。

 度肝を抜かれたのは、そのミュートにサックスのマウスピースをくっつけた時。
 マウスピースだけなのに、音程をつけて見事なソロを吹き鳴らす。
 あんなことができるとは・・・ハイテクニックな梅津の凄みを感じた瞬間だった。

 そしてあいかわらず藤川は、ほとんどサックスを吹かなくて残念。
 ほぼコンダクターに徹していた。SALでフリーなサックスを吹きまくっているだけに、イースタシアでも豪快にソロをとって欲しいなあ。

 総じて前半は曲としての構築を優先し、そして後半はソロの自由度をあげて、ルーズな雰囲気の演奏だった。
 エンディングは「PATE POTE」。
 コミカルなメロディに乗って、自由に展開する名曲で大団円。
 アンコールの拍手を送ったけど、今夜は準備していなかったとか。ちぇっ。

 僕が今まで聴いたジャズ・オーケストラには、それぞれ違った魅力がある。
 ソロとバックリフを一体化させ、混沌としたユニゾンで疾走する渋さしらズ。
 メンバーのソロを完全に前面に出し、自由度をかなり上げることで浮遊感の漂う優しさを表現する渋谷オケ。
 
 そしてイースタシアでは、ソロとアンサンブルが絶妙の比率でかみ合っている。
 ソロを堪能することもできるし、アンサンブルのハーモニーも楽しめる。

 次のライブは4月だとか。また聴きに行きたいな。

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