今お気に入りのCD(番外編)

CDじゃないけれど、見に行ったライブの感想です。

00/9/30 吉祥寺 MANDA−LA2

出演:ルインズ、是巨人

 昼から雨が降ったりやんだりのいまいちの天気だった。「こんな天気だと多少は客足が悪くなるだろ」と期待したのに大間違い。
 会場時間を5分ほど遅れてライブハウスの前に到着すると、開場はすでに始まっているのに店の外まで行列は続いていた。
 店の中に入っても、かなりの入り。なんとか僕は後ろの方に座ることができたが、けっきょく立ち見もごそっと出る盛況だった。70〜80人くらい入ったかな。
 BGMにはさまざまなプログレがかかって、雰囲気を盛り上げる。

 今日は物販もたいしたもの。最近のルインズ関連盤を7〜8種類並べていた。
 目玉は94年に吉田達也がカセットで発表した「piano works」のCD化。
 「限定版だ」と売り子の人が強調してたっけ。かなり心が動いたけれど、僕はカセット版を今年(80)で買ってしまっている。
 「内容はカセットといっしょ」だと聞いて、ぐっと我慢することにした。

 けれども、ビデオが二本並んでるのを目ざとく見つける。
 「ルインズ波止場ショー」(1994年)と「MAGAIBUTSU SAMPLER」(1997年)だ。
 98年に僕が磨崖仏リミテッドへ問い合わせたときは、どちらも売り切れだったはず。再発したのかな。
 迷わず「MAGAIBUTSU SAMPLER」を購入。「お、即断即決ね」ってからかわれてしまった(苦笑)
 
ルインズ(19:35〜20:30)

 開演時間を数分過ぎて、BGMが流れているのに、無造作に二人が登場。
 音出しをし始める。珍しく吉田が「アー。アアー」って発声練習してたなあ。
 まずは「パラシュトム」から「YAWIQUO」を演奏。
 ここのハコはやはり音がいい。ヴォリュームは小さめで、演奏の細かいところまでしっかり聞き取れる。
 吉田のタムは、ピッチがゆるめ。深みのある音で叩いていた。
 今回のライブは、バラエティ豊かで楽しめるステージだった。
 
 ライティングもセンスのよさがうれしかったな。
 バックの壁に赤いライトを斜めから当て、打ちっぱなしでざらざらした壁に血をぶちまけたかのような、ワイルドな雰囲気を作り出す。
 そしてピンスポ風の明るい色使いで、二人を照らす雰囲気がカッコよかった。
 このまま最後まで、抑えたライティングで行って欲しいな、と思いきや。
 途中からは前回みたいな、眩しく矢継ぎ早に切り替えるライティングになったのは残念だったけど。

 手ならしぎみに「YAWIQUO」を終わらせた後は、新曲を二曲披露。
 一曲目は佐々木がハードロック風のポップなリフを繰り返し、吉田がせわしなくビートを刻む。次第に曲の雰囲気が混沌とし、盛り上がっていく。
 二曲目は、とことん高速。これまでのルインズの路線を踏襲して、ころころリズムチェンジする。スタート・ストップを多用し、スリリングでかっこいい曲だった。
 ここ最近のルインズは、アンサンブルを意識したアレンジになっているので、この手の曲は逆に新鮮だった。
 二曲目のほうが僕は好きだけど、両方とももっと聴きたいな。まだまだルインズは創作意欲が溢れているみたいだ。

 続いては、最新アルバム「パラシュトム」から5曲をメドレー。
 「PALLASCHTOM」「KIPPSSIDAMN」など。 
 演奏はタイトだけれど、どこか余裕のあるステージだ。
 吉田はすでに汗まみれで、ときおり汗を飛び散らせる。
 佐々木はメロディにのって、表情豊かにベースを奏で、ときに飛び跳ねる。
 PAの確かさのおかげかな。どこに行ってしまうかわからない迫力はないけれど、スリリングな演奏を堪能できた。
 しみじみ、佐々木も吉田もすばらしいテクニックの持ち主だと思う。

 お次は「ブラック・サバス・メドレー」と「Blue Rondo a La Turk」だ。
 前半は海外のインディレーベルの要請でアレンジした曲だそう。
 (「リリースは・・・まだかな」と言ってたから、近々新曲が発表されるってことだ。楽しみ〜)
 二曲目はここで紹介した、デイブ・ブルーベックへのトリビュート盤に参加した曲。
 こちらもライブ初演だそうな。

 「サバスメドレー」は、「曲がどれも似てるから、逆回転(?)で演奏してる」との話だったが、サバスに詳しくないのでよくわからなかった。
 「Blue〜」はレコードと同様のころころ弾む高速演奏だ。
 エフェクターをすばやく切り替え、テーマを的確に聞かせる佐々木のプレイがすばらしい。
 
 最後にじっくりと3曲を披露。まずは「BLIMMGUASS」「BUPPHAIRODAZZ」など「パラシュトム」からの曲を二曲。
 「BLIMMGUASS」は冒頭にハイハットで切り込む形にアレンジを変化させ、工夫を凝らしている。
 オーラスは前作「ヴレスト」から「ワリド」を選曲。ドラマティックに演奏を盛り上げていき、二人の繰り出すグルーヴに呑み込まれたナイスなライブだった。

是巨人(20:45〜21:40)

 あっというまにステージ変更は完了。10分もかからなかったんじゃなかろうか。
 すぐさま始まるのかな、と思いきや。やはり吉田自身に休憩が必要なのか、しばらくしてから3人がステージに上ってきた。
 吉田が今度は、迷彩模様をあしらったTシャツに着替えている。まあ、前のステージであれほど汗をかいてるんだから、当然着替えるだろうなあ。

 吉田の「是巨人です」ってMCから演奏はスタート。
 こちらは一曲づつ区切って、吉田が曲紹介してくれた。ただ、何曲か不明な部分があるので、セットリストを書けないのが悔しい(苦笑)ただ、基本的には1stアルバムからの選曲だ。
 まずは「Four holes in the sky」でスタート。
 ところが、いまいち演奏に迫力がない。ステージの上でこちょこちょと音が固まってしまっている。
 
 演奏者も物足りなかったんだろうな。一曲目が終わった段階で、鬼怒も吉田もモニターの音量を上げてもらうように頼んでいた。
 そのおかげか、二曲目の「On reflection」からは迫力満点。細かな音がステージから降り注いだ。

 ステージは「Careless heart」「Prepartaion」と続いていく。
 是巨人の演奏は、聴いていてとてもストイックだ。
 インプロ部分も、かなり少なそう。テーマやリフをタイトに決めて、転がっていく。
 鬼怒無月は首をリズムに合わせてくきくき振りながらも、目は真剣そのものでギターを弾く。
 吉田もリズムに専念できるせいか、真面目なオーラが漂っている。
 リズムキープに主眼を置いた演奏ながら、常にタムを次々叩いてリフを作り、単なるバックでは終わらない。

 その二人をどっしり支えるがごとく、ナスノミツルがどっしりとベースを奏でる。
 彼の無表情ながら着実な演奏が、見ていて安心感を与える。
 3人の対照的な雰囲気が、是巨人のイメージかな。
 もっともかなり複雑なことをやっているから、ナスノもTシャツに汗をにじませ、後半には真剣な顔になってきてたけど。
 
 新曲も一曲披露してくれた。その後も「You know what you like」などを的確に決めていく。
 曲だけ聴いていると、緊張感が漂う堅苦しいステージのように感じられるかもしれない。
 けれども曲間に吉田と鬼怒がぼそぼそっと二言三言話すMCが、掛け合い漫才のようで面白い。
 その些細なやりとりで観客席からも笑いが起こる。
 そしてリラックスした隙に、すぐさまタイトな演奏が始まるんだから油断できない。
 いくつか、やり取りを紹介します。

(「On reflection」の演奏前に)
吉田「この曲は、僕らの間では別名「フュージョン」って呼ばれています」
鬼怒「そうでしたっけ?」
吉田「(苦笑)とにかく、フュージョン好きなかたなら気に入って頂けるのでは」

(「Careless heart」の演奏前に)
吉田「是巨人の曲は、どれもタイトルに意味があるんですよ。皆さんもお分かりと思いますので、あえて説明しませんが」
鬼怒「ケアレス・ウィスパー?」(ワム!の曲のことでしょうな)
吉田「さ、やろうか(笑)」

(鬼怒が、何度もPAにモニターの返り音に注文をつける)
鬼怒「すいません。またドラムとベースのモニターを、もう少し上げて頂けます?」
吉田「単にギターの音が大きいんじゃない?(笑)」

(新曲を演奏する前に)
吉田「二週間前に、約9ヶ月ぶりにリハーサルしました。そのときに本当は二曲新曲ができたんですが、一曲は明るすぎるんで没にしました」
鬼怒「僕はいいと思うけど・・・吉田さんですよ、それ言ったの」
吉田「僕が作った曲なんですけどね・・・」

(「Poet and peasant」の前に)
吉田「これは高校のときに、ブラバンで演奏したスッペの曲「詩人と農夫」から取りました」
鬼怒「そのまんまじゃない(笑)原題がそれ(「Poet and peasant」)なの?」
吉田「いや、邦題が」
鬼怒「これで世界進出も大丈夫ですね〜」

 この「Poet and peasant」がラストナンバーだった。
 僕が是巨人のレパートリーで一番好きな曲がこれだから、演奏してくれてとてもうれしい。
 ところがここでアクシデントが・・・。
 鬼怒の弦が一本切れたかと思うと、チューニングまでがガタガタになってしまった。
 素人の耳にも、音が外れているのがわかる。
 もっとも、そこはさすがに百戦錬磨のミュージシャンたち。
 とっさにベースとドラムのコンビネーションに切り替える。
 鬼怒は微妙にチューニングを直しながら、その演奏に切り込んで行った。

 ブレイク風に何度かそのリフを繰り返した後に、鬼怒のギターソロになる。
 ピンスポのライティングを背負った鬼怒は、数分くらいの短い時間ながらロマンティックなギターソロを聞かせた。 

 拍手の中、すばやく袖に引っ込む三人。
 場内は明るくなったが、アンコールの拍手を送っていると三人が現れてくれた。
 だけどアンコールの曲は何も考えていなかった様子。
 「リハーサルをしてなくてボロボロになる曲と、リハーサルをして今日演奏した曲をもう一度やるのと、どっちがいいでしょう?(笑)」などと、吉田が言ってたっけ。
 鬼怒はもくもくと弦交換してた。

 吉田がその間に、8月のルインズによる中国ツアーの話をチラッとしてくれた。
 なんでもツアーに一ヶ月行って、ライブは8回くらい。あとは石仏を見にあちこち行っていたそうだ。本場のホイコーローを食べたかったが、現地の人に「辛すぎるからやめとけ」って止められて食べそびれたのが悔しかったらしい。

 弦交換が終わる頃に、ステージで譜面を見ながらやる曲の相談を始めた。
 けっきょくリハーサル無しのぶっつけ本番で演奏をやってくれた。
 手数の多い演奏を素早く決めて、最後までタイトにぶちかます。
 
 終わってみると、演奏の細かいところまで堪能できた素敵なライブだった。 

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