Guided by Voices
Suitcase failed experiments and Trashed aircraft(2000:Luna)

(Disk 3)

Producer:Robert Pollard,Matt Davis,& Kevin Poindexter
Recording engineered and Produced:
John Croslin,Dave Doughman,Gary King,Steve Wilber,John Shough

<ミュージシャン名略:凡例>
 RP:Robert Pollad,DG:Doug Gillard,DT:Don Thrasher,GD:Greg Demos, JP:Jim Pollad,
 KF:Kevin Fennel,MM:Mitch Michell,TS:Tobin Sprout,

<曲目紹介>→曲名:ユニット名

51. LONG WAY TO RUN: FAKE ORGANISMS

(RP- g,vo, MM- b, Payton Eric- ds, Steve Wilbur- g):1987年


 ミドルテンポのきれいな旋律が目立つポップス。
 サビのフレーズがリズムを崩して、雪崩れ込むところが特に好き。
 クレジットないけど、ハモる声もきれいだ。
 これはロバートの多重録音かな。そうは聴こえないんだけど・・・。
 
 1987年の録音ということは、デビュー直後。
 なのに平気で、こんなチャーミングな曲をボツらせるなんて。

52. MR. MEDIA: TOM DEVIL
(RP- g,vo)1992年


 ざっくりしたギターが迫力ある。
 ロバートがパワフル声を振り絞り、ほんのりパンキッシュ。
 一分ちょいの小品ながら、存在感をしっかり主張している。

53. SETTLEMENT DOWN: URINARY TRACK STARS

(RP- g,vo, JP- g, MM- b, KF- ds):1989年


 ギターのイントロに露払いをさせ、ケビンがタムの連打で突っ走る。
 ボーカルをブレイク風にはさみつつ、なんどもイントロのパターンがかっこよく繰り返される。
 とにかく、このドラムを叩き込む瞬間が快感だ。

54. MR. JAPAN: RED HOT HELICOPTER

(RP- vo,handclaps, TS- g,handclaps, dan toohey- b):1993年


 未発表のアルバム「The corpse like sleepof stupidity」用に録音された曲。
 ロバート・トビン・ダンの共作として作曲はクレジットされている。
 印象はジャムっぽい。フェイド・インでなんとなく演奏が始まり、とりとめなく終わってしまう。

 手拍子をロバートとトビンがかぶせているが、妙におざなりなのがおかしい。
 ちょっと単調な曲かなぁ。

55. A KIND OF LOVE: DOCTOR FORMULA
(RP- vo, Mitch Swann- g, MM- b,Payton Eric- ds):1984年


 またしてもデビュー前の、貴重な音源。
 ライブ録音らしく、観客の歓声が盛大に聞こえる。
 このときはまだまだ遊び感覚な、パーティ・バンド時代のGbVだと思うけど・・・わりとクリアな録音。
 気楽に演奏しつつもそれなりに真剣な姿勢で、記録として4チャンくらいのテープを回していたのかな。

 なんとなく耳なじみある親しみやすいメロディを、ロバートがメンバーとハモりながら歌い綴る。
 ドラムが少々ドタバタする以外は、きれいにまとまった好演だ。

56. MEDDLE: BEN ZING
(RP- g,vo):1988年


 またもやBEN ZINGの音源の登場だ。
 リバーブが効いたダブルトラックのボーカルで、力強いメロディを歌い上げる。
 コードストローク一発の簡素なアレンジなのに、ニュアンスたっぷりな演奏。ぐいぐい耳が惹き付けられる。
 
 冒頭から流れるメロディはしょっぱなから優しく畳み込み、サビでふわっと解放される。
 甘い旋律がたまらなくかっこいい。

57. BIG TROUBLE: HAZZARD HOTRODS
(RP- g,vo,TS -g, MM- b, Larry Keller- ds):1990年

 
 GbV名義でのテイクもある、いせいのいいロックンロール。
 途中でぶちっとはさみが入る、めちゃくちゃ荒っぽい録音だ。

 音源はMCビデオ用(って、なんだろう・・・)のライブ録音。
 演奏中でもかまわず中断し、いきなり演奏が再開される。
 力任せに歌い放つボーカルも大胆だ。

 ネットにこの曲のライブバージョンが何曲かアップロードされてるけど。
 たしかにこんな荒っぽさは、ライブでこそ引き立つのかも。

 針飛びだらけのアナログ盤を、聴いてる気がしてくるこのテイク。
 落ち着かないことおびただしいけど・・・この無造作なとこも、GbVなんだろなぁ。

 めずらしく8分近くにもわたる長丁場な曲。
 パワフルというか、いいかげんというか。
 聴きようによっては、ロバートのパンク魂が炸裂した曲。

58. A GOOD CIRCUITRY SOLDIER: ERIC PRETTY
(RP- g,vo):1991年


 (9)でも収録されている弾き語りユニット、エリック・プリティ名義。
 (33)などと同様の、「Concert for todd」のアウトテイクでもある。
 冒頭にロバートがぼそっとつぶやき、アコギをかき鳴らして歌いだす。
 荒い録音のせいで、えらく音がひしゃげてる。
 それがめっちゃもったいない、美しいメロディの曲。

 クレジットないけど、これもライブ録音かな。
 断片的にきれいな旋律が浮かんでは消えていく。
 エンディングも、テープががしゃ切り。
 これはちゃんとした録音で、しっかり残すべき曲だよ・・・。

59. DEVIL DOLL: ANTLER
(RP- vo, JP- g):1989年


(47)でも収録されたバンド。(47)と同様に"Some Place the Fly Got Smashed"のアウトテイクでもある。

 ぐしゃりと頭からギターが弾き殴られ、サイケに歌詞をつぶやいてく。
 メロディらしきものはほとんどない。かといって、ポエトリー・リーディング風でもない。
 ギターと歌詞を、交互に披露するだけのシンプルな構成だ。

 へろへろなロバートの声は、不安感をかき立てるほど震える。
 演奏としてはいまいち魅力が足りないかなぁ。

60. PANTHERZ: INDIAN ALARM CLOCK
(RP- g,vo):1995年

 
 エレキギターを多重録音した、ロバートの弾き語り。
 幻のアルバム、「Power of suck」のアウトテイクだ。
 曲の頭で、ちょっとテープがよれて音がこもるのが惜しい。
 淡々と起伏の少ないメロディを喋り倒していく。

 ラフな録音とエフェクターで歪ませた音と。
 両方の要素が絡み合って、えらくノイジーな肌触り。
 あっさりしてるけど、けっこうパワフルな曲。

61. COCAINE JANE: FLAMING RAY
(RP- g,vo):1980年


 アコギによる引きがたり。
 和音ドがあちこち跳ね回るイントロのあと、甲高い音域を生かして、ロバートが歌い始める。
 サビへ展開せず、あっというまに(50秒強)終わってしまう。
 作曲途中のスケッチを、覗き見たような感じだ。

62. EXPLODING ANTHILLS: GRABBIT

(RP- g,vo,handclaps):1992年


 エフェクターでほわほわに声を歪ませている。
 もはやロバートの声は原形をとどめず、コミカルなイメージだ。
 
 ざっくりしたギターリフにのって弾むメロディは、意外に耳に残る。
 エンディングでさりげなく挿入されるクラップが効果的。

63. PERCH WARBLE: 8th DWARF
(RP- g,vo, TS- g, Dan Toohey- b, Larry Keller- ds):1980年


 「Bee Thousand」のアウトテイク。
 もこもこの音質は、カーテンの後ろで演奏しているかのよう。
 途中、ふらふら音全体が揺れるしまつ。

 タイトなバンドサウンドで決めた、シンプルなロックンロールのいかした曲。
 サビできれいにハモるコーラスがいとおしい。
 こういうラフな録音じゃなく、くっきりしたサウンドで聴きたいアレンジだ。
 GbVの無造作さは、こういう名曲を聴くときに恨めしくなる。

64. MEDLEY: THIS VIEW/TRUE SENSATION/ON THE WALL: COWARD OF THE HOUR
(RP- g,vo):1991年


 ぱらりとなぎ払うアコギのカッティングとともに、ハイトーンで歌い上げるリズミカルな1曲目から、静かに展開していく。
 メドレー形式なせいか、妙にドラマチックな雰囲気がある。

 ただ、エンディングまじかではちょっと単調になってしまうのが惜しい。
 バンドサウンドできっちりアレンジしたら、かなり映えたと思うけど。
 弾き語りだと、あまりにも飾りっけがなさすぎるかな。

65. WHAT ARE WE COMING UP TO?: OIL CAN HARRY
(RP- g,vo,sling toy):1993年


 「Bee Thousand」のアウトテイク。
 前曲同様のアコギ弾き語りながら、ボーカルを多重録音し、リバーブを効かせて「録音物」としての完成度を意識したできになっている。
 sling toyは歌の合間にブクブク言ってる音だろうな。
 あくまで目先を変えるための小道具として、ちょろっと使っているだけ。

66. SCISSORS AND THE CLAY OX (IN): TOO PROUD TO PRACTICE
(RP- g,vo,Larry Keller- ds, TS- backing vo):1990年


 1990年の録音クレジットながら、なぜかこちらも「Bee Thousand」のアウトテイクとして記されている。(「Bee Thousand」の発売は1994年)
 コケティッシュに、コミカルに。転がるように歌っていく。
 ちょいと調子っぱずれなロバートのボーカルのイメージが強すぎて、いかにもデモテープって感じがしてしまう。
 メロディやリフは一瞬で耳に残る個性がしっかりあるんだけどね。

67. CODY’S ANTLER: ZEPPELIN COMMANDER
(RP- acoustic g, MM- b, TS- Lead guitar, JP- drum machine):1993年


 チープなサウンドで録音された、もやの中から聴こえてくるインスト曲。
 作曲は4人の共同としてクレジットされている。

 バックをつとめるのは、バスドラを強調したリズムボックスに、コードをかき鳴らすアコギ。 
 ベースはミックスのなかに埋もれ、それほど目立たない。

 そんなシンプルな演奏にのって、トビンのエレキギターが切なくゆったりとしたメロディを重ねて見せた。
 シンプルな録音で、えらくチープに聴こえるけれど。
 もしきっちりアレンジしたら、泣きのハードロックやファンクにもがらりと表情を変えられるポテンシャルを持った曲だ。

 2分ちょいのあっさりとした曲だけど、これは名曲。
 サイケにひずんだギターの音色が、しこたまかっこいい。
 そっけない終わり方がもったいないぞ。
 リピートして聴いていると、無限ループしているかのよう。
 一種類のモチーフを、丁寧に膨らませている。

68. ONCE IN A WHILE: GOD’S BROTHER
(RP- g,vo):1986年

 
 多重録音したロバートのハーモニーが耳に残る、甘いメロディの佳曲。
 不安定にゆらゆら揺れるギターも効果的。
 二分足らずの小品ながら、ロバートのメロディメーカーぶりがじんわり伝わってくる。
 強烈なサビこそないものの、音符の一つ一つに説得力あり。

69. BUZZARDS AND DREADFUL CROWS: ANTLER

(RP- vo, JP- g):1989年


 "Some Place the Fly Got Smashed"のアウトテイクだそうだ。
 こうしてみると、ANTLERってのは"Some Place the Fly Got Smashed"のサイド・プロジェクトだったんだろう。

 出来はちょっと荒っぽいかな。
 力任せ、かつ怪しい音程でひたすらロバートがシャウトする。
 もうちょいテンポアップして、パンキッシュなアレンジにしたら面白くなったのでは。

70. CARNIVAL AT THE MORNING STAR SCHOOL: KINK ZEGO
(RP- g,vo):1992年


 またもやロバートの弾き語り。
 リフ作りに気を使っているのはわかるけど、テクニックで押すタイプではないだけに、曲に乗れないとえらく単調に聴こえてしまうのが難点。

 ふわんと浮び上がるメロディは、それなりに楽しい。
 あと一歩、踏み込んだサビのメロディが欲しかった。

71. CRUISE: ROYAL JAPANESE DAYCARE
(RP- g,vo, TS- g, vo, GD- b,Lead guitar, JP-g, MM-g, KF-ds):1993年


 初期GbVの主要メンバーが勢ぞろいした、GbV風ウオール・オブ・サウンド。
 アイディアはすばらしく魅力的だけど、曲の出来としては期待はずれ。

 スローなテンポで、どかんと数本のギターがはじけるところや、ユニゾンで歌っていくところはかっこいいのに。
 そのまま盛り上がることもなく、あっさり終わってしまう。
 う〜ん、もったいないぞ。 

 エンディングは、グレッグがソロでしっとりメロディをなぞってフェイドアウト。
 しかしこんだけそうそうたるメンバーが揃ってるのに。
 なんでまた、グレッグがリードギターまで弾いてめだちまくっているのやら。
 作曲クレジットはロバート。グレッグの作曲なら、まだわからないでもないけど。

72. GAYLE: STINGY QUEENS
(RP- g,vo, MM- vo):1983年


 ロバートとミッチの共作。
 上下をぶった切って、ブーストした歌声で二人がからみあう。
 メロディはあるような、ないような・・・。

 てんでに二人が喚きたてる、みょーな雰囲気の曲。 

73. GIFT: HOMOSEXUAL FLYPAPER
 (メンバーのクレジットなし):1994年


 作曲のクレジットは、ロバート・ジム・ミッチ・トビン・フェンネルにジム・グリア(b?)の共作。
 パーティ会場での演奏をライブ・レコーディングしたようなサウンドでもあるし。
 そのときのジャムセッションかもしれないな。

 それほど構成的なものはなく、勢い一発で進んでいく。
 ハウりまくってる歌声は、ロバートだろうか。

 エンディング部分では、観客の拍手や歓声をえらくえんえんと収録している。
 う〜む。どんな意図なのかな。謎だ。

74. THE FLYING PARTY: FAST FORWARD LIFE
(RP- g,vo, TS- g,vo):1995年

 たった一つのメロディを、二人して執拗に繰り返していく。
 たっぷりリバーブがかかった音像のなかで、声がしたたり落ちていく。
 1分にも満たないささやかな曲。
 アルバムのなかに、インターミッションとして収録していたら、目先が変わってよかったと思う。

 作曲はロバートとトビンの共作。スタジオで相談しながらあっというまに録音したんじゃないかな。

75. TRASHED AIRCRAFT: BUS OF TROJAN HOPE

(RP- g,vo):1992年


 本作3枚目の最後になる曲は、ロバートの弾き語りで締める。

 切れのいいカッティングが叩きつけられる。 
 ロバートの歌いっぷりも歯切れがいい。
 
 下降していくコード進行がきれいに決まっている。
 ロバートの才能から言えば、出来はむしろ並みだけど。
 なぜか繰り返して聴きたくなるなぁ。
 壊れかけた機械仕掛けの馬にのって、ロデオをしてるイメージが浮かぶ。
 ・・・わかりにくいか。ごめんなさい。

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