Guided by Voices

Some Place the Fly Got Smashed(1990:Rocket #9)

Robert Pollard - guitar & vocals
Jim Pollard - guitar
Greg Demos - bass & guitar
Don Thrasher - drums

 前作から、レコードレーベルをチェンジした、1990年リリースの4枚目になるフルアルバム。
 またもやメンバーチェンジが行われてる。今回クレジットからはずされてるミュージシャン(トビン・スプラウトとか)も、後の録音ではしゃらっと参加したりしてるし。別に仲たがいして、録音に参加しないわけじゃなさそうだけれども。
 単純にたまたまロバートが録音したくなった時、そのへんにいたミュージシャンがGbVのメンバーとしてクレジットされてるんじゃなかろうか。

 さて、この4枚目のアルバムも、僕はボックスセットで聞いた。
 メンバーを見ると、ポラード兄弟にリズム隊をくっつけたってとこかな。
 一枚目からこの四枚目に至るまで、依然として「2作目」って感触のアルバムがないのがすごい。このころは商業ベースをある程度無視していたからこそ、好き勝手が出来たのだろう。

 収録曲への作曲は13曲中の全てにロバートがクレジットされてるのは当然として、8曲にジム・ポラードの名前がクレジットされてるのが目を引く。
 プロデュースは、ベーシストとしも参加のグレッグ・デモス。全般的な印象だが、音がみずみずしい。確かに構成はちゃんとしたバンドサウンドと、宅録風やデモが混在してる。だけどところどころで、おっと思う音のふくよかさがある。
 メロディのきれいさはますます強調されてきた。
 次作以降でぐいぐい魅力を増して駆け上がるGbVが、助走しているアルバムかな。

<各曲紹介>

1)AIRSHOW`88

 コラージュのイントロから始まるミドルテンポの曲。メロディよりも、声を裏返して絶叫するかのような歌声が印象に残る。リズム隊がなく、ギター二本で奏でられるバックがノイジーでいい。

2)ORDER FOR THE NEW SLAVE TRADE

 ちょっとスローな曲。演奏、ヴォーカルともに着実な演奏だ。リズムがちょっとどたばたするけど、低めのヴォーカルとあいまってリラックスできる。少々雰囲気は暗いけどね。

3)THE HARD WAY

 こんどは開放感あふれるアップテンポのロックンロール。すきとおる高音のヴォーカルがいい。メロディが軽やかに弾む。ヴォーカルとリズムがくっきり左右に分けられたミックスがちょっと残念。せっかくなら、センターにぐしゃっと集めてほしかったな。
 そうすれば、もっとこの曲に勢いがついてかっこよくなったのでは。

4)DRINKER`S PEACE

 ちょっとデモっぽい小品だ。
 ギターのアルペジオにのって、力強く歌われる。ときどきフレーズがよれるエレキギターの弾き語りながら、センチメンタルなところはなく、あくまでポジディブなパワーが伝わってくる。
 
5)MAMMOTH CAVE

 いまいち洗練されていない、ミドルテンポのアメリカン・ロックをまっとうに演奏する。
 メロディの魅力で聞かせるけども、大味なところが今ひとつか。

6)WHEN SHE TURNS

 この曲もアコギの弾き語りによるデモ風。楽器の性格もあってか、ちょっとカントリー風味。メロディが切なくて素敵だ。
 ロマンチックな曲だけど、きれいなレコーディングで飾り立てないザクっとした録音なので、甘ったるさに流れずに聞けるのがうれしい。
 この曲をエコーやストリングスで化粧したら、きれいなポップスになるのは間違いない。予算があったら、ロバートもそうしたかったのかもしれない。
 でも、僕はこういうあっけらかんとして素直な演奏が好きだな。

7)CLUB MOLLUSKA

 前曲から切れ目なしに始まる。もこもこの音像の中、ひずませたギターのうなりだけをバックに、毅然として歌う。
 ところどころ声が裏返っても気にしない。あくまでまっすぐな視点がすがすがしい。

8)PENDULLUM

 どこか力を抜いたロックンロール。この曲も音像は荒っぽくて、高低音がブーストされてしまっている。ところが、ここで耳を引くのがメロディアスなベース。弾みながら音を撒き散らし、アレンジの要になっている。
 ヴォーカルだって捨てがたい。跳ね上がって高くシャウトする瞬間の、音がすうっと消える瞬間がかっこいいぞ。

9)AMERGRIS

 低音を聞かせたエレキギターとヴォーカルだけのアレンジ。ギターとヴォーカルが微妙にかみ合わない、ちぐはぐな感じがする。その頼りなさが、この曲の個性になってもいるが。一分もたたずに終わってしまう小品。

10)LOCAL MIX-UP/MUDER CHARGE

 アナログでのクレジットは2曲が別になっているが、完全にメドレー化しているせいか、CDではこの2曲を一曲扱い。
 ”LOCAL MIX-UP”細かくアレンジされて練り上げた、ゆったり感あふれる曲。いかにも少ないトラックで多重録音したかのように、楽器を左右にきっちり振ったミックスになっている。右チャンネルから聞こえる、エコーを効かせないエレキ・ギターのフレーズがとてもいい。

 そしてカズーのような音を合図に、”MUDER CHARGE”が始まる。テンポはわずかにアップする。バックの音はギターを中心に音で埋め尽くされ、ところどころ引っかかってしまうヴォーカルを支える。

11)STARBOY

 なぜか「デモ」ときっちりクレジットされた歌。これ以外にもデモっぽい曲はいくらでもあるのになぁ。
 確かに、音は素朴な録音。冒頭の多重ツイン・ヴォーカルがきれいなので、一瞬「おっ」と思うが、すぐにアコギによる弾き語りにかわる。これがまた、こもって聞きづらい。後ではドアを閉めるようなノイズすら聞こえる。
 ヴォーカルはつぶやいたまま、さして盛り上がりもせずにあっさりと終わってしまう。

12)BLATANT DOOR TRIP

 ミドルテンポのロック。きっちりアレンジされてはいるものの、曲の魅力に、少々ピントを合わせづらい。
 突出したところがなくて、可もなく不可もなく・・・印象に残りづらい曲だ。

13)HOW LOFT I AM?

 アコギのストロークにのって、前置きなしにいきなり歌い始める。メロディが弾んでうっとりする曲だ。荒い録音が的確な汚しになって、ヴォーカルの表情にアクセントをつけている。甘いメロディがとてもいい。
 アルバムの最後を軽やかにしめる一分強の小曲。

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