LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2014/4/25   吉祥寺 キチム

出演:Tokyo Groove Alliance
 (Christpher Hardy:per、Andy Bevan:ss,ts,fl,didjeridoo,etc.、太田惠資:vln,voice、
  Jeff Curry:b、Frederic Viennot:key)

 バンドとしてライブは半年以上ぶりらしい。ぼくは09年2月ぶりに聴いた。
 会場は地下の喫茶店で行くのは初めて。思ったより広いスペースだった。パイプ椅子にクッション載せた、こじんまりした椅子でびっくり。イベント用かな。喫茶店であの椅子は寛げないのでは。

 フロントにクリス、アンディ、太田の三人が立ち、背後にジェフとフレッド。後述するが、特にフレッドのアンサンブルの位置づけに興味が出た。
 太田はエレクトリック二挺とアコースティックを曲ごとに使い分け、アンディはソプラノとテナー、フルートや笛を持ち替える。ディジリドゥもセットあり。一曲のみで残念。もっと聴きたかった。

 リーダーのクリスは膨大なパーカッション群をずらり並べる。だがドラムセット的なアプローチでないのがポイントだ。
 ステージ前に大きなタールやWAVEDRUM、ウドゥなど。横にダルブッカやジャンベを置き、シンバルも数枚。さらにウインドチャイムや小物でアクセントをつけた。椅子はもちろんカホンだ。

 楽曲はアンディや太田のソロを中心に各セット5曲づつくらい。メモを取りそびれ、曲名は不明です。
 1stセットはモンゴルっぽい切ないメロディを中心の曲から。アンディがまず、リバーブを効かせたンビーラで素朴な旋律を紡ぎ、バイオリンのテーマへ。やがてソプラノ・サックスと二本でソロを回した。
 クリスはレクでリズムを刻んだかな。5弦エレクトリック・ベースのジェフが、ガッチリとビートを支える。

 この点でフレッドの立ち位置が奇妙だった。楽器はキーボード一台。曲により音色を変えるが、ほぼエレピっぽい音が多い。ソロも数曲のみ、ほとんど取らず。
 アクセント的なフレーズを置く場面が目立つ。すなわち白玉で厚みを出すアプローチをほとんど取らず、和音感もアルペジオをたまに出す程度。
 つまりアンサンブルが奇妙な浮遊感を産んで面白かった。今夜はPAでバランスとっていたが、なんとも鍵盤の音が小さく聴こえる。
 各セット一曲づつくらいのタイミングでソロを取ったが、今一つ音の抜けが悪くてもどかしい。不思議なプレイヤーだった。

 さて、今夜のステージは新曲が1〜2曲、ほかにクリスとアンディが以前組んでいたトリオの楽曲を、何曲も披露した。これまでTokyo Groove Allianceで演奏は控えてきたが、気が変わったらしい。
 前回聴いたときよりバンドのイメージも変わっていた。もっと構築されたスピーディな楽曲の記憶あったが、浮遊感ある場面の多様も目立つ。特に2ndセット。だからリフでのテクニカルなユニゾンや、ブレイクがひときわ効果的だった。
 変拍子も一杯。だがむやみな技巧志向でなく、メロディを譜割が変拍子だった、みたいな印象だ。

 楽想はアフリカ中南部を丁寧にずらし、アジアや沖縄中心にアラブや北アに欧州を混ぜた感じ。ミクスチャーしつつ、リズムの芯は固い。整ったエキゾティックさだった。
 咀嚼した異文化を改めて整えつつ、即興的な自由度を保つ。

 聴きどころがいっぱい。前半セットは曲によってイメージがガラガラ変わり、好奇心をくすぐり続ける。4曲目のではクリスが牛の骨による打楽器ボーンズを使い、軽妙で小刻みなビートを提示した。
 自作楽器(ヤギの皮を打面に深い胴のタールみたいな形状で、レク風の小さなシンバルを数か所に配置。さらに打面裏に響き線を付けたもの)を響かせたのもここ。

 クリスの専門はアラブ楽器っぽい。タールやレク、ダルブッカの叩きっぷりは堂に入っており、2ndセット最後では長尺の無伴奏パーカッション・ソロを繰り広げた。
 パーカッション・ソロといえば。クリスのタールやダルブッカ使いのフレージングにやられた。両方とも、2ndセット。
 タールでは大きな打面の外縁をゆっくり指でなぞり、倍音をたっぷり響かせるとこ。
 ダルブッカだと打面に手刀を当て、上へあげて音程を変えるとこ。かっかっかっ、て。特に後者は"かっかっかっ"ってパターンを繰り返し聴きたく、出てくるたびに「おお、これだこれだ」と一人、内心喜んでいた。

 MCは全てクリスがつとめるが、アンディの存在感がまず目立つ。シェイカーを振りつつディジリドゥを循環呼吸で力強くぶっぱなし、別の曲では木製の笛で柔らかな世界を提示する。
 1stセット2曲めで、フルートを使ったパーカッシブなプレイも新鮮だった。リバーブを太くかけたマイクへ、キーを押す音も拾ってビート感とメロディの双方を出す。テナー・サックスでは音を軋ませ、ソプラノ・サックスは柔らかく鳴らした。
 
 太田は後半セットで一節歌う。即興ボイスから、各国の感謝の言葉を次々並べ、最後に「ありがとう」と締める瞬間がかっこよかったな。
 ソロはアンディと対比するかのように、スピーディなフレーズやアラビックな旋律を巧みに操る。各国民族音楽の世界観を混ぜたサウンドも、このバンドではごく自然に溶けていった。
 後半の三曲目だったかな。ゆるやかなアンサンブルが続く中、ざくっと和音風に鋭くバイオリンを響かせた瞬間が、鮮やかに耳へ響いた。

 アンコールは"バットダンス"。そう、この曲がまさに前回のライブでも聴いて、Tokyo Groove Allianceのイメージだった。洗練され構築のアレンジという意味で。演奏前にクリスが「短めにやるね」と喋りにかぶせて、アンディが「このバンドで演奏が短くなるわけないじゃん。10分くらいかな」とかぶせたのが面白かった。

 伸びやかなメロディと奔放で寛いだソロ。テクニカルなキメを持つアレンジと、長尺でしたたかなソロまわし。
 異文化を尊重した楽想と、単なるコピーに留まらぬ再解釈の施しっぷり。さまざまな視点や発想が混在する、寛いで聴けるバンドだった。 

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