LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2009/2/24 吉祥寺 Sometime
出演:Tokyo Groove
Alliance
(Christpher Hardy:per、Andy
Bevan:ss,fl,didjeridoo、太田惠資:vln,voice、
Jeff Curry:b、Frederic
Viennot:p,key)
クリストファー・ハーディ率いるTokyo Groove
Allianceをようやく聴きにいけた。今夜は満席の盛況。
ちなみに3rdセットとWebに掲載だが、実際は2setのライブ。後述するが、各セットごとに音楽性が微妙に変わる点も興味深かった。客層と時間配分(早い時間に、よりキャッチーな構成を狙ったとか)を意識ゆえかはわからないが。
こじんまりな演奏スペースと、観客が奏者を囲む店内レイアウトに気を配ったか、奏者が互いに見つめあうセッティング。ハーディがテーブル席に背を向け、ピアノ側を向く配置だった。
ハーディのセットはカホンを椅子代わりに、Wave
Drumとジャンベ、ダルブッカをスタンドに並べて、フロアタムの位置にスネアを置く。その脇にシンバルが3枚。
ハイハットを効果的に使った。バスドラもあったが使ってたかはよく見えず。
さらに大きなバウロンやレクも持ち出す、パーカッション主体の多彩なキットだった。
なお、バウロンのひとつは内側に金属の輪をいっぱいぶら下げ、サワリを出すしくみ。初めて見た。
太田惠資はエレクトリック2挺とアコースティックのバイオリンを準備。さらにメガホンも。タールは今夜は無しだった。
他の3人は多分初めてライブを聴く。ジェフ・カレーはエレクトリックの五弦ベースで、フレデリック・ヴィエノはグランドピアノへシンセを載せていた。
アンディ・ベヴァンはソプラノとフルートを曲で吹き分ける。ディジリドゥはマイクで増幅。アンコールでは別の素朴なディジリドゥへ持ち替えていた。
<セットリスト>(不完全)
1.ビアンカ
2.ユントス(新曲)
3.A Night With
Dita
4.Bat
dance
5.アルカンダラ(ほぼ新曲)
6. ?
(休憩)
7.舟歌:Longa Hijazkar
kurd
8. ?
9.Dino the finger prince
10.Alligator
overdrive
11.ダンシング・スター(新曲)
(アンコール)
12. ?
タイトルはぼくが聴き取り間違ってる可能性高し。
ハーディは流暢な日本語を操るが発音はネイティヴのため、メンバー紹介すらきちんと聴き取れぬしまつでした。
冒頭はハーディが軽くジャンベを叩き、バイオリンが薄く音を重ねる。やがてテーマへ。
整ったサウンドで、フュージョンっぽい印象あり。ベースがテクニカルなリフを紡ぐせいか。ジャストなノリでカレーは軽々とベースを操った。別の曲では変拍子も取り入れる。
サウンドが洗練された志向なのか、カレーの個性かは不明ながら、彼の低音でかなりサウンドの色合いは強調されていた。1stセットはいわゆるグルーヴよりも、クリーンなノリが全編を埋め尽くした。
ソロもべヴァンが中心で軽やかに奏でる。一曲目はピアノ、ソプラノ・サックス、バイオリンとソロが回されるけれど、かなりべヴァンが前面に出た。
ちなみにジャズのソロ回しほど極端ではないが、ソロのときは基本的に他のメンバーはバッキング、絡みはさほど見られぬアレンジが、前半セットの特徴だった。
1stセットは比較的曲が短めに、さくさく進む。続いてがハーディの新曲。ヴィエノが訥々とソロを連ね、太田が手拍子で合いの手を。
ハーディもカホンを使うなど、ドラムよりもパーカッション的なアプローチだった。
手のひらとスティックやブラシを場面ごとに使い分け、鋭くフィルを挿入する。
3曲目はフルートとバイオリンがクラシカルな旋律を紡ぐ、美しい曲。ハーディのシンバルがそっとアクセントを入れる。
ここで太田がぐっと存在感を出した。フルートの静かなソロに続き、バイオリンはたっぷりとアドリブを取った。
続いてヴィエノがシンセ中心の混沌としたソロを弾くと、メガホンを持った太田は呟きを重ねてスペイシーさを強調。さらに「吉祥寺〜吉祥寺〜」とコミカルに語り、観客をすかさず惹き付けるバランス感覚がさすが。
「見づらくてごめんね。立って演奏するから」
"バットダンス"の演奏前にハーディがMCで笑いをとる。すっくと立ち上がって、大きなタールを涼やかに鳴らした。
曲はサックスのソロから。薄くシンセがかぶる。短いバイオリンのアドリブを受け、ソプラノとサックスが絡む譜面的な展開へ。
タールが倍テンに。
そしてハーディが無伴奏でたっぷりとタールのソロを。
指先で賑やかに鳴らすサウンドは、見事にクリーン。粘っこいグルーヴとは逆ベクトルに、アクセントをときおり変えつつリズムを鳴らした。
5曲目は今夜が2回目の演奏だそうで、「ほぼ新曲」と呼称した。
ピアノとソプラノのアンサンブルがイントロで、太田がかなり長尺のソロを奏でた。
アラビックなボーカルも混ぜる、熱っぽい即興。この曲ではカレーのベースもフリーにフレーズを展開さすアンサンブルで、刺激が高まる。
ついにべヴァンのディジリドゥも投入された。ここでは循環呼吸を目立たせぬ、すっきりしたプレイ。
1stセットではこの曲がベストだった。
最期にハーディの曲で締める。自作ながら構成を勘違いしたか、イントロは一度、アンサンブルがどしゃめしゃに。仕切り直しの一幕も。
バイオリンからサックスへフレーズが受け継がれる。ピアノのソロからテーマへ。
ドラムとベースの加わり方が、なんだか遠慮がちなアレンジだった。
シンセをバックにべヴァンがソプラノで抽象的な音像を産み、初めてカレーのソロへ。ベースの弾き方なのか、エフェクタなのか、妙にびよんと弾力性ある音色が楽しい。
ハーディのみが加わってひとしきり疾走し、テーマで締めた。約1時間。
後半はぐっと熱いグルーヴが強調され、アレンジも拡がりを増した。ぼくの好みでは2ndがいっそう楽しめた。ちなみに後半セットは座ってる席を替えたら、ピアノがいまいち聴こえなかった。
冒頭がアラブの曲、「舟歌」と紹介。おそらく本曲が、今夜唯一のカバーで、あとはメンバーそれぞれのオリジナルを演奏した。
イントロから太田のバイオリンが艶っぽい響き。ベースやソプラノのバックでは通奏低音を弾きつづけ、盛り上がりを増す。
バイオリンのソロでは胸を張って、とうとうとフレーズが店内に舞った。
さらにべヴァンのディジリドゥが強烈に炸裂。ハーディとフレーズの応酬となった。
互いに短いソロを取り合い、相手のソロをさらに展開する。二人は微笑みながら、演奏のテンションはひたすら高まる。
いきなり、飛び切りのひととき。のっけから10分以上の長尺曲となった。
2曲目は5拍子。タイトなリフがめくるめき、前のめりに熱っぽく奏でる。
ポリリズミックな感触も若干あり、ぐっとダンサブルさを増した。
"Dino the finger
prince"はハーディのテクニックが圧巻。小さな板を片手に2枚づつ持ち、打ち鳴らすことでタップ・ダンスのような軽快なビートを出す。
超高速で畳み込むビートは素晴らしい技で、無伴奏ソロでは盛大な拍手が飛んだ。
曲調はトラッドを連想する。バイオリンとフルートのみが伴奏というより、メロディ部分を担当。素朴に旋律が紡がれた。
その一方で、ハーディのリズムが強靭に響く。圧倒的だった。
クライマックスは"Alligator
overdrive"。フレーズはプログレっぽい展開だった。
赤いエレクトリック・バイオリンの太田が素晴らしいソロを披露する。ロングトーンと指で微妙に音程を動かし、恐竜の咆哮みたいなスリリングなフレーズを弾きまくった。
ハーディのダルブッカが爽快でグルーヴの重心は軽い。しかし粘っこさは確かにあった。
最期も新曲だそう。みっちり細かいフレーズが連発し、時にユニゾンで速いキメが続く。
太田のソロもあったが、メカニカルな印象も魅せた曲。
大きな拍手に楽屋へ引っ込んだメンバーが、すぐ戻ってきた。楽器を置くのに時間かかったカレーは、引っ込みかけたところでステージに逆戻り。
ディジリドゥを持ち替えたべヴァンは、先端のマイクが外れてしまい、セッティングにちょっと苦労する。しかし、無造作にクリップでマイクを留めるのが凄い。
最終曲は締めくくりにふさわしかった。
ディジリドゥが循環呼吸ばりばりで、強靭に唸る。太田がホーメイで加わった。
マイク・バランスが薄く、ホーメイが聴こえづらい。すかさずべヴァンはハンド・サインでヴィエノへミキサーをいじるよう指示、しまいに自分で操作する。もちろん、ディジリドゥを吹きながら。
デュオをたっぷり決めたところで、太田のソロ。バイオリンを弾きながら、盛大に歌い出した。
すっくと立ち上がるハーディ。ダルブッカを小脇に抱え、指先で叩きだす。
ぐいぐいとボリュームが上がり、強打されるビートが猛然とグルーヴをばら撒いた。
アンサンブル全体で演奏は盛り上がる。しかし、すいません、ぼくはハーディのダルブッカが強烈な記憶で残ってる。
すぐ目の前で、カホンに片足乗せたハーディが立ったまま小脇のダルブッカを叩きのめす。猛スピードで途切れることなく。その勢いにやられた。
後半セットも1時間。前半/後半セットでがらり印象を変えるさまが印象深かった。ヴィエノのシンセももうちょい聴きたかったな。テクニックと引き出しの多さで、さまざまな可能性を持つバンド。
ちなみに次回のライブは3/27@青ダラ。ライブ・レコーディングの可能性があるそう。CD発売が楽しみ。