LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/05/03  新宿 Pit-INN

出演:KIKI Band
 (梅津和時:as,ss、鬼怒無月:g、早川岳晴:b、新井田耕造:ds)

 昨日のふちふなに続いて、KIKI Bandもすごく久々にライブを聴く。二年前の8月ぶりだ。
 GWの中日しかも昼間、さらにKIKI Band。三拍子そろってお客は満員。立ち見がびっしり並んだ。
 内容は今のKIKI Bandをぶつける格好。セットリストの半分弱が未CD化な最近のレパートリー。特にカバー曲はなかった。
 
 4thとなるライブ盤が出たが、レコ発を意識しないセットリスト。
 CD収録曲は半分くらい。残りはCD買って家で・・・と梅津和時がユーモラスにMCで喋ってた。

 時間を10分くらい押して、落ちる客電。
 だれもいないステージだけが、ほの赤く照らされる。

 そしてミュージシャンが、おもむろにステージへ上った。

<セットリスト>
1.11人の刑吏
2.ザ・ダウザー
3.クロウラー
4.発端は破綻
5.地上の月
 (休憩)
6.ビバ!中央線ジャズ
7."New Song No.2"
8.Thihai Songs
9.Izumoya
(アンコール)
10.Moon struck

 ありがたいことにMCで梅津が一曲づつ、丁寧に曲紹介してくれた。セットリストはこんな感じです。

 一曲目のテーマはポリリズミックな、癖のあるアンサンブル。この曲に限らず、KIKI Bandの曲って変拍子まみれな気がする。
 それを軽々演奏し、タイトに聴かせるとこがすごいんだけど。

 メンバー紹介を兼ねるかのように、梅津から長めのソロ回し。
 冒頭から身体を軽くのけぞらせ、フラジオ満載のアルト・ソロを披露。今日のライブの本編では全てアルトで通した。

 新井田耕造がドラム・フィルをあっさりめに入れ、早川岳晴によるディストーションたんまりの、迫力あるベースソロへ。4弦と5弦を曲によって使い分けてた。
 そしてシメは鬼怒無月。高速フレーズをノンストップでそそぎ込む。
 ギターのソロが続く中、梅津の合図で他のメンバーはテーマに戻る。早弾きフレーズとテーマの交錯がかっこよかった。

 "ザ・ダウザー"は早川の未CD化曲。
 たんまりと野太いエレベのソロ。まるでギターみたいにメロディアスな旋律がびしばし入る。
 ちなみにこの傾向が一番顕著だったのは、後半最後の"Izumoya"だったかなあ。低音なだけで、まるでロックのギターソロだった。
 自作曲ではバッキングのときでも、存分にメロディアスなオブリを入れていた。

 この前半2曲は、京都でやったライブと同じ曲順だそう。京都から来た観客もいるのか、梅津が気にして説明してた。
 ひさしぶりにKIKI Bandを聴いたが、アンサンブルが鉄壁。
 前半2曲は初めて聴いたのに、なんだか昔馴染みみたいな安定感あったもの。

 "クロウラー"のように馴染みの曲だと、聴いてる気分は横綱相撲。
 一定のレベルから、演奏の水準はまったく落ちない。どっか破綻するスリルを求めたくなるくらい。
 冒頭にさらっとテーマを一回、ストロークじゃなく即興のギターとサックスのからみを咬ませ、もいちどテーマへ。
 
 「京都のライブでやったけど、新ピでは間違いなく初演です」
 と、ここでも観客を気にした喋りあり。場所によって違う観客を求めて、梅津が戸惑ってるのかな。
 "発端は破綻"という梅津の曲。素晴らしかった。

 ここまでアップテンポで、ぐいぐい押したペースを和らげる。
 イントロはベースとアルトのデュオ。美しいメロディのバラードだった。
 ソロもすごく良い。歪んだ音色でブルージーな鬼怒のソロは、聴いた瞬間に鳥肌もの。

 前半最後は梅津が早川にイントロを促す・・・が、さっぱり早川が弾きはじめない。
 どうやら譜面が見当たらないようす。早川の目の前に梅津が譜面を指し示すと「オーゥ」とおどける早川の仕草が面白かった。

 観客の大笑いでいったん雰囲気が和み、"地上の月"へ。
 改めて曲の良さを実感。アンサンブルがいかしてる。
 ギターとサックスでメロディを追いかけっこするフレーズが、タイトに鳴った。
 
 この日はいわゆるドラムのソロが目立たなかった。残念。
 変拍子のキメがたくさんある曲を、ほんのり深く鳴るドラミングで新井田は着実に進行させる。
 深く鳴るといえば、エンディングの余韻も心地よい。
 コーダをぶちかました瞬間、ディレイがほんのわずかフロアに響き渡った。まさに余韻。

 この日は思ったより音が大きめ。終わったら軽く耳鳴りしてたもの。
 聴いてるときはがっちりまとまって、音の大きさなんて意識しないのに。
 昼の部なため、休憩は短め。

 後半2曲は未CD化曲が続く。鬼怒の作曲「ビバ!中央線ジャズ!」は、純湖さんのサイトでタイトル見て、ぜひ聴きたかった。
 鬼怒が中央線ジャズをどう料理するのかなって。
 実際は複雑なつくりでリズムがコロコロかわる。もろにプログレっぽい展開で、逆に面白かった。
 鬼怒はギターソロで、ボトルネックを使ってぶいぶい音を震わせた。

 昨年作った曲ながら、未タイトルという早川の"New Song No.2"。かなりジャズよりの雰囲気だ。
 新井田がシンバルを多用するテーマで、すっきりした空気を作る。
 だけどソロは黒い。梅津のサックスが不敵に響いた。

 クライマックスは新井田の作曲"Thihai Songs"。アルバム買ったものの、まだちゃんと聴いてなくって。すいません。
 たんまりソロを織り込んで力強く進むこの曲、CDでじっくり聴きたくなった。

 "Thihai Songs"で終わってもおかしくない充実したセット。しかし演奏はまだ終わらない。
 アルト・サックスの無伴奏ソロで、朗々と"Izumoya"のテーマを導く。
 バンド全体でずしんとテーマが唸り、ギターやベースのソロが炸裂した。

 アンコールはないと思ってたら、客電が暗いまま。拍手へすぐに応えた。 ソプラノサックスをケースから取り出し「アンコールだけ、ソプラノなんだよな」と梅津がぼやいてみせる。

 イントロは鬼怒と梅津のデュオで、高速リフをすれすれでユニゾンさせる。今年の1月に見たうめきどを思い出した。
 ソロ回しはさすがに短め。

 安定したクオリティをしみじみ感じる、充実のステージだった。
 怒涛でタイトな1stセットに、混沌の2ndセットってイメージが、なんとなく頭に浮かぶ。ぼくの好みは2ndセットのほう。

 今年はヨーロッパツアーが控えてるそう。
 ツアーを踏まえてますますアンサンブルが固まるのか、別のステップへ切り替わるのか。また聴いてみたい。

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