LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/8/17 新宿 PIT-INN
〜プログレナイトvol.3〜
出演:梅津和時KIKI BAND
(梅津和時:as,ss,cl、鬼怒無月:g,mandolin、早川岳晴:b、新井田耕造:ds、
壷井彰久:e-vln、野崎洋一:kb)
梅津和時の4days"夏のブリブリ"の3日目はKIKI
BAND。恒例となりつつある、鬼怒無月が主導権を取るプログレナイトへ行ってきた。
立ち見がずらりと並ぶ盛況。みんなプログレ好きなんだな。
ぼくはプログレって詳しくない。今日演奏された曲のほとんどは初めて聴いた。この感想だって的外れかもしれないな。
<セットリスト>
1.クローラ
2.イズモヤ
3.無益の5%(イエス:「こわれもの」1972)
4.The Pine Marten`s Jig(ジェスロ・タル:「A」1980)
5.悪魔の呪文(フォーカス:「MOVING WAVES」1970)
(休憩)
6.水の精(クリムゾン:「リザード」1970)
7.玄武
8.Moon on the ground
9.Follow you follow me(ジェネシス:「そして3人が残った」1978)
10.荒野の追放者(アレア:「1978」1978)
(アンコール)
11.マネー(ピンクフロイド:「狂気」1973)
前半2曲は9/21発売予定のKIKI BAND3rdアルバムから先行演奏された。
タイトルは聴き間違えてるかもしれません。
7曲目は早川岳晴の「HAYAKAWA」(1996)に入ってる曲。
"Moon on the ground"はKIKI BANDのレパートリー(改題曲らしい)。
アレアはたぶんこれ。鬼怒はMCで「荒野の放浪者」と言ってましたが・・・。オリジナルを知らないので推測です。間違ってたらご指摘お願いします。
ちなみにカバー曲でぼくが聴いたことあるのは3、9、11のみ。もっとも3は完全に忘れてるなぁ。
まずは梅津の曲紹介で2曲続けて演奏される。
冒頭からいきなりかっこいい。
ずしんと突き進むハードロックっぽい曲。鬼怒の作曲かな?
半身にそらしアルトサックスを吹き鳴らす、梅津の十八番なポーズが早くも登場した。
メラメラと鬼怒の指が激しく動き、猛烈なギターソロが飛び出す。
ボリュームがけっこう大きく、細かい音使いはよくわかんないが、耳を離せないパワーがあるソロだった。
続いて早川もたっぷりとソロを披露。ぶっとい音でこれまたぐいぐい力強いフレーズをぶちかます。
"イズモヤ"のイントロは梅津のソロから。循環呼吸で吹き鳴らし、ぐぐっとスキンヘッドに血管が浮き上がった。
こちらはアラブっぽいフレーズだった気がする。重量級ビートが耳を震わせた。
どちらもロックっぽいビートで、3rdはかなり迫力あるアルバムに仕上がっている様子。発売が楽しみ。
さて、ここからプログレナイトへ。司会が鬼怒へ変わる。
まずはゲストとして野崎洋一が呼ばれた。Coilのドラマーから紹介され、今夜が初共演らしい。
ルーツはソウルだそうで「キーボーディストはプログレを必ず知ってる」と思い込んじゃってた鬼怒は、リハであてがはずれたとか。
ブレイクに長いクラシカルなピアノのソロをはさみ、その前後で激しく盛り上がるアレンジ。原曲もこんな感じだっけなぁ。覚えてないや。
ピアノソロの所々で鬼怒がピックをネックに、スルッと鋭く滑らせてたのはこの曲だったか。
"無益の5%"と曲紹介したとき、客席からどよめきが上がった。鬼怒は「渋いでしょ」と笑う。
なのにジェスロ・タルでは無反応で、鬼怒は「マイナーな曲だからなぁ」とぼやく。楽しみつつ選曲してる様子が伝わってきた。
"The Pine Marten`s Jig"でのゲストは壷井彰久。野崎は弾かずに袖へ消える。
鬼怒はマンドリンへ持ちかえる。その間に、オフマイクで早川がフレーズのおさらいをはじめて壷井がウケていた。
トラッド風に演奏されるが、ドラムの違和感が目立つ。"無益の5%"でも感じたが、ストレートに叩く新井田のドラミングって、変拍子が似合わないのでは。
グルーヴが寸断され、いまいち物足りなかった。
そして前半最後の曲。ここまで複雑なリフが続いたせいか「疲れた〜」と早川がぼやいてみせる。
ここでは大ロック大会で、新井田の太いドラミングがピタリとはまった。
ボスッと鈍い響きで連打されるスネアがかっこいい。
壷井、野崎の二人とも演奏に加わった。
鬼怒が大盛り上がりで、ギターを振り回しながら熱演。ブレイクでカウントを絶叫する。
全員がてんでにソロを取り、突き進む名演だった。
エンディングで、鋭く鬼怒がネックを振り下ろす。
前半は約1時間。
20分くらいの短い休憩時間で、すぐに第二部が始まった。
まずは梅津のクラリネット、アコギの鬼怒に壷井の3人編成で静かな演奏からスタート。
バイオリンの音がでかく、PAバランスがいまいちだがしっとりしたプレイ。
オリジナルをどんな風にアレンジしてるんだろう。知らなくてくやしいな〜。
「玄武」では早川のベースソロをたんまり挿入。
クールな表情で立て続けに、がしがしフレーズを繰り出すさまが素晴らしい。
次の「Moon on the ground」でも早川のベースが目立った。
今度はソロよりもバッキング。ひたすらシンプルに重たいリフを保ちつづける。
新井田もリズムキープを早川に任せ、パワフルに叩いた。テクノっぽい雰囲気も感じた演奏だった。ベースが一定だったせいかな。
ここでも野崎、壷井も加わったフル体制。
すさまじい迫力が爽快で、今夜のクライマックス的な演奏だった。
再びプログレナイトへ。鬼怒が生き生きMCするのがおかしい。
「Follow you follow me」は壷井がピチカートで刻むリフがイントロ。
レゲエ風で軽やかにアレンジされていた。ちょっとぎこちなかったか。
梅津はソプラノサックスを吹く。
2ステージ目ラストはアレアの曲。
鬼怒のテンションがあがりっぱなし。
ギターを振り回し、時に飛び跳ね、どんどん前のめりに演奏する。
ネックをわしづかみし弾き殴るフレーズは、もうぜんぜん聴き取れない。
むちゃくちゃいかした演奏だった。
この曲では全員がソロをたっぷり取る。
熱演のあまりへとへとなメンバーもいた。
観客から大きな拍手が飛び、アンコールが始まる。
ラストはフロイドの"マネー"。有名どころを持ってきた。
イントロは早川のベースから。
冒頭の7/4拍子リフをとちってしまい、「ほら、俺プログレ知らないから」とおどける。
ボーカルは鬼怒が取った。シャウト気味な歌がピタリとはまる。
鬼怒はCoilでたまに歌うが、ドスが効いててうまい。
MCで言ってた「KIKI BANDブルーズナイト」も実現させて欲しい。ぜひ鬼怒のボーカルで。
客電がついてもまだまだ観客の拍手はやまない。
「ごめん、もう曲がない」と鬼怒。梅津の発案でお辞儀をして終わった。
後半は約1時間10分。堂々たるライブだった。
鬼怒はもともとプログレがルーツだから、大喜びで弾き倒す。
他の3人は時に譜面首っ引きになるも、さすがの貫禄で見事に盛り上げた。
異化効果を狙って、梅津がこの企画を続けてるんだろうな。
演奏自体はとても楽しい。文句なし。ただ、KIKI
BANDでなくセッションぽくなりがちなのが玉に傷だろうか。