LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/3/28   西荻窪 Binspark

   〜michi monthly live#3〜
出演:ミチ、大谷安宏

 今晩は新ピの渋谷オケへ行こうか迷ったけれど。
 アヴァンギャルドな音楽を聴きたい気分で、ミチを選んだ。
 ミチを聴くのは20000Vで聴いて以来の、約一年ぶり。あの時はバンド名ついてなかったが。

 ミチは今年の1月から、ここbinsparkで月一ペースのライブをやっている。
 今夜はその3回目。

 観客は少なめ。音楽性から行ってしかたないのかなぁ。
 時間を15分ほど押してライブが始まった。

ミチ(20:15〜20:50)
 (宇波拓:computer、角田亜人:g、植村昌弘:drums)

 
 ミチが先に演奏するとは思わなかった。
 無造作にメンバーが楽器を構える。
 宇波のノートのマックがソフトを認識しないのか、最初ちょっとセッティングでどたばたしていた。

 宇波が携帯電話を構え、二人に視線を投げる。
 他の二人はやはり携帯かストップウオッチを持つ。
 せーの、で全員がタイミングを合わせ、演奏が始まった。

 ご存知ない方のために、ミチの音楽コンセプトを紹介したほうがいいかも。
 オフィシャルHPの文章が秀逸なので、そこから引用します。
「ライブごとに30〜40分程度の曲を用意。同じ曲は二度と演奏されない。
 (中略)各メンバーとも、ストップウォッチをにらみつつ、そのときそのとき与えられたノルマを黙々と正確にこなすことを信条とする。 「音楽は作業だ」がスローガン。(後略)」

 前回見たときはかなりノイジーな音だったが、今夜はとことん静寂を追及していた。
 ストップウオッチを押してから、しばらくは誰も音を出さない。
 じっと譜面を睨みつけている。

 おもむろに植村がぱんっとスネアを一打ち。一呼吸置いて、再度一打ち。
 他の二人は動かない。

 宇波がPCをチョコっといじる。ハムノイズみたいな音がかすかに聞こえた。
 角田がアコギの弦を擦ってノイズを出す。
 だけど、そのまま音が発展せず、またしても譜面を黙って見つめる。

 こんな調子で、最後まで静かなテンションを保った演奏だった。
 時折、植村がドラムを叩くのが唯一の音楽らしいところかな。 
 それもフリーさはほとんどなく、ロールやリムショットを繰り返すだけ。
 中盤で7拍子をせわしなく繰り返してた瞬間が印象に残った。

 他の二人は、ほんとうに時折音を出すだけ。ほんわかと漂う緊張感。
 3人とも真剣な表情で譜面(やストップウオッチを)見つめてて、聴き手もだらりんと気きづらいんだよね。

 もっともぼくは飲んでたビールに酔っちゃって、中盤ではうとしながら聴いてたから、えらそうな事は言えないが・・・(笑)
 たぶん、中盤でも派手に盛り上がったりしてなかったと思う。
 前回のライブで聴かせたような、ソロパートや怒涛の盛り上がりがなくて残念。

 現在のミチが、こういう空間や静寂を生かしたライブばかりなのかはわからない。今度ミチを聴く時は、もうちょい派手なほうがいいなぁ。

 ノーリズム、ノーメロディ・・・ノーミュージック。
 ひたすら淡々と演奏が進んでいく。

 時間にして、ちょうど30分くらい。
 ふっと演奏がやんで「終わりです」と宇波が挨拶。あっけなく終了した。
 
 前衛音楽に興味ない人へは薦めにくい。けど、一見の価値はあると思いますよ。
 
大谷安宏(21:00〜21:35) 
 (大谷安宏:computer)


 しばしの休憩をはさみ大谷安宏のライブが始まった。
 演奏前に宇波が「大谷康宏さんです」と紹介し、そのまま客席最前列でライブを聴く。他の二人もしかり。
 3人そろってステージ前にちょこんと座って聴いてるのが、なんだか面白かったな。

 彼の演奏を聴くのは初めて。黒いノートのマック一台で演奏するスタイルは、ついメルツバウを連想してしまう。
 もっともマウスは使用せず、タッチパッドで操作してたみたい。
 PCの横に機械を置いて、ボリュームや音像をパンさせてたようだ。

 ゆったりと上体を揺らしながら大谷はPCをいじる。
 エコーをかけた足音や鳥の声のサンプリングや、電子ノイズなどが音素材か。
 パーカッションのフレーズ・サンプリングも多用していた。

 基本的にはアンビエント風。けれどリラックスはしづらい。
 うねるように音像が膨らみ、次々に新しい音素材が加わっては消えていく。

 音量は控えめ。ときおり低音がごおおっと唸る。
 ビートもメロディも特にない。
 激しく音が炸裂もせず、鋼鉄製の万華鏡みたいに音が変化してゆく。

 音素材そのものを積極的にいじっていないようだった。
 ちょっとテンポを変えたり、エコー処理はその場でしてたかもしれないが。
 思い出したように横の機材へ手を伸ばし、ノイズを左右のスピーカーでパンさせる。

 パーカッションのフレーズ・サンプリングがいくつも重ね合わされ、ポリリズミックになるあたりがスリリングで楽しめた。
 もっともビート感はさっぱりない。あくまで基調は電子ノイズだった。

 PCの画面が見えず、どういう風にPC上で音をいじってたかわからない。
 だから妙に、ストイックさが強調される。
 差し支えなかったら、プロジェクターなどを使って画面を見せながらの演奏も盛り上がると思うけど。

 いつのまにか新しい音素材が音像に加わり、今まで聴こえてたノイズへ違う表情を加える。

 パーカッション・サンプルを多用しながらも、ダンス・ミュージックを拒否したサウンドだった。
 豪音ってほどでもないから、体感的にカタルシスを感じにくい。

 とはいえ幾層にもノイズが重なる複雑な響きの音で、飽きずに最後まで聴いていた。
 
 ひとつ、またひとつ。ノイズが消えていく。
 「終わりです」
 ぼそっと大谷がつぶやいて演奏が完了。こちらも特にクライマックスを設けない構成だった。

 しめて実質1時間。短いっちゃ短いライブだ。
 最後に全員そろって、10分だけでもいいから怒涛のインプロを繰り広げるってオマケが欲しいなぁ。
 仕事帰りだし音楽でリラックスしたかったけど・・・今夜ではちょっと難しかったな(笑)

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