LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/01/06   高円寺 20000V

出演:植村昌弘+角田亜人+宇波拓、MERZBOW+thermo

 20000Vに行くのは始めて。あんな商店街のど真ん中にあるとは思わなくて、逆に迷ってしまいました。
 開場時間ちょい過ぎにライブハウスにつくと、リハが押してるとかで階段で待たされる。
 なぜか店の人が「前売り券買いました?」と薦めてくれ、その場でチケットを購入。
 開場30分前なのに、なんで前売り券を売ってくれるんだろう?
 なにはともあれ、とてもラッキー。しかもチケットは1500円。安い!

 20000Vの中は、薄暗くてオールスタンディングの、なんとも怪しい雰囲気。
 壁一面にはアメリカンなペインティングがびっしり並び、そこらじゅうにバンドのロゴが貼ってある。
 トイレの壁も、一面のフライヤー。便器にまで貼ってあった(笑)
 客層もかなり若い。僕の年では、そろそろ場違いのハコかも(苦笑)

 とりあえず、比較的ゆとりのあるステージ前にぺたんと座り込む。
 今日のライブは、かなりすいてるかと思ったのに。
 まわりを見回すと観客がかなりいる。100人くらいいたんじゃないかな。
 いったいどのバンドが目当てなのやら。

 ちなみに僕の目当てはメルツバウ。ライブを見るのは、去年の5月以来になる。
 あの耳から血が出そうな迫力でぶちかます、豪音ノイズを楽しみにしていた。

植村昌弘+角田亜人+宇波拓トリオ
 (植村昌弘:ds、角田亜人:g、宇波拓:g)

 開演時間を15分ほど押してスタート。
 このユニットは、今夜が始めてのライブらしい。
 ステージ中央に植村が陣取って、その左に角田。右側が宇波のポジション。
 ギターは二人とも椅子に座り、ステージ中央を向いていた。
 つまり客席に、半分背中を向ける格好。 
 
 角田はエレキギターに馬鹿でっかい機械(ステレオのアンプみたいな大きさ)をつなぐ。
 エフェクターの一種なのかな。ぴこぴこメーターが動いていた。
 その上にもエフェクターらしきものを積む。

 宇波は椅子の上にエフェクターをいくつか置いていたようだ。
 宇波本人の背中が邪魔で、よく見やしない。

 まずは三人そろって、携帯電話のスイッチを入れるしぐさ。
 そのまま横に携帯を置く。あれはなんだったんだろう・・・。

 最初に植村がブラシでリズムを刻み始める。
 そこにコード感のないフリーなフレーズを、二人が静かにあわせていく。
 ちいさめのドラムの音に、もやもやとギターがまとわりつく曲から始まった。
  
 このバンドのコンセプトはいまいちわからない。
 タイトなリズムに、ノイズをかぶせていくサウンドってとこかな。
 音を聴いている限りはフリーな即興だ。
 そのわりに三人とも、手元に置いたメモをひっきりなしに覗き込む。

 もっとも客席から見える限りでは、A4のレポート用紙一枚になにやら書いてあるだけ。
 場面転換になるようなリフは聴き取れなかったし。
 曲のサイズか展開のイメージを書いてあったのかも。

 淡々と始まった演奏は、次第にノイジーになる。
 宇波のハンドサインで曲調が変わり、こんどは左右のギター二人が騒音を出し始めた。
 植村は演奏を休んで二人を見つめる。

 手元でなにをやっているかはよくわからないけれど、二人がエフェクターを操作するたびに、音がやかましくなる。
 角田はピックを使わずに、両手で弦をかきむしっていた。

 宇波はエフェクターで持続音を出しつづける。
 手がネックを動くたびに、微妙に音が変化していた。

 二人のノイズは、ハウリング系。
 角田はしまいに、モニタースピーカーにギターを立てかけて、おもいっきりハウらせていた。
 途中から植村も演奏に参加。スティックに持ち替えて、クールにドラムを叩く。
 
 再び宇波の手があがり、今度は植村のソロに。
 同じリズムを叩きつづけるのでなく、微妙に拍数をずらした変拍子の複雑ソロを叩く。
 これがすばらしい!最初から飛ばしっぱなしの、高速ドラム・ソロだった。

 メロディアスな音色のドラムの音は、とてもきれいに響く。
 軽くエコーをかけた深胴のタムを叩くたびに、音がぽおんと弾んだ。

 このソロの間も、植村はときたまメモを見ながら演奏する。
 複雑なドラム・ソロだったし、拍数でも決まってるのかなあ。
 ソロなんだから、好きに叩けばいいじゃないか〜。

 5分くらい植村のソロが続いたのち、再び角田と宇波が演奏に参加。
 しっかりしたリズムの音に、二人して耳に突き刺さるノイズをぶちまける演奏は、ここにきて面白くなった。

 そのままとことん盛り上がって、すぱっとエンディング。
 総演奏時間は30分くらい。隙間なく一本勝負で突っ走ったライブだった。
 うむむ。CDで聴く音じゃなく、ライブで楽しむ音かな。

メルツバウ+thermo
 (メルツバウ=秋田昌美:PC,electronics)
 (thermo=君島:electronics,須藤:drums)

 セットチェンジは15分くらいの、短いインターバルで演奏がスタート。
 ここに来て、観客がいきなり立ち上がり、ステージ前に押し寄せる。
 メルツバウで総立ち・・・観客は10〜20代前半風ばっかりだったけど、みんなそんなにメルツバウが好きなのかな。
 こんなに盛り上がるとは予想外でびっくり。
 
 thermoは日本人の二人組。
 須藤のドラム音を君島のミキサーに吸い込み、サウンドを電気加工して吐き出すシステムで演奏していた。
 サウンドはデス・テクノっぽい、ハードな感覚。
 ほかに発振機みたいなやつも、君島は操作してたなあ。

 日本が誇るノイズ皇帝「メルツバウ」こと秋田昌美は、今回も黒のパワーマック一台。
 PCを置いたテーブルの横に、プラグを何本も刺したミキサー風の機械を置き、あわせて操作していた。

 もっとも電子ノイズが多すぎて、メルツバウとthermoのどちらがどの音を出しているのか、混乱する場面がしばしば。
 たぶん、ハーシュ・ノイズ風の音をメルツバウがばらまき、そこにthermoが挑みかかるパターンだったと思う。

 音は馬鹿でかいが、先日新宿で聴いたほど大きくない。
 とはいえ、音圧はびんびん身体に響いてくる。
 5メートルと離れていないところで、須藤がダカドコ激しくドラムを叩いているのに、まったく音が聞こえない。パントマイムを見ているようだった。
 
 聴こえるのは、風のように吹き荒れるハーシュ・ノイズ。
 ゆったりとしたペースで繰り返される豪音をベースに、耳ざわりな電子音がぐさぐさ突き刺さった。

 身体がノイズに共鳴して、揺れるのがわかる。
 騒音まみれの周りの空気は重苦しくなり、妙に息苦しくなる。
 僕はなんども深呼吸しながら、ノイズを味わっていた。

 thermoがいたせいか、多少は音がポップ。
 君島は須藤のドラムにあわせて飛び跳ねながら、めまぐるしくツマミをひねくりまわしていた。
 後半では、規則正しいパルスをマニュアルで叩きだしながら、たてノリなテクノ風ノイズを生み出して面白かったな。

 いっぽうでメルツバウは、thermoに合わせる気があったのかどうか・・・。
 まるきりマイペースでマックを操作していた。

 今回のメルツバウは椅子に座っての演奏。
 無表情にPCの画面を見つめながら、マウスをいじりつづける。
 秋田はひたすらモニターを見つめるのみ。
 時に視線をはずすのは、横に置いた機材を操作するときだけ。
 観客はもちろん、thermoらにも視線を投げず、黙々とノイズ製造を行っていた。

 ときたま秋田は足でリズムを取る。
 thermoにあわせてるのかと思いきや・・・二人が演奏を止めて、ノーリズムの時でもリズムを取りつづけている。
 メルツバウ自身の騒音も、そのリズムに合っているとは思えない。
 自分のタイム感覚で、演奏に没入してるのか。
 そんなクールなメルツバウが、めちゃくちゃかっこよかった。

 メルツバウの騒音が盛り上がったところに、thermoが無造作に騒音を盛り込んで、水を差す場面が何回かあって残念。
 あまりコラボレーション風の音ではなかったみたい。

 今回のノイズは、展開は控えめ。
 大きなノリがうねるように、ゆっくりと変化していた。
 一時間くらい演奏していたと思う。

 派手なブレイクはなく、そおっとノイズが着地してライブは終了。
 軽く3人が観客に会釈して終わった。
 個人的には、メルツバウ単独のノイズを聴きたかったけど、呆然とノイズに浸ることができた、楽しいライブだった。

 実はこのあとに、2バンドが出演。 
 もっとも僕は既に聴きたいバンドは終わったので、テンションが下がってきてた。
 3番目のバンドは、デスメタル風に野太い声で絶叫するサウンド。
 一曲半くらい聴いたけど、いまいちのめり込めずに脱出してしまった。
 てなわけで、僕にとっては美味しいどこ聴きですませた、シンプルなライブだった。これでも、1500円は安い。

 3月にはここで、インキャパシタンツがライブをやるみたい。
 対バンには吉田達也も出るし。聴きに行きたいなあ。

 

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