LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/5  吉祥寺 Star Pine`s Cafe

出演:Date Course Pentagon Royal Garden、インプログレ?!、
    Bondage Fruit,KANKAWA 122,moai


 スタパ主宰で二夜連続の、新春オールナイト・インプロ企画「大吉」の二日目です。 
 ちなみに初日はPhew、数珠リディム(サヨコ:ex Zelda 他)、勝井祐二+岡部洋一+芳垣安洋などが出演した。

 今回はライブの合間にDJがたっぷりと入るパーティ形式。
 もっとも観客の9割はライブが目当てらしく、フロアで踊る人はまばら。
 ミュージシャンがそうそうたる顔ぶれだし、DJ時間を減らしたほうが良かったかもしれない。ライブとDJを並列にした構成だった。

 土曜の夜だけあって、観客は満員だ。フロアはぎっしり、二階席も立ち見が鈴なり。落着いてタバコもすえない。
 菊地成孔のHPで告知したタイムテーブル参考に、ちょっと余裕を見て入場。21時前くらいかな。

 moaiのライブに時間を合わせたつもりなのに。
 ところがどっこい、30分くらい時間が押したらしく、まだまだDJタイムだった。
 当然椅子席は取れず、スタンディングで聴くことに。さすがに一晩立ちっぱなしは疲れた・・・。

(21:20〜21:50)
moai
 (森順治:ts,ss,cl,梅澤茂樹:b,佐々木トウゴウ:key,尾嶋優:ds)


 ライブが近づくとフロアに人があつまる。彼らの演奏を聴くのは初めて。
 音楽性は、スローなテーマをサックスが吹き、キーボードとときおりソロを交換する形だった。
 
 ドラムが高速で弾む16ビートを叩き続ける。
 えらくタイトなリズムで、最初はマシンかと思ったくらい。
 このドラミングは素直に面白かった。

 全般的に聴き心地はいいけど、サックスのフレーズをもうちょいひねくったほうがぼくの好みかな。
 ハイスピードであおるリズム隊との対比を狙ってるんだろうが、個性とまでは行ききれなかった。
 サックスがソロを取る時のフレーズも正直単調。今後の進化に期待でしょう。

(22:20〜23:00)
Bondage Fruit
 (鬼怒無月:g、勝井祐二:vl、大坪寛彦:b、高良久美子:マリンバ,ds、岡部洋一:per)

(セットリスト)

1・ ?
2・frost and fire

 時間はきっちり30分押したまま。
 セッティング完了からしばし間を起き、ぞろぞろっとメンバーがステージに登場した。

 最初はハウリングっぽい持続音からスタート。
 鬼怒も勝井もうつむき加減で楽器を操作する。
 ギターは指弾きでフレーズを紡いだ。
 大坪が弓で重厚に低音を響かせた。

 高良はマリンバを軽く叩いた。岡部はシンバル中心に、静かに重ねる。
 いつのまにか、全員の音量が高まり・・・ビートが加速した。
 
 速いテンポの中、断片的に鬼怒と勝井のフレーズが交錯する。
 数拍ごとにソロを取り合ってるかのようだ。
 やがてテーマが浮び上がり、エレキギターとバイオリンのユニゾンで幾度も繰り返された。

 そして再びソロへ。鬼怒は顎でせわしなくリズムを取りながらギターを引っ掻く。
 ミニマルなフレーズが鬼怒と勝井の間で飛び交う、スリリングな曲だった。
 最初の曲で約15分。
 コーダは再び、冒頭の静かなノーリズムの世界が提示された。
 しっとりと音像が膨らみ、一曲目が終わり。

 ちなみに曲名は不明です。鬼怒いわく、「今の曲は『ピストンNO1』・・・じゃないや、まだタイトルのない曲です」でした。
 
 「次の曲で終わり」と鬼怒が宣言。3rdアルバム収録の「frost and fire」を演奏。
 8月のライブで聴いたときと似たアレンジだ。

 まず岡部と高良がツインドラムで高速ビートを叩き出す。
 そこへ鬼怒と勝井がぐっとテンポを落としたテーマの旋律を、重々しく弾いた。

 高良はハイハットのかわりにフロアタムを連打。20分くらいの演奏中、顔色ひとつ変えずに猛烈なテンポで叩きまくっていた。
 いっぽう岡部も負けていない。
 めまぐるしいスピードで、ドラムを乱れ打ち。
 二人のジャングルビートが響き渡り、ぐいぐいテンションがあがってくる。

 鬼怒が超早弾きでギターを唸らせる。たっぷり時間をとったソロ。
 続けて勝井へソロを交代する。
 その瞬間、鬼怒・大坪・岡部がふっとブレイク。
 高良と勝井のみで、おごそかな雰囲気を作り出した。

 今夜はエフェクター操作無し。ひたすら弓で勝井はバイオリンを弾く。
 鬼怒のソロを激しくバッキングしたあと、一休みして汗を拭いてた岡部が、ジャンベを激しく打ち鳴らし始めた。
 高良のビートが規則正しくループしてるにもかかわらず、なぜかフリーなイメージが強い演奏だった。 
 
 勝井がソロのあと、再びバンド全員で突き進む。
 エンディングは鬼怒がギターを持ち上げ、何度も強く振り下ろした。
 その合図にあわせ、いさましく演奏終了。
 わずか40分だが充実したライブだった。

 曲目も、新曲攻勢な今のボンフルの側面と、耳なじみのいい曲を演奏する側面を両方見せた。コンパクトながら丁寧な構成だった。
 ただ、個人的には"Storm bird Storm dreamer"(4th収録)を演奏して欲しかったな〜。
 フロアで踊りながらこの曲聴くのって気持ちいいと思うんだけど。

(23:45〜0:30)
インプログレ!?
 (吉田達也:ds,vo、ホッピー神山key,vo、ナスノミツル:b)


 コンセプトは「インプロのプログレ」
 結成のきっかけは戸川純バンド。ライブの時、戸川がなかなかステージに出てこず、メンバーだけで"ジャズプログレ"を演奏してた。
 その演奏が面白くなり、バンド結成に到ったとか。

 ホッピーはローランドのキーボードに、ムーグを積む。
 最初はホッピーのキーボード即興から始まった。
 メロディではなく、うねうねと指が鍵盤を撫でまわす。

 ひとしきりイントロを奏でたあとに、さくっと吉田・ナスノが参戦した。
 持ち時間45分ほどのなかで、3曲を演奏。
 とにかくホッピーの構成力と、吉田の即興力に圧倒された。
 ほとんどベースの音が聴こえぬ音量バランスのせいで、ナスノは比較的控えめな演奏と感じてしまった。

 ホッピーはキーボードを弾くだけでなく、オペラ風のヴォイスも披露。
 前からある芸風かな。見事に音へ溶け込んでいる。
 すかさず吉田もお得意のヴォイスをファルセットを多用しつつ切り込む。

 一曲目はめまぐるしいドラムのフィルに翻弄されて終わった。
 吉田が一時も休まず、恐ろしいハイテンションで叩きまくり。
 最初はシンプルなビートを刻んでいたが、いつのまにか音像の主導権をかっさらう。
 次々に違うパターンのリズムが繰り出され、超高速でビートがばら撒かれた。

 神山は吉田の奔放なドラミングをものともせず、ムーグで応酬。
 ランダムに鍵盤を殴り弾くだけでなく、ときおりメロディを織り込んだ。
 そのメロディはすぐに消え去らず、繰り返されつつ展開する。

 吉田がホッピーの演奏を聴きながらあわせてくので、ビタビタとキメが決まる。ナスノももちろん、きっちりついてきた。
 「本当に即興?」と疑いたくなる演奏だった。

 これはホッピーの手柄なんだろうな。フリーに叩きまくる吉田の持ち味を一切殺さず、キーボードで即興とメロディのメリハリをつけつつ、曲へと昇華させていた。
 エンディングもホッピーのアイコンタクトでびしりと決まる。
 めちゃくちゃ刺激的な演奏だった。
 
 2曲目は静かな演奏からスタート。
 ゆっくりとテンションがあがっていく。
 中盤でハプニング発生かな。ホッピーがキーボードの下へもぐりこみ、エフェクター類をいじくる。
 小さな鍵盤を取り出し、がしゃがしゃ弾いてたが、すぐに中断。ステージ横へ立てかけてしまった。

 そんな一幕のなか、吉田のドラミングが炸裂した。
 最初はリズムキープ。ホッピーがキーボードと格闘しはじめ、ナスノの演奏がやむと、鳴る楽器はドラムのみ。
 すかさず吉田は低い声で、ヴォイス・パフォーマンスをはじめた。
 キーボードの調整はホッピーが狙ったパフォーマンスか不明だが、かなり効果的なアレンジになってたと思う。
 
 長めのMCをはさんで、最後の曲。
 中盤でナスノのベースソロもはさむ。あっという間に終わって物足りなかったけど。
 ホッピーはムーグのぶっとい電子音を的確にはさみながらキーボードを鳴らす。
 吉田の手数もまたもや上がり、パワフルに盛り上がった。

 このバンド、ぜひワンマンでライブを聴きたい。
 てか、CDで繰り返し聴きたい。見事な構成の演奏ばかりなので、ライブをそのまま出して欲しいです。

 吉田の即興バンドであるムジカ・トランソニックや聖家族と比べ、ホッピーが冷静に構成を意識しつつ盛り上げるので、どの曲もまとまりがある。
 その場でホッピーが提示したリフに吉田が応え、ユニゾンで猛進する瞬間は爽快だった。
 すばらしく面白い。今夜のライブの中で、一番の聴き物だ。

(1:20〜2:40)
Date Course Pentagon Royal Garden
 
 (菊地成孔:Key,CD-J、大友良英:g、芳垣安洋:ds、栗原正己:b、
  坪井昌恭:key、高井康生:g、津上研太:ss、藤井信夫:ds、
  吉見征樹:タブラ、大儀見元:per、後関好宏ss,ts,bs)


(セットリスト)
1.「ビリープレストン+α」(?)
2.Play mate at Hanoi
3.Circle/Line〜Hard core peace
4.Mirror balls

 一曲目は菊地成孔のHPに書かれていた曲名。今夜演奏されたかは不明です。
 
 多少進行は前詰だが、まだ少し押し気味だ。
 1時ちょいすぎにセッティングは完了。キーボードにえらい手間取っていた。
 すでにフロアはぎっしり満員だ。

 メンバーが登場しスタンバイすると、早くも歓声が上がった。
 菊地はステージ中央にキーボードとCD−Jを置き、観客へ背を向けるポジション。

 まずは菊地のキーボード・ソロからスタートした。
 ときおりフレーズをディレイさせながら、混沌としたフレーズをうねうねと弾く。
 合間にCD−Jでスクラッチ。これを5分近くやってたろうか。

 かなり空気が重たくなってきたところで、メンバーの演奏が乗っかった。
 ファンクがフロアに響く。何人かの観客が身体を揺らし始めた。

 この日は沈鬱でヘビーなDCPRGだった。
 一曲目は、果てしなくリズムを引きずる。
 ときおり菊地のハンドサインがとび、何人かの演奏が抜き出された。
 しかし、すぐさま再び菊地のサイン。全員の音に塗りつぶされる。

 ずしんとした音像の中で、津上研太のソプラノサックスが救いのごとくかろやかに鳴る。
 この曲でだったかな・・・。
 菊地が津上の演奏のみをピックアップ。
 高音ソロが続く中、ビートを刻むのは菊地が指を鳴らす音だけ。
 マイクで拾っていないはずなのに。なぜかフロアの一番奥までその音が聞こえた。 

 鋭いリズムながらも、重苦しいファンクはずるずるとフロアでうねる。
 菊地は身体を痙攣させるようにリズムと一体化。
 ときおり神経質にCD−Jでスクラッチを突き刺していた。

 1時間という短めな持ち時間なせいか、今夜の菊地はハンドサインを控えめ。
 いちばん積極的だったのは一曲目か。
 音を抜き出したいメンバーを指差し、鋭く両腕を振り下ろす。
 その途端に、他のメンバーは演奏をストップ。
 次に菊地が指でカウントを示し、バンド全体を呼びもどした。

 一曲目は20分くらいだったろうか。
 菊地は拍手に応えもせず、続けざまに次の曲へとキューを送った。
 再び暗いビートがステージから滴り落ちる。
 中盤でやっと、坪口昌恭が"Play mate at Hanoi"のテーマを弾いた。
 
 サックス隊がテーマに唱和する。
 菊地はなおもフロアを盛り上げず、主流はずっしりしたファンク。
 断片的にキーボードやサックスで、テーマの旋律を挿入した。

 ここで取り出されたのが大友良英のギターソロ。
 苦いソロが響く。大友は透き通った音色でギターを執拗に、そしてノイジーにかきむしった。
 前半のDCPRGを象徴する、クールで鈍く光るソロだった。

 今夜の菊地はMCを拒否。
 拍手にも応えず、すぐさま次の曲へと進む。
 提示されたのが"Circle/Line"。しかし、まだまだ重たさが支配していた。

 ヘビーなDCPRGでもかまわない。
 ただ、この時間までひたすら満員の中、立ちつづけたあとだとつらいよぉ。
 さらに演奏もいまいち突き抜けない。リズムはタイトだが、荒っぽく聴こえる。栗原正己のベースリフだけがくっきりしていた。
 坪口のkeyはPAの調子か、しょっちゅう音がこもる。
 後関のサックスはいまいち冴えず、大友も弦を切っておもむろに交換してた。

 演奏は吉見征樹と大儀見元のデュオが抜き出される。
 えんえんと二人のビートのみが続く。

 とことん重たくしたところで、やっとサウンドがハッピーへと変化。
 "Hard core peace"のテーマが引きずり出された。
 いきなりぶちかまさず、さんざんじらしたあげくの登場だ。
 フロアがわさわさと揺れだす。

 "Hard core peace"が終わったところで、初めて菊地が客席へ身体を向けた。
 にやりと笑って、ガッツポーズ。拍手をあおる。

 すでに持ち時間の一時間はすぎている。ここで終わりかな、と思わせて・・・。
 すっとキューを送り、"Mirror balls"が始まった。

 「短めね」の合図で、津上のソロ。高井康生のギターソロへと続く。
 ここまで立ちつづけた身体が、やっとリラックスできた。
 
 ところが菊地は、ただ盛り上げる気はないようだ。
 この曲でだったかな。それとも前の"Circle/Line"でかな。
 CD−Jを交換し、スクラッチではなく電気変換された悲鳴っぽい声を、執拗に演奏へ挿入する。
 ビートが身体へ響くのに、菊地のノイズがダンスに待ったをかけた。

 最後は吉見、大儀見、芳垣安洋によるリズムのみ。
 えんえんとビートを剥き出しにした。

 コーダは菊地のオルガンソロへ戻る。"Mirror balls"のオルガンリフを弾き、静かにエンディングへ持っていった。

 拍手に応え、再び菊地はおどけたガッツポーズ。
 メンバーへ腕を一振りして観客へ紹介すると、無言のままステージ奥へ消えた。

(3:20-3:50)
KANKAWA 122
 (KANKAWA:org、Nao Takeuchi:ts、Satoshi Izumi:g、P. Koizumi:b、Yoshihito Eto:ds)


 DCPRGのライブが終わったせいか、フロアはだいぶすいてきた。
 ライブとして最後に登場したのがKANKAWA 122。今回のイベントではじめて知った。
 1stアルバムを2/27にリリースするらしい。音楽性は即興のオルガン・ジャム。
 なお、サックスは新加入の竹内直(元Soh-Band)だ。
 
 リーダーのKANKAWAはサン・ラーのように派手な帽子をかぶって登場した。
 サックスがイントロを奏でる。豪音で演奏が始まった。
 メロディらしきものを弾いてるのはサックスのみ。
 オルガンはフリーキーに鍵盤を撫でるのがメインだった。

 とにかく低音が凄く、バスドラがズシンズシン響いてくる。
 力任せにひっぱたくワイルドなドラムがまず耳に残った。
 全体的にメンバーが若く、ソロのフレーズが物足りない。
 KANKAWAもフリーに鍵盤を叩くだけなので、素直にぼくは盛り上がれなかった。
 
 30分ほどで3曲くらい演奏したかな。
 KANKAWAのボーカルマイクや、サックスのマイク・バランスが不安定と、全般的にPAトラブルが残念なライブだった。

 イベントはまだもう少し続く。あとはDJプレイがいくつか。
 だけどさすがに体力の限界が・・・。
 DCPRGが終わったところで引き上げればよかったかな。

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