LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/12/8 吉祥寺 MANDALA-2
出演:KNEAD
(灰野敬二;g,vo、吉田達也:ds,vo、佐々木恒:b)
KNEADは、ルインズ+灰野敬二による新バンド。
バンド名が決まり、今回は二回目のライブになる。
初回ライブは5分くらいの短い即興を次々繰り出す、ハイテンションさが印象的な演奏だった。
前はセッション形式。「バンド」として演奏するのは今回がはじめてだ。どんな音楽性になのか楽しみだった。
土曜だしかなり混むと予想したが、動員はあっさりめ。満席になったものの、立ち見が数人いるくらい。
盛況な前回ライブから、混みっぷりを覚悟したのに。拍子抜け。
灰野出演で、客席は当然禁煙。間が持たなくて困る。
しかしフロアの空気が妙にきれいで苦笑した。
定刻を15分くらいすぎ、三人がおもむろにステージへ登場。
吉田は右横に置いたノートパソコンをいじり始める。
演奏にPCは使用しなかったし、何のためだろう。録音用だろうか。
楽器の鳴りを確かめた後、いきなり灰野がギターを振りかぶった。
しょっぱなからハイテンションかな?ルインズの二人も、合わせて音をたたきつけようとして・・・灰野がするっとかわす。屈みこんで静かに弦を引っ掻く。
吉田も佐々木も灰野のフェイントにつられず、灰野の演奏に合わせる。
そしていつのまにか、演奏は豪音へ変わっていた。
とにかく音がでかい。特に灰野のギター。
比較的前列で聞いていた僕は、吉田のドラムが多少聞こえるくらい。ベースの音はかなり埋もれていた。あっというまに耳鳴りが始まる。
最初の演奏からテンション高い。
ただ、やみくもに突っ走らず、ときに静かなセクションをもうけメリハリをつけていた。
一瞬メドレー形式かと思ったほど。
灰野のエレキギターは大半でエフェクターをぐしゃぐしゃにかけ、豪音をばらまく。
ハウリングやフィードバックを多用し分厚い音像を作り出した。
体全体でリズムを取り、暴れながらギターを引き殴る。
だからこそときおりみせた、いくつかの音で構成されるフレーズの演奏が効果的だった。
吉田の手数も多彩。ランダムにドラムを連打するパターンが多かった。
たまにリズムパターンが登場すると、急にサウンドの輪郭がくっきりしだす。
他の二人が奔放な演奏をしてるからこそ、佐々木の役割が重要だったと思う。
五弦ベースを振り回し激しく指をたたきつけるが、佐々木がきっちり自己主張したときに、演奏が面白くなる。
灰野も吉田も共に個性をしっかりもっているため、即興としては面白い。
が、二人の演奏だけではバンドサウンドとほど遠い。
そこで佐々木のベースが、音の潤滑油になるのでは。
そんな聴き方をしながら、ぼくはKNEADのライブを聴いていた。
前半セットは、佐々木は一歩後ろへ引く印象。
したがって灰野ばかりが暴れまわる、強引な演奏に聴こえた。
ところが後半。がらりと雰囲気が変わり、佐々木のベースが暴れだす。
佐々木のベースソロの間は灰野がボリュームを落とし、猛烈なストロークでバックにまわる瞬間もあった。
第二セットこそ、KNEADとして面白いサウンドを提示したんじゃないか。
とはいえ、前半、後半ともに聴きどころは多数。
前半一曲目は数箇所でブレイクが入り、メドレー風に聴こえた。
最初は完全インスト。中盤で吉田が唸りはじめたのを機に、灰野がシャウトをはじめる。
サンプラーで叫び声をループさせ、さらにヴォイスを重ねる。
声が割れるほど大音量。灰野の絶叫はリピートされて呪術的に響き、空気が引き締まった。
冒頭から、10分以上にわたる長尺の演奏だった。
曲の後半部分で灰野が、さんざん豪音を撒き散らしたあと唐突に、静かなメロディを奏でるのが新鮮だった。
今夜は前回ライブと違い、全ての曲が即興じゃないみたい。
曲間で灰野や吉田が指を何本か出し、作品名らしきものを指定して演奏するシーンが何度か見られた。
吉田のカウントで始まる曲すらもあったな。
ただ、聴いている限りではメロディまでは決めてるように聴こえなかった。
決め事は吉田のリズムパターンと、ざっとした構成だけかも。
灰野は数曲でボーカルを取る。唸り中心でメロディ感は希薄だが、歌詞はかなり日本語を織り込んでいた。
ボリュームがでかく声が割れて、全ては聴き取れない。
歌詞にストーリー性は感じなかったし、灰野の即興かもしれない。
前半は50分ほどの演奏。あっけなく終わった。
かなり灰野が主導権を握っていたような。
もっとも吉田が灰野とセッションを過去数度実施済なせいか、好き勝手な演奏にはならない。
おたがいの演奏を踏まえ、一丸となってノリを押し引きしていた。
吉田はシンバルの位置が気に入らないのか、曲間に何度もスタンドを調整する。
灰野がときどき、スタンドの移動に手を貸していた。
20分ほどの休憩をはさみ、第二部が開始。
吉田は再びノートPCをいじったり、タムのピッチを変えたり。
タムの音はいつものカンカン・チューニングになっていた。
後半戦はアカペラでスタート。オペラ風の唸りで押し切る吉田と、情念を前面に出した灰野の絡みが面白い。佐々木はいまいち聴こえづらかったな。
前述したように、後半戦こそ今夜の聴きどころ。
始まってすぐに佐々木がぴょんぴょん跳ねつつ、ベースを激しく弾き始める。
灰野がギターを弾きやめマイクへ叫ぶ。
途端にサウンドがルインズへ。
灰野のギター有無で、がらりと音像が変わって驚いた。
佐々木がメロディをほとんど弾かず、完全なルインズにはならなかったが。
ちなみに今夜のMCらしきものは、吉田の物販宣伝のみ。
それも灰野が切った弦を交換する場つなぎみたいなもの。
楽器にトラブルなければ、何も喋らずライブをしてたんじゃないか。
灰野は激しく演奏をしてたせいか、二回弦を切っていた。
二回目は最終曲前で、切った弦をほおりなげて交換せず。そのまま弾いていた。
最終曲前に、灰野から吉田へハンドサイン。
三人をそれぞれ指差し、手のひらを立てる。
「一人ずつソロ回しで、最後にフリーセッション」とでも言いたかったのかな?
吉田が首をひねって、二人の意思が伝わらない。
二人とも苦笑して、「ま、いいや」って風に演奏が始まった。
最終曲が三人の音がぶつかり合って、いちばん充実してたろうか。
佐々木がメロディアスな低音、灰野が豪音。
吉田がフリーとフィルを取り混ぜながら、サウンドを変化させる。
そんなアレンジが成立した時が、KNEADの個性らしきバンドサウンドになっていた。
後半戦ではセッション時に灰野がパワーをセーブしてた気も。灰野を吹き飛ばすほどの、佐々木のパワー充実に期待だ。
今夜はマイクが数本立ち、ライブ録音してた。が、どこまで今日の魅力を切り取れるか疑問です。
つんざく豪音で音の分離が不安だし、なにより三人の雰囲気が音だけでは伝わりにくいと思う。
メロディの面白さよりも、勢いの凄みがあるから。
その点で、ライティングには不満が残った。
青白い光で薄暗いステージを固定させ、3人の表情やしぐさがほとんど見えない。
幻想性を狙ったのかもしれないが、もうすこし明るくして欲しい。
三人の音は、明るさくらいで崩れるほど不安定なパワーじゃないんだし。
第二セットは約1時間。アンコールはなしだった。
(というより、観客からアンコールの拍手なし)
次のライブは不明だが、まだまだ音に進化が期待できる。先が楽しみなバンドだ。