LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/8/10 高円寺 Showboat
出演:ルインズ+灰野敬二
(吉田達也:ds、vo、佐々木恒:b,vo +
灰野敬二:g,vo)
開場時間には、ライブハウス前にびっしり行列。
50人分くらいあった座席はあっというまに埋まり、座席後列にずらりと立ち見が並ぶ。100人くらいは入ったのかな。
そして灰野が出るため、当然禁煙だった。
今回は物販コーナーも充実。
今後出る3種類の新譜も、きっちり先行発売されている。
売り子の人がしきりにTシャツ(磨崖仏デザイン)を薦めたり、吉田達也自ら釣り銭用の硬貨を封筒に入れ持ってきたりしてた。
ちなみに演奏前後でロングへアの大柄な白人が、しきりに楽屋を出入りしている。
もしかしてジョン・ゾーンかなぁ。(自信ないです。単なる推測・・・)
さて、ライブは7:40ころにスタート。
ふらりとルインズがステージに登場した。
ルインズ(19:40〜20:20)
まずは「パラシュトム」でスタート。
派手さはない、着実なプレイだった。
モニターのバランスが悪いのか、一曲終わった段階で吉田達也がPAに注文をつける。
今夜は一曲づつをきちんと区切る構成だった。
続く二曲ほどは曲名が思い浮かばない。もしかしたら去年のライブで演奏してた未CD化曲かもしれない。
手数はわずかだけど控えめに聴こえた。
朗々と吉田の高音が響く。
逆に佐々木のボーカルマイクはオフ気味で、あまりシャウトが聴こえず残念。
4曲目は「メドレー第5弾」と称して、アメリカ(?)のインディーズ・レーベルからのオファーで作ったという、「マハビシュヌ・オーケストラ・メドレー」。
ぼくはマハビシュヌを聴いたことないので、何曲くらいつなげたかは不明。
ただ、かなりきっちりした作りみたい。
がらがら展開は変わるものの、なんども同じフレーズが顔を出していた。
続く5曲目も新曲だ。
「出来かけなので、ベースは譜面を見ながら演奏します」と吉田がMCしたが、佐々木は譜面をさっぱり見てる様子なかった。
もっとも見る暇まったくなさそうな、ハイテンションな曲だったけど。
高速と停止。大音量と、ハイハットの静かな刻み。メロディもポップ。
いろんな要素をいれて、メリハリ効いた曲になっていた。
ルインズの次ステップは、さらに技を複雑にしたコンビネーションを目指すのかな。
このあたりから吉田のドラミングへ、エンジンが本格的にかかっていく。
「ブリムガス」などを演奏し、エンディングまで一気に突っ走った。
既発曲はあと1〜2曲あったけど、曲名と頭の中で一致しませんでした・・・。
「ブリムガス」のアレンジはまたもや変更。
イントロをくっつけて、シャープなベースが印象的なアレンジに進化していた。マンダラ2で聴いた新アレンジと、ちょっと似てたような気がする。
佐々木はサンプラーを使用し、アルバム同様のクロスフェイドするアレンジをきっちり再現していた。
吉田達也がボイスにリバーブをたっぷりかけ、延々と唸るイントロをくっつけた曲もあった。
この演出は「ブリムガス」でだっけな?
今夜はいまいち記憶があいまいです(苦笑)
最後の曲も既発曲。
タイトルは失念しましたが、アルバムよりずっとタイトでかっこいいアレンジになっていた。
ハイスピードで駆け抜け、二人はステージをあとにする。
吉田はすでに汗まみれ。新曲も披露し、ライブも迫力たっぷり。
でも、どこか突き抜けたところがない。
このあとのステージに向け、パワーを溜めていたのかな。
灰野敬二+ルインズ(20:45〜21:50)
吉田がMCで「10〜15分くらい休憩します」と言っていたけど、実際にはもうちょい時間がたってから、ミュージシャンらがステージに登場した。
灰野がエレキギターにカポをはめてじっくりセッティングするのを、ルインズの二人がじっと見守る。
5分くらいかけたセッティングがやっと終わり、灰野が吉田へ視線を投げ・・・。
いきなり高速で灰野のギターが掻き毟られた。
すぐさまルインズがぴたりと食いつく。
のっけからハイテンションの演奏だった。
最後までMCはなし。灰野が登場するライブだと、ここらへんのそっけなさは全部灰野の好みに統一されるらしい。
まあ、ニコニコ愛想よくMCしながら演奏する灰野ってのも、ちょっと感覚違うか(笑)
えんえんとインプロを続けるのではなく、5分くらい経過し一区切りついたところで、一曲を終える形。
たいがいは吉田がシンバルを両手でミュートするのが、曲の終わりの合図になってたかな。
ぼくら客も、どのタイミングで拍手するか戸惑うことも多かった。
この日は演奏のきっかけや主導権を、曲ごとに吉田と灰野で順番にプレイしてるように聞こえた。なんとなく、だけど。
最初は灰野がきっかけ、次は吉田のリズムがきっかけ、って言う風に。
今夜の演奏は全て即興。
それだけに、各メンバーの演奏している様子が面白かった。
まずは灰野。ステージでは全て黒のエレキギターを使用していた。
はめてたカポも2曲くらい経過したとこで投げ捨て、あとはエフェクターを駆使して、豪音の金切り声をギターから引きずり出す。
ステージアクションもかなり派手。
サングラスで視線の行方は見えないものの、両足を大きく開いてふんばり、長髪を獅子舞のように振り乱しながら、激しく弦を高速で引っ掻きつづける。
フレーズはほとんど弾かない。ひたすらストロークで刻む奏法が多かったと思う。
シャウトは数曲でしか使わなかったな。エレキギターがメインだった。
灰野はサンプラーを今夜も多用。
曲の途中に、ギターのフレーズやシャウトをその場でサンプリングし、直後にビートとしてバックでループさせる。
サンプラーは3パターンくらいのループを同時に出せる仕様らしい。
次々に違うパターンを録音し、空間へ広がるループが複雑になっていく。
さまざまな音がステージで混ざり合い酔いそうだった。
灰野自身が「灰野敬二」って楽器みたい。うまくいえないけど・・・。
もっともその楽器を演奏できるのは、灰野だけ。
彼のテンションの赴くまま、音の形態がガラガラ変わっていく。
メロディを使わず、テンション一発で変化する演奏だったから、なおさらそう感じたのかも。
とはいえ、身勝手に演奏を続けていたわけじゃない。
むしろ積極的に他の二人と視線を合わせ、煽り立てていた。
さて、対極的だったのが佐々木。
コードもキーもフレーズも気にせず弾きまくる灰野と、テンション争いはせずにフレーズを意識した演奏だった。
だけど灰野や吉田とがっぷり組んで、即興の主導権を取るにはちょっと辛いか。
バッキングで着実なプレイをしてたって印象が強い。
でも自己主張は忘れてない。
佐々木もディレイかサンプリングを使い、自分の演奏をループさせる。
灰野のサンプル、吉田のドラミングとかみ合って、素晴らしく複雑な音構造が作り上げられていた。
もっともっと佐々木がはじけてくれてもよかった。
ステージ中央まで飛び出し灰野は暴れるが、佐々木はかなり控えめ。
3人で暴れまわったら、すさまじく緊張感溢れるステージになったろうに。
どうしても灰野X吉田の対決がクローズアップされる瞬間が多かった。
そして吉田達也。
灰野の個性を立てつつも、しっかり自分のペースを見失わない演奏だった。
奔放な灰野の音とがっぷり組み合い、猛烈な手数でビートをばら撒く。
灰野が小さな音でフリーに演奏するときも、そのリズムにきっちりくっついていく。
即興のはずなのにビタビタ縦の線が揃う瞬間がなんどもあり、凄いやら恐ろしいやら・・・(笑)
まっさきにボーカルで噛み付いたのも吉田だ。
何曲目だったろう。灰野が曲の頭から叫び始めたとき、すかさず大陸風の長いフレーズで吉田が音像を膨らませる。
灰野がそのときシャウトをサンプリングしてたので、さらに音が複雑に重なり合っていた。
吉田の手数は最後までまったく減らない。
汗みどろになりつつも、ドラミングはぐいぐい演奏を引っ張る。
単純に叩き続けるだけでなく、リズムパターンはさまざまに変化。
彼のドラムソロだけ抜き取っても、即興音楽としてちゃんと成立していた。
3人のステージは全部で一時間弱で終了。
普通なら短めだけど、聴き所たっぷりでぼおっとしてた。
灰野と吉田の共演を聴くのは初めてだけど、これほど刺激的とは。
ステージ上にマイクが乱立してたし、ぜひ何らかの形で発表して欲しい。
アンコールの拍手をしてると、しばらくしてルインズが登場する。
灰野は、ライブ終盤で切ってしまった弦交換をしていた模様。
しばしして現れた灰野は、アンプの電源を入れたままシールドをギターに突っ込む。
当然ノイズがばりばり響く。「う〜む・・・」と内心顔をしかめていると。
次の瞬間灰野が飛び上がり、ギターを激しく弾き殴り始めた。
そのままルインズも演奏を始める。
最後までスピード感を保ちつづけた夜だった。
アンコールは5分もなかったかな。
再び灰野がぴょーんと飛び上がり、着地して終了。
二度目のアンコールを求める拍手を続けたけど、彼らが応えることはなかった。
正味の演奏は2時間弱。
ルインズ+灰野の音の毒にあたったかな。
ぼくはぼうっとした頭をふりつつ、ライブハウスをあとにした。