LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/8/12 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之セッション
(明田川荘之:p,オカリナ、山元恭介:b、楠本卓司:ds)
ジャズピアノを弾く明田川を聴くのはずいぶんひさしぶり。
彼のライブの日は都合がなかなか合わず、ずっと行きそびれていた。
ふたを開けてみると、観客は全部で6人。う〜ん、さみしぃ。
今夜はピアノ・トリオ。
97年のアルバム「室蘭・アサイ・センチメンタル」と同じメンバーによるセッションだ。
アケタのスケジュールは毎月見ているが、この顔ぶれでの演奏はめずらしいはず。
どういう基準でサイドメンの人選をしてるんだろう。
終わってみると、演奏は「自然体」の雰囲気。
スタンダードと明田川のオリジナルを組み合わせ、リラックスしたライブだった。
構えず気負わずに、たんなるある日のセッション。
そんなさりげなさが、心地よかった。
ぼくが到着したのは開場時間ちょい過ぎ。座って開演を待つ。
店の隅にはメンバーが集まり、雑談しつつ今夜の演奏打ち合わせをしている。
アケタの店内は狭いから、その会話がほぼ筒抜けだ。
まさに楽屋裏の会話で面白かった。
なんでも、今夜はリハの時間が取れなかったらしい。
明田川が山元に譜面を見せ、「アイ・リメンバー・エイプリル」や「アイ・クローズド・マイ・アイズ」のコード進行を説明する。
最近山元はフリーが中心の演奏活動らしく「スタンダードはコード忘れた〜」としきりに言ってるのが聴こえた。
そして8時が近づいたころ。
「そろそろやろうか」
と、明田川が一声かけ、客電が落ちる。
一曲目はさっそく「アイ・リメンバー・エイプリル」で始まった。
最初の曲は、いまいちメンバー同士の意気が合っていない感じ。
楠本のドラムがえらく突っ込み気味なリズムをさばく。
ライドシンバルを使ってビートを刻むのが、ちょっと耳についた。
走るドラムをかまわず、ベースとピアノは着実にビートをキープするのが面白い。
曲の終盤ではさすがに全員が、多少早くなってたけど。
二曲目は明田川のオリジナル。
「越後の乳配り」という彼の曲があるが、そのソロ・パートから変奏曲的に生まれたとか。
MCで曲名を言っていたが、ぼそぼそ声すぎてよく聴こえませんでした(苦笑)
ベースが刻むパターンが、ちょっと奇妙な雰囲気で面白かった。
日本情緒を前面に出した明田川のピアノが、しとやかに溢れてくる。
3曲目も曲名不明。「モンゴルの歌」とのことだが、オリジナルなのかどうかもよくわからず。すみません。
メロディに広がりがある曲だった。
4曲目も詳細不明です。
聞いた感じは、モンク風のメロディとリズム。ジャズのスタンダードかな。
ここで初めて明田川がオカリナに手を伸ばす。
楠本と明田川によるb+オカリナデュオがイントロ。
ドラムが入ってくると、ぐっと演奏がファンキーになる。
わくわくしながら聴いていた。
ドラムソロがここで登場。ワイルドに叩きまくるソロがかっこいい。
テクニックをひけらかす喧しいソロではなく、えらくメロディアスな演奏だった。
明田川の肘うちも、ここらで元気に登場。
ボディアクションも派手に盛り込みつつ、鍵盤をぶん殴っていた。
その横で楠本は、淡々とベースを弾く。
4曲演奏したところで休憩。ほぼ一時間経過している。
それぞれの曲のタイムは、だいたい15分ってところか。
休憩時間に明田川が、きちんとピアノを調律していた。
さて、30分ほどたって第二部の始まり。
このステージが、めちゃくちゃ素晴らしかった。
まずはスタンダード。
「アイ・クローズド・マイ・アイズ」が演奏される。
ソロの部分で、テーマ→ドラムソロ(4小節)→テーマのパターンが幾度となく繰り返される。
たっぷり何コーラスも使って、長回しのソロをとるのが明田川流・・・だと勝手に思い込んでたから新鮮だった。
ドラムソロからトリオ演奏に行き来するアレンジの、緊張感も捨てがたい。
2曲目はおそらく明田川のオリジナル。曲名は聴き取れませんでした。
ベースが最初から最後まで、ひたすら同じパターンのフレーズを繰り返す。
そのループにのって、ドラムとピアノが暴れまわっていた。
3曲目が「セント・トーマス」。
ロリンズで有名なあの曲を、明田川はオカリナでカバー。
さまざまな大きさのオカリナをフレーズごとに、ひっきりなしに持ち替えさえずるように吹く。
ベースソロの時も、ピアノはほとんど弾かない。
マラカスやタンバリンを中心に刻むだけ。
明田川のオカリナを堪能できる、小さなボリュームのセッションだった。
そして4曲目。オリジナル「インバ(?)」。
初めて聴くメロディ。雄大なスケールのバラードだ。
最近彼のライブをさぼってるから、新曲なのかすら不明ですが。
この曲になって演奏の波長に、ぼくの耳がピタリとあった。
ゆったりとしたメロディがひろがり、ドラムとベースがそっと膨らます。
ブラシを持ってハイハット中心で、静かに刻むドラムが最高。
ハイハットのオープンとクローズを使い分け、さりげなくも静かに響かせた。
ピアノからも次々に魅力的なフレーズが流れ出す。
ロマンティックな雰囲気に包まれたこのテイクは、ぜひリリースして欲しい。
ここでほぼ後半も一時間経過。
「インバ」で終わりかな・・・と思っていると、間髪いれず「エアジン・ラプソディ」に雪崩れ込んだ。
3人のテンションはここで最高潮を迎える。
明田川は顔を真っ赤にしてピアノに肘を入れ、クラスターノイズが響き渡った。
蹴りまで入れていたのは、この曲だったかな。
音の塊ががんがん鳴るなかから、そっとテーマのメロディが浮び上がる瞬間がたまらない。
ベースはくっきりしたフレーズ使いでメロディアスなソロを取り、ドラムもたっぷりソロをぶちかます。
ベースはきれいなソロで観客の拍手を受けたが、ぼくがさらに印象に残ったのはドラムのソロ。
テーマのメロディを頭の中で鳴らしながら聴くと、ドラムソロは見事にフィルの役割を果たしている。
メロディのリズムに絡まり、リズムが展開する。
まさにメロディを膨らませる力強いソロだった。
演奏が終わったとたん、観客全員で熱い拍手を送る。
メンバーがステージを降りても、拍手はやまない。
もっとも、残念ながらアンコールはなかった。
正味で二時間ちょい。
ぼくは明田川のライブだと、耳が演奏のテンションに馴染むまで時間かかる。
心から夢中になった演奏は、へたすりゃ数曲。
今夜で言えば、後半二曲のみ。
ところが、その二曲だけでも十分聴きに来た価値がある。
それほど彼の熱くロマンティックな演奏は、惹きつけられる。
今度、8/18の深夜に明田川のピアノ・ソロがある。
ひさびさに聴きに行こうかな。