LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/7/21  入谷 なってるハウス

出演:リマ渋
(広沢リマ哲:ts、大沼志朗:ds、北陽一郎:tp、鈴木一郎:g、不破大輔:b)


 今夜は初めてづくし。
 リマ渋を聴くのも初めてなら、なってるハウスに行くのも初めて。
 駅からちょっと歩くロケーションと、少々わかりにくい場所にあったため迷ってしまった。
 
 店内に入ると、バー&ギャラリーな雰囲気。
 演奏スペースはけっこうたっぷり取ってある。
 椅子のすわり心地よいのがポイント高い。
 キャパは30人って所かな。・・・観客はまたしても7人しかいなかったけど(笑)
 えらくクーラーを効かせてたのが難点。ちょっと涼しかった。

 大沼が渋滞にはまったらしく、店内に登場したのが8時寸前。
 すばやくセッティングしていくのをぼんやり眺めていた。
 最近聴いた渋さ系は、植村のドラムばかり。
 大沼のドラミングを、単独で聴くのはひさびさだ。

 演奏開始は8時を回ったころくらい。
 メンバーが無造作にステージに上り、大沼のカウントで開始した。
 思ったより音がまわりこむ。
 全員がでかい音で演奏するため、フレーズの細かな部分が残響に隠れてしまって残念。

 今回もMCはまったくなし。
 なので、曲名がさっぱりわからない。
 第一部は全て初耳(たぶん)の曲ばかり。
 オーソドックスなジャズを連発していたが、リマ哲のオリジナルだろうか。

 本日はメンバーが少数なためか、ソロ回しの時間をたっぷりとって、おのおののソロをじっくり楽しめるアレンジだった。
 てっきりしょっぱなから、渋さのレパートリーを連発するかと予想してて、とまどってちゃった。

 曲のテンポはかなり速い。
 大沼のシャープなドラミングと、不破の音数多い低音に支えられ、ぐいぐいあおってくる。
 もっとフリーになるかと思いきや。とても聴きやすいジャズだった。

 リマ渋は初体験で、バンドコンセプトを理解できてない。
 どこにポイントを置いて聴こうかな。
 ぼくは迷いながらサウンドと向き合っていた。
 彼らの音楽に、僕の耳がぴんっと焦点を合わせられたのは3曲目かな。

 鈴木一郎のギターソロが、素晴らしかった曲。  
 特に速弾きを連発するってわけじゃない。
 コード・ストロークも多用し、なでるようにギターを弾く。
 音色もあまり歪ませず、音量が小さめだから細かな音は埋もれてしまう。

 でも、この曲で太い芯が通った熱いソロをぶちかまし、むちゃくちゃかっこよかった。
 ここからは、リマ渋の音がとたんに身近になってくる。
 全ての音が生き生き聴こえてきた。

 一番印象に残ったのは、リズム隊のカンのよさ。
 ソロイストの乗りにあわせて、リズムパターンをすかさず変化させていた。
 アップテンポでぐいぐい来てるときは、すぐさまリズムを細かく刻み始める。
 不破の指は激しく踊り、大沼がガンガンひっぱたくシンバルの音が店内に響く。
 なのにゆったりした音使いになると、そっとリズム隊が身を引いていく。
 ほとんどアイコンタクトも交わしていないのに。リハをきっちりしてるのかな。
 テンポはほぼかわらず、リズムパターンだけがコロコロ変わっていく。
 とても多彩な表情を振り撒き、振り幅広い演奏だった。

 第一部は50分くらいだろうか。
 ここまで何一つMCがない。リマ哲が第一部の終わりで、「ちょっと休憩します」ってもごもご言ったくらいかな。
 う〜ん。曲目紹介して欲しかったなぁ。

 しばしの休憩をはさんで、第二部スタート。
 ここからは渋さの曲だけだった。
「行方知れズ」
「大沼ブルーズ」
「天秤」

 わずか3曲のステージ。もちろん密度が違う。
 とくに「天秤」は30分近くかけて、猛烈な演奏を聴かせてくれた。
 しょっぱなの「行方知れズ」から、かなりテンポが速い。
 リマ哲も北も、じっくりソロの枠を取って熱っぽく吹く。

 リズム隊もすごいすごい。
 ひとときも立ち止まらず、機関銃のように音が噴き出てくる。
 大沼はスティックでハイハットをほとんど刻まない。
 足でシューシュー言わせるだけで、手は激しくタムを叩き続ける。
 大沼セットのトレードマーク、鋲がついた逆セットシンバル(正式名称はなんて言うのかなぁ)を叩くたび、くせのある金属音が店内を舞う。

 不破もガラムを咥えつつ、ウッドベースでリズムをがっしり支える。
 今回は不破のソロがほとんどなく、惜しかった。

 粘っこくゆったり決めてもおかしくない「大沼ブルーズ」も、そうとう突っ込み気味で演奏。
 「天秤」がたっぷりソロ回しを含んだ大作の熱演だった。
 以前、スワンで聴いた「天秤」は緊張で張り詰めた演奏だったけど。
 この日の天秤はとことん爽快だ。

 ドラミングの違いかな。タイトかつフィルの引出しが多いクールな植村と、シャープだけどテンション次第では猛烈な勢いで襲い掛かる大沼。
 手数が多いのは似てても好対照な二人のドラムで、曲の表情ががらりと違ってた気がする。

 効き過ぎなクーラーのことなんかすっかり忘れて、リマ渋の演奏にのめりこめた。
 アンコールがなかったのは残念。
 でも、大満足なライブだった。またぜひ聴きたいな。 

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