LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/2/24 新所沢 スワン
出演:不破大輔(b)+片山広明(ts)+加藤崇之(G)+植村昌弘(Ds)
スワンは駅からほど近いところにあった。
店内に入ってみると、どどんと長細い。
右側にカウンター、左側にテーブル席がいくつかある。
ステージは店の奥にある小スペース。だいたい4畳半くらいじゃないか。
この店はジャズ喫茶だという。
普段はどうかわからないが、今夜行ってみた雰囲気では、いたずらに私語を禁じる堅苦しさはなく、ジャズバーのような雰囲気だった。
キャパ30人くらいのところに、15人くらい入ったかな。
開演前まで店内でたむろっていたメンバーは、8時10分くらいにステージのスペースへ向かう。
めずらしく、開演前に不破がメンバー紹介。
うつむき加減に片山がマウスピースを咥え、演奏が始まった。
細く、小さく。搾り出すように片山がテナーを吹く。
そこに加藤がギターを合わせた。
フレーズじゃない。エフェクターのツマミをいじり、しゅわわってノイズで
サックスの音をサポートする。
さらにリズム隊が探るように音を合わせていった
植村はリムショットで、静かなリズムを打つ。
今日のぼくの興味は、ジャズマン三人に植村が加わったことによる異種格闘技戦のようなサウンド。
グルーヴたっぷりな演奏で盛り立てる三人に、普段はガチガチのロックで変拍子を叩きのめす植村が加わる。
そこで複雑な魅力の音が産まれるんじゃないかな、と期待してた。
今夜のメンバー全員は渋さ知らズで共演している。
とはいえ、この少人数だからこそ産み出される「なにか」があるかも。
そしてぼくは、今夜の演奏をとても楽しんだ。
だって、期待どおりのプレイだったから。
一曲目はまず、完全な即興演奏かな。
不破はあまり自己主張しない。演奏のボリュームのせいもあるだろうが。
ぶんぶん唸るベースで、グルーヴをつくりだす。
派手さこそないけど、どっしりとサウンドを支えていた。
加藤はピックを使わない。今夜のステージで、一度もピックを持たなかったのでは。
左手がネックを上下にすべる。
いっぽう右手は弦を爪弾き、サイケな音色を響かせていた。
一曲目のインプロでは、片山がさほどブローしない。
小さめな音で、加藤と会話するようにテナーを鳴らす。
植村は三人の演奏にとぶつかり、昇華する見事なドラミング。
手数多く、ジャストなタイミングで叩く。
3/4と4/4を交互に繰り返す、変拍子のように聴こえたなぁ。
ビートは複雑だけど、ノリがすさまじい。
植村のタイコのおかげで、リズムがきゅんきゅん締まっていく。
第一部ではたぶん全て、レギュラー・グリップで叩いてた。
そこが唯一、ジャズっぽい。
一曲目の即興では、フリーにドラムを叩きながら、ハイハットだけを規則的にシューシュー鳴らす。
叩く振動でドラムがずれるのか、しょっちゅうプレイの合間にバスドラを引き寄せてたっけ。
この曲だけで20分くらい。
終わるかと思わせて、ひきつづき片山と加藤が演奏を続けていた。
二曲目もフリーな感触でスタート。
ここいらへんから、片山のテナーが豪快に鳴り始めた。
全員が曲を自由自在にコントロールする。
いたずらに混沌とした音像を作り出さず、一丸となってつっぱしったりスローに溜めてみせる。
片山はソロの合間にビールを飲み、すっかりリラックス。
だけどサックスからあふれる音はパワフルだった。
曲のエンディング間際で「大沼ブルーズ」のテーマにつなぎ、エンディングになる。
そのまま三曲目に突入。
渋さ知らズのレパートリー、「天秤」。
高らかに片山のテナーが吠える。
すばらしくタイトな高速ビートにのって、猛然とソロを取った。
植村がここではじめて、とびきりのドラム・ソロをとる。
アクセントが次々ずれて、拍子を感じさせにくいハイテクニックなソロだった。
この曲がぼくにとっての、今夜のベスト・テイク。
緊張感あふれる演奏で、呼吸するのがもったいない。
聴いている僕の額にまで、汗が浮かんできた。
ここで休憩。30分くらいかな。
加藤が2ステージ目にやる予定の曲なのか、チラシの裏にコード進行を書いてメンバーに回覧してた。
不破はそのメモをちょっと覗き込んで、あとはのんびり雑誌を読んでたっけ。
第二部の一曲目も、渋さの曲。ちょっと曲名は失念してしまいました。
不破の執拗なベースによるリフが印象的な曲です。
曲の前半で、不破はウッドベースの上で指を激しく上下させ、唸りながらソロをちょっと取る。
植村はブラシを持ち出し、エイトビートを始めた。
次の曲も、聞き覚えはあるけど曲名が・・・。
イントロはリズム隊の二人で始まった。
ぶんぶん唸るベースにのって、素手でタイコを叩いてリズムを取る。
くきくき動くメロディにブレイクが頻繁に挟み込まれ、クールにリフを決めるロック風の曲。
ここで植村がはじめてマッチド・グリップにしてたと思う。
アップテンポで盛り上がった瞬間、急転直下でなだれ込むリフがスリリングだった。
第二部最後の曲で、かなりバンドの雰囲気が変わる。
これまでの緊張感とうってかわり、やさしくロマンティックなフレーズ。
片山が譜面台を持ち出し、目の前に置く。ほとんど見てなかったみたいだけど。
身体を前後に大きくゆすりながら、スケールの大きなテナーを披露した。
太く、力強い音色が噴出す。
大団円のエンディングだった。
ここで10時20分くらい。
拍手を送っていると、アンコールにこたえてくれた。
この曲はスタンダードかなぁ。聴いたことあるような気もするけど、やはり曲名不明です。すんません。
エフェクターを通した、スペイシーな加藤のギターが店内を埋め尽くした。
片山のテナーがずしんとのっかる。
のんびりとリラックスした演奏。
中盤で歌謡曲っぽいメロディを片山が吹いて、観客に受けてたなあ。
全部演奏が終わったのは10時40分くらい。
余韻に浸りたいのはやまやまだけど、終電が気になりすぐさま店内を出てしまった。
渋さのレパートリーが多いのは意外だったけど、タイトな植村のリズムとジャズの融合がすばらしい演奏だった。
そして加藤と片山の掛け合いも見事。
ふたりして長めのソロをつなぎあい、ぐいぐいテンションをあげていた。
今夜の編成は、ちょっと変則的なメンバー。
だけどまた、このメンバーでのライブを聴いてみたい。