LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/5/8   江古田 バディ

出演:渋谷+不破+川下+藤井
 (渋谷毅:p,org、不破大輔:b、川下直弘:ts,e-vln、藤井信夫:ds)


 濃密な時間を過ごしたライブだった。
 この編成のライブを聞くのは今年の3月以来。
 めずらしく観客も多く、20人弱入っている。

 咥えタバコのメンバーがステージに上った。
 渋谷がピアノの椅子の高さを調節する。
 椅子の調子が悪いのか、結局うまく調整できじまいだったけど・・・。

 無伴奏で川下のテナーサックス・ソロ。
 ときおりサックスに悲鳴をあげさせながら、切ない音色が続いていく。
 川下は前かがみで身体を前後に激しくゆすり、リズムを取っていた。

 サックスからこぼれ出すメロディは、浮び上がっては消えていく。
 冒頭からアドリブ。断片的なフレーズから、曲名は想像ついた。
 しかしテーマを最後まで吹かず、すぐさまアドリブに戻ってしまう。
 この曲、テーマ後半部分のメロディが大好きなのにな。

 渋谷、不破、藤井の順で、演奏に加わり始める。
 渋谷のオルガンがワイルドに鳴り、川下をあおった。
 藤井のドラムがシャープにリズムを刻む。

 川下はとうとう最後までテーマをフルコーラス提示せずに、渋谷へソロを回してしまった。
 渋谷はテンション高くオルガン・ソロを取る。

 とまあ、じらされながらライブは始まった。
 そんな一曲目は・・・「ラジオのように」。

 不破のぶんぶん唸るベースに、藤井のタイトなリズム。
 ぐいぐい盛り上がり、緊張感漂う演奏だった。
 川下が再度ソロ。こんどはエレクトリック・バイオリンにもちかえた。
 ピックで激しく弦をはじく。
 途中で弦が一本切れたが、かまわずにかき鳴らしつづけた。

 川下は最後にまたテナーサックスを吹く。
 またしてもテーマのメロディは吹かず、奔放なソロをくりひろげた。
 アドリブをしばし吹き、テーマに戻る。
 テーマ前半部分のメロディを、ときおりフェイクさせながら繰り返す。

 そして最後にろうろうと、たった一回だけ川下がテーマをフルコーラス展開させた。
 そのままエンディング。一回こっきりのテーマ。
 すごく印象的なアレンジで、素敵な演奏だった。

 二曲目は冒頭、やはり川下がソロで吹き始める。
 なんか1曲目と連続性のあるアドリブだと思ったら。
 川下がすぐに演奏を中断する。

「あ、キー間違えた・・・これだと、1曲目といっしょだ」とぼそっとつぶやく。
 苦笑しながらキーを変え、改めて仕切りなおした。

 サックスからは太い音が搾り出される。
フェダインで聞き覚えのある、アップテンポな曲だ。

 ソロが始まった途端、4人の演奏ががっちり絡み合った。
 グルーヴ感にあふれた濃密なビートを提示する不破。
 かろやかにリズムを刻む藤井。
 やわらかく叩きながら、ポイントポイントで、さりげなくかっこいいフィルを入れる。
 川下がソロのときは、渋谷がとびきりのオブリを差し込んでいた。

 時折川下は吹きながら片足をあげ、踏み降ろす。
 身体を何度もゆすりながら、全身で音を搾り出していた。
 ぼくはこの二曲の演奏で、今夜は大満足。飛び切りの演奏だった。

 もっとも、そのあとも聴き所あるプレイが目白押し。
 3曲目はブルージーな曲。メロディはいまひとつ聞き覚えない。
 ここでの聞きものは、ドラムソロとベースソロ。

 藤井のソロは、テクニックをひけらかさない。
 着実に切れのいいリズムパターンを叩いていた。
 シンバルを連打し、雷のようなソロ。
 めったにドラムソロは楽しめないんだけど、この日はわくわくしながら彼のソロを聴いていた。

 続く不破のソロは、最初ぐっと溜めてゆっくりとフレーズを置いていく。
 もちろん次第にテンションはアップ。
 最後は唸りながらの、超高速ベースをぶちかました。
 前半はここで休憩。50分くらいのセットだった。

 後半は4曲演奏。
 まず一曲目は「レイディズ・ブルーズ」。
 川下がロマンティックにテーマを奏でる。
 ドラムはやわらかく弾み、静かでゆったりとした演奏だった。

 ここからは全てフェダインのレパートリーだと思う。
 どれも曲名がわからないのが残念。
 二曲目は川下のバイオリンソロがポイントかな。
 小脇に抱えたバイオリンをピックで爪弾く。
 流れてくる透明な音色は足でエフェクターを踏むにつれ、ぐいぐい音がヘビーになっていた。

 3曲目はオルガンとドラムが印象に残っている。
 ここでも藤井はドラムソロを取っていたっけ。
 
 オーラスはミディアムテンポのきれいなメロディ。
 あっさりと曲を終わらせて、今夜の演奏は終わった。
 後半は45分くらいかな。

 前半二曲のインパクトがあまりに強すぎて、後半はまごまごしている内に終わっちゃったような気がする。
 できればアンコールをやって欲しかったな。
 
 時間こそ短めだけど。
 とびきりな音をそこここで感じられたライブだった。

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