LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/3/9  江古田 バディ

出演:不破大輔+川下直広+藤井信雄+渋谷毅(+斎藤ネコ)
 (不破:b、川下:ts,ss,e-vln、藤井:ds、渋谷:p,org、斎藤:vln)


 しょっぱなは「梅六個」からスタート。
 低い音でしっかりと、川下がテナーを吹き鳴らす。
 身体を前後に揺らしながらフレーズをしたたらせるサックスに、オルガンがかわいらしく乗っかっていった。

 ひさびさのライブは渋さがらみ。ってか、フェダインがらみかな。
 開演は8時ちょいまえ。メンバーが咥えタバコでステージに上る。
 観客は10人くらいかな。かなりさみしい。

 全体的に音量は小さめだった。
 一番の理由は、ドラマーのおとなしいプレイのせいだろう。 
 藤井の演奏を見るのは初めて。以前は林栄一のマズルに参加していたようだ。
 (それ以外の経歴はよく知らない。ご存知の方がおられたらご教示お願いいたします)
 
 藤井はサングラスをかけてドラムセットに座る。
 かなりオーソドックスなドラミング。派手さはないものの、丁寧に叩く。
 サックスのソロにからみつつ、多彩なフィルを短くぶちこむのがかっこよかったなぁ。

 基本的に不破も渋谷もそれほど自己主張しない。
 擦り切れそうな音色のテナーを盛り立てるような、おとなしいプレイ。
 渋谷がもっとオルガンで、がしがし切り込んで欲しかった。
 ソロは取ったけれど、バッキングでは遠慮がちに音を挟むくらいかな。

 「梅六個」だけで30分くらいの演奏。
 ソロからアンサンブルに切り替えるときや、ソロ回しのつなぎかたがさりげなくいかしてる。
 フェイドアウトしたり、ブレイクを挟み込んだり。実にかっこよかった。

 二曲目はほとんど間をおかず「ラジオのように」が始まる。
 不破がタバコをくわえた。
 吐き出した煙が後光みたいに、川下の頭にまとわりつく。
 不破のタバコの香りが、ぼくの席まで漂ってきた。
 この香りをかぐと、不破の音楽を聴きに来たって実感してしまう。

 こういうきれいなメロディでは、渋谷が本領を発揮する。
 ソロではピアノをロマンティックに弾いていた。
 おなじみの、鍵盤をなでまわすような奏法だ。

 渋谷のソロに川下が、エレクトリック・バイオリンをかぶせる。
 まずはマンドリンのようなコード弾き。さらにエレキギターのようにエフェクトたんまりの歪んだ音に変化させて、ワイルドなソロを取っていた。
 
 「ラジオのように」では藤井がブラシで演奏。
 つづく曲(フェダインの曲だけど、曲名が思い出せない・・・)では、マレットを持つ。
 ドラムマシンみたいな規則正しいパターンを刻むのはいいけど、音量が小さくって。バンド全体の演奏がどんどん透き通っていった。

 サックスやピアノのソロも、おとなしめ。雰囲気がしだいに冷たくなってくる。
 サックスソロのとき、三人はタバコに手を伸ばし演奏をやめる。
 ステージから流れるのはテナーの音のみ。メンバーがふかす煙が、スモーク効果みたいだった。

 この曲でピアノソロからベースソロへ、ささっとつながる瞬間がすばらしかった。
 きっかけは藤井。バスドラの調子が悪いのか、演奏を中断して配置をいじる。
 すかさずベースが静かに唸り始めると、渋谷がそっと演奏を止めて不破の音を目立たせた。

 エンディングで藤井はスティックに持ちかえる。
 なので最後がにぎやかに終わり、多少ムードはもちなおしたかな。

 さて、しばしの休憩をはさんだ後半戦。
 第一部の雰囲気とはがらっとかわり、アップテンポ一色だった。
 全部聞き覚えあるメロディだけど、「TOKI」以外は曲名がわからず。
 「DAVA DAVA DABA」とか演奏してたような・・・。
 後半は3曲演奏したのかな。
 
 休憩時間に、ステージに椅子とマイクが置かれる。
 なんなのかな、と思っていたら飛び入りとして、斎藤ネコが登場した。
 おもむろにケースから、アコースティック・バイオリンを取り出す。
 マイキングがしっくりこないのか、しきりに椅子やマイクの位置を調整してた。

 後半のドラムはタイトなもの。とはいえ、フェダインとは違って攻撃的なところが少ない。
 どこか甘い感触がリズムに残る。
 
 ネコはテーマをハモらず、オブリをちょっと挟み込むくらいのおとなしいプレイ。
 だけどソロになった瞬間、弓がへし折れんばかりの激しいタッチで、縦横無尽にバイオリンをかきむしっていた。
 クラシック風の確かな音色で、熱っぽい素敵なソロだった。

 今夜の圧巻は「TOKI」。
 このとき初めて川下がソプラノに手を伸ばす。
 毎度おなじみ、テナーとの二本吹きだ。

 渋谷がソロを弾いているとき、ネコはめずらしそうに川下のエレクトリック・バイオリンを手に取った。
 どうするのかなあと思ってたら、そのまま川下にすすめられて首に挟み込む。
 最初は遠慮がちだったが、すぐに奔放に弓を躍らせる。
 つぎつぎ川下がエフェクターのスイッチを入れ、たちまち音がぐしゃぐしゃにひずむ。
 ネコは楽しそうにそのまま激しく弾きまくった。
 
 川下は爆笑しながらエフェクターのツマミをいじる。
 不破や藤井は大喜びで、激しいバッキングでネコをあおった。
 途中から渋谷も演奏をやめて、興味深げに眺めていた。  

 そんな楽しい一幕もあり、生き生きした演奏の「TOKI」が今夜のベストテイクだったと思う。
 こんな演奏、10人足らずで聴くのがもったいないな。ぜひ音盤化してほしい。

 「TOKI」を終了すると、メンバー紹介。今夜のステージが終わりだ。
 でもぼくら観客が拍手を送ってると、そのままアンコールを始めてくれた。

 最後の曲は”Blowin' In The Wind”(注)。ディランの名曲だ。恥かしいことにまったくそのときは曲名が思い浮かばなかった。 きれいなメロディを、スローテンポで。川下のサックスが朗々と響く。
 他のメンバーはその周りを漂うようにプレイし、特にソロ回しなどもせずにあっさりと終わった。
 
 正味で2時間くらいの演奏かな。
 スリルや激しさを求めるとものたりないけど、手馴れた着実なプレイで楽しめた。

(注)MOGさんにご教示頂きました。ありがとうございます。

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