LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/5/4   大泉学園 In F

出演:勝井祐二+鬼怒無月+原田仁
 (勝井祐二:vln、鬼怒無月:g、原田仁:g)


 「In F」は久しぶり。年初のPERU-FURUのライブ以来かな。
 本日はPERU-FURU+原田の趣。
 普段ROVOなどでベースを弾いている原田が、gで参加というのがおもしろい。
 
 店に入ってみると数人がのんびり開演を待っている。店の隅では勝井が雑誌を読んでくつろいでいた。
 演奏中にもぽつぽつ観客は入場し、最終的には15〜6人入ったのかな。「In F」のキャパは20人くらいだから、まずまずの入り。

 8時ちょいまえに鬼怒と原田も店に戻ってきた。
 15分くらい押して、ライブスタート。
 まずはPERU-FURUの1stCD発売記念(8月にリリース予定とか)の名目で勝井+鬼怒のデュオが1曲目の構成だった。
 ちなみに今日は全て即興演奏。どういう風に展開するか、まったく読めない。

 勝井はバイオリンでゆったりと優しいメロディを弾き、鬼怒がリズムに回る。
 静かで、混沌とした演奏だった。
 勝井も鬼怒も、エフェクターを切り替えて音をスペイシーに変化させる。
 何の合図もないのに、二人の呼吸がぴたりと決まる瞬間が幾度もあった。すごい。
 
 勝井は五弦のエレクトリック・バイオリンを弓で弾くプレイが中心。クラシカルなメロディを、断続的に奏でた。
 最後のほうでは、爪弾きも織り込んでいたかな。
 音色はリバーブがたっぷり効いている。

 鬼怒が一番上の弦をオープンで弾き、ドローン的なベース音にする。
 その上で細かいフレーズをひっきりなしにばら撒く。
 最後はシェイクハンドでベース音を親指で押えて半〜一音変化させつつ、さまざまなフレーズを弾き続ける奏法を披露。
 一人でギターを弾いてるとは思えないほど、多彩な音作りだった。
 
 5分くらいで最初の即興は終了。ここから原田が加わる。
 勝井と鬼怒は椅子に座り、原田は立ったままで演奏した。

 二曲目のタッチはカントリー&ウエスタン。
 まずは探り合うように、ミニマルなフレーズを各自のリズムで提示する。
 しだいに崩れ、勝井がメインでバイオリンを弾きまくる。

 原田はフレーズをほとんど弾かない。ベース風の単音を多用。
 ときおり織り交ぜるカッティングが、すばらしい切れだった。
 鬼怒もつられてか、カッティング中心。二人して勝井を盛り立てた形になった。

 続けて3曲目の即興が、個人的には今夜のベスト。
 三人がそれぞれ弾くメロディが浮び上がっては消えていく、サイケな構成の曲。
 交錯する旋律のからみあいが刺激的だった。
 しばし経過し、原田はまたリフ的な刻みを始める。
 そのリズムの上で、二人がさまざまなフレーズを次々産み出してくれた。
 20分くらい演奏してたかな。ボリュームもたっぷりで、大満足。

 前半最後の曲は、ブルーズ風の演奏。
 鬼怒はボトルネックを持ち出した。
 まずは鬼怒をフィーチャー。ファンキーなギターソロをきめたあと、ピック奏法に変化する。 

 鬼怒が横に置いたボトルネックをすかさず手に取った原田が、こんどは弦の上で指を滑らす。
 自分のを使われてると知らない鬼怒が、再度ボトルネックを使おうと伸ばした手は空を切る。
 そこで初めて気づき、演奏中に原田と視線を合わせて苦笑する一幕もあった。

 この曲では勝井はほとんどバイオリンを弾かない。
 足元のエフェクターを操作。ディレイでシンセ風の音を出したり、ぐーんと伸ばしたノイズで演奏に参加する。
 いったんエンディングになりかけたが、原田がかまわず演奏を継続。
 そこへ鬼怒が乗っかり、即興の再開。
 鬼怒は途中でチューニングをゆるめ、重たい音でざくざくギターを弾いていた。
 ここでいったん、休憩。
 
 休憩時間しばしはさんだ第二部は、デュオ2連発で始まった。
 まず勝井と原田。
 原田のカッティングに乗っかって、勝井が金属的なメロディを弾く。
 ギターは小節を感じさせない。テンポすら自由自在。そんな柔軟なリズムをサクサク刻んでいた。
 
 次は鬼怒+原田。この曲もすばらしかった。
 原田はまたしてもカッティング一辺倒。
 それに張り合うように、鬼怒もほぼカッティングのみ。

 鬼怒はすっくと立ち上がり、猛スピードでタイトなビートの応酬が始まった。
 シンプルながら、すばらしいグルーヴが雪崩落ちてくる。
 アイコンタクトもなしに、エンディングがピタッと決まった。
 5分くらいと短いながら、密度の濃い即興だった。

 3曲目からは3人で演奏。
 この曲もテンション高い。アップテンポで次々に曲の表情が変化した。
 中盤で、初めて鬼怒がメロディの早弾きを見せる。
 3人の音が絡み合う、かっこいい演奏だった。
 さすがに終わったときには、三人とも「暑い〜」を連発してた。

 次の曲は一転して静かな雰囲気に。
 原田がセレクターレバーを「カコン・・・カコン・・・」と切り替えて、パーカッションのような効果を出していた。
 鬼怒はボトルネックを使って、童謡みたいな日本的メロディでソロを取る。
 両足でペダル操作しながらの演奏。すぐ目の前で聴いていたので、ペダルの軋みまで聴こえていた。
 スペイシーだけど、やさしいタッチの曲だった。

 第二部最後の曲は、アバンギャルドなタッチ。
 おずおずと三人がフレーズを出し、次第に絡み合っていく。
 中盤で響く、勝井のフィードバック・ノイズ。
 鬼怒はすっくと立ち上がってギターをかき鳴らした。
 
 原田もカッティング中心のプレイ。途中で弦を切ったが、かまわず弾き殴る。
 鬼怒がチューニングをかたっぱしからぐいぐい下げ、鈍い音でギターをかき鳴らす。
 ハイテンションな即興で、ライブを締めくくった。

 メンバー紹介をして演奏スペースを去ろうとしても拍手はやまない。
 即座にアンコールが始まった。
 
 弦を一本切ってしまった原田が、ハーモニカに切り替える。
 その場でハーモニカにキーを合わせる。
 鬼怒はドブロギターを持ち出した。弦が一本切れたままだが、かまわず弾いいていた。

 アンコールはブルーズっぽい演奏。
 暖かく鳴るハーモニカのって、鬼怒が粘っこくギターを弾いた。
 勝井はボリュームを控えめ。二人の演奏を盛り立てていた。

 さらっと即興を決めて、ライブは終了。後半はアンコールも入れて1時間15分くらいだろうか。
 全般的にパーカッシブな演奏が印象に残る、充実した夜だった。

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