LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/01/07 大泉学園 in-F
出演:Pere-furu
(鬼怒無月:g,勝井祐二:vln)
in-Fは小さなビルの3階にある居酒屋。はじめて行ったけど、こじんまりしていい雰囲気のお店だ。
キャパは20人って所かな。日本酒中心のお店みたい。
外は雪がしんしんと積もる中、20時頃にゆったりと演奏は始まった。
鬼怒はアコギ+エフェクターのセットで、勝井はエレクトリック・ヴァイオリンを持つ。
最初は探りあうように音を出し合い、即興が始まった。
もともと二人とも10年来のコンビ。さらに二人ともテクニックばつぐんで、演奏に不安要素が、まぁったくない。
ひっきりなしに刺激的な音が紡がれていく。
鬼怒が自由奔放にソロを繰り出し、勝井が音を合わせていくようなインプロが多かった。
なので勝井がメロディを弾くときも、スケールのようなフレーズが多かったのは残念。
前半三曲、後半三曲の即興演奏だった。
ボンフルのレパートリーを、二人でセルフカバーしてくれないかな、と密かに期待していたけども。いわゆる「曲」は一曲もやらずじまいだった。
どの曲も、15分から20分くらい時間を取って、テンションの赴くままプレイを続ける。
鬼怒は後半最初の一曲だけ、エレキギターに持ち替えていた。
前半最後の曲は、かなり激しい演奏。一部では、この曲が聴き所かな。
鬼怒は時にギターの弦を押さえるだけでなく、しまいには弦を摘み上げる。 弦とネックの間に指を突っ込んだり、ネックの横まで一弦を引っ張り上げたり。トリッキーなプレイも披露していた。
それにしても全般通して、鬼怒の奏法が実に多彩。
早弾きでめまぐるしく音を溢れさせた後には、ミュート気味に弦を抑えて、もわんとした雰囲気を出す。
すさまじい勢いでカッティングを繰り出したかと思うと、エフェクターを使ってシンセっぽい音でサイケな雰囲気につつまれる。
そしてもちろんアコギの生音で、やさしく音を響かせる瞬間も多々あり。。
ボトルネックも、ちょっと使ってたっけ。
鬼怒は目を閉じて、つぎつぎに音を発展させていた。
今弾いた瞬間のメロディをきっかけに、みるみるうちに新しい展開に変わっていく。聴いていて、目が離せなかった。
もちろん、コンビの勝井への配慮も忘れていない。
勝井がフレーズを弾き始めると、すぐさまバッキングにまわり、カッティングやオブリで絡んでいく。
ある瞬間では何の合図もなしに、ゆったりしたテンポのフレーズから、急転直下の早弾きに、二人して同じタイミングでなだれ込みすらした。
一方の勝井は、鬼怒の演奏を殺さずに自分の個性をアピール。
一つの即興フレーズリフのように繰り返しつつ、それでいて絶妙にフェイクしている。
ヴァイオリンから次々にきれいなメロディが流れ出す。
クラシカルな旋律と、アヴァンギャルドな展開と、両方をバランスよく曲にあわせて提示していた。
後半二曲目の即興では勝井が音の主導権を握って、すばらしくなめらかなメロディを延々と弾いてたなあ。
勝井は時に、ひざにヴァイオリンを置いて指で爪弾く。
時にはディレイを響かせ、一人輪唱状態でフレーズを重ねていた。
さらにエフェクターを細かく操作して、ノイジーな音も。
もっとも今回のライブは、ボリュームが控えめ。
店全体が落ち着いた静かな雰囲気で、二人が繰り出す細かい音の粒まで堪能できた。
だからMCで鬼怒が「このスペースに、まったり感が充満」って、何度も言ってたっけ。
あ、あと「ぺこちゃん」のポーズで、「舌を出しながら即興をやるんだ」って、鬼怒が冗談半分ながら、妙にこだわってた。
僕の席からは、鬼怒の「ぺこちゃんソロ」は見えなかったけど・・・。
勝井+鬼怒による「脱力漫才」なMCぶりもあいかわらず。
とびきり刺激的な即興の合間に、ほのぼのトークが入るギャップぶりが奇妙だけど、おもしろい。
どんなにタリラリなMCをしていても、演奏に入った途端にテンションがぐいぐいあがるのが、さすが。
結局終演は11時頃。雪がそこそこ積もっていて、帰宅するのにえらい苦労したけれど。
ライブは、目の前であれほどアイディアいっぱいの即興演奏を、たっぷり味わえたいい夜だった。