Merzbow Works
V.A. "1-8"(2001:Fatcat)
イギリスのレーベルFatcatからのコンピ盤。レーベル・サイトの本盤宣伝ページの記載によれば、もともとスプリットの12インチでリリースされた音源から収録したものだそう。本盤はCDのみのリリース。どれもが初CD化という。
とすると、録音はさらに前か。コンピの常で録音クレジットがまったく無い。
12インチの発表内容のみ、インナーにクレジット合った。これによるとメルツバウは、AMM(本CDには未収録)とスプリットでリリースみたい。
ちなみにメルツバウが2004年に"Last of Analogue Session"(3枚組)をリリースしたとき。収録された"Catapillar"についてオフィシャルHPにて、「FatCatのコンピに収録のDubトラックを追加した」とあった。それがこの盤のことか。きちんと聴き比べが済んでおらず、自信ない。
本コンピに収録されたトラックは、いまいちパンチ力が無い。轟音で聴いたら印象変わると思う。
全体のイメージとして、インダストリアル・テクノを基調に、けだるげなムードがどのトラックも漂う。重たさまで行かず、なんとも中途半端なもどかしさをおぼえた。
メルツバウはレーベル・カラーにあわせたか、ハーシュさは抑え気味の様子。
本盤ではメルツバウについてのみ、詳述します。
<曲紹介>
11.Ad Hunter(15:20)
しんぐらかった、しんぐらかった。
そんなリズムを性急に提示し、ウワモノでフィルター・ノイズがせわしげに飛び交う。
リズミカルさを強調し、ダンサブルな印象も。ビートを基調に置くのって、当時のメルツバウだと新鮮では。("merzbeat"の発表が2002年)
低音から高音まで万遍無い音構造ではあるものの、どこかあっさりとしたミックス。
時間経過毎に音の主役が変わる。ストーリー性ではなく、形を変えていくような変化だ。
しんぐらかった、しんぐらかった。
冒頭のリズム・パターンは中盤でも登場する。
スピーディにノイズがすべり、すいすいと前へ進んだ。左右にくっきりノイズがわかれ、平板な音世界の奥で小さめの丸っこい物体が震える。
フィルター・ノイズが球体にてかりを出し、小刻みに磨いた。
しんぐらかった、しんぐらかった。
音色を歪ませ、ビートが元に戻る。途中からフリーに展開しても、あらためてこのコミカルなビートが現れた。
フィルター・ノイズはいくつも重なる。そして強力な太い一本が姿を見せたときに、スパッと切れた。
しんぐらかった、しんぐらかった。
いくぶん水気を含んだ音色で、ビートが続く。しゃっきりと音を切るノイズが、鈴のように響いた。左チャンネルではゴムの表面を磨くがごとく。
噴出すノイズも、余裕を持って絞られる。ぽとぽと勢い良く沸いては落ちた。
断続的にハーシュが叫んでは、テーマとも呼べるビートへ戻る。まったく炸裂しっぱなしにならないあたり、もどかしさが残る。
最後になってさまざまなノイズが飛び交い、なし崩しに混沌へ進んだ。 (2006.12記)