Review of Merzdiscs 25/50
Vratya Southwards
composed & performed by Masami Akita
MA plays cymbals,various percussion,electronics,paper pipe,tapes,plastic
voice,flute,toy marimba,scratch records,slsctric violin
Recorded & mixed at ZSF Produkt Studio,Asagaya 1987
Except Track 3
MA plays feedback mixer,piano strings on metal box
Recorded & mixed at ZSF Produkt Studio,July 1988
本盤は「Enclosure/Libido Economy」と同様に、「Enclosure」(1987年)の音源をリミックスした作品。
ライナーによれば、秋田昌美は本盤を作成したころに阿佐ヶ谷から滝野川へ引越しを実施。
「新しい住まいでの影響が、音に反映しているのでは?」と語る。
1、2曲目は1987年にカセットでリリースされた。
3曲目は当時、未発表曲。本ボックスにて始めて発表された。
コラージュを多用した、気軽に聞きやすいノイズが大半。
息苦しいほどの濃密さは、控えめだ。
いろいろと場面を想像したくなる、バラエティ豊かな音が順番に登場してくる。
激しいハーシュノイズを求める人には、ちょっと物足りないかな。
<曲目紹介>
1.Electroacoustic Voyage (23:47)
バリバリといきなりノイズが炸裂。
その合間を縫って、太い音が鳴る。
ノイズの海を出港する船舶の、霧笛の音だろうか。
気のせいか、鳥の声も聴こえるようだ。
銅鑼が打たれ、乗客の乗船を促す。
ゆっくり歯車が動き出した。モーターかな。
動力機関は温まり、膨張してぱちぱちとそこかしこで身体を震わせた。
動き始めた船体の周りで、鳥達がにぎやかに騒ぐ。
のっしりと港を離れた船は、次第にスピードを上げていく。
タービンが高速回転し始めた。
沖へ出ると、あたりは静かなもの。
聴こえるのは、船体が切り裂く水の音と、モーターの音だけだ。
風切り音が聞こえてきた。スピードを上げて、船は突き進む。
あたりが暗くなった。嵐・・・?
大粒の雨。雲も。
乗客が不安がり始めたようだ。
もっとも雨が一段落すると、安心したのか雑談したり眠りについたり。
またしても雨は激しく降る。風も強く吹き始めたらしい。
キャプテンは港と情報確認の交信を始めた。
窓の向こうで、ごうごうと吹荒れる。
むこうでは、雷鳴も聞こえる。
波が荒くなり、船体が揺れ始めた。視界がきかない。
このまま無事に、航海は続くのだろうか・・・。
ついつい、好き勝手書いてしまった。
そんな描写をしたくなるほど、ビジュアル・イメージをくっきりと感じるノイズだ。
もちろん、聴く人によっては違う風景をイメージするんだろうけどね(笑)
2.Electric Red Desart
(18:19)
ぱしゃぱしゃ明るい雰囲気のノイズが、ぶちまけられた。
ほわんほわんと、金属が弾む感触。
音の密度は小さめ。なので、さまざまな音の重なり合いが楽しめる。
メルツバウお得意の、問答無用で突き進むスピード感も控えめ。
リズムはスローからミドルの間を行ったり来たりする。
前半部分でリズミカルに鳴る金物パーカッションと、ふやふや唸るテープ・ノイズは、ヒップホップを思い出した。
メルツバウ風のスクラッチって、こんな感じなのかな。
中盤の弾む音色がキュート。
ガムランの要素も聴こえた。
音のイマジネーションが展開していき、次々に音像が変化していく。
後半になるとすべてが混ざり合い、一面に音の粒が広がる。
タイトルはこの状態を表してるんだろうか。
しばしノイズのカーテンが広がった後、奥のほうから低音が顔を覗かせる。
べりべりっとあたりを引き裂き、咆哮しながら前面に登場。
なんだか気分は怪獣映画を見ているかのようだ。
足元で人々が逃げ惑い、サイレンが響く。
すっと音像が変化し、祭りのような和やかさに変化した。
そして静かに軍歌が響き、唐突に曲が終わる。
3.Lightnning (19:10) bonus
冒頭から細かい電子ノイズがつぎつぎに降り注ぐ。
感触はあくまで繊細。
時折太い音が目立ちながらも、サウンド構成ノイズは吹き飛ばされそうになるのを懸命にこらえている。
中盤では激しいノイズに変化。
共通リズムはなく、個々に震えるビートを寄せ集めたような感じ。
ぶっとくサイレン風に数本鳴る瞬間がかっこいい。
雰囲気が一気にスペイシーになった。
しばし余韻を持たせたあと、太い音が叫びまくる。
爆発しないで、そのまま終わってしまうのが残念。
それにしても、えらく唐突な終わりかただ・・・。