Review of Merzdiscs  15/50

Dying Mepa Tapes 1-2

MA plays tapes,radio,ring moodulator,percussion,Noise,rhythm box,guitar
Kiyoshi Mizutani plays violin,percussion
Recorded and mixed at Merz-Bau Tokyo 27 & 28 March & 5 May 1982
Produced by Lowest music & Arts,1982

 Dying Mepa Tapesはカセット三本組として、アメリカのインダストリアル・レーベル「AEON」から、1983年に発表された。
 Dying Mepaの語源はチベタン僧の「NYM Ma Pa」から取ったそうだ。
 これらカセット三本分の音源は、82年3/27・28と5/5の三日間で、あっさりと録音を完了している。 

 プロデュースは「ZSF」に変更前の、Lowest music & Arts名義になっている。
 理由は単純で、このmerzboxシリーズが録音順でなく、発表順に並べられている為だ。(ちなみに83年にメルツバウは、実に17作品をリリースしている。さらにそれ以外に、コラボ作品も6作品を同年に発表。)
 もし録音順に並べられたら、この作品は(12)の前後あたりに並べられるのかな。
 
 テープにリズムとギターを録音して、そのテープ・スピードを変調させながらさまざまな楽器を載せていくのが、この作品のコンセプト。
 インダストリアル・レーベルでの作品ということで、メルツバウもそれなりにサウンドカラーをレーベルカラーに合わせようとしている。

 ただ残念なことに、その配慮が裏目に出ていると思う。
 規則正しいビートにのっかる上物の騒ぎっぷリがおとなしいので、ノイズの単調さばかりが耳に残ってしまった。

<曲目紹介>

1.Denegation (10:07)

 まるでつぶやいているような、ブチブチしたノイズで始まる。
 テンポは規則正しくつづき、そこにさまざまなパーカッションでの彩りが添えられる。
 ノイズはぽんぽん跳ね回り、キュートに舞う。
 ただ、音の表情はかなり単調なのがつらい。

2.Indifferent pt.1 (6:20)

 (1)を進化させたような感じ。
 リズムはよりくっきりとしたリズムボックスで、上物ノイズもくっきりと騒ぎ立てる。
 盛り上がりは多少見せるが、あっという間に終わってしまう。
 曲の時間が短すぎるのかなあ。

3.Indifferent pt.2 (8:01)

 もこもこの音がゆっくりと響く。
 ギターや引っ掻き音がキイキイ騒ぐのは、多少は楽しめる。
 途中で響くヴァイオリンは、ちょっとしたアクセントになっていた。

 6分半くらいで唐突にカットアウトされて、表情が変わる。
 そこからはパーカッションを無作為に叩いた音が入ったテープを、スピードを速めて収録している。
 はじける音の乱舞がきれいでいいな。

4.Ooinon for Satva Karman(Sprashutavia)decoup (21:46)

 ノイズが悲鳴をあげて、ワイルドになっているので、メルツバウらしいかっこよさは、多少満足行くレベルにまで昇華している。
 ブチブチリズムはノイズに埋もれて、それほど気にならない。
 そこここで、電気的なノイズが乱暴に悲鳴をあげる。
 ぼおっとノイズに身を任せていると、規則的なビートが続いて朦朧としてきた。

 テレビの音なども、スピードを変調されて挿入されている。
 細かくミックスされた音は複雑でナイスだけど、20分以上聞きつづけるにはちょっと刺激が足りないかな。

 秋田って、もしかしたらインダストリアル・ノイズって、それほど好きじゃないんだろうか。聴いていても、あんまりこだわりとか愛情がつたわってこない。・・・僕の聴き方が悪いのかなあ。

5.Dharma Kamarage (22:17)

 まず最初に、スピードを変調されてひしゃげた音のリズムボックスで、規則正しいテンポが提示されるのは、他の曲と同様だ。
 ただ、この曲は始まり方が静かだ。
 ひそやかにとたとたころろんと鳴るビートは、これからはじまる過激なノイズをとても期待させる。

 次第にノイズが重ねあってゆき、10分あたりで、ノイズをぶちまけて音を埋め尽くす。
 この爆発のあとは、インダストリアル・ノイズの方法論がちょっと変わる。
 カットアップを使用して、おとなしめのハーシュノイズを提示して見せた。

 とはいえすべての音世界を破壊するほどパワーは、残念ながらない。
 せっかくだから急激な方向転換して、個性たっぷりのインダストリアルを聴かせて欲しかったな。

(11/12記)

Let`s go to the Cruel World