Guided by Voices

Not In My Airforce /Robert Pollard(1996:Matador)

Robert Pollard - vocals,guitars,bass,organ
Kevin Fennell - drums
Johny Strange - bass.organ
with
Jim Pollard - percussion on intro to 1;technical assistance
Jim Shepard - vocal on 8,guitar on 16
Matt Sweeney - guitar&vocals on 2
Tobin Sprout - backing vocals on 14
Dan Toohey - bass on 7
Mitch Mitchell - percussion on intro to 1
Steve Wilbur - Slide Lead on intro to 15

 ロバートのソロ・アルバム第一弾。アルバムタイトルは、14)に歌詞として歌いこまれてる。
 僕がこのアルバムを聴いたのはリアルタイムじゃないので、このアルバムのリリース・タイミングがGbVの歴史にどのようにかかわっているかは、いまいちわからない。
 でも、このアルバムを聴く限りは、ロバートが当時のGbVに不満を持っていたわけじゃなさそうだ。
 単純に「曲がたまったなあ。んじゃ、リリースするかっ」って気楽な調子で作ったアルバムのような気がしてならない。
 
 とにかくアルバム収録曲のアレンジが、おおざっぱだ。
 デモテープと紙一重。半分近くの曲では、ほぼギターによるコード弾きのバックだけ。
 とはいえ、単純な弾きっぱなしの歌いっぱなしじゃなくて、アレンジには微妙に気を使ってるけど。
 ここらへんの気遣いが、ロバートのセンスの見事なところ。

 この年のGbVは「Under the Bushes Under the Stars」ほか、力のこもった作品を次々リリースしていた頃だ。
 だからロバートが創作意欲を抑えられずに、ぽっとんとリリースしたってところなのかな。
 GbVの音楽よりさらに飾りっけなしに、メロディを聞き手の前に置いてみせる素朴なところが、このアルバムの一番の魅力だろう。
 アイディアがどさどさっと詰め込まれて、ぱんぱんの袋からあふれて零れ落ちる、二分足らずの曲を無造作に集めた好アルバムだ。

<各曲紹介> 

1)Waggie Turns To Files

 そこらへんにあったバケツをぶったたいたようなパーカッションに、テープを逆回転させたフレーズをかませ、奇妙な雰囲気のイントロではじまる。
 だけど、ギターリフが聞こえてくると、ロバートのいかしたロックンロールが始まる。
 威勢のいいリズムに乗って、ちょっとしゃがれたヴォーカルがのびのびと歌う。
 オープニングにふさわしい、キャッチーなメロディのいい曲。

2)Quicksilver

 宅録っぽいガサッとした音で録られている。
 アコギの弾き語りにのって、ダブル・ヴォーカルで歌われる小品。
 メロディは素朴だけれど、かっちり構成されている。
 中盤でのハモってるのかユニゾンなのか、よくわからない部分のメロディが妙にかっこいい。

3)Girl Named Captain

 エコーの効いたバスドラで始まる、重たいロック。
 だのに、引きずるような低い声で歌うメロディが美しい。
 スケール大きく流れる甘いメロディが、ノイジーなバックの演奏で甘味を薄められているのが効果的に響いている。
 メロディはセンチメンタルに傾きすぎることなく、耳に入ってくる。
 アレンジはよく練られていて、メロディの変化に伴って微妙なブレイクを効かせる。
 華々しい印象こそないけれど、大切な一曲だ。

4)Get Under It

 軽快に弾むロック・・・といいたいが、どこかしら重たい尻尾がリズムにくっついている。
 バックの演奏が一体化するのをあえて避けて、わざとちぐはぐにさせているようにも聞こえる。
 メロディが上滑りして、妙な緊張感を感じさせる曲。
 上下を切ってブーストしたヴォーカルのエフェクトが、そう感じさせるのかな?

5)Release The Sunbird

 バックに聞こえるオルガンが、ノイジーなフレーズをかすかに奏でる。
 その飾り付けが、この曲に不安定なイメージを植え付けている。アコギの開放感が、空虚に聞こえてしまう。
 メロディは滑らか。どっしりしたアレンジの演奏なら、メロディの確かさをしみじみ味わえてたろうに。
 この曲にサイケ・フォークっぽいアレンジをするあたりが、ロバートの好みなんだろうな。

6)John Strange School

 この曲もサイケ風味。今度はプログレっぽさもある。
 雄大なヴォーカルのメロディと、エコーを洞窟の中みたいに効かせたバスドラによるアレンジのせいもあるだろう。
 メロディは一本調子なところもあるけど、なめらかですてきだ。
 でもアレンジのせいで、ちょっとつかみ所がないんだよな。

7)Parakeet Truopers

 イントロでギターが痙攣ぎみにノイズを奏でる。
 繰り返し歌われる。パンキッシュで単調なメロディ。
 階段みたいに、ベースが淡々と上り下りしているように聞こえる。
 曲全体から、焦りをひしひしと感じてしまう。

8)OneClear Minute

 7)から切れ目なしに、唐突に始まる。
 バックの「プゥトゥプゥトゥトゥ」ってコーラスが耳に残る。
 神経質なアレンジだけど、このコーラスが闇雲にかっこいい。
 50秒くらいの、アイディアひとつで作り上げたような曲だけど。
 この子供っぽいコーラスが、妙にいとしい。

9)Chance Ti Buy an Island

 ゆったりとしたテンポをバックに、ブーストされたヴォーカルが投げやり気味にメロディを振り回しながら歌う。
 この曲もメロディがとてもきれいだ。
 でも、この荒っぽいアレンジが、この曲に泥臭いパワーをかぶせて違う魅力を付け加えてるな。
 たびたび繰り返される、ザクザク上下するギター・リフがいいなあ。
 さりげないアレンジだけど、とっても効果的に響いてる。

10)I`ve Owned You For Centuries

 こうしてみると、ロバートは単音やシンプルな和音のギターで、執拗に淡々とリズムを刻むアレンジが好きなのかな。
 アレンジのパターンに対するロバートの好みが透けて見えてくる気がする。 さすがソロ・アルバム・・・なのかな?(笑)
 メロディをぽ〜んと放り出す歌いっぷりが潔い曲。

11)The Ash Gray Proclamation

 アコギを何本も重ねた賑やかなバックに囲まれて、つぶやくように歌詞を吐き出す。
 ポエトリー・リーディングっぽい雰囲気だけど。かすかに、かすかにメロディが乗っている。
 ちょっとノイジーな録音が残念。この曲、きれいにギターを録音したら、めちゃくちゃかっこよくなってたと思う。

12)Flat Beauty

 リズム隊がくっきりいっしょになって、細かいブレイクを決めながらつっぱしっていく。
 演奏とヴォーカルがいっしょになって、リズミカルなロックンロールを作り上げた。
 でも、どこか危なっかしい。無条件で曲にすがりつけない。
 なんでだろう・・・アレンジに高音が足りないせいかな。

13)King Of Arthur Avenue

 こんどはアコギの弾き語りで、高音を生かした音作りだ。
 前曲と対照的。アルバム全体を通したメリハリは、さりげなくつけてるんだよね。
 この曲では、ロバートの歌声も甲高く聞かせる。格調高さを狙ったのかな。
 くっきりとして、いいメロディだ。
 とはいえ中盤で重たいベースをかぶせて、一筋縄ではいかないアレンジにするのはさすが。
 素朴さとハードさの二面性が聴いていて楽しい。いろいろな瞬間で、曲の表情がガラッと変わっていく。

14)Roofer`s Union Fight Song

 この曲もアコギの弾き語り。前曲より若干テンポが上がり、透明度が増したような気もする。
 メロディが甘苦い。単に綺麗なだけでなく、どこかひねくれたメロディだ。
 エンディング付近ではトビンによるコーラスをほんのわずか挿入する。
 なんかえらい贅沢なアレンジだ・・・。いろいろと構成を練った名曲。

15)Psychic Pilot Clocks Out

 一曲目と同様に、テープ処理された演奏をイントロに持ってきた。そのまま、ギターリフにつながるところまで、ますますそっくり。
 二分台の曲すらほとんどないような、短い曲が集まったこのアルバムの中で、唯一四分にわたって繰り広げられるロックだ。
 じりじりっと着実にギターリフがリズムを刻む。
 終盤になってふっと演奏が消え、すぐさまはじける瞬間がたまらない。
 エンディングではまた逆回転のテープエフェクトがかぶり、混沌の世界に消えていく。
 あの手この手で次々とメロディを繰り出して、くるくると表情を変えてみせる面白い曲。

16)Prom Is Coming

 マンドリンのように変調させた楽器による弾き語り。
 アレンジはシンプルだけど、メロディが耳を引っ張っていくので、飽きることはない。
 ただ、ちょっと調子っぱずれにべけべけ響くバックの演奏をいったん気にしてしまうと、曲の最後まで耳がそっちに行ってしまうのが困りもの。

17)Party
 
 この曲も弾き語り風に、ギターをバックに歌う。一本はコードストロークでじゃかじゃかっと弾き、もう一本は裏で単音のオブリをたどたどしく入れる。
 でも、単純な思いつきの弾き語り録音じゃなく、ダブル・ヴォーカルにして作品としてまとめ上げるアレンジのセンスがいい。
 これからもりあがるのかなっ・・・と思った瞬間に終わってしまう、わずか50秒の曲。

18)Did It Play?

 この曲もアレンジは前曲と同じタイプ。
 でも、コーラスがハーモニーとして絡み合う。
 時に危なっかしくなることもあるけれど、フォーク風の素朴な手触りがする。
 こういうハーモニーの感触は、個人的にツボ。とてもいい。

19)Double Standards Inc.

 この曲だけ、ヒスノイズが妙に目立つ。ヴォーカルも所々でよれるし。わざとなのかな。
 またまたギター一本にダブル・ヴォーカルのアレンジ。
 続けざまに似たようなアレンジが続くと、それぞれの曲の区別がつきにくいなぁ。
 おまけに短い時間で次々終わるから、組曲を聴いているような気にもなってくる。
 こうして一曲一曲をじっくり聞いてると、メロディの確かさをしみじみ実感するけれども。
 この曲は、ヨレた録音を良しとするかどうかで、評価が決まるだろう。
 僕は、こういうアレンジもありだと思う。ノイズっぽいのも好きだから。
 でも、わざとこういう音質にしたんじゃないなら・・・あまりにもテープ管理がアバウトだな〜(笑)

20)Punk Rock Gods

 タイトルとは裏腹に、この曲もギター一本にダブル・ヴォーカルの素朴な演奏だ。
 語尾をぶった切ったような感触の歌い方が面白い。

21)Meey My Team

 そしてひたすら似たようなアレンジは、この曲でも続く。なんだか、アルバム自身は(15)で終わって、それ以降はボーナス・トラックを集めたような気すらしてくる。
 この曲では、リズムはちゃかちゃか刻んでいるのに、落ち着いた雰囲気が漂う。
 テンポも早くなったり遅くなったりするけども、せわしない感じはしない。
 歌っているメロディが甘いせいかな。

22)Good Luck Sailor

 アルバム最終曲なのに、ギターをバックにとつとつと歌うアレンジは、なんのためらいもなく続く。
 首尾一貫したアルバムの選曲を誉めるべきか、それともロバートが何も考えていないのか・・・(笑)
 縦の線をそろえずにかなり荒っぽく歌って、無造作に曲を終わらせてしまう。
 あまりにも拍子抜け気味で、いかにもロバートらしい歌いっぱなしのエンディングだ。

 GbVトップに戻る