Guided by Voices

Hold on Hope(2000:TVT)

Producer: Ric Ocasek(1,2,4,5,7,9)

Robert Pollard - vocals & guitar
Doug Gillard - guitar, vocals & keyboards,drums
Greg Demos - bass
Jim MacPherson - drums

 メジャー移籍第一弾アルバム、「DO THE COLLAPSE」からのセカンド・シングル。というより、アルバム未収録曲8曲(米盤仕様で計算して)収録の、ほとんど新作といってもいい出来だ。

 9曲中6曲が、リック・オケイセックのプロデュース。
 おそらく「DO THE COLLAPSE」のアウトテイクだろう。
 のこる3曲はクレジットがないけど、ロバートのプロデュースかな。

 細かいことを言えば、(3)と(4)はこの時点で既発(英盤の「Teenage FBI」など)。(7)も邦盤にボーナス・トラックとして収録されていた。

 メジャーに行っても、どかすかリリースする姿勢は今までと、なんら変わらないことを証明してくれた嬉しいミニアルバム。
 それと、リックとの音源以外にもセッションしていたのが明らかになった。
 
 リックとの関係がパーマネントなものでなく、変わりつづけることをさらりと意思表示していたような気がする。
 オブラートに包まれた「DO THE COLLAPSE」関連セッションだけでなく、いままでのGbVワールド健在ぶりも楽しめるEPだ。

<曲目紹介>

1)Underground Initiations

 突き抜けるようないさぎよさが心地よい、軽快なリズムのギター・ポップ。
 メロディが素晴らしくキャッチーで、充分にシングルで通用しそう。
 
 ギターを細かく何本も重ね、多層的なオブリで攻めてくる。
 あたり一面、どっぷりギターで埋め尽くされた音像は、リックの趣味なんだろうな。 

2)Interest Position

 今度はバッキングが控えめ。それでもスピーカーいっぱいに音が広がるけど。
 ともあれ、この曲の主役は多重録音ボーカル。

 4人で作り出せる音でもなさそうだし。ライブでの再現性はまったく考慮無しに音楽を作り上げている。
 歌うラインをピタリとあわせ、なめらかなハーモニーでドラマチックに盛り上がる。

3)Fly Into Ashes

 リックのプロデュースとはちょっと違って、どんなに音を積み重ねても隙が残る。
 余白を残したアレンジとでも言おうか。

 そのツメの甘さが、魅力にもつながる。きどらずにあっさりと作ったポップスの手作り感覚がいかしてる。
 たぱたぱ軽快に弾むドラムにギターがかぶされて、ロバートのハイトーン・ボーカルが宙を舞う。

4)Tropical Robots

 あっさりと終わってしまう、デモテープ感覚の曲。
 メロディが優しく響く。
 リックのプロデュース音源だけあって、淡白な弾き語りっぽい音源なのに、ヒスノイズなど聴こえない。
 さすがしっかりしたスタジオで、録音しただけのことはある。
 ポイントは抜けのいいサウンド。こういうシンプルなアレンジも出来るじゃない。

5)A Crick Uphill

 中期ビートルズ風のメロディがぽろぽろ溢れ出してくる。
 歌い上げるときに、ちょっと喉へ力をこめるところがいいなあ。 

 アコギギターのイントロから始まり、ワンコーラスごとに音が増えてくるアレンジが凝っている。
 エンディングでだんだん力を増すギター・ノイズのおかげで、この曲がたんなるツルツル甘甘ポップスになり下がるのを防いでいる。 

6)Idiot Princess

 エフェクターをかけ、つぶした声でメロディを歌う。
 ざくざくリズムを刻むギターに、シンバルを連打するドラムがかみ合って生み出される、重たいビートに引きずられた暗めの曲。

7)Avalanche Aminos

 ぐるぐる回るようなギター・リフが特徴のロックンロール。
 歌はメロディがあるようなないような。

 ブレイクのドラム連打や、唐突に挿入されるクラップに、エコーがほとんどないボーカル。
 曲を構成する音楽要素のそれぞれに、へんな違和感がある。
 まるでパズルを組み合わせたようなアレンジだ。

8)Do The Collapse

 なぜかアルバムタイトルと同名な曲がここに顔を出す。
 2分弱の、GbVにしては珍しいインスト。
 
 まずはゆっくりギターをかき鳴らす。
 ギターの音を確かめるかのように、なんどもコードを鳴らしたあと、ドラムに乗ってテンポが上がっていく。
 裏で小さくミックスされた、バード・コールのような音がかわいらしい。

 メロディらしきものはあるけれど、それほどきっちりした構成でもない。
 セッション風な演奏の一部分を切り取ったみたい。
 こういう曲にアルバム・タイトルと同名をつけるんだから。
 確信犯でやってると思うけど。

9)Hold on Hope

 タイトル曲は、EPの最後に持ってきた。
 きれいなメロディが特徴な本曲のおかげで、このEPは見事に大団円に持っていかれる。
 甘くやさしく、ロバートの喉が転がる。
 スローテンポでゆったりと鳴るシンバルを聴いていると、しみじみしてしまう。
 ストリングスがそっと背中を支えた、とびきりのポップスに仕上がっている。

GbVトップに戻る