今お気に入りのCD

最近買い込んで、気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。

Shape I'm In/Jo Jo Zep &The Falcons(1997:Mushroom)

 15年以上前から、彼らの音を聞きたくて探してた。それがあっさり手に入るんだから、インターネットはたいしたもんだ。
 彼らはオーストラリア出身の5人組。活動期間は1975〜1983頃までらしい。
 インナーの写真ではスタジアムらしき大きな会場にぎっしり観客がいる写真があるけども、アメリカやイギリスでヒットを飛ばしたかは知らない。
 このアルバムは、2枚組のベスト盤。しかし、ユニークなバンドだ。

 僕が彼らを知ったのは、81〜82年くらいだと思う。同じくオーストラリア出身のバンド、メン・アット・ワークが、当時全世界で一世を風靡していた。その関連で、オーストラリアのバンドが雑誌(FMステーション)で紹介されていたってわけ。
 当時の記事では「オーストラリアは、全部オリジナルさ。で、ライブで演奏できなきゃ存在価値がない」ってなことを書かれてたような記憶がある。
 今はちょっと考え方が違うが、当時はライブ演奏こそベストと思ってたから、オーストラリアの音楽が聞きたくて仕方なかった。

 ところが。オーストラリアは当時も今も、国内だけである程度のビジネスが成立するらしく、日本にいるとあまり情報が伝わってこない。だから、聞きたい欲求だけがたまっていったっけ。
 当時エアチェックに燃えてた中学生のガキだった僕は、今まで聞いたことない音楽、とにかくいかした音楽を聴きたくて、その記事を夢中で読んだ。
 そして、その記事で紹介されていたのがこのバンド。といっても、詳しい記事はなんにもなし。ただ一枚、1978年の彼らのライブアルバム、「Let's Drip Awhile」のジャケット写真がぽつんと載ってただけ。
 その写真を見て、僕はずっとどんな音楽か想像しつづけてた。ジャケットにはひげ面の男とその後にぼんやりと二人の男。全員サックスを抱えてる。だから、シカゴのようなジャズロックかな、と思いつづけていた。

 さて。で、やっと手に入れたこのアルバム。全30曲を2枚組におさめてる。1枚は代表曲を集め、もう一枚はライブ音源やらレア音源を集めた、かゆいところに手が届く編集だ。
 このバンドを一言でまとめると。音楽的一貫性はなんもなし(^^;)
 自らの音楽興味が変わるにつれて、へんに頑なにこだわることなくつぎつぎスタイルを脱ぎ捨てていったのか。ビジネス的な圧力で変えていったのか。そこらへんはよくわからないけども。

 一枚目のアルバム「Don't Waste it」(1976)では、ブルースに影響を受けた音楽を、ギターやサックスを前面に出して演奏してる。アメリカのバンドと違って、どこか借り物的な重心の軽さはあるけれども。
 しかし、デビュー曲の「セキュリティ」(オーティス・レディングのカバー)はとってもカッコいい。
 
 だけどだけど。このあとのアルバムでどんどんファルコンズは軽くなっていく。2枚目アルバム「Whip it Out」(1977)ですでに、レゲエのビートを取り入れた気楽なロックでぴょんぴょん飛び跳ねる。
 このあとのアルバムも、レゲエ風味を巧みに取り入れた曲がつづく。ライナーによれば、オーストラリアのロックにレゲエをはじめて取り入れたのがファルコンズらしい。81年のメン・アット・ワークのヒット曲「ノックは夜中に」も、レゲエのしゃくりあげるビートが特徴だったし。ある程度オーストラリアでは流行っていたのかな。

 そしてアルバムを重ねるにつけ、バンドの主導権が微妙に変わっていったのが透けて見える。
 最初はもちろん、リーダーのジョジョ・ゼップことジョー・キャミリエリ(vo,sax,g)がしっかり音楽の手綱を握ってたのに。4枚目のアルバム「Screaming Targets」や5枚目のアルバム「Hat's Off Step Lively」では外部プロデュースにイギリス人のピート・ソリーを迎える。
 このプロデューサーがファルコンズにますます軽いポップスを押し付けていた模様。キーボードが前面に出てきて、5枚目ではエレクトロ・ポップそのまんまだ。当時の音のはやりを知ってるだけに、苦笑いをせずにはいられない。

 ついに6枚目のアルバム「Cha」でファルコンズは解散する。
 このアルバムはリズムも打ち込み、オーバーダブしまくりのアレンジにやたらとうすぺらいサックスがからむ曲ばかり(このベスト盤には、3曲収録されている)で、とても一曲目のオーティスをやっていたバンドと同じ人間が演奏してるとは思えない。バカラックの「ウオーク・オン・バイ」はトンプソン・ツインズかと思った。暗くて苦笑もの。

 結局ひとことでくくってしまうと、本当の意味での独自性をもちえなかったバンドなんだろうな。
 とはいえ、どの時代の曲もメロディは魅力的だし、先入観を捨てて聞けばいい曲が多いことは、改めて強調しておく。
 こうなったら、オリジナルアルバムを全部聞きたい。いまのところオーストラリアでもCD化はされてないようだが。いつか再発されるでしょ。のんびりまちます。なにせ、彼らの音を聞くまでさんざん待たされたんだからね。
 
Soul&Inspiration/Barry Mann(2000:ATLANTIC)

 アメリカンポップスの巨匠、バリー・マンによるソロアルバム。えらく久しぶりのリリースらしい。
 シンシア・ウェルと組んでさまざまな名曲を作曲しているが、このアルバムはそれらの自作曲を自分でカバーしたもの。
 といっても、僕が知ってるのはライチャス・ブラザースの「ふられた気持ち」や「ソウル・インスピレーション」、B・J・トーマスの「ロックンロール・ララバイ」や「アイ・ジャスト・キャント・ヘルプ・ビリービン」、それにドリフターズの「オン・ブロードウエイ」くらい。
 オリジナル曲を知りたい人は、萩原健太氏が「ピック・アップ」コーナーで紹介しているので、そちらをご参照ください(^^;)
 
 今回はやたらとゲストが参加している。しかし、どういうセンスなのかいまいち不明。キャロル・キングは納得できるものの。他はリチャード・マークス、ブライアン・アダムス、ダリル・ホール(元ホール&オーツ)、J・D・サウザー、ピーボ・ブライソンと、いってはなんだが80年代に一世を風靡して他人ばかり。ノスタルジーを強調してるのだろうか(言いすぎかな)

 曲はまったく文句のつけようなし。演奏もバリー・マン自身のやさしいピアノをしっかりサポートしてる。おちついて聞ける、AORです。
 60年代初期のバリー・マンの歌声は、高く澄んだきれいなものだったが、さすがによる年波かちょいとしゃがれてしまっているのが残念。
 ついでに注文をつければ、書き下ろしの新曲も聞きたかったな。

 さてさて。そろそろ過去のバリー・マンのソロアルバムが何枚か、やっと再発されるはず。今まではブートの盤起こしのリプロしかなかったからな。これでちゃんとした音で聞けるかな。楽しみ〜。

Ghost Dog/The RZA(1999:VICTOR)

 ジム・ジャームッシュ監督による映画「ゴースト・ドッグ」のサントラ盤。世界に先駆けて、日本先行発売だそうな。ジャームッシュって、そんなに人気あるのかな?よくわからない(^^;)
 僕がこのCDを買ったのも、その映画にひかれてじゃない。この欄でなんども紹介しているウータン・クランの音楽総帥RZAの手によるサントラがどんな感じか、ぜひとも聞いてみたかったから。

 最初はサントラだってことをまったく意識せず、ひたすらラップが続くのかと思いきや。数曲を除いてインストがつづく。カットイン・カットアウトを強調した隙間がある音楽が心地よい。
 録音はすべてホームグラウンドである、ニューヨークの36チャンバー・スタジオにて。エンジニアのドクター・ノーとコンビで音を作り上げている。
 ちなみにラップではメソッド・マンとオール・ダーティ・バスタードが参加。特にオール・ダーティはブッちぎれた絶叫ではじけてます。

 基調はおなじみRZA印のハイハット。おそらく、いつもの手打ちだろう。かすかに引きずるリズムに乗せて聞こえてくる曲はテクノ的にも聞こえる。
 RZAのバックトラックつくりのうまさを味わえる好アルバム。
 いつもはラップの影に隠れる、縁の下の力持ちになってるからね。
 
"curtains"/tindersticks(1997:PoliGram)

 予備知識なんもなし。多分、ティモシー・アーネストによるイギリスのソロ・ユニットだと思う。
 オーケストラの演奏を多用し、かなり翳りのある曲を淡々と歌っていくポップスだ。鼻にかかった低い声のボーカルが、この落ち着いた曲のイメージに合っている。
 もっともクラシカルなイメージだけでなく、何曲かではエレキギターがかきなされる、ノイジーな曲もあり。まるで自分らの音楽が、クラシックに擦り寄った、単なる懐古趣味ではないことを主張しているかのよう。

 このユニットの音楽に、昼間の明るさは似合わない。夜がピッタリ。ヘッドホンをしてじっくり聞いていると、覇気のない歌声でだれそうになるかと思いきや、魅力的なメロディが浮き上がってくる。
 そのよさに気づいた途端、ベールの向こうのやさしさが伝わってきて好きになった。
 ちょっと不思議な感触で、一人の人間の内面を見つめてるような音楽だ。
 ちなみに、一曲コーラスで、元ボングウオーターのアン・マグヌスンが参加。

The Fabulous Knickerbockers/The Knickerbockers(1989:Sundazed)

 ニッカボッカーズの1965〜67年にかけての録音をまとめた編集盤。
 このバンドはなんの予備知識もなく、サンデイズドのレーベル・イメージだけで購入した。
 ニューヨーク出身の4人組バンドらしい。
 CDには、実に詳細なライナーはあるのだけど。当然ながらすべて英語なので拾い読み程度(^^;)シングルも何枚か切っているようだが、チャートアクションがかいてないので、どの程度ヒットしたのかさっぱり分からないけども。

 音は当時のビートルズやフォーシーズンズからの影響を何にも隠さないビート・ロック。この時代、やまほどこういったコピーバンドに毛がはえたようなバンドがいたんだろうけども。
 ニッカボッカーズの売りは、メンバー全員がボーカルを取れること。甘い声、ファルセット、嗄れ声と多彩な声によるリードボーカルとコーラスが心地よい。歌声もドライブ感があって、うまいものだ。

 問題は演奏だ。このCDの前半に収録されている曲はスタジオミュージシャン(かな?)によるうまいドラムなのに、後半になっていくにつれ下手くそになっていく。デビュー当時はお仕着せのアイドルグループなのに、自己主張をしたくなり破綻していったような感触すらある。
 だから聞いていて楽しいのは中盤になってから。歌声がこなれてノリがいい上に演奏はしっかりしているから。ギターの音色はさすがに古臭いけれども。

 とはいえ、聞き終えて物足りなさがつのっていく。
 彼らが今の時代にまったく語られないのも、オリジナリティの確保が出来なかったからだろう。収録曲の半分くらいはメンバーによる自作曲だから、音楽的才能はそれなりにあったと思う。自作曲だって「おっ?」と耳をひくメロディを持っているから。
 だから、その時代に圧倒的影響力のあるバンドのイメージを超えて、自らの個性を出したプロデュースをしてれば、一皮むけて化けていたかなと思う。
 バンドメンバーの才能の限界が透けて見える残酷さと、レコード会社スタッフがチャンスをつかめていない、もどかしさが見えるバンド。
 もっとも、そんな余計なことは考えなくても、素直に楽しめる。
 BGMにはピッタリの、楽しい音楽だ。

ニアネス・オブ・ユー/明田川荘之(1998:Plats/学研)
 
 このCDに収録されているのは、93/2/13にアケタの店で録音された、月に一回深夜に演奏されている、明田川のピアノ・ソロによるライブ。以前この欄で紹介したCDと同一形式のライブ演奏だ。
 明田川の深夜のソロライブは、先月さっそく行って来たばかり。飾らないスタイルで無造作にピアノに向かい、興が乗ると唸りをあげながら音をつむぎだす。
 オカリナを次から次へと持ち替えて、素朴ながらもドライブ感のあるジャズを演奏するのがとても新鮮だった。 

 さて、このCDでは収録曲の5曲中4曲がアメリカのスタンダード。残る一曲が日本の「砂山」という曲。後者は「中山新平」氏の作曲らしいが、詳しいことはわからない。すみません。
 僕は明田川の魅力は日本的なメロディを、ごつごつと引っかかるアクセントで演奏するところかと思っていた。
 ところがこのCDでは、日本的な郷愁感は希薄だ。気負うことなくオーソドックスに淡々と音を奏でる、別の魅力の明田川が聞ける。
 最低でも8分、他はすべて10分以上の長尺演奏は、テーマを行きつ戻りつつ、とってもロマンチックな演奏だ。速いパッセージももちろんあるが、そんなときでもどこかにユーモラスな余裕を感じさせて、あたふたせずに演奏に浸ってしまう。時に激しくフリーに鍵盤を叩く時ですら、聞いていて心地よくなってしまう。
 ジャズピアノのあったかい演奏がここにある。

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