LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2013/12/25 西荻窪 アケタの店
出演:板橋文夫G
(板橋文夫:p、太田恵資:vln、瀬尾高志:b、岡部洋一:per [ゲスト]AKETA(オカリーナ),Luna(vo))
開場前から長蛇の列。観客で満員のアケタの店だった。
「このクリスマス・ライブは偶然みんなのスケジュールが空いてて、すごい豪華なメンバーとなりました」
今夜の板橋文夫セッションは強力なリズム隊に太田恵資が加わる、シンプルだが興味深いメンバー。さらに明田川荘之とボーカルのLunaがゲストで、明田川と板橋のピアノ・デュオを聴けるかも楽しみだった。
板橋はパーカッションもいくつか持ちこむが使わず。ピアノを弾きまくった。
瀬尾高志はウッドベースをアンプに通す。太田はアコースティックと青のエレキ・バイオリンを使い分けた。アコースティックはマイクで拾いスタッフが音量操作して、エレキは横のアンプから直に出す。
岡部洋一は変則ドラムセットで、カホンに座りジャンベをメインに叩いた。さらにウッドブロックや金物を横につるしたり並べたり。シンバルは2枚セットし、ハイハットを横にセッティング。
フロントに左から太田、Luna、明田川の並び順だ。明田川は足元に各種のオカリーナを入れたケースを置く。鍵盤なしでふらり立ってる明田川の絵ヅラが新鮮で面白かった。
(set list)
1.アケタのクリスマス
(+明田川、+Luna)
2.All of me
(+明田川、+Luna)
3.クリスマス・メモリーズ・クリスマス
4.Peshawar
(+Luna)
(休憩)
5.かんぴょう
(+Luna)
6.手をつないで〜hand in hand〜
(+明田川、+Luna)
7.南部牛追歌 (+明田川)
8.ヘルニア・ブルーズ inc,."Now the
time" (+明田川、+Luna)
9.終わりははじまり
10.渡良瀬
(+Luna)
(encore)
11.
(1)はたぶん板橋の新曲。(3)は板橋が今夜のために書き下ろしたそう。
(5)は"ザ・ミックス・ダイナマイト游"(1996)に収録曲。(9)は"終わりははじまり"と曲紹介した板橋だが、"終わりのない始まり"って曲かも。"終わりのない始まり"は音源持っておらず、良くわからない。(10)はもちろん、板橋の代表曲。
(4)と(6)はLunaの曲で、(7)と(8)が明田川の曲。アンコールは曲名不明。
このように予想より明田川とLunaが、がっつり絡む選曲だった。てっきり1〜2曲、セッションして終わりと思ったら、嬉しい誤算。
(1)は"クリスマス!クリスマス!アケタの店!"と連呼するテーマ。明田川がときおりスタンド・マイクを手で覆い、思い切り声を店内に響かせる。
Lunaも初手から即興ボイスでまくしたてる。スキャットでなく、インプロ的なアプローチ。抽象的なフレーズをマイクに叩き付けた。
彼女は09年デビューでリーダー作2枚あるが、ぼくは明田川とのセッション"MENINA MOCA"(2009)でしか聴いたことなし。ライブは初めて見る。若いのに貫録ある歌いっぷりで、喉を張るスタイルの歌い手だ。
(1)はテーマからソロ回しに雪崩れるが、なんともPAバランスが凄い。ベースとパーカッションはそれぞれ独自アンプと生音なため、ふたりしだいで音像ががらりと変わる。 つまり二人が盛り上がると、他の音がさっぱり。(1)ではほとんどピアノの音が聴こえなかった。
フロント3人のマイクはたぶん、店の方でボリューム調整していた。逆に明田川は出音にこだわらず、他のソロでも構わずにオカリーナを吹き続ける。とはいえ小さめのオカリーナだと他の楽器と音域かぶらず、きれいに店内へ響いてた。
ボーカルのソロからアドリブをまわしたが、明田川が無造作に即興フレーズを続けるため、平行ソロかと思った。自分にソロが回ると、改めてじっくりとオカリーナを吹く。大きめのものから、小ぶりまで。つぎつぎに持ち替えアケタ節を聴かせた。フレーズ盛り上がった頂点で、観客へオカリーナを投げつけるそぶりも幾度か。
太田はアコースティックでメロディアスなソロを聴かせる。最初のふたりに比べ、比較的あっさりとソロが終わり残念。
ピアノは剛腕でいきなり盛り上がった。フレーズが断片的に、力強くうねる。鍵盤を鷲掴むような迫力が、板橋の魅力だ。
ベースへソロが回ると、鋭くスピーディなプレイに惹かれた。瀬尾はたぶんライブ聴くの初めて。かっこいいなあ。ぼくより一回り若いが、今後が楽しみ。
ウッドベースの弦をスラップしまくり、強烈なアタックでフレーズを奔出させる。オーソドックスなフレージングを取っても、疾走感が鮮烈で素敵だ。ソロの中盤でタッピングみたいな音色で弦を跳ねさせるさまが、素晴らしく響いた。
岡部のソロはLunaと8バーズ・チェンジ。チェイスに変わる。ハイハットを4つ打ちでガシガシ踏む岡部。
Lunaのスキャットと交互で、小刻みにジャンベを叩く。同じフレーズは使わず、毎回微妙に譜割やタイミングを強弱つけて鳴らす。ジャンベひとつで、空気をぐいぐいうねらせた。
(2)はスタンダード。今度は正統ジャズ・ボーカルで、Lunaはソロでスキャットを聴かせた。
ソロ回しもきっちり。板橋はバッキングだと音数少なく抽象的なフレーズだ。乱打のような打鍵でも、きっちりとコード進行に沿った流れになっている。
フロントが下がって、器楽での(3)。板橋は呂律を回らせぬ独特のぶっきらぼうなMCだが、ピアノが鳴った瞬間にロマンティックな風景へいきなり塗り変える。ダイナミズムがすさまじい。
(3)は岡部がトライアングルひとつで、変則4ビートを提示した。テーマ・メロディがきれいだ。バイオリンがたっぷりとソロを取った。
Lunaの(4)はアラビック風味が漂う。瀬尾がアルコで金属質な音をベースから引出し、太田が音数少なく中近東を思わすフレーズで支えた。岡部もすいっとジャズから違う次元へリズムを変える。板橋は無造作に弾くが、きっちりと世界観を整えた。
どちらかというと(4)は途中でプログレ的に盛り上がる。朗々と声を響かすLunaをバッキングが懐深く応える。
アラビックなボーカルからホーメイへ。ここぞと太田がたっぷりソロをとり、歌声とバイオリンの双方で音楽を膨らませた。
後半セット最初、板橋のMCで"渡良瀬"をやるかな、と思わせての(5)。
イントロの高速フレーズは板橋がキーを間違えたらしい。すかさず瀬尾が突っ込んで、やり直した。「瀬尾さんは頼りになるなあ」と太田が笑う。
大真面目な顔で「かんぴょう〜♪」とLunaは歌う。観客は笑いつつも、音楽に惹かれる格好だ。
そういえばこの夜は、各人のソロの後で毎回のように拍手が飛ぶ、いかにもジャズ・ライブっぽい観客だったな。
板橋は勘違いして「明田川くんの曲」と紹介し、明田川から「握手しようよ」と突っ込まれていた。
Lunaの滑らかな歌声が響く。太田がエレクトリックで芯の籠ったソロを取った。
(7)から明田川のレパートリーが続く。オカリーナ独奏がイントロ。明田川が良く振るベルもガラガラ鳴らした。
バンドが加わった瞬間、誰からともなく暗黒ムード。ベースは重たく弓を弾き、太田もエレクトリックで密やかに鳴らした。
バンド全体が抽象的なフリーとなり、牧歌的な民謡のはずがハードな世界に突入した。何度もライブで聴いた曲だが、このアプローチは初めて。面白いな。
途中で明田川はオカリーナを置き、ひたすらガラガラと執拗にベルを鳴らす。それがなおさら、闇っぽいムードにハマってた。
アンサンブルの進行はフリーで、ソロ回しより全体演奏のイメージが強い。明田川が降ってたベルは、途中で一部の部品が床へ落ちる。それめがけて、なんどもベルを投げ落とす明田川。幻惑な空気が漂う。
すっと立った明田川が小さなオカリーナでテーマを吹き、エンディングへはきれいに導いた。
「明田川くんとなら、ぜひやりたかった」と言う板橋が少々意外だった、(8)。Lunaはやはり、まじめな面持ちで歌う。"イテテテ"は明田川がきっちり入れた。
途中で明田川がオカリーナを置き、板橋のほうへ。ピアノへ強引に座って鍵盤を叩きはじめる。クラスターの途中だった板橋は、苦笑しながら押しやった。
アレンジ的にちょうどブレイクの時だったため、無音の中、男二人が鍵盤を取り合うシュールな図が現れてしまう。
今度は明田川のソロ最中。板橋がのそっとやってきて、オカリーナを強く取り鳴らし始めた。音はともかく、よりによって重音出る複雑構造のオカリーナを選んだ板橋に、今度は明田川が苦笑する。
ソロを続ける明田川は、するっと"Now the
time"へ。太田が頬を緩め、小粋なソロを弾いた。
終盤にテーマを歌いながら拍手を観客に求めるLuna。とはいえエンディングに向けテンポが加速し、あっという間に打てなくなる。
バンド演奏の圧巻が(9)。思い切り良く、熱く盛り上がった。板橋のピアノが疾走し、岡部がジャンベで煽り立てる。ジャズのノリだがトランス的な勢いもあり。
バイオリンからピアノへと、長尺のソロ。けたたましくジャンベが轟く中、板橋のピアノはボリューム負けずに強打し続けた。
いったんテーマに戻り、コーダへ。だが終わらずに岡部のソロへ。無伴奏の中、ジャンベが唸りを上げた。毎回異なる、さまざまなパターンを岡部は繰り出し続ける。途中で叩きながら、トーキングドラムを肩からつるした。
両方を駆使してのソロが、ほんと圧巻だった。
それでもライブは終わらない。Lunaを呼んで、今度こそ"渡良瀬"。この歌、歌詞があったんだ。朗々と歌い上げるLuna。今度はカホン中心に重たいビートを岡部が提示した。
ソロ回しでもバイオリンが美しく流れる。ピアノがフリーにソロを展開の途中で、太田はおもむろにエレクトリック・バイオリンを構えた。
密やかに、静かに、丁寧に。太田は"渡良瀬"のテーマを奏でる。譜割は崩さず、滑らかに。
フリーなピアノを柔らかく包み込むエレクトリックの響きが、しみじみ美しかった。
拍手の中、メンバーはステージから降りずにそのままアンコールへ。
聴き覚えあるメロディだが、タイトルを思い出せず。まず太田がバイオリンをマンドリン風に抱え、エレクトリックでテーマを弾いた。音色は軽くディストーションかかり、スティールパン風の音色。
ぐるりとソロが回ったあと、太田がクリスマス・ソングを奏でる。改めて今日がクリスマスだった、と思い出す。後ろですかさず、岡部がスレイベルを振って気分を盛り上げた。
最後は"Blue
Christmas♪"と一節、板橋と歌い上げて締め。
「終わりです!」
ピアノ横のパーカッションを一打ちし、板橋が宣言した。
今夜は録音無しが惜しい。さまざまな形で盛り上がり、すっかり身体も心も温まるライブだった。予想外の明田川やLUNAときっちり共演形式のセットリストながら、(9)を筆頭にピアノをたっぷり聴かせる場面も確実におさえるボリュームでおなか一杯だ。
板橋のピアノを聴いたのは久しぶりだが、とにかくこの熱さをまた体験したくなった。