LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2011/12/4 赤坂 赤坂ACTシアター
出演:中島みゆき〜夜会
vo.17「2/2」〜
(CAST:中島みゆき、植野葉子、香坂千晶、コビヤマ洋一
MUSICIANS:Conductor,Keyboards:小林信吾 Keyboards:友成好宏 Keyboards,Saxphone:中村哲 Guitars:古川望 Bass:富倉安生
Drums:島村英二 Vocal:杉本和世 Vocal:宮下文一 Violin:牛山玲名 Violin:民谷香子 Cello:友納真緒)
現在は不定期に開催な、夜会の17回目。本作は95年と97年の演目を再々演にあたるという。ぼくは格別、中島みゆきのファンってわけじゃない。ベスト盤とアルバム何枚か聞いたのみ、一番好きな曲が"ファイト!"、って程度の知識。もちろん、夜会は初めて。
たまたまチケットが手に入ったので見に行った。二階席後方、しかし会場は結構勾配がきつく、思ったよりステージは遠くなかった。
夜会は中島が作演出だそう。とはいえ演出家は入れたほうが良いのでは、と思ってしまった。中島も大御所だから無理かな。見ていて、もどかしい場面が多数あり。
楽曲と歌唱で中島の魅力は存分に味わえる舞台なだけに、なんとも演出が物足りなかった。
具体的には暗転が長すぎで、頻繁すぎ。その上、あまり意味を感じさせぬ舞台装置や場面あり。休憩20分入れて2時間強の舞台だが、刈り込めば1時間半以下に出来たはず。
中盤から多用される明転が、とりわけ効果的だっただけに歯がゆいったら。
ちなみに歌唱は圧倒的。還暦とは思えぬ凄みと存在感にあふれてた。
2ベルの前、中島によるアナウンスで携帯電源オフなどの注意が入る。何ともコミカルな口調で、おばあさんみたいな雰囲気だ。
どんどん静まる客席。ステージ下のオケピには、ミュージシャンらがスタンバイ。弦楽器のチューニングが聴こえた。
幕が開くと机が二つ三つ、前にソファ。中島がいきなりあらわれ、机の上にお茶を置くマイム。楽曲は既に流れてたと思う。歌はオケピのミュージシャンかな?
正直、このシーンからステージセットが謎。会社らしき机はこの後全く出てこない。手前の一枚だけ幕あける演出で十分だったのでは?
演目の「2/2」はネットで過去の履歴見たが、今回ストーリーや設定にだいぶ手を加えているようだ。
売れない日本画家と中島ふんするOLの恋愛を軸にし、多重人格の設定は二部で唐突に出てきた。
あらすじを書くと、中島が努める会社は、画廊かなんか。売り込みに来た日本画家に恋する中島だが、うまくいかずベトナムへ悲恋旅行。追う画家。一方、中島は車にはねられたショックで、多重人格に。もう一人の人格は、死産した双子のかたわれ。
死産の原因が自分にあると、トラウマになってた中島だが実は偶然だった。
中島は上手いこと人格分裂し、もう一方の人格は画家とハグ。中島は意気揚々と去っていく・・・ってなとこか。
ミュージカルでも芝居でもない。象徴的なシーンが多用され、かつ説明のセリフは最小限。あくまで中島の歌が主役だ。
もっとも歌うのは他の出演者も一緒。むしろ画家やもう一人の人格の役者も、積極的に歌ってた。
ほかの出演者はコンタクトマイクを付け、中島のみハンドマイク。音質を気にしたか。
中島は積極的に動き、横たわるなど不自然な姿勢で歌う。あのバイタリティはすごい。
舞台の演出は、中央にせりあがる大きな鏡。素通しにもなり、中島ともう一方の人格がマイムや舞台狭しと走り回る瞬間が圧巻だった。
中島の歌では、ソファに寝ころびつつ、フレーズ毎にむっくと座りなおして歌う場面が印象深い。よくあんな動きしながら、整った歌を歌えるな。
ステージを通して、中島のピッチはきれい。声色もいろいろ変え、多彩な歌唱を味わえた。
もっとも舞台の世界はひたすら陰鬱だし、歌詞は重たい・・・。中島の歌世界に馴染んでおらず、つらい場面もしばしば。
ほとんどが舞台用の描き下ろし曲かな?配られたチラシに過去のセットリストも載ってたが、舞台見る限り曲順や曲が異なってたようだ。
ネットのレビューには『全体を構成する延べ43曲のうち約半数が新曲になり、7年版で歌われた「1人旅のススメ」「拾われた猫のように」などはカット。』とあった。
前半はなんともビンボくさい恋愛物語。ひたすら中島の歌に集中して見てた。でも中盤からぐんとスピーディに。一部最後のシーン、ホテルの部屋から屋台村に明転し、すぱっと車にひかれる演出には引き込まれた。
二階席だから、せり上がりの奥まで覗けてしまうのが残念。一階席から見上げてたら、さらに演出が生きたと思う。
休憩明けも中島の場内注意アナウンス。後半からぐっと世界が難解になる。唐突な病院のシーンから、長回しの海岸ぺりを歩く場面。後者は波の演出がえっらい綺麗だった。スモークかな?映像かな?1階席で見てたら、印象変わってたはず。
歌われる楽曲は、同じテーマが幾度も出てくる。"7月のジャスミン"ってフレーズが特徴的だった。
後半では中島がオケピの前へ船に乗ってせり上がり、熱唱するシーンも。
圧倒がクライマックス。"幸せになりなさい"って曲かな。ホール全体にビンビン響く、中島の声。ビブラートが激しく空気を震わせ、歌い上げるさまがめちゃめちゃ美しかった。
エンディング、中島が去るシーンも華やかだ。さっと扉があいて、まばゆくステージが照らされた。
終演が22時半と遅いため、カーテンコールも短め。最後は中島一人が、楽しげに手を振って幕が下り、さくさくと観客が帰っていく。
色々不満も書いたが、中島みゆきファンでなくとも十分に楽しめるステージだったことは間違いない。帰るなり、彼女の曲を色々聴いていた。