LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2009/6/21   表参道 月光茶房

   〜月光茶房の音会 (第12回) 水無月のふたり〜
出演;太田朱美+岡部洋一
  (太田朱美:fl,recorder、岡部洋一:perc) 

 
 第12回目の音会、意外な組み合わせのデュオ。過去に競演歴の有無は、よくわからない。冒頭に「今日のライブは1セットのみ」と、プロデューサーの吉田隆一が告げる。男っぽい構成だ、の一言に、太田が右腕を強く上げてにっこり微笑んだ。
 そして、演奏へ。MCもなく、音楽一本やりの構成だった。途中で曲をやってたかもしれないが、つなぎめなく次々に演奏が進む。

 まず太田が早いフルートのフレーズを。クラシカルさを残しつつ、息を強く吹き込み鋭い音色を混ぜて。ソロアルバムから、もっとジャズ寄りを想定してたので、意外だった。
 最初は探り気味に、やがて岡部の音数が多くなる。編成はよく見えなかったが、ジャンベを1台、スタンドの周りに各種のベルやパーカッション、鉄板などを並べていたようだ。
 おそらくカホンに座り、足首に鈴を巻いていた。Wave drumは無く、すべてアコースティック。横へビリンバウを立てかけてある。

 にぎやかな鈴の音、小気味よいジャンベの響き。さらに上へ乗せたンビーラも混ぜた。
 ほんのりメロディアス。シェイカーへ岡部が持ち替えたあたりで、最初の盛り上がりに向かう。
 太田は休みなくフルートをスピーディに吹き続けた。フレーズの組み立てよりもむしろ、音列の勢いが先に来る。
 シェイカーへ持ち替えた岡部が、高速パターンで畳み掛ける。フルートと絡んで、ぐいぐいと雪崩た。

 一呼吸おいて、テンションが緩やかに下がる。太田はリコーダーに持ち替えた。吹く前に、指笛を静かに鳴らす。
 岡部もカホンやウッドブロックを叩きわけ、しばらくは抽象的な展開に。特に拍子を明確に打ち出さず、ランダムなグルーヴが静かに続いた。
 うっとりとリズムと素朴なリコーダーの音色が混じる。さらに太田はフルートへ持ち替えなおした。

 リコーダーでも鋭い息吹を混ぜるが、比較的メロディが心地よく流れる。バロック風と日本調の旋律も感じた。これがフルートだと、とたんにアグレッシブさを混ぜる。
 時折唇をぬぐいながら、猛烈な勢いで吹きまくった。  
 もういちどリコーダーへ持ち替えたときの、マウスピース部分だけ吹いた場面が印象に残る。マウスピース部分に吹きながら、指を差込み音程を変える。二音をトロンボーンのようにうまく操りながら、岡部のビートにうまく合わせてた。

 岡部はさまざまなパーカッションを叩きわけ、単調さを避ける。さらにリズムをとぎらせず、時に口へスティックを加え持ち替えに間をおかぬようにしていた。
小ぶりのタールへ両指をすばやく打ちつけ、撫でるようにメロディをうっすらまとったビートを操り、次にはおもちゃのトンカチ型シェイカーでコミカルに音を震わす。 ンビーラも折々に使い、彩を添えた。

 太田が再度フルートへ持ち替えた頃合い。岡部の両手は双方で、メロディックなパターンを打ち出した。
 左手はンビーラ。右手はどうやら横へ、バラフォンみたいなのを置いてたみたい。ラテン寄りかと予想してたが、今日の岡部はアフリカ系の楽器を多用。しかしグルーヴ一辺倒でなく、抽象さも混ぜた幅広いアプローチだった。

 ここまでで1時間くらい。どうやってエンディングに持ち込むかな、と思ってたら。とたんに世界観がコミカルに向かった。
 叩きながら岡部がタマを小脇に持つ。フルートを吹いてた太田は、岡部が叩き始めたら、文字通り会話を始めた。電話越しに話すがごとく、岡部のトーキング・ドラムに反応する。
 それがいつしか、文字当てゲームに変化した。

「坂田さんが・・・おなかを壊して・・・?」
 岡部の叩くリズムに、無理やり日本語を当てはめる太田。最初はコール&レスポンスを意識してたと思しき岡部は、途中から太田のアプローチにつきあってゆく。
 3音のパターンを繰り返す岡部だが、太田がぴんとこない。ついに太田は会場のトイレを指差し、「ああ!」と太田が膝を打つ。なんだか文字当てゲームのバラエティ番組みたいになってきた。

 しまいに太田がドラえもんのテーマやヤンマーディーゼルのCMソング(他の曲かもしれないが、僕が連想したのはこれ・・・)を、岡部のタマと太田のフルートが奏でて行く。
 タマのソロがあったのもここかな。転調しながら下がっていく岡部の音作りがかっこよかった。

 いったん間をおいて、岡部はおもちゃのシェイカーを持ち出した。太田が笑いながら草競馬のメロディを吹いてゆく。間をたっぷり持ち、岡部の振るシェイカーと掛け合いしながら。
 スピーディに転調しながら駆け上がるフルート。岡部は足の鈴も混ぜて軽快なリズムを作り、太田は笑いながら足を踏み鳴らす。

 再びフルートが吹く横で、岡部はビリンバウを持ち出した。一瞬だけ、店内の天井板に棒の先端を当てて、店を胴鳴りさせた瞬間がすごかった。
 自分のお腹へ響き瓢箪をタイミングよく当てて音を揺らしつつ、岡部はビリンバウを勇ましく鳴らす。右手のスティックを当てる位置を次々変え、メロディを意識した音使いだった。
 フルートが真っ向からかみ合い、演奏が盛り上がる。太田は声を出しながらフルートを吹き続けた。野太い太田の唸りにフルートの高音が重なる。

 背後でベルがちりん、と鳴った。これに反応する二人。リズミカルにベルが鳴り、やがてエンディングに向かった。ベルは何かな、と思ったら。スタッフが自転車を持ち込んで、ベルを鳴らしてたんだ。

 約75分、1set。 太田をライブで聴くのは初めて、即興アプローチに予想つかず楽しめた。今度はMCも混ぜて、じっくり演奏も聴いてみたい。岡部は疾走やパワフルさをあえて抑えた印象。ビリンバウがかっこよかったな。
 前半と終盤のイメージがかなり強い印象のセッションだった。ここまで即興要素強いステージとは。

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