LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2008/9/13 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之
(明田川荘之:p,オカリーナ)
いきなり客電が落ちたのが0時15分頃。しばらく間を置いて、大ぶりのオカリーナを持った明田川荘之がピアノへ向かった。
無言のままうつむき加減で、ゆっくりと吹き出す。左手中指に大きな絆創膏を貼っていた。
曲は"マイ・フェイヴァリット・シングス"。
低い音域でテンポを揺らしつつ、アドリブを重ねた。冒頭こそテーマの色合いを残していたが、しだいに独自の世界へ向かう。
無伴奏オカリーナはフレーズの合間の音をいくつか抜き、ノリを不安定にする。
訥々と旋律が重ね、ふうわりと空気をリラックスさせた。
オカリーナをピアノ右横のスペースへ置く。いつもと逆だ。右手で鍵盤を押さえながら。
そのままライブが続いた。
<セットリスト>
1.マイ・フェイヴァリット・シングス
2."メニー・アロッサ"(?)
3.孝と北魚沼の旅情
4.吉野ブルーズ
(休憩)
5.アイ・シュッド・ケア
6. ?
7.わっぺ
8."小山京子と(***?)おしどり夫妻"
9. ? 〜ブラックホール・ダンシング
情感あふれる旋律が(2)。タイトルはいまひとつ聴き取れず。先月の深夜ライブでもやった曲かも。唸り声がうっすら漏れる。
ペダルを大きく踏んでテーマを響かせ、アドリブ部分はノーペダルもまぜた。ときおりスニーカーでリズムを踏む。テンションが次第に高まった。
「やっと最期まで弾けるようになりました」
演奏が終わったとき、にっこり微笑んだ。
ちょうど父親の田舎へ行ったばかり、とオリジナルの"孝と北魚沼の旅情"を選んだ。
イントロの叙情的でスケール大きな世界観から、テーマでぐっとグルーヴィさを増す。
のめりこんで唸りが高まり、テーマとアドリブを行き来し変奏がソロと混淆する。明田川独特のアプローチをたっぷり聴けた。
気分を変えて、と新曲の"吉野ブルーズ"を。今月のスケジュール表に手書きコメントで言及されてる曲。歌詞(?)ありで吉野弘志(b)に捧げられた。「吉野大きい」と連呼する。
人間の大きさがテーマだとか。「山崎小さい」と続いて、山崎弘一(b)からクレーム。
「俺は人間が小さいのか?せめて"はやい"にして欲しい」
どんな曲かと思っていたが、アップテンポのブルーズが粘っこく始まった。アヴァンギャルドなクラスター風フレーズを、キラキラと右手で表現。
歌詞はつぶやきでのっぺりと同音。ラップとも違う。耳元でぼそっとマントラをささやくようだ。明田川流のユーモア・ソング。
ワンコーラス終わったとたん、強引に終了。休憩を宣言した。30分くらい演奏していた。
5分くらい後の後半は、中くらいの白いオカリーナのイントロから。いくぶんテンポを速めで、探るようにフレーズが展開する。くるくると旋律は上下し、表情を変えていった。
そのままピアノ・ソロへ。スタンダードかな。スケール大きいロマンティックさが漂う。テーマがするするとアドリブへ変容した。
"ゴージャスな響きのするスタンダードは、コード進行にどう特徴あるんだろう"と、埒も無いことを考えながら聴いていた。
「"アイ・シュッド・ケア"でした」
終わったあとで、明田川が曲紹介する。最近はあまり月例ライブで聴いたことない気がする。
ピアノへ指を落とし、中国風の煌びやかなリフを。テーマは暖かい前のめり。
聴いたことがあるけれど、曲名を思い出せず。ごくたまにイントロの"中国風リフ"を混ぜながら、ソロがどんどん進行した。
足がときおりリズミカルに床を鳴らす。さほどペダルを使わなかった。
「・・・中国ギョーザ」
最期に一言、つぶやいて終わり。タイトルは紹介しなかったと思う。
白いオカリーナをいったん構えたが、いったん置いてピアノの譜面台を持った。横に立てかけてあったもの。ピアノへ据付け、仕切りなおしで演奏が始まる。
ぐっと身を乗り出し、ピアノの内部奏法で、ざらりとピアノ線をはじいた。
曲はオリジナルの"わっぺ"。これも力がこもっていた。
穏やかなテーマのムードを活かしつつ、ときおりテンポは早めに傾く。
時間をかけてアドリブを展開した。
白い中ぐらいのオカリーナをもう一度持った。めまぐるしくフレーズが上下する。
硬質でクラシックの香りを漂わす。以前に聴いたことあったかな。あまり記憶に無い。
テーマとアドリブが螺旋のように舞い、するすると加速。
あっけなく、終わった。
虚をつかれ戸惑ってると、明田川はにっこり微笑んで曲紹介。オカリーナ奏者の小山京子と夫(名前を聴き取り損ねた)がおしどり夫妻、ってタイトルだそう。
最期の曲はタイトルを言わず。熱っぽくピアノへ向かった。アタックが強まり、硬くまとまったテンションが進行する。きれいなメロディを保ったまま。
センチメンタルさも豊富にあったと思う。曲名は思い出せず。
テーマを終盤でリフレイン。幾度も。フレーズの末尾を強引にぶった切り、明田川はコーダへ向かった。
間をおかず、そのままメドレーで別の曲に。"ブラックホール・ダンシング"だ。
クラスター風の強いタッチの間から、テーマが顔を覗かせる。
メロディはちょっと弾いただけ。すぐさま乱打へ。両手を翼のごとく広げ、最高音と最低音に叩き落す。身体を大きくのけぞらせながら。
幾度も音が鈍く着地。下から上まで、猛スピードで鍵盤を弾きまくる。
さらにクラスター。ひじは使わず、こぶしを中心に。クラスターと激しい鍵盤乱れ弾きの合間に、かかと落しが炸裂。
最期にもう一度、かかと落しを鍵盤にぶつけて立ち上がった。
ほんの少し、あっけなさを残した幕切れ。後半セットは1時間くらいか。
レパートリーのバラエティさとメリハリをつけた曲順によるライブだった。さまざまな場面が現れ聴けてよかった。