LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2006/11/11 渋谷la mama
出演:John
Zorn's cobra 東京作戦
オータム部隊
(磯田収;ギター、川越道子;SYNTAL、さがゆき;vo、坂本弘道:vc、
清水一登:b-cl,p、ナスノミツル:b、林正樹:p、松江潤;g、れいち:ds,vo、
柳家小春:粋曲,三味線、山川冬樹;ホーメイ,etc.、Yuko
Nexus6:長唄,三味線
巻上公一:プロンプター)
今年の4月ぶりなコブラ。天気が悪かったせいか、立ち見がちらほら程度な動員の、ゆったりな客席だ。観客で松葉杖姿の植村昌弘も見かけた。
ちょっと押してメンバーがステージへ。巻上公一が両手を広げて、サインを促した。
ゲームが始まる。前後半とも3〜4ゲーム。どれも長尺だった。何人かは混乱が見られたが、ほとんどのメンバーはルールが入ってる。メモリーを頻繁に使い、デュオやクロスフェイドも多用。ソロではなくアレンジに軸足を置いた、構成へ意識を進めたコブラだった。
頻繁なサインでゲームを引っ張ったのは坂本弘道、ナスノミツル、さがゆき、磯田収、山川冬樹あたりか。もっと前へ出ると思ってた清水一登やれいちがおとなしめ。
Yuko
Nexus6もさりげないサインや独特のパフォーマンスで面白かった。川越道子はノート・パソコンでボイスを加工してたようす。操作にてこずってたみたい。柳家小春は前半ゲームでは一歩引いた格好。後半でシステムになじんだようだ。
松江潤はコブラをひっぱろうとがんばるが、ちょっと歯車がかみ合わない。2ゲーム目あたりでゲリラになり、大真面目にガラガラを振ってる姿に爆笑した。
そして林正樹は満面の笑顔で、コブラを楽しんでいた。
音像は1ゲーム目から聴き所たんまり。ナスノとれいち、磯田ががっぷり組んで、重たいロックンロールが提示された。すかさず坂本がゲリラとなり、鋭くチェロを叫ばす。
後半セットはユーモラスなシーンが多かった。2ゲーム目あたりでゲリラが乱立、フレーズごとに暴れ倒す瞬間がスリリング。
構成としては、アンコール一曲をやって終わり。細かい部分まで覚えてなく、前回同様に出演者別で感想を書いてみます。
さがゆき:数種類の笛を用意したが、基本はボイス。まくし立てるスピーディな即興で音楽を引き締めた。
2セットめだったか、山川とデュオを取る。最初はれいちとナスノのリズムをまねるサインで、ボイパでデュオ。さっそくメモリーされ、にこやかに繰り返した。
圧巻は後半セットのゲリラ乱立にて。次々絶叫して場をさらった。
Kokopelliなシーンはあまり無し。後半だったか、林とほのぼのな即興を弾いた。
もっとも上手に立ち、カードが見づらそう。しょっちゅう覗きこむ。
ゲリラはニット帽の上から、強引にかぶるさまがキュートだった。
バラエティに富んだボイスを続けたのがさすが。後半セットでシャウトするさまに、ついボンフルを思い出してしまった。
林正樹:すっごく楽しそうにコブラを演奏してた。ピアニカも持ち込む。
後半セットではあるメモリーが提示されると、すかさずゲリラに立候補。ぽろぽろと鍵盤を鳴らした。
サインもいくつかは飛ばしたが、むしろゲリラでの活躍が印象深い。さがや清水、ナスノあたりと組むケースが多い。清水と並んで連弾の場面も。
持ち味のメロディ・メイカーぶりは、単発フレーズの続くコブラではさほど演出されなかった。
清水一登:ほぼ、バスクラを演奏。いまいち聴こえづらい。前半ではほとんど目立たず、後半で存在感を出した。
サインもほとんど出さなかったような気がする。おっとりと林とピアノを弾くさまが記憶にある。
Yuko
Nexus6:茶髪で三味線を弾いてたのが、たぶん彼女。ぼくの聴いてた位置だと、ちょっと陰になって見づらく、印象に残りづらい。
パワフルなボーカルも、節々で聴かせた。後半は野太く童謡も挿入する。
柳家と組んだ純邦楽なシーンも期待したが、あまりなかった。とはいえ今夜のコブラはデュオが多く、さまざまな組合せの演奏を聴けた。
松江潤:今夜初めて聴いて、詳細経歴は不明。ちょっとうつむき加減にエレキギターを弾く。ロックよりのギタリスト、かな?
1set2ゲーム目で唐突にゲリラ立候補のシーンが忘れられない。
演奏を続けさせたまま、無言で光る銃のおもちゃを手に取る。しばらく鳴らしたままで、次にギターのピックアップへ押し付けた。電子音を引き出そうとしたようだが、あまり聴こえず残念。
とにかく無言のアピールがインパクトあり。そのまま自ら斬首した。
坂本弘道:鋭い目つきで音楽を見渡し、積極的に演奏を引っ張った。凄みのあるスタンスが強烈だ。頻繁にゲリラとなるが、自らのソロへとどまらない。何人かを抜き出して新たなアレンジに膨らます。音もでかいだけに、最も目立っていた。
前述のとおり、冒頭からチェロを鋭く弾く。その後は弓をほとんど使わず、ボディを棒で叩く場面が多い。後半ではミュージック・ソウも弓弾きした。のこぎりをわしづかみにし、そのままチェロのボディを挽き始めて、観客からどよめきが。
エンドピンへシンバルをはさみ、ぎこぎこ軋ませては床に叩きつける。
もちろんグラインダーも登場。各セット1回づつにとどめる節度を見せた。
それぞれ2ゲームあたりで登場。ゲリラで披露する。
床からグラインダーをつかみ、胴をうならす。エンドピンに火花を散らせると、ぷうんと鉄くさい匂いが客席へ漂った。
2set目でおもむろにグラインダーを取り出すと、横にいた松江やYukoが雪崩をうって逃げる。一方で横のれいちは涼しい顔で大笑いしてた。
れいち:ドラムがメインだが、ボイスも多用。ちょっとひねったエイト・ビートを様々に叩いた。リズムがあいまいになりがちなコブラにおいて、明確なビートを刻んでサウンドを引き締める。
ナスノと組んで土台となる場面やメモリー作りへ、大いに寄与した。七色の声色も場面によって使い分ける。サインは送るも、一歩引いた感あり。積極的な全体のアレンジよりも、音を出すことに軸足を置いたか。
なお磯田がギターを弾きまくるさまにあきれたか、さりげなくスパイで斬首するシーンもあり。磯田は気づかず両手を挙げてみせる。もっともただでさえ今夜はゲリラが片端から交代したため、さほど目立ったシーンにならなかった。
ナスノミツル:今夜の殊勲賞のひとり。後半でゲリラのヘアバンドを鼻へ頬被りのように当てて、おかしかった。
れいちや磯田と組み、つぎつぎとリズムをがっしり支えた。ペダルを使ってノイジーなロングトーンのみを聴かす場面も。
自らのゲリラでは林とれいちを従え、幾度もハンドキューで鋭くバンプさせる。全体像を構築しつつ、カウンターの音楽を挿入した。
瞬発力が素晴らしく、どんな場面でも平然と対応していた。
磯田収:エレキギターでの即興よりも、幾度か弾いたカバー曲で記憶に残る。
前半はニック・ロウ"Cruel to be
kind"、後半はビートルズの"Blackbird"を一節。さらに"Here comes the
sun"を弾く。アンコールセットだったか、最終ゲームだったかでは、ボウイの"Ziggy Stardust"も。ほかにも数曲弾いてたが、曲名を思い出せず。
"Cruel〜"や"Here
comes〜"はメモリーされ、コミカルに呼び出される。
山川あたりがボリュームをあげさせ、爽やかに熱唱していた。コブラにはなじんでいた様子。
川越道子:パワーマックでの参加。サンプリング・ボイスを変調させる。最初は山川の声をサンプリングと思ったが、違うみたい。出音の音質やピッチをリアルタイムで操作できるようだ。見てたらキーボードをせわしなく操っていた。
画面から手が放せないのか、サインの見落としも幾度か。さらに演奏を受け渡す奏者の指定も、思うに任せぬようす。
ゲリラやデュオで抜き出されたときに、彼女の音が目立ってくる。全体のアンサンブルでは、数歩引いた格好だった。
柳家小春:和服姿で三味線や民族楽器(名前不明)を弾く。コブラのルールはいまいちあやふやそうで、後半セットのメモリーではパターンを間違えたか、巻上につっこまれる。 サインはほとんど出さないが、ゲリラやデュオの指名では即興を巧みに弾く。
あまり目立たなかったのが残念。かなり面白そうな音を出していた。
山川冬樹:ホーメイのほかに、民族楽器(馬頭琴?)を弾く。途中からは即興ボイスを多用して、コブラを楽しんでいた。
1st
setで喉声(?)を歌った。マイクを喉へ押し付けて音を拾う。たまたまこれがメモリーされ、再現のカードが出ると準備にてこずっていた。
サインを積極的に送るが、立ち位置的に見づらいのか巻上へ気づかれないこと多し。
アンコールセットではマイクを引っつかんで豪快に吼えまくる。まるでマゾンナのようだった。
巻上公一:どっしりとロックンロール・ビートが提示されると、楽しそうに体を揺らすさまが、見ていてかっこいい。いくどかゲームが停滞すると、すかさずサインで切り替えていた。
2set目のゲームで、さががゲリラで活躍してたとき。いったん誰かが立候補するが、一音だけですかさず斬首。すぐさまさがへゲリラを戻す潔さだった。
ゲリラ乱立が激しくなると、指をシャープに動かして迷彩帽とあわせて斬首とゲリラ成立を整理する。
カードを鋭く切り落とすさまは、今回もたっぷり見られた。
今回のメンバーを選んだのは巻上かな。共通項の見えづらいメンバーを揃えたことがいい方向に働いた。締めるところは決めた上で奔放に展開する、バラエティ豊かな方向性のコブラとなった。
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