LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/4/29  吉祥寺 サムタイム

出演:サキソフォビア
(井上"JUJU"博之:bs,fl、岡淳:ts,篠笛、緑川英徳:as、竹内直:ts,bcl)

 
 20時をまわった頃、店の入り口からステージのスペースへ、サキソフォビアは一列縦隊で吹きながら登場した。そのままライブが始まる。
 最初はスティービー・ワンダーの"Living for the city"だ。

 サキソフォビアのライブは初めて聴く。CDではカッチリした音使いが、ライブでどうなるかと思ってた。
 サムタイムでは定期的に演奏してるみたい。熱心なファンで、店はいっぱいになった。
 ステージはグランド・ピアノへ一列に相対し、二階や地下席を向く態勢。店員がひっきりなしに通るため、もっとも通路側に立った竹内は演奏しづらそう。途中で全員が、ちょっと中へ位置をずらしてた。

 "Living for the city"はシャープなアレンジで駆け抜けた。テクニカルなアンサンブルが小気味良い。ただPAの音がちょっとぼくの好みと違う。低音成分とリバーブを増やしてほしかった。
 バリサクのタンギングがアタック音強く、肉薄に聞こえてしまう。リードにもよるけどバリサクは、どうもか細く聴こえてしまうので・・・太い音で聴きたい。竹内のテナーも高音成分がきつい。
 PAの音色だけだで言うと、緑川英徳のアルトがもっとも好み。甘く太く鳴った。岡淳のテナーも音質がまずまず。

 ほのぼのした短いMCをはさむ、オリジナル曲中心のステージ構成。"Blindman in brightness"や"Gotenyama"などをやったと思う。
 アヴァンギャルドな斬りあいは志向しない。あくまでサックスのアンサンブルを緻密に敷き、ソロをたんまり乗せる。
 したがって竹内がフラジオを少々ぎゃんぎゃんに響かせると、観客から歓声が上がった。

 緑川のかますアルトのソロが素敵。メロディアスで、ダンディに響く。
 彼のサックス、別のライブでも聴きたくなった。

 サキソフォビアの使う楽器は、サックスだけじゃない。岡は篠笛、竹内がバスクラと持ち替えもあり。
 アレンジが上手くて飽きない。さらに持ち替えで曲想に幅を出した。

 中盤にコルトレーン"ネイマ"のカバーを挟み、前半は6曲くらい。1時間のセットのわりに、さくさく進んだ。
 最後はオリジナルで"パンチパーマちりちり"。
 岡がテーマを吹いては、「ちりちり」とささやく。

 本人からメンバーへ、メンバーから客席へ。手拍子を打たせ、幾度も「ちりちり」と歌わせるフレンドリーでコミカルな展開だった。
 最後はびしっと決め、また吹きながら入り口方面へ去っていく。これが彼らの基本スタイルかな。

 後半セットも同様の幕開け。もちろん曲は違う。カバー曲をやったが、タイトル忘れちゃった。すまん。
 やはり今度もオリジナル中心。エリントンの"ジャスト・スクイーズ・ミー"を竹内のアレンジで奏でた。がっしりと力強いサックス4本の響きが抜群で、めっちゃ気持ちよかった。
 
 やはり5曲ほど披露し、後半セットが幕を下ろす。熱心なファンが温かい拍手をいれる、ほのぼのしたステージだった。
 いったん彼らが去ったのは23時を軽くまわったころ。この店って、2ndセット形態でも、こんな遅くまでライブやってるんだ。
 
 アンコールの拍手にも、キッチリ応える。曲はスティーヴィー・ワンダーの"I wish"。サキソフォビアのCDより、もっとすごい。
 テンポを思いっきり上げ、爽快に疾走した。アンサンブルがびしりと決まる、痛快な炸裂っぷり。

 中盤で幾人かが同時ソロを吹き、なおかつ弛緩しないアレンジと演奏テクニックに舌を巻いた。
 知ってる曲なだけに、サキソフォビアの実力がひしひし伝わる。

 大きな拍手の中、サキソフォビアは吹きながらステージを去ってゆく。この会場だと、上がっていく、のほうが形容は正しいが。

 ゆったり座り、きちんとした音響で聴いてみたい。志向はファンクネスや前衛要素じゃ無い。
 あくまで観客へ親しみをこめつつ、アンサンブルはきっちり決める。もうちょい聴きこまないと、彼らの魅力へきちんと到達できていないかもしれない。CDとは違う一面に触れたライブだった。

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