LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/4/13  丸の内 The Cotton Club

出演:The Funk Brothers
 (Jack Ashford(per),Joe Hunter(org),Larry Johnson(vo),Gregory Wright(key,MD),Valencia Robinson(vo),VickieAnn Loveland(vo),Carmelo Scaffidi-Argentina(tp),Louis Van Taylor(sax),Tom Ralls(tb), Elmer Harrison Jr.(key,back vo),Angelo Earl(g),Ronald Rathers(g,back vo),Tony Newton(b),Noah King(ds))

 60〜70年代初頭、モータウン全盛期のバックバンドを"Funk Brothers"と総称し、映画公開後にライブをやってるようだ。今回はジャック・アシュフォード(per)とジョー・ハンター(org)をフィーチュアし、ボーカルだけでも三人編成の大所帯で来日した。
 丸の内にできた新しいライブ・クラブ、コットンクラブで入れ替え制の6days、2セット構成。平日の2ndセットへ行ったが、様々なタイプの客で盛況だった。

 21時半を10分ほど押し、まずバックバンドが現れる。威勢のいいリフが始まった。ボーカルのラリー・ジョンソンがあおる。おもむろに、ジャック・アシュフォードとジョー・ハンターが登場。
 かなりジョーはよぼよぼ。おぼつかない足取りでオルガンの前に座って弾く。ずっとそのまま演奏を続けてたようだが、実際はほとんど、なにを弾いてるのか聴こえなかった・・・。

 どうもこの店、PAのバランスがいまいち。
 ボーカルばかりを前に出し、アンサンブルは団子で聴かせる。それはそれで一つのセンスだが、ぼくは個々の楽器がクリアなほうが好みなんだよなあ。

 冒頭ではジャックもよろよろと、演奏にあわせてタンバリンを軽く叩くのみ。彼のタンバリンがアンサンブルの構成要素になってない。

 だいじょぶかな。単なる懐メロショーにならないだろうな、と心配になった。
 正直、ジャックとジョーの二人だけでファンク・ブラザーズを名乗られるのは違和感ある。確かに往年のモータウンのバック・バンドではあるが、コアメンバーがぜんぜんいないもの。他界してるから仕方ないが。

 2曲目はスティーヴィー・ワンダーの"Signed, Sealed, Delivered (I'm Yours)"。威勢良くリフを決めるが、PAバランスでボーカルばかり前へでる。
 ホーン隊は弱く、サックスが若干か細く聴こえるくらい。トロンボーンとペットはさっぱりだった。
 ベースのトニー・ニュートンは格好こそリック・ジェームスそっくりで派手ながら、いまいち演奏が弱い。ジェームス・ジェマーソンほどとは言わないが、もすこしベースがグルーヴィに動いてほしかった。それこそ、モータウン・サウンドのキモなんだから。

 もっと言えば、ドラムも一人だけ。2ドラムでやって欲しかったな。しかもこのドラム、リズム感がいまいちトロい・・・。ギターは二人いるが、音が聴こえづらい。上手奥に座ったエルマー・ハリソン・Jr(key,back vo)に至っては、仏頂面でキーボードの前へ腰掛けてるのみ。声も聴こえないし、キーボードもどのていど演奏に寄与してるのやら。

 演奏を仕切ってるのはグレゴリー・ライト(key)。コーダのキメや曲のタイミングを指示する。ほぼオリジナルに忠実なアレンジで、トリッキーな展開は無し。率直に言うと、あんまり演奏が上手いとは思わなかった。
 
<セットリスト>
1.Get Ready
2.Signed, Sealed, Delivered (I'm Yours)
3.(Love is like a)heat wave
4.I heard it through the grapevine
5.You Can't Hurry Love
6.My girl
7.What Becomes Of The Brokenhearted
8.Ain't No Mountain High Enough 
9.Ain't Nothing Like The Real Thing
10.What's going on
11. ?
12.(I Know) I'm Losing You
(アンコール)
13.Shotgun

 見ての通り、ヒット曲のオンパレード。曲ごとに女性コーラスにメインを歌わせて、目先を変える演出はさすが。司会役のラリー・ジョンソンは、積極的に客席を歩き回り、目の前の観客をいじる。ショーの盛り上げに余念がなかった。MCは普通のスピードで話されたため、ぼくにとっては喋る速度早すぎ。何言ってるか、ほとんど分からず。ちぇ。

 "Heat wave"で明るく盛り上げ、"I heard it through the grapevine"で畳み込む。
 面白かったのはジャックが次第に元気が出たこと。曲によってはヴィブラフォンを叩く。基本はタンバリン。マイクでキッチリ拾わず、特にタンバリンがアレンジの中心で鳴ったりしない。しかしジャック自身はどんどんテンションが高まるの、よくわかった。

 シンプルなベース・リフが淡々と続く、シュープリームズの"You Can't Hurry Love"で盛り上げる
 続くテンプスの"My girl"では観客を幾人も、ラリーがステージへ引っぱった。誰でもこの曲は知ってるよね、と紹介する。ベースのリフが流れ、観客から大きな声援が飛んだ。

 次第に耳が彼らのノリへ慣れていく。"What Becomes Of The Brokenhearted"あたりから、音につやが出てきた。
 そしてマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの曲を2連発、ラリーとヴァレンシア・ロビンソンのデュオで聴かせる。
 ちょっと喉を絞り気味に歌うヴァレンシアの節回しがタミーを髣髴とさせ、しみじみ良かった。二人のハモり具合も心地よくって。
 ベースも次第に音数が多くなってゆく。

 MCはラリーや他のボーカルたちの掛け合いで進めていたが、ついにここでジャックがステージ前へ出てきた。ひとしきり語る。「ワシたちは70年初頭にこの曲を録音したんだ」、云々と。思い入れたっぷりに曲紹介をする。
 "What's going on"を。

 この曲は流れるようなベース・ラインが聴きものだし、いっそ完コピでもいいから、ベースには頑張ってほしかった。それこそがジェームズへのオマージュってものじゃなかろうか。若干は音を揺らせていたが。
 
 度肝を抜かれたのは、このあと。なんとジャックが前へ出てきて、ブルージーに歌いだした。これが味あるんだ。
 もう70歳以上だろ。しかも彼は歌手でもなんでもないんだぜ。背筋をピッと伸ばし、ラリーと腰を振ってダンスまで。あまりの現役ぶりにやられた。曲名が分からなかったが、なんてタイトルだろう。

 メイン・ステージ最後は賑やかにテンプスの"(I Know) I'm Losing You"を。ギターやベースのソロも挿入し、ガンガン盛り上げる。
 観客も立ち上がる。音楽にあわせ身体を揺らす人が多くなった。
 ラリーが声を張り上げ、ファンク・ブラザーズを紹介。まず座布団片手にジョーがステージから、よたよた去る。さらにジャックもステージを降りた。
 腕をふってコーダへ。最後はキッチリまとめるところが立派。

 客電が消えたままで、観客からアンコールの拍手が続く。
 素早く全員がステージへ戻り、Jr.ウォーカー&オールスターズの"Shotgun"を。最後にこれをもってくるか。 
 ギターが音を歪ませて、ぎゅいんぎゅいん弾きまくった。

 この顔ぶれでファンク・ブラザーズって言えるのかは、やはり違和感残る。とはいえショーを盛り上げるすべは手馴れたもの。しかも曲はヒット曲ばかりで、シンプルに耳へ届く。楽しかったよ。
 フォー・トップスの曲をやらなかったのが心残り。
 とにかく観客を楽しませるサービス精神にがっちりつまれた一夜だった。

目次に戻る

表紙に戻る