LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/02/25  新宿Pit-Inn

出演:内橋+外山
 (内橋和久;g、外山明:ds)

 夜に同じ場所でアルタード・ステーツのライブを控え、昼の部に外山とのデュオが行われた。このデュオは聴くの初めて。

 外山がここでのデュオで採用するセッティングで、中央にステージのスペースを作る。向かい合って演奏する形。
 深い胴のバスドラな、1タムのシンプルなセット。ハイハットの横へ太い枝の中をえぐって音程を作る、木製パーカッションを置いた。
 内橋はギターを一本のみ。前のテーブルにエフェクタを置き、足元にもずらりとペダル類が並べた。横の机へはCDを積み、その横にCD−Rリーダーのような機材が。あれはなんだろう。ドローンのような音を出すのに使ってたようす。スピーカーは内橋の後ろに1台、モニター代わりか、外山の後ろに一台。ステレオ効果を出していた。

 数個のライトが二人をうっすら照らす。ステージが赤く染まった。

 カウンターでくつろいでた二人は、「そろそろやろうか」と声をかけて、ステージへ向かう。
 外山は手首を動かさず、ひじで静かにスネアを叩いた。ギターを構えた内橋が単音を矢継ぎ早に出し、せわしなくテーブルの機材スイッチを切り替える。しばらくたつと、ミニマルなループが流れた。

 特に決まりごとはなさそう。構築性を意識した内橋のペースで即興を重ねた。最初は探るように、外山が静かなドラミング。やがて複雑なビートに変わる。
 激しく突っ込まず、内橋の単音を連ねたソロが断片で流れた。音がやむ。
 外山はタムを叩いてたスティックを持ち上げ、空を叩いた。そしてエンディングへ。あっけなく、最初の曲は終わった。

 前半は4〜5曲、5分から10分程度の即興を演奏。2曲目で外山は手首を固定、ひじで左右同時に叩く。これも内橋が暴れず、すぐに終わった。
 盛り上がったのは次から。外山の自由なドラミングを補完するように、内橋のループがくっきりとビートを作る。
 外山は着かず離れず、テンポをあわせてランダムなビートで突っ込んだ。アクセントの位置がころころ変わる、変拍子めいたグルーヴが楽しい。
 
 内橋はメロディアスに切り替え、弾きまくった。しかしフレーズの途中でブレイクを次々入れ、垂れ流しには陥らず。
 朦朧としながら聴いてました。
 ループが基礎を持ち、くきくきひねるギターとドラムのアンサンブルが刺激たっぷり。

 後半の数曲は比較的長め。外山は前後半で、いちども立ち上がらず
 弦を弾くだけでなく、ボディやネックを叩いてギターを弾く内橋。後半2曲目か3曲目では、冒頭で糸巻き部分と弦の根元を両手でひっかき、パーカッシブなアプローチも。
 
 前半は約45分。曲によってはエンディングがびしりと決まって小気味良い。合図を送りあわず、内橋も外山もうつむいたまま没頭した。
 ハイハット横のパーカッションを叩いたのは4曲目辺りから。
 小刻みに手首を動かし、叩く位置を変えて音程を作った。
 
 2ndセットはさらにバリエーションに富んだ即興を、やはり4〜5曲。ビーターが立て続けに踏まれた。ペダルの上で、足を前後に滑らせる。
 バスドラが前へ泳ぎ、演奏中いくども外山はバスドラをぐいっと引き寄せた。

 最初の曲では、最後に外山がシンバルを一打ち。ミュートせず、ずっと響かせる。
 余韻を聴いてたら、かまわずに内橋が「ありがとうございます」と、挨拶。拍手を誘った。

 後半ではアンサンブルの特異さが目立つ。外山は次第に視線を内橋に投げ、噛み合おうとしてるみたい。ところが内橋はどこふく風。マイペースで即興を重ねる。
 外山自身もランダムなビートを刻むので、それぞれ単独で成立しそう。しかし互いの演奏が重なり、独特のアンサンブルが生まれた。
 
 外山がきっかけを出す曲も。4ビートっぽいハイハット・ワークのあと、スティック同士でカウント。そしてハイハット・ワークへ。幾度もそれを繰り返す。スティックのリズムと、直後のビートがテンポずらしてメリハリをつけた。
 けれども内橋はまったく追わず、自分の音を深める。
 馴れ合いの即興をあえて避け、つねにバランスを考えていたようだ。
 リズミカルになった瞬間、ギターがテンポを落として滑らかな場面へ切り替えたりも。

 終盤ではダイナミックなドラムのビートへギターが太い音で合わせ、ドラマティックな世界を作った。ギターを全く弾かず歪んだ音を伸ばし、エフェクターのつまみでピッチを変える。外山は存分に叩きのめした。

 ときには低音を強調したギターのフレーズ。シェイクハンドでせわしなくネックを上下する。豪腕なアドリブが聴きものだった。
 別の場面ではタッピング主体に。ボディやネックをひたすら叩き、ネックの上を指が踊ってかすかな響きの細かなメロディを紡いだ。
 
 途切れ途切れのビートが不意にやみ、エンディングへ。外山と内橋が手をかざして、店の時計を確認する。
 もう一曲、と思いきや。もういいか、と目配せしあい、あっけなくステージが終わった。後半も45分くらい。

 アンコールの拍手に、二人はすぐにこたえた。内橋はストラップをまわさず、ひざに抱えた。すぐさま外山が叩く。
 リズムの断片の交錯する。ギターは控えめ。
 最後は外山が片手にスティック二本を持ち、シンバルを軽く叩く。短く曲が終わった。

 外山の複雑なアクセントのドラミングで、グルーヴィなパターンが産まれた。ギターのループとの絡みにコクが出る。
 内橋はメロディを廃したアプローチだったため、ときにもどかしさも残る。けれどもアンバランスこそが、このデュオの醍醐味なのかな。
 二人の上に、マイクが二本セッティングされていた。録音だろうか。手癖で流ぬ二人だけに、CD出るなら嬉しい。じっくり聴きたい。

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