LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/12/1  西荻窪 音や金時

出演:pere-furu
 (鬼怒無月:g、勝井祐二:e-vln)

 継続して活動してたが、ずっと見逃してた。たぶん2002年の5月ぶりにライブを聴く。20時をまわった頃、二人は無造作にステージへ上った。

 鬼怒はガットギターを二本と12弦を一本、すべてアコギで並べた。
 前はすべてエレキだったので、なんだか新鮮。最近のpere-furuは、アコギで通してるのかな。
 いっぽうの勝井は二種類の五弦エレクトリック・バイオリンを、曲によって持ちかえる。

<セットリスト>
1.即興#1
2.即興#2
(MC)
3.即興#3
4.即興#4
 <休憩>
5.即興#5
6.即興#6
(MC)
7.即興#7
<アンコール>
8.即興#8

 セットリストの意味ありませんが、雰囲気ということで。
 静かなアコギの爪弾きに、そっとディレイをかませたバイオリンが載る。
 のどかでキュートな世界が広がった。
 アコギの優しげな響きにのって、バイオリンが音符を愛撫する。
 ギターはリフを中心に弾く。ピックを咥えて、3フィンガー風に弦をはじいた。
 冒頭の即興では6/8拍子だったギターのリズムは、いつのまにか4拍子に変わってた。

 MCはあんがい少なめ。思いつくまま喋り倒し、一転して複雑な演奏にうつる。あいかわらず、喋りと音楽のギャップが楽しい。
 
 「『バイオリン、勝井祐二』って紹介して、『ギター、鬼怒無月』って、言われるまでの間が嫌なんだよ」
 冒頭で鬼怒の話題は、"ライブで共演者を、どう紹介していいか迷う"だった。
 こう、前半MCで前ふりしたのに。
 「バイオリン、勝井祐二」
 後半セットの頭で紹介するも、勝井は俯きチューニングを続ける。
 なんとも居心地悪そうな表情の鬼怒に、笑いが飛んだ。

 今夜は二人とも、座ったままで演奏。
 全般を通して鬼怒は演奏を抑え目か。勝井にリードを積極的に与え、バッキングにまわる場合が多かった。
 曲によっては勝井が鬼怒を眺め、ソロを促す光景も。ところが鬼怒は俯いたまま。かまわず静かに弾いていた。

 どの曲でもテンポはほぼ一定。ダイナミクスの振り幅もさほどない。
 ところが全ての曲で、バラエティに富む展開だった。

 勝井はフレーズをいったん掴み、くるくると発展させる。
 メロディを奔放に弾き倒すより、旋律を変貌させた。。
 ショート・ディレイで木霊をせわしなく揺らがせる。次の曲ではエフェクターをほとんど落とし、生っぽい響きでメロディを弾く。
 さまざなアプローチを曲ごとで弾き分けた。

 二人とも終始穏やかなプレイ。汗が滲むテンションでなく、ふくよかな音世界を追求した。音の感触がとにかく聴いてて心地よい。

 鬼怒が積極的にリフやストロークで攻めたため、曲の輪郭はくっきりした。
 そこへ勝井のダイナミックが小節線をまたぐ旋律が応え、より刺激が増す。

 むろん鬼怒もソロを取った。そのたび、しごく滑らかに主導権が変わる。
 ピックと指弾きの比率は半々くらい。
 さりげなくギターを弾くが、トリッキーな奏法を次々披露した。
 倍音を巧みに使ったフレーズや、柔らかく弦を押さえてこもった響きを強調する。
 低音を開放弦で弾きながら、高音でメロディを素早く駆け抜ける技が圧巻だった。

 とりわけ印象に残ったのが、後半(7)での長い即興。10〜15分程度の曲が基本だったが、これだけ30分くらい続いた。
 鬼怒は最初、ガット・ギターで弾く。やはりリフを引くケースが多い。

 しかし特殊奏法も飛び出す。右手で弦を爪弾きながら、ハンマリングのみでフレーズを作り、弾きながら糸巻きを緩めてチューニングを変えたり。
 滑らかな音楽世界の奥で、多彩な響きを聴かせた。

 いったん、演奏が着地しかける。
 終わるのかな・・・。鬼怒はギターを構えたまま、音を出さない。
 勝井が屈みこむ。
 そして短いパルスを次々引き出した。ディレイかな。断片の単音をリズム・ボックス風に操る。幾度も足元のスイッチを切り替え、テンポを変えた。
 鬼怒は勝井をちらりと眺め、改めて12弦を手に取った。
 そして、思いきり長いギター・ソロ。ここぞとばかりに、素早く指がネックの上を踊った。

 他の曲の即興でも、聴き所は多い。コケティッシュに、そしてのどかに。前半の即興は、穏やかな世界が中心か。
 しかし(3)で12弦に持ち替えた鬼怒は、強いストロークを中盤で弾き続ける。勝井はその上で存分に弓を走らせた。

 サイケな展開を見せたのは(5)。一転して(6)ではスワンプでずぶずぶ進む。
 スライド・ギターをたんまり弾いたのは(4)だった。弾いてる途中でボトル・ネックを足元へ落とし、こつんと音が床で響く。

 エンディングは興の向くまま、互いの音を聴きながら着地する。
 あれは(5)だったかな・・・次第にフレーズが収斂し、ユニゾンとなってコーダへ。みごとなシメだった。

 アンコールにはすぐさま応え、二人は舞台へ戻る。
「演奏への拍手だけじゃないよね。アンコールって意味だよね?」
 真顔で二人が喋るのが面白かった。そのまましばし、二人の歓談へ。

「鬼怒くんはとにかく、アンコールで出るの早い。ぼくが知ってる中で、ベスト3に入るね」
「ほかの二人ってだれさ」
 すかさず突っ込む鬼怒。勝井は俯いてしばし考える。
「・・・ベスト1だね」

 アンコールでも、鬼怒はボトルネックを使用。しばし弾いたあと、ポケットに入れようとする。
 ところが収まり悪かったらしい。床を見たり、ポケットを再度探ったり。弾きながら場所を探す。結局は腿の上において、演奏を続けた。
 
 アンコールだけでも二人は10分以上弾いていた。肩の力を抜きつつ、充実した演奏がいっぱい。寛いだ即興演奏を堪能した夜だった。

 手癖で弾き流さず、構成や展開を念頭に置いた。かっちりした即興だった。
 二人が朦朧と探りあい、音を探し、やがてきっちりしたビートとリフに収斂していく。
 鬼怒がきっちりリフの提示で勝井のソロが生き、勝井が音を休ませるとギターの音が踊る。
 そしてバイオリンは果てしなくフレーズが展開するさまと、リズム感がとびきりだった。あえてギターのテンポに同調せず、ポリリズミックに旋律をかぶせる。テンションをあえて押さえ、リラックスした演奏が光った。

 自由に演奏してるのに破綻しない。
 この二人だけで強靭に構築できる、抜群のアンサンブルだった。

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