LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/10/15   深沢渓 あきる野芸術祭@自然人村キャンプ場

出演:渋さ知らズ
 (片山広明:ts,小森慶子:ss,立花秀輝:as,川口義之:as,harm,鬼頭哲:bs
    北陽一郎:tp.高岡大祐:tuba,大塚寛之:g,中島さちこ:key:関根真理:per
    磯部潤/倉持整:ds,渡部真一:vo,ペロ/東洋/ちえ/シモ/スギゴチ/紅:舞踏
  ダンドリスト:不破大輔)

 本イベントに渋さが毎年出てたのは知ってたけど、行きそびれてた。
 欧州ツアー開けの渋さオケは初めてだから、わくわくして電車乗り継ぎ会場へ行く。
 思ったより会場は狭く、あっというまに一回り。天然鮎の塩焼き(?)が売り切れ、食べ損ねたのが悔しいなー。

 ステージもこじんまり。それにあわせて、渋さオケの編成も少なめだ。
 メンバー表は地底新聞から。ヒゴヒロシもクレジットされてたが欠席。ベースレスで行われた。

 この日は渋さの開演寸前から雨がぽつぽつ。次第に強くなり、ライブ中はどしゃぶりだった。
 スタッフは長い竹棒で、観客スペース頭上に貼られたビニールシートをつっつき雨を脇に寄せる。てんてこ舞いの忙しさだった。おつかれさまです。 
 
 演奏は30分ほど押し、18時半ごろにメンバーがステージへのった。
 ドラムのマイクチェックが終わったところで、全員がフリーに音を出す。
 関根真理がバスガイド風に「本日は小森慶子オーケストラへようこそ」とふざけ、小森慶子はにこやかに腕を降ってみせた。

 不破大輔が軽く指を降り、北陽一郎のソロ。
 管のマイク・チェックをかね、次々にメンバーを指名した。短くアドリブがまわされる。
 そのたびにモニター・バランスを細かく調整した。演奏と準備を同時に行うダレさせない進行に、ツアー慣れしたしぶとさを感じた。

 雨が気になるのか、不破はスタッフを呼んでひっきりなしに指示する。
 バッキングのコード進行は、いつのまにか"反町鬼郎"に変わってた。
 一通りソロ回しが終わると、不破のハンド・キューが飛ぶ。
 "反町鬼郎"の、セカンド・テーマに移った。

<セットリスト>
1.反町鬼郎
2.股旅
3.サリー
4.ライオン
5.Fishermans band(?)
6.ナーダム
7.飛行機
8.本田工務店のテーマ
9.仙頭
(アンコール)
10.テロの歌
11.諸行でムーチョ

 はっきり言って、キツい環境だった。
 足元は雨ですぐにぬかるみ、ぐちょぐちょ。ビニール・シートとスタッフ努力のおかげで、濡れ鼠にはならなかったが・・・。
 PAバランスもいまいちで、磯辺のドラムやパーカッション、鬼頭の音あたりはほとんど聞こえず。チューバもいまいち聞こえづらい。
 しかもステージ後半ではメインのスピーカーがノイズ出したあげくに一本落とされ、ハウリングもしばしば。ライティングも少なく、ステージ頭上の白熱灯数本と、客席後方からの心もとないスポットライト一本のみ。
 
 しかし、それでもライブは面白かった。
 どんな環境でもしたたかに盛り上げるステージングと、きめ細かなアレンジに心が躍る。もっといいPAで聴きたいな。

 不破のアレンジはぐっと細かくなってた。ハンドキューでソロとバッキングを次々指示し、ブレイクも効果的に挿入。
 メドレーで繋げ、ソロの後ろでカウンターのオブリを当てる。一曲を冗長に続けない。シーンチェンジで音が変わってゆく。音出しメンバーの人数増減も。
 したがってアンサンブルはどんどん複雑になり、とっても楽しい。曲によっては聴きなれないテーマが追加されていた。

 渡部真一がはっぴにふんどし姿で登場し、観客をあおる。
 "反町鬼郎"でまっさきに長尺のアドリブを取ったのは、片山広明だった。
 テナーを豪快に吹くと、さっそく客から歓声が飛ぶ。

 雨の中、真っ赤な傘に赤いドレス、赤いウイッグ。
 ペロがすっとステージ脇へ登場し、くるくるとダンスをはじめた。
 
 "反町鬼郎"のコーダから、切れ目無しに"股旅"へ。
 ソロは小森慶子かな。ソプラノサックスで、伸びやかなアドリブ。このあたりから、ソロの記憶はあいまいです。 

 ステージ横から一人、後方から二人。白塗りダンサーがぬっそり登場した。薄暗いステージ上で、ゆったりと体がくねった。

 客席上方のビニールシートにたまった雨が、ときおりどさっとステージや客席脇へおちる。
 すでに、地面はぬかるみ始めてた。
 濡れてしまったか、ペロはステージ中央へダンスを移した。
 不破と抱き合って、社交ダンス風に身体を揺らす。片山らから冷やかす声が飛んだ。

 そしてペロはステージ下手のドラム缶へ乗り、足を上げて観客を挑発する。
 うっすらスポットライトがあたり、観客が撮影するフラッシュがひっきりなしにまたたく。
 その薄暗さとときおりの輝きが、なんとも妖艶なムードをかもしだした。

 中島さちこがバッキング無しで、シンセのソロ。ジャズっぽさが思い切り希薄な、硬質の響きだった。
 いっぽう大塚寛之はワイルドなソロだが、音像にぴたりとはまる。雨の中、かなり大変そうだったが・・・。
 この日はVJも参加。しかし雨でかなり活動が限定されたのが残念だった。

 確か立花秀輝は磯部潤とデュオ状態でソロを取った。
 リズムにあおられてか、今日はメロディ少なめ。フラジオ多用の金属的なアドリブが多かった。

 川口義之がハーモニカの長いソロを取ったのは、"サリー"でだっけ?
 小ぶりのハーモニカをいくつも吹きわけ、ノーテンポの完全ソロでふくよかな空気を作った。
 ステージのサウンドが静まると、雨音が大きく響く。そのたびに、雨足の強さに気づいた。上手に置かれた机がダンススペース。東洋組が身体をくねらす。雨で濡れるのもかまわず、おどろに揺れた。

 一曲あたりで2〜3人がソロを取る格好か。
 どの曲か忘れたが、小森慶子と鬼頭哲のデュオ・アドリブもあったはず。
 バリサクがキーを提示し、上で軽やかにメロディが躍る。
 ぐっとテンポを落とす、きれいな風景だった。

 渋さ知らズのライブは、いろんなところをひっきりなしに見て楽しんでる。
 舞踏とソロとバッキングと不破の指示と。さまざまな同時進行が、渋さ知らズの醍醐味だから。
 あと、この日は雨まで気になって・・・注意力散漫になったのは否めない。悔しいなあ。

 今日のイベントそのものは無料だが、ライブは投げ銭制。
 曲の合間に渡部が説明し、曲のイントロが始まると、ペロが袋を持って客席を回った。
 なかには一万円を入れた観客もいるらしい。それは片山の額に貼り付けられ、仁王立ちでソロをふきまくった。

 ステージは緩急を効かせ、しっとりのあとはアップで押す。"ライオン"でひとしきりあおったあと、渡部がマイクを持った。"Fishermans band〜♪"と英詩で歌いだす。誰かのカバーかな?ブルージーなロックだった。
 舞台の真ん中で渡部が熱唱。舞台横で白塗り舞踏女性陣が、セミヌードで踊ってたのはこのあたり?
 コーダの決めも、渡部が不破に代わって指を振り下ろした。

 ステージは"ナーダム"で盛り上がり、観客もおおはしゃぎ。モッシュめいたダンスがステージ前で始まり、足元はぐしゃぐしゃ。
 このへんでもう、ステージ後方へ逃げ出した。するとPAの音が凄くしょぼくて・・・がっかり。ステージ前だけみたい、音に迫力あったのは。

 ステージ下手のドラム缶では、白塗りが踊る。頭に包帯をぐるぐる巻いた男も登場し、アカン簿の人形を振り回した。
 ふと見上げると、ステージの屋根にも白塗りが上ってる。
 ドラム缶の男と手を繋ぐように。屋根の上の女性は、ゆっくり手を差し伸べた。
 
 このあたりですでに時計は9時近い。そろそろ終わりかな、と思った頃。
 曲は"飛行機"へ。関根真理のきれいな声が、すうっと空間へ広がった。
 雨はまったくやむ気配なし。ビニールシートに雨が当たる音が大きくなった中、しっとりと関根の歌が響いた。
 ペロがそっと声を重ねていたようだ。渡部や不破もマイクに向かう。
 アドリブはなんと、渡部のソロ。片山からテナーを借り、フリーキーな響きを微かに搾り出した。

 そしてクライマックス。エレキギターのイントロが響いた。
 ホーン隊が立ち上がり、腕をぐるぐるまわす。
 東洋組はたいまつを手に手に、のっそり現れた。
 
 不破のハンドキューで、"本田工務店のテーマ"へ。
 ステージ前は、またしても盛大なモッシュになった。
 片山が思うさま、テナーサックスをブロウさせる。

 大団円のあと、一呼吸おいてアンコール代わりの"仙頭"へ。もうめしゃめしゃな状態だった。
 メンバー紹介をやったのはここだっけ?短くソロを取ったり、一礼だけですませたり。
 高岡はチューバを抱えて、ふにゃふにゃ歌いだす。多分そこから演奏へ繋げるつもりだったろう。ところが不破にあっさり下ろされ、苦笑してた。
 
 だいたい2時間くらいのライブかな。メンバーが数人、ステージから撤収した。
「渋さ知らズのライブは全て終わりました。・・・お帰りください」
 関根が再びバスガイド風に喋って笑わせる。

 ところが一部の観客から、拍手がやまない。
 とうとう不破が、アンコールに応えてくれた。
 メンバーがステージへ上がるまで不破が、渡部が、メンバーが"テロの歌"をアカペラで歌いだす。

 最後の曲は"諸行でムーチョ"。たぶん小森と関根が歌ったと思う。
 渡部は威勢良く掛け声を、サビで叩き込む。アンコールだけあって、ソロはなし。あっさり幕を下ろした。

 とうとう雨はライブの間、降り続けた。秋口の晴れた夜、のんびり聴くにはいい環境だと思う。
 もし機会あるなら、万全の態勢でライブを楽しんでみたい。

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