LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
05/6/15 江古田 バディ
出演:HAYAKAWA
(早川岳晴;b、橋本ジュン、増田隆一:g、植村昌弘、北沢篤:ds)
HAYAKAWAの解散ライブ。さすがに動員が多かった。バディの客席がみっしり埋まる。
この日は仕事の都合で、途中からの参加。店のドアを開けると、カウントの声が聴こえた。ちょうど2曲目が始まるところだったみたい。
<セットリスト>(不完全)
1.No
shoes
2.Dressler#36
3.バリタコ
4.04/11/20
5.玄武
(休憩)
6.SC-61
7.Syllogisme
Colonial
8.04/8/21
9.Pedal
Tones
10.294
(アンコール)
11.Triple
Spirals
12.Masakomasa shuffle
セットリストは早川岳晴のHPより引用しました。
とにかくボリュームたっぷり。正味で2時間半くらいの演奏だった。
HAYAKAWAのライブはずいぶんサボってた。仕事モードから頭が切り替わらないまま、(2)を聴いてたけど・・・ずいぶん演奏のイメージがかっちりしていた。
バンド・アンサンブルを生かしたアレンジになっている。
あとで演奏された新曲群を聴いてると、さらにHAYAKAWAは次のステップへ進む途上だったみたい。
なおさら解散が残念。どういう形であれ、また活動を再開して欲しい。
ベースを中心にした2リズム体制ってのは画期的だから、生かして欲しいな。
(2)では掛け合いが多かった。ギターのソロを挟みつつ、ドラムの8小節交替のバトルが繰り広げられる。
ソロのときもドラム一人だけ叩いたり。
全員総編成で突撃だけでなく、演奏に加わるメンバーを意図的に操作することで、アレンジに厚みを持たせてた。
広いバディだから音量は大きくても、さほど耳が痛くない。
ねっとりと低音が漂う、濃密な空気の迫力がよかった。
後ろで聞いてると、だいぶ響きが違う。前半は低音がこもって、ドラムの音がよく聴きわけられず。
後半セットは高音が目立った。PAバランスを変えた?
(3)はテンポを落として、じっくり演奏された。
淡々とテーマを弾き繋ぐベースが、とびきり。ギターのアドリブを文字通り支える。
植村/増田の変化球コンビを左手、北沢/橋本の直球コンビを右側へ配置した。中央に早川が立ち、五弦ベースを操る。
(3)もアレンジの多彩さが目立って、かっこいい。くるくるとサウンドの表情が変わった。
続く(4)は未CD化の新らしい曲。
高速ユニゾンで明るくびしばしとリフを決めるさまは、プログレをほんのりイメージした。サウンドはもっと柔軟だけど。
植村はにこにこしながら平然と、手数多いリフを叩きまくった。
前半最後の曲を演奏する前に、早川は4弦ベースへ持ちかえる。
この日のMCはほとんど無し。曲目を喋るくらい。
えらく嗄れ声で、聴き取りづらい。体調崩してるのかな?
解散ライブだからといって、とくに感傷的なコメントは無し。淡々と進めた。
前半セットは曲を重ねるにつれ、演奏へのめりこめた。
この曲の締まった演奏が抜群だった。ベースソロもたっぷり。
弛緩させずにそのままドラムのソロへつなげる。
休憩を挟んだ後半は、やはり新曲から。前回のライブで発表された曲か。
これが最新型HAYAKAWAの音だろう。先端鋭く、重心軽いサウンドだった。
アンサンブル重視を志向して、音の幅が広がって聴こえた。
ギターバトルを楽しめたのはこの曲だったかなあ。
確かこの曲では、ドラムの二人がきっちり同じリズムで叩いた。二人のドラマーがリズムを重ねることで、厚みを増す。
どの曲もコーダはすぱっと決めがち。
しかし(6)は増田のギターを残したまま、すかさず北沢のカウントで(7)へ雪崩れた。
ぐいぐい牽引する演奏と、構築されたアレンジがすごかった。
がらりと風景を変え、ドラムの二人が裏拍で跳ねるキュートな疾走が(8)。これも未CD化。
せわしないビートが印象に残った。
そういやこの曲の途中で、いきなりカメラのフラッシュが数度光る。
なんだなんだ?と思ったら、演奏中に植村が手を頭の上に伸ばして、写真を撮っていた。日記用の写真かな。
ことほどさように、曲の全てで全員の奏者がかかわらない。曲によっては早川すら手を止めるシーンがあった。
ソロのシーンは多いが、構成はそうとうきっちり決まってる。早川のアイコンタクトで、すぱっと次の場面へ進んだ。
曲の中にも頻繁にテーマやサブ・テーマを挟み、ソロの垂れ流しにはならない。強靭な完成度で聴かせた。
文字通り曲の中にソロを挿入するような演奏。
前からHAYAKAWAって、これほどかっちりした方向性だったっけ?そうとうライブをサボってたから、記憶があやふや・・・。
後半では解散ってことを意識したMCがいくつか。
「レコーディングしてない曲がいくつかあるんだよな。練習してCD-Rで出そうか」
練習しなくてもすぐ録音できるのでは、と内心思ってた。
でも思い返すと、構築した演奏を志向してるからこそ、段取りの事前確認は必要なのかも。
いずれにせよ・・・リリースして欲しいなあ。
(9)の前で、五弦から四弦にもちかえる早川。
ビールを飲む橋本が、早川にも薦めて「いや、今仕事中だから(笑)」と答えた。
そして、抜群にメロディアスな美しいベース・ソロを、たんまり聴かせる。
ぴっちりした輪郭で低音を響かせた。高音弦も多用して、フレーズを次々に展開した。
セット最後の曲は"294"。
大勢の観客へ感謝を述べ、「これからたまに『閉店セール』をやろうか」と笑わせる。
解散をからっと受け止めた発言だった。
HAYAKAWAの演奏が始まる。
とたん、ステージ背後の壁が、ライトで真っ赤に染まった。
心なしかテンポが次第に速まる。押せ押せの勢いだ。
増田のギターソロが飛び去り、早川が高速フレーズ・ソロで受け止める。
ドラムのチェイスもたんまりと。2小節毎で主導権が交錯し、あげくに二人の連打で盛り上がった。
最後は全員の大きな音でエンディングへ。
すっとステージを去る五人だった。
客電はつかない。アンコールの拍手が鳴る。
後ろの席から見てたら、アンコールの拍手しないのに席を立たない人もいて、首を傾げたが。
無造作に再登場したメンバーは、何も言わずに早いテンポのテーマを決めた。
知ってる曲だけど、曲目を思い出せなくて・・・なにをやったっけなあ。
ソロはさすがに短めだった。
早川がくるりと後ろを向いて合図。
そして、鋭くネックを振り下ろす。すぱっとエンディングを決めた。
客電がつく。しかし、観客の拍手はやまない。これが正味のアンコールだろう。
しばらくしてまずドラムの二人が登場した。何も言わずに叩き始める。
最後に早川が登場。ペットボトルからぐびっと飲み、ベースを構えた。
慌しく客電が落ちていく。
これも曲名があやふやです。ごめん。なじみの曲なのに。ああ、記憶力が・・・。
重たいテーマで、ブルージーなメロディだった。
HAYAKAWAの演奏は、この曲だけが明らかに違っていた。
ルーズな雰囲気の、セッションを思わせるソロ回し。今までのライブで聴かせた、緻密な構成はない。
最初に聴いたHAYAKAWAは、たしかこういうサウンドだったんじゃないかなあ。記憶を掘り返してるんだけど。
最後の最後で、HAYAKAWAの歴史を概括した気分だった。
エンディングは思い入れたっぷりにぐしゃぐしゃと弾いて、幕を下ろす。
このメンバーでのライブはもう無いそう。
構築と即興を混在させるコンセプトを、新曲ではさらに昇華させる可能性をみせた。
どういう形であれ、早川のリーダー・バンドはまた活動して欲しい。