LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
05/6/5 荻窪 Velvet
Sun
出演:灰野敬二+ASTRAL TRAVELING
UNITY
(灰野敬二:voice,fl,electronics,pips,etc.)
(astro :
oscillator / drone voice、emi : percussion, etc、synyo : guitar、ya : ghost like
hair synth、yamauchi : violin / phantom effect、fumie : guitar / meditation &
pregnancy、minori : bass、sayo : sitar)
ひっさびさのライブだ〜。ここんとこバタバタしてたし。
このハコは初めて。開演は20時頃だろ、とたかをくくって19時20分頃に入る。
すでにみっしりと観客でいっぱい。40人くらいか。満員の盛況だった。
ステージは特に高くなっておらず。客席と平面なので、椅子へ腰掛けてしまうとミュージシャンを見づらいのが難点か。
静かに開演を待つ。19時半をまわった頃、メンバー数人がステージへ向かった。
準備を始める。ところが、手招きされて一旦外へ。段取りの打合せだろうか。
しばらくしてメンバーが再登場。それぞれ配置へついた。
伸び上がってステージを覗く。・・・いつのまにか、灰野敬二が床の中央にぺたんと座っていた。
事前の告知では「共演もある」程度の情報だった。灰野の轟音ギターが聴けるかな、と期待していた。
ところが蓋を開けると、完全な共演のかたち。2時間ぶっ続けのステージだった。
ASTRAL TRAVELING
UNITYは初めて聴く。上に書いたメンバー名と担当楽器はHPよりの引用です。
向かって左手の奥にフロアタムを叩く女性が立つ。その横にスッと立つバイオリン弾き。すぐ後ろの床に座った男がastroだろうか。俯いたまま、機材をずっといじっていた。
ちょこんと椅子に腰掛けた男が、さりげなくATUの音世界を支えてるように見えた。
彼はハーモニカやミニギターなどを演奏。よく見えなかったが、数弦の民族楽器も弾いていた。
エレクトリック・バイオリンへ向かって、弓をゆったりと動かす。シタールがミニマルに音を重ねた。
弓は弦をこする感じ。メロディではなく響きとしてバイオリンを操った。
エフェクタ処理をしてるのか、甲高い音が響く。
音に耳を傾ける灰野。おもむろにマイクへ身体を寄せて・・・高く、呟いた。
後方に座った男がハーモニカらしきものを加えた。
吹くそぶりをしても、音はさっぱり聴こえない。アンプをその前にいじってたけれど、いろいろ音を加工してるのか。
超音波のような高音の幻聴を感じる。
ASTRAL TRAVELING
UNITYが音像を作り、灰野が絡んでいくパターンが多かった。
全体的に音量は控えめ。包み、広がるような不定形のノイズが膨らむ。
激しく襲い掛かるシーンもほとんど無し。電子音がたゆたい、うっすらと灰色の幕で空間を覆った。
灰野はギターを準備するも、実際には演奏せず。
各種の笛を中心に、エアー・シンセやエレクトリック・パッドを挿入していた。
たぶん事前の打ち合わせはほとんど無し。即興だろう。
ハイトーンの声を広げた灰野は、フルートをくわえた。
押し出すように、音をしぼりだす。ランダムな音が繋がり、メロディの断片が産まれた。
全体の響きの中で聴くと、なんだかポップな感触すらあり。サウンドのイメージを掴みやすくなった。
ベースやドラムはリズムを作ることにこだわらない。
よく見えなかったがベースは最初、弦をスライドさせて音を出してたみたい。
後半でベースを抱え、とつとつとフレーズを弾く姿がキュートだった。
ドラムはノイズの流れへ沿うように、タムをランダムに叩く。
灰野のエレクトリック・パッド(だと思う。よく見えなかった。・・・こればっかだな)とは決してリンクせず、互いに違うパルスを出した。
おそらく灰野と思われるエレクトロ・ドラムは、全体の音をあおるかのよう。
だが同調はしない。あくまでASTRAL
TRAVELING UNITYは、独自の世界を紡ぐ。互いの強烈な世界観の対比が新鮮だった。
ASTRAL TRAVELING
UNITYのサウンドは、上下のレンジが広い。
特に超高音。サイン波のような高音が常に漂って聞こえた。
機材を黙々といじっていた二人が、周波数をリアルタイムで変化させていたのかな。見ていても演奏方法がよくわからず、くやしい。
灰野はフルートを置くと、エアー・シンセへ手をかざす。空気を包み、加速させる。
かがみこむときは、エレクトリック・パッドを叩いてるのか。
やがて灰野が取り出したのは、竹製の笛だった。頬を軽く膨らませ、強く息を吹き込んだ。
バイオリンを奏でる男は、無表情のまま。ゆったりと弓を動かす。ときたま弓を置き、コップの水で喉を潤す。
それ以外は立ち尽くしたまま。存在そのものが音と一体化していた。
たまに音色が超高音へ自然に変わったが・・・あれは誰が操作していたんだろう。
奥に座った男が、小さなエレキギターを構えた。フレットをそっと押さえる。
ハーモニカの時と同じ。何だか不思議な光景だった。たまに音が漏れていたから、ミュートしてたのかな?
灰野はマイクへ向かって声を出した。怒声まではいかぬ。日本語の断片が聴こえる。
声に力をこめ、灰野は喉をふるわせた。
サウンドは盛り上がりをあまり意識していないようだ。
ときに密度が濃くなる。しかしクライマックスを予感させても、終わりへ導かれない。
いつしか別の電子音が漂い、フロアの空気を換えた。
ベーシストはベースを抱え、静かにメロディを紡ぐ。
椅子の男は民族楽器を構えた。
シタールが継続して音を出しているようだが、もはや全体へ溶け込んでいた。
灰野は別の笛を取り出した。木製か竹製の、一本の長い笛。カズーのようにまっすぐ息を通した。
場面転換らしきものは、ほぼ灰野が担当した。
フルートや声、エレクトロ・パッドなど、様々な楽器を幾度も持ち替えて、単調さを防ぐ。
もっとも総じて尖がったサウンドは低め。淡々と流れるノイズに身をゆだね、リラックスしていた。
エンディングに向かって、なんだか空気が濃密になる。
しかし過激なシャウトやノイズは誰も出さない。
サウンドを高め、集中させて・・・音を止めた。
一拍置いて、拍手が飛ぶ。客電がついた。
物販が宣伝を始める。
ノイズから日常へ。二時間にわたった、非日常のひとときが幕を下ろした。
正直なところ、構成が不如意なまま2時間ぶっ続けはつらかった。こうなると知ってたら、心の準備も出来たのに。
ひとつの即興を続けたため、散漫に感じたシーンもたしかにあった。
いっそいくつか区切りを入れたほうが、ぼくはもっと集中して聴けたと思う。それが残念かな。
轟音さは別にないのに、なんだかぐったりと音が身体にしみこんだ。
客電がついたのをきっかけに、そのままライブハウスを出たけれど・・・もしかしてまだ、ライブは続いたんだろうか。