LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/4/30   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之
 (明田川荘之:p,オカリーナ)

 ライブ前に明田川はピアノの前へ譜面を置き、曲を追っていた。翌日のライブの準備らしい。
 いったん席を外す。しばらくたって、おもむろにライブが始まった。

<セットリスト>
1.Two of us
2.I'll close my eyes
3.侍日本ブルーズ
4.シューリヒトの心〜レフト・アローン(?)
 (休憩)
5.クルエル・デイズ・オブ・ライフ
6.ロマンテーゼ
7.アルプ
8.世界の恵まれぬ子供たちへ
9. ?

 (1)は久川譲の曲。翌日のライブでやる予定とのこと。練習も兼ねて弾かれた。ライブ前に爪弾いたのも、この曲。
 メガネをかけて譜面をじっくり見ながら弾く。フェイクなどはなし。ごくまっとうに曲が奏でられた。中盤のメロディは昔の歌謡曲を連想したが、タイトル思い出せず・・・。
 
「難しいなー。もうちょい練習します」
 唐突に、明田川は弾きやめる。譜面を横へ押しやり、オカリーナを手に取った。

 (2)、(3)と定番の曲が続く。どちらもオカリーナのイントロつき。
 高音を使ってフェイクしたテーマをイントロに持ってきた(2)、重厚に奏でた(3)と、すいすい曲が流れてゆく。
 ちなみに今のピアノ、低弦が一本無い。清水くるみがライブ中に切ったとか。

 「良くこんなとこ切るよな。"侍日本ブルーズ"はソロでは、この音使うんだよ。今日は弾かないように注意して大変だった」
 と、明田川がぼやいてみせる。翌日、調律する予定らしい。

 暑い暑いと洩らして、足元の扇風機をつける。調子悪いらしい。
 ともあれまたオカリーナを手に取り、"シューリヒトの心"を演奏した。
 明田川のオリジナルだろうか。あまり聴いたことのない曲だ。
 
 今日のベストともいえるほど、熱のこもった音楽だった。アドリブへ雪崩れると、すぐさま明田川の唸りが飛び出す。
 上半身を大きく動かした。
 アケタの壁、一枚落ちたベニヤの壁画が明田川の背に当って、ゆらゆら揺れる。
 曲はみるみる情熱的に揺れ、ピアノが歌った。

 つと、聴き覚えあるメロディ。わざとかな。
 オクターブ飛ぶ音に、"レフト・アローン"を連想した。そのフレーズだけでなく、あとの編成も耳馴染みあったから、たぶんこの曲と思う・・・。
 考えを巡らせてると、曲は唐突に終わった。

 「暑いんで、ちょっと休憩します」
 すたすたと明田川は、店の外へ去っていった。

 一息ついた後半は、明田川のオリジナルを目白押し。
 "ロマンテーゼ"をライブで聴けて嬉しい。あまりやらない曲では。

 後半セットはまず、無造作な"クルエル・デイズ・オブ・ライフ"から。
 きかない扇風機は諦めて、クーラーを入れてもらってた。
 メロディはそっと空気を震わせる。

 ロマンティックに披露した"ロマンテーゼ"で、ちょっと唸りが復活したかな?
 テーマの変奏を積み重ね、曲は展開してゆく。
 
 ワイルドに変化したのが"アルプ"だった。
 やけに荒っぽくテーマを弾いたあと、どんどん曲は深みへはまってく。
 ついにクラスターまで飛び出した。
 一音一音、階段を上る旋律。その合間で、右手は高音鍵盤をかき鳴らす。

 そういえば今夜は内部奏法は一度も無かった。以前使ってた、アフリカン・ベルもない。
 オカリーナも二本程度を使い分けたのみ。
 しごく簡素な状況で、音楽と明田川は対峙した。

 "アルプ"はがんがんフリーさを増す。右手の肘うちから、両手うちへ。
 歯を食いしばり、明田川は腕を鍵盤へ強く打ちつけた。

 "世界の恵まれぬ子供たちへ"で一旦ペースを変える。
 センチメンタルな空気をかもしたあと。やはりクラスターへ飛び込んだような。

 最後は曲目不明。草競馬のように軽快なカントリー・タッチの曲だったと思う。
 ころころとラグタイムっぽく跳ねるジャズを軽やかに弾いた。
 今まで全ての時間をきれいにまとめるように。音が弾み、転がる。

 そしてクライマックスへ。
 ピアノ線が切れて、出ない鍵盤を軽く一打ち。
 にやっと笑って、ピアノから明田川は立ち上がった。

 ハードなクラスターじゃなく、キュートな終わり方もいい。
 時間は深夜2時になりかけた頃合。休憩挟んだとはいえ、たっぷり一時間半近くのライブだった。

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