LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/4/30   入谷 なってるハウス

出演:MUMU
 (植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂本一孝;key)

 月例ライブに毎月新曲発表と、積極的なMUMU。聴くのは、昨年末ぶり。
 毎月新曲でるため半年くらい聴き逃すと、音楽性ががらり変わってる可能性があり。
 今回も、何だか印象が違う。ずいぶん硬質だったよ。なお、今回が結成五十回目のライブにあたる。

 中央にトロンボーン。それをドラムとキーボードが挟む、なじみのセッティング。キーボードの前にどかんとアンプを置いた。
 ドラムはスタック無しでシンバルが数枚。金物は硬質に響き、太鼓群は深くきれいに鳴った。

 客電が落ちる。メンバーは楽器を構えた。
 無造作に、客席へなにも愛想をふりまかず。
 植村のカウントでライブが始まった。

<セットリスト>
1.2005 # 2
2.2004 # 4(初演)
3.亜 #5
4.2004 #12
5.On The Dune
(休憩)
6.2005 # 3
7.03/10/2
8.2004 #11
9.99/5/23 #3
10.2005 # 1

 今回もMUMUのHPからセットリストを引用してます。
 新曲と初期レパートリー混在の、バランス取れた選曲だった。
 "99/5/23 #3"は先月のライブでもやったみたい。「定番曲」を選びつつあるのかな。

 まず1曲目は2月の新曲から。トロンボーンがのっけから激しく単音をスタッカートで叩き込む。
 ドラムやキーボードがタイトに重たくまくし立てた。のっけからツインペダルがずしずし響く。
 なんだか三人とも具合が悪そう。特に中根の消耗が激しく、しょっちゅう咳き込んでいた。ヘビーな演奏に酸欠気味だったのかも。

 ライブの進行は中根のMC。ことさら淡々とステージが進む。
 1曲やって3曲、そして1曲。なじみの構成だった。

 新曲はドラムとキーボードをユニゾンに見せかけ、ところどころでズレるトリッキーな構成に聴こえた。
 アクセントの位置がころころ変わる。テンポは一定だが、とんでもなく変拍子かも。

 MUMUの曲は基本的に、ライブでしか聴けない。ぼくは録音する習慣ないので、毎回が一発勝負。
 アレンジを毎回微妙に変えていそうだが、真実はいかに。
 リフは聴き覚えあっても、曲まで覚えてないからなあ。

 なぜって古い曲のとき、ペダルをどう操るか興味あったんだ。結成初期のMUMUって、ツインペダルじゃなかった気がするから。
 気づいた限りでは、初期のレパートリーでは左足って、ハイハットを踏んでるみたい。
 だからアレンジをどう変えてるのか、好奇心が沸いたんだ。

 どの曲だったか忘れたが、高速4ビートを植村が叩き、坂本が絡むシーンも。
 曲調はどんどんバリエーションが増えていく。

 トロンボーンは積極的にメロディを受け持つが、アドリブを思わせる比率はさがった。
 むしろ3人のアンサンブルで突き進む方が多そうだ。
 キーボードはかたくなにエレピ音色を保持するが、たまには目先を変えて違った音も欲しくなった。

 1stセット最後が、なってるハウス恒例のカバー企画。
 ドナルド・フェイゲンの2nd "Kamakiriad"(1993)から、"In the dunes"をもってきた。すごく意外な選曲。
 植村はこの盤を良く聴いてたそう。コード進行が斬新で、作曲の勉強になったとか。素人なので、どうすごいか分からなくて残念・・・。

 「このアルバムは世間的には評価低いんですが・・・」
 と植村は笑って説明する。ぼくはCDを持ってたけど、こんな曲があるなんて、ぜんぜん気つかなかった。
 帰ってCD聴きながら記憶をたどってみたが、たぶん素直にアレンジしてた。

 キーボードが和音を引き受け、原曲ではサックスのところを中根がトロンボーンで吹いた。
 植村はリムショットを混ぜ、タイトなドラミング。
 オリジナルはクリストファー・パーカーがスティーリー・ダン流の無菌室並みドラミングを決める。

 クールな雰囲気を、植村は平然と再現した。ドラマーとしても、この曲に惹かれたのかも。
 というのもフェイゲンのバージョンでは、ラストにドラムのフィルがいくつも入る箇所あり。これをMUMUがどう料理したか・・・注意して聴いてなかった。惜しいことした。

 後半セットは3月の新曲から。
 中根は椅子に腰掛け、演奏を眺める。ドラムとキーボードのバトルで演奏が始まった。坂本のフレーズの合間へ、植村がさりげなくフィルを差し込む。
 即興要素は無く、かっちりとアンサンブルを成立させるとこがMUMUの魅力。
 最後にすっと立ち上がって、トロンボーンも演奏に加わった。こういう演出も新鮮でいい。
 
 中盤は以前のレパートリーを連発した。
 きれいなバラードが、確か"03/10/2"。トロンボーンの奏でるメロディがキュートで、好きな曲。やってくれて嬉しかった。
 昨年11月の新曲は、ロジカルなムードだった。
 シンバルをひゅんひゅん掠らせる鳴らしだったのがここ?3月の新曲で、だったかな?うう、記憶があいまいです。

 ひさびさに聴いた気がする、"99/5/23 #3"。極初期からのレパートリーだ。
 当時はキュートなイメージが強かったが、今回はぐっと鋭さを増した。演奏のジャストさに磨きかかったのか、単に演奏のムードへ耳が引きずられたか、どっちだろ。
 3月に西荻Binsparkで演奏されたテイクが、MUMUのHPにアップロードされた。
 
 最後の曲を演奏前に、長めのMCが入る。
 しんどそうな中根を気遣ったか、植村が珍しくたっぷり喋った。
 かなり毒舌。冗談めかしてたが、たぶん本音の音楽観だろう。
 ぼくの文章力では無用な敵を作るだけになりそうなため、喋りの内容を割愛します。お許しを。

 なおeuのライブ宣伝のとき、植村曰く「二人の音楽共通点はイージーリスニング。今は手品のBGMに成り下がったポール・モーリアとか」。
 意外だ。ふだん植村はどういう音楽を聴いてるんだろ。

 最後は1月の新曲で締めた。
 これまたトロンボーンが激しく音符を吹き殴る曲。この日一番の演奏だと思う。
 キーボードとドラムもアンサンブルががっしり噛み合った。

 アンコールはなしで、あっさり終わり。
 MUMUはレコーディングをマスタリングまで完了、あとは販売ルート確保とジャケット製作のみらしい。
 毎月活動する割には、拠点は東京のみ。すごく限られた客層に対してのみ深くアピールする、特異なポリシーのバンドだ。しかしCDリリースで、ぐっと盛り上がって欲しい。
 変拍子だがダンサブルな要素も持ち合わせるサウンドだと思う。惜しむらくは本人らが、そんなクラブ系の活動なんて望んでないこと。たぶん。

目次に戻る

表紙に戻る