LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2004/3/19 西荻窪 アケタの店
出演:早川岳晴
~大生誕祭~
(早川岳晴:b、翠川敬基:vc、渡辺隆雄:tp、北澤
篤:ds、関根真理:per)
毎年恒例・・・かな?早川岳晴の誕生日記念セッションがアケタで行われた。
今年で「四捨五入すると百歳」((c)渡辺隆雄)だそう。
観客はぞくぞく登場し、アケタは満席になった。
メンバーはmissing
linkから抜き出したメンバーに、緑化計画の翠川が加わった格好。
早川はステージ後方中央、その前で渡辺がトランペットを構えた。早川の横で北澤はハウス・ドラムを使う。
関根真里がステージ上手前の配置。ボンゴやジャンベ、フロアタムやWave
drumなど各種パーカッションで周りを囲む。
チェロを構えた翠川は下手前側にすわり、横にアンプを置いた。もっとも全員がパワフルに演奏始めると、さすがに音量は埋もれがち。
最後はかなりアンプのボリュームを上げてるようだった。
まずはチューニングから軽いジャムへ変化した。20時をちょっとまわった頃か。
次第に音がまとまり、シンプルなファンクに進化する。たぶんワンコード。
早川がリフを繰り返し、太鼓の二人がビートを重ねた。
チェロは弓で切り込み、トランペットが鋭く吹き鳴らされた。
そしてテーマの提示。しょっぱなから、いきなりかっこいい。
<セットリスト>
1.Down
Down
2.ターザン・イン・トーキョー
3.Dorthaan's
Walk
4.ケラケラ
(休憩)
5.Tango
6.Sambal
chilli
7.Caravan
8.Off the
door
(アンコール)
9.Misirlou
(2)は先日のNo
Trunksセッションでもやった、渡辺の曲。
(3)はローランド・カーク、(7)はエリントンの曲(早川は「ベンチャーズやブルー・コメッツで有名だな」と笑ってた。)
そして(9)がディック・デイル。あとは早川のオリジナルだ。
ここ数年の誕生日セッションなどで、馴染み深い曲を揃えてきた。
ドラムの北澤がロックよりのシンプルなビートを叩いた、ファンクっぽい音像が満載だった。
フロアで聴いても気持ちよかったろうな。
"Down
Down"のソロは早川が、アイコンタクトでまわす。渡辺から翠川、早川自身へ。
それぞれソロが終わるたびに演奏から抜け、構成要素が少なくなった。
ファンクが研ぎ澄まされる。早川のぶっといベースが飛び出した。
"Down
Down"が終わるとすかさず、"ターザン・イン・トーキョー"に。
渡辺が背をそらし、華やかなテーマのメロディを奏でた。
ジャンベ中心のリズムで、関根が叩きまくる。
今夜の演奏は、あんがい細かいとこまでアレンジが煮詰まってた。
ブレイクをぴしりと決め、場面転換する箇所がいくどもあり。
翠川のソロから、音の風景ががらがら変わる。
チェロがアドリブ中は早川も弾きやめ、関根と北澤のみにバッキングを任せた。
みるみる翠川はソロの音量を落とし、リズム隊もろとも小音量へ引きずり込む。
かすかなピアニッシモへ着地した直後。
早川のベースがずしんと鳴った。
足元に各種エフェクタを並べた早川だが、細かい切り替えはなし。
たまにディストーションを効かせたくらい。
骨太の低音が店内に響く。高音部多用のソロを繰り出す時も、オクターブ下くらいで低音を常に身体に感じた。
"ターザン・イン・トーキョー"でのソロは、どんどんギター寄りに。
しまいにはサムピックを付け、猛烈なストロークで弦をかきむしった。
(3)は故・板谷博(tb)とのセッションで覚えたという。
数年前から「オリジナルは聴いてない」とMCで言ってるが、板谷と作った音楽へのイメージを壊したくないためか。
「引越しを手伝ってくれた板谷へ」と前置きして、演奏へ。
"Dorthaan's
Walk"でウッドへ持ちかえた。
翠川と関根がいったん下がり、トランペットとのトリオ編成にて。
北澤はブラシを使う。ひきずるリズムだが、あんまりジャズを意識したビートじゃなさそう。
全体が黒っぽくて迫力あったが、なによりウッドベースのソロが素晴らしい。
豪腕な組み立てで、ウッドベースが小さく見えた。
強烈に弦をスラップさせ、指板から弦がはみ出すほどチョーキング。
ウッドベースが飛び出しそうな、熱いソロだった。
前半セット最後は、生活向上委員会時代のレパートリーだという。
「情感タップリに演奏してもらいます」
早川が紹介して、冒頭は関根のソロから。
Wave
Drum中心で静かな音の組み立て。
途中で「・・・情感?」と早川に確認しながら、演奏する関根が可笑しかった。
中盤で北澤と関根のファンキーなリズム・デュオ。
二人とも手数は多いが、リズム・パターンはシンプルに突き進む。
畳み込むリズムが効いてて、ぐいぐいのめりこんだ。
翠川がソロを取る時には、渡辺はタンバリンを取り出し軽快に叩く。
遊びっぽいリズムじゃなく、手馴れた様子できちんとビートを取った。
エレキベースに持ち替えた早川は、ディストーションを噛ませた重たいフレーズをぶちまける。
後半セットは始まったがずいぶん遅い。21時40分くらい。
まず翠川とのデュオで"Tango"が演奏された。ウッドベースによるアコースティックなアプローチ。
なぜか二人ともアンプを通し、ぷりっとした響きだった。
とことんフリーに盛り上がるかと思いきや。
時間が押してたせいか、10分くらいであっさり終わって残念。
客席奥のスペースで演奏にあわせ、関根が静かに手拍子してたっけ。
続く"Sambal
chilli"(たぶん、この曲。ちょっと自信ない)から、フルメンバーに戻る。まだ早川はウッドを持ったまま。
関根が足にサンバのパーカッションを結びつける。このあたりから多用なパーカッションを使い分けてた。
シェイカーをツリー・チャイムに当ててリズムを作り、バードコールを吹く。
カウベルやウッドブロック、Wave
Drumを使い分け、多彩なパターンを提示した。
翠川のソロのとき、関根とデュオ状態になったんじゃなかったっけ。
大音量でかますときは、さすがに翠川の音量が埋もれがち。一番チェロが聞こえるバランスの場所へ座ったつもりなのに。
ほぼ全て弓弾きで通す翠川。昨日のアコースティックなソロとの落差が激しく、面白かった。
(5)や(8)でトランペットがソロを取る後ろで、淡々とリフを提示する姿が新鮮だ。
"Caravan"ではベースの入り具合がいかしてた。
トランペット、チェロとソロを回し、タイコの二人にソロ合戦をさせる。
早川はピアノの影に座り、ぐびりとビールを一口。
しばらく聴いていたが、おもむろに短いリフでリズムに切り込んだ。
立ち上がって中央へ。存分にばら撒くベースソロが良かったなあ。
後半セットも、2曲目からファンク色が強くなる。
極めつけが"Off the
door"。NYの地下鉄のドアへ表示された言葉がきっかけで命名したという。
ディストーションをミリミリ効かせ、早川はベースを弾きまくった。
アンプへ押し付け、フィードバックを誘う姿も。あんまりノイズは聴こえなかったが。
ベースをリードギターのように操り、ソロが轟く。
5人全員のアンサンブルでは図太くビートを支え、ソロに回ると存在感が倍増。すさまじかった。
当然アンコールの拍手が飛ぶ。
ステージから降りずに、そのままアンコールへ突入した。
イントロではベンチャーズよろしく、ベースでトレモロっぽいフレーズを弾いてみせる。
スネアの連打でロケンローなリズムをまくし立てた北澤がいいぞ。
途中のソロでは、ベースと4バーズ・チェンジも。もちろん関根もドラムと同期して叩きまくる。
一気に駆け抜けて、終演は23時をまわってた。
頭がかっかと火照る快演。熱いぜ。
ジャズとロックを自由に行き来する、早川の色で塗りたくられた絶妙なライブだった。